ゆっくりいじめ系1847 ゆっくり達の生涯 『冬篭り編』 (後編-1)

 〜ゆっくり達の生涯『冬篭り編』(後編-1)〜


 最終話 〜春に想いをはせて〜

 ※最終話はお家を造り始めるところからSSは始まります。
  原作キャラが終盤に少しだけ登場します。

 ここは人間が滅多に足を踏み入れない魔法の森の奥、ここには6匹のゆっくりが暮らしている。
 今日もいつものように広場に6匹が集まっている。

「みんな〜! おはようなんだぜ! 」
 まりさ種の中でも希少な部類に入る“だぜまりさ”、少し頭は弱いが仲間想いの良きリーダーのまりさ。

「ゆっふ〜ん! まりさおはよう、きょうもゆっくりしようね! 」
 持ち前のマイペースで周囲のゆっくりをゆっくりさせるムードメーカーのれいむ。

「きょうもなかなかとかいてきなあさね! 」
 まりさと同様のブロンドヘアーにかわいらしいヘアバンドを着けた少々我がままだけど人気者のありす。

「むきゅ〜、きょうもいいてんきだわ。」
 体は弱いが頭の良さで群れを良き方向へ導く影のリーダーのぱちゅりー。

「わかるよー! わかるよー! きょうもみんなでゆっくりするんだねー。」
 すばやい動きで逃げる虫を捕まえるのが得意な狩の名手のちぇん。

「おはようみょん! いいひだみょん、きょうはとてもゆっくりできそうだみょん。」
 口に武器をくわえた時の戦闘力は通常種一、群れの用心棒みょん。

 大きな群れではなかったが、6匹は楽しくゆっくり協力して暮らしていた。

 そして季節が晩夏に入ろうとする頃、群れの様子に変化が訪れる。


「むきゅ〜! みんなあつまって、たいせつなはなしがあるの。」
 いつもの様に広場に集まるとぱちゅりーが真剣な面持ちで皆に話しかける。
「ぱちゅりーどうしたんだぜ? 」
 いつもとは違う雰囲気のぱちゅりーにまりさは疑問を投げかける。
 ぱちゅりーがこの様な表情をするのはは何か重要な話がある時だという事を皆知っていた。
「いまみんなはそれぞれのおうちをもってるわよね? 」
「そうだよ、だかられいむよるはさみしいよ・・・。」
 現在6匹は各々お家を持っており、朝夕は1匹で過ごしている。
 皆で暮らせる大きなお家が無いのが最も大きな理由である。
「もうすぐふゆごもりのじゅんびをしないといけなくなるのはみんなもわかってるわよね?」
「そうね、とかいてきなふゆごもりのためのじゅんびをしないといけないわね。」
 この群れのゆっくりは比較的知能が高く、冬篭りに関する知識はかなり高い方である。
 頭のいいぱちゅりーの助言を他のゆっくりが素直に受け入れているのが大きい。
「ひとりでふゆごもりはとってもさみしいしきけんだとおもうの。」
「そうだねー、ひとりはさみしいよー・・・。」
「たしかになにかあったときひとりだととてもきけんだみょん! 」
 この群れのゆっくり達は一匹立ちし、偶然この場所で出会い群れを作った。
 まだ親ゆっくりと過ごしていた頃冬篭りを皆が経験しており、その過酷さは餡子の奥深くに刻み込まれていた。

「みんなできょうりょくしておおきなおうちをつくっていっしょにふゆをこすっていうのはどう?」

「ゆゆ! さすがぱちゅりーだぜ、ないすあいであなんだぜ! 」
「ゆゆ〜♪ それならみんなでゆっくりできるね! 」
「なかなかとかいてきなあいであね! ありすもきにいったわ。」
「わかるよー! わかるよー! たのしいふゆごもりになるんだねー! 」
「そのあいであにみょんもどういみょん! 」
 満場一致で、6匹は共同のお家の作製に取り掛かる事になった。


「それじゃここをほっておうちにするんだぜ! 」
 まりさは適当に地面を掘り始めようとする。
 その計画性の無さはさすがは餡子脳と言ったところである。
「むきゅ、まりさだめよ! おうちにするばしょはちゃんとみつけてあるのよ。」
 さすがはぱちゅりー、行き当たりばったりのまりさとは餡子脳の格が違う。
「そうなのぜ?さすがぱちゅりーだぜ! 」
 ぱちゅりーは少々呆れ顔であるが、気を取り直し皆をお家の予定地へと連れて行く。

「むきゅ! ここをほっておうちにしようとおもうの、どう?」
 その場所は地面が30cm程隆起しており、今まで皆が住んでいた場所から程良い距離である。
 この場所をぱちゅりーが選んだ理由、それは先程まりさが真下の地面を掘ろうとしていたのとは違い正面を掘り進む
 事ができるからである。
「なかなかいいばしょなんだぜ! 」
「れいむもきにいったよ〜。」
「ま、そこそことかいてきなばしょね。ど、どうしてもっていうならここにきめてあげてもいいわよ。」
「いいよー、いいよー、ちぇんはここでいいよ〜。」
「みょんもみんなとおなじみょん。」
 その日から6匹は協力してお家造りを開始した。


 〜お家造り1日目〜

「ゆんしょ、ゆんしょ! 」
「ゆ〜んしょ! ゆ〜んしょ! 」
「むきゅ〜、いいわよ、そのままゆっくりほりすすめて。」
 まりさが巣穴を掘り、れいむが邪魔になった土を運び出し、ぱちゅりーが外で指示を出している。
 入り口に当たる部分は越冬時の封鎖を考えできるだけ小さくしたいため、1匹で掘らねばならない。
 ありす、ちぇん、みょんの3匹はお家造りメンバーのご飯も含め狩に出かけている。
「ゆふぅ〜、だいぶほったんだぜ! そろそろなにかたべたいんだぜ! 」
 まりさはかなり掘り進んだ気でいるようだが、まだ入り口からの距離はせいぜい15cm程度である。
 6匹が暮らせるお家にはまだまだ到底及ばない。
「むきゅ! まりさ、まだまだよ! がんば・・・。 」
「ぱちゅり〜すこしゆっくりしようよ、れいむおなかすいたよぉ。」
 ぱちゅりーは活をいれて更に掘り進めるように指示を出そうとするが、れいむによってその指示は阻まれてしまう。
 そんな時、遠くから聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「みんな〜らんちをもってきたわよ〜。」
「ごはんだよ〜ごはんだよ〜。」
「はらがへってははたらけないみょん。」
 ちょうど狩りのメンバーが到着し、腹ペコのまりさとれいむは目を輝かせる。 
「むきゅぅ、しかたないわね、みんなでごはんにしましょう。」
 結局ぱちゅりーが折れる形で皆ご飯を食べ始める。
「「「「「む〜しゃ♪ ・・・む〜しゃ♪ ・・・。」」」」」」

「「「「「しあわせ〜♪ 」」」」」」

 そんな晩夏の昼下がり、ゆっくりとお家作りは進んでいった。


 〜お家造り3日目〜

 中の様子を確認したぱちゅりーが入り口から笑顔でぴょこっと顔を出す。
「むきゅ〜いいかんじよ♪ そろそろなかをひろげるわよ。」
 この3日間、まりさとれいむの頑張りにより入り口から50cm程まで掘り進んでいた。
 ここに来てようやくぱちゅりーから居住空間の掘削作業の許可が下りた。
「れいむもきょうからかべをほってもらえる?」
 今まで土運びしか手伝う事ができず歯がゆく思っていたれいむは満面の笑みを浮かべる。
「ゆゆ! ようやくれいむもかつやくできるよ! ゆゆ〜ん♪ 」
「いっしょにがんばるんだぜれいむ! 」
 まりさとれいむは意気込んでお家の中へ入っていく。
「まりさはここをほるかられいむはそこをほるんだぜ。」
「わかったよまりさ。」

 ガリッ! ガリッ! ガリッ! ・・・・・ペッ!
 ガリガリ・・・ガリガリ・・・ペッ!

 掘った土を口に含み外に吐き出しゆっくりと掘り進めていく。
 2匹の表情はゆっくりらしからぬ真剣そのものであり、無言で作業に徹している。
 ゆっくりにとってお家というものがいかに大切な物かと言うことがこの2匹の表情からうかがう事ができる。

「ゆゆぅ、つかれたんだぜ! 」
「すこしくらいゆっくりしてもだいじょうぶだよね! 」
 作業を開始して1時間程経つとさすがはゆっくり、集中力が切れて作業効率が極端に落ちてしまっている。
「まりさ〜れいむ〜らんちのじかんよ〜。」
「「ゆゆ! 」」
 入り口から聞こえた“らんち”に敏感に2匹は反応し、作業の手(?)を休める。
「まりさはさきにいくのぜ、れいむもすぐくるんだぜ。」
 自分よりも奥で作業をしていたれいむに声をかけるとまりさはそそくさと巣穴から飛び出した。
「ゆゆ〜、まってよまりさ〜。」
 遅れてれいむが外目指して移動を始めたその時だった・・・。

 パラッ・・・パラッ・・・パラパラパラ・・・ドシャーン!

「ゆぎゃあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛・・・・・。」
 突如お家の一部が崩落し、れいむは土砂の下敷きになってしまった。

「「「「「れいむ! ! ! 」」」」」

 れいむの悲鳴はお家の外まで木霊し、他のメンバーにはすぐに反応する。
 その中でも1番早く反応してお家に飛び込んだのはまりさであった。
 頭が弱くともさすがは群れのリーダーと言ったところである。 
 先程れいむが作業をしていた場所に土砂が堆積しているのを確認すると、まりさはゆっくりらしからぬスピードで土
 砂を掘り始める。
「れいむ! ま、まってるんだぜ! すぐたすけるんだぜ! 」
 遅れてやってきたメンバーも加わり、土砂は瞬く間に退かされていく。
 そして、れいむの体の一部が現れるとまりさはすぐに口にくわえ思い切り引っ張った。
「ゆぐぐぐぐぐ・・・ゆぐーーー! ! ! 」

 ズル

 遂にれいむは救出され、急いでお家の外へ連れ出される。
「ゆ゛ぁ゛っ! ・・・・・ゆ゛ぁ゛っ! ・・・・・ゆ゛ぁ゛っ! ・・・・・。」
 れいむは白目を剥いてうなり声を上げている。
 そのうなり声の間隔も途切れ途切れである事から非常に危険な状態である事がわかる。
 土砂の重みで体が変形し、大量の餡子を吐いてしまった事が原因である。
「むきゅー! みんな、いそいでれいむのくちにごはんをいれるのよ! 」
 ちぇんとみょんがれいむの口を開けて支えると、他のメンバーによって大量に食料が投入される。
「でいぶう ぅ ぅ ぅ ぅ ぅ ! しんじゃだめなんだぜえ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ! 」
 まりさは涙目になりれいむに叫びかけている。
 れいむはうなり声を上げながらも無意識のうちに口を動かし食糧を餡子に変換していく。

「ゆ゛ぁ゛っ! ゆ゛ぁ゛っ! ・・・・・・・・・・み、みんな・・・れいむ・・・いきてるの?」

「でいぶうぅぅぅぅぅ! よかったんだぜえ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ! 」
「むきゅうぅぅぅ! ほんとうによかったわ! 」
「ふ、ふん! まったくしんぱいさせるんじゃないわよ! 」
「よかったよー! よかったよー! 」
「うう、よかったみょん、ほんとうによかったみょん! 」
 意識を取り戻したれいむに対し皆涙を流し喜び合う。
 体中が土砂で薄汚れ体の形も多少ひしゃげてはいるものの、処置が早かったおかげで一命を取り留める事ができた。 
 ゆっくりが巣穴を掘っている際、崩落に巻き込まれて死んでしまうのは良くある事である。
 すぐ近くに仲間がおり、救出が早かった事がこのれいむにとっての幸運である。
 その日、れいむは自分のお家で安静にする事になり、代理としてみょんが作業に参加してお家造りは再開された。


 〜お家造り6日目〜

「むきゅ〜♪ やったわ、これだけのひろさがあればじゅう・・・。 」
「ありすはとかいてきなじぶんのすぺーすがほしいわ。」
 ぱちゅりーがお家完成宣言をしようとするがありすによって遮られてしまう。
「ゆゆ! まりさもじぶんのばしょがほしいんだぜ! 」
「れいむもほしいな〜。」
「ちぇんも〜ちぇんも〜。」
 ありすの発言に同意したゆっくり達により場の空気は更なる拡張作業を始める方向へ染まっていく。
「それじゃそれぞれじぶんのすぺーすをほってつくりましょう♪ 」
「「「ゆっくりりょーかいしたよ! (よー! )」」」 
 アリスの発言に乗せられたまりさ、れいむ、ちぇん、そして発案者のありすはゆっくりペース拡張のため家の中へ入
 っていく。
「むきゅぅ・・・。」
 完全に蚊帳の外のぱちゅりーは悲しそうに鳴き声を上げる。
 群れの半分以上が乗り気な以上、ぱちゅりーに止めさせる手立ては残されていなかった。
 ありすの案は実のところぱちゅりーも考えていた案であった。
 しかし、体の弱いぱちゅりーが自分のスペースを壁を掘って拡張するのは並大抵な事ではなく、結局皆に発表せずに
 破棄したのだ。
「むきゅぅ・・・ぱちぇひとりじゃなにもできないわ・・・。」
 そんな暗い顔をしているぱちゅりーの横にそっとみょんが現れる。
「だいじょうぶだみょん、みょんがてつだうみょん。」
「む、むきゅぅ、ありがとう。」
 みょんの優しい笑顔と言葉に励まされ、2匹はお家の中へ入って行った。


 〜お家造り10日目〜

「むきゅ〜〜〜♪ 」
 季節は晩夏から初秋へと移る頃、ぱちゅりーの嬉しそうな声が森に木霊する。
「やっとおうちがかんせいしたわ。」
 ありすの突発的な発案により一時はどうなるものかと思ったお家造りであったが、予定より少し遅れたものの各々の
 個ゆっくりスペース付きで無事お家は完成した。
 ぱちゅりーが早めに越冬用のお家作成を提案した事もあり、食糧集めにはまだまだ余裕がある季節である。
「やったんだぜ! これでゆっくりふゆがこせるんだぜ! 」
「おいしいたべものをたくさんあつめようね! 」
「とかいてきなべっどもわすれちゃだめよ! 」
「ちぇんはたくさんむしをつかまえるよー! 」
「みょ〜ん・・・いいたいことをみんなにいわれちゃったみょん・・・。」
 お家の完成を皆が喜び合い、これから集める越冬用のゆっくりアイテムについて盛り上がっている。
「むきゅ〜、それじゃきょうからしょくりょうをあつめるわよ。あつめてあとでぶんぱいしましょう。」
「「「「「ゆっくりりかいしたよ! (よー! 、みょん! )」」」」」
 かくしてお家を完成させたゆっくり達は越冬時の食糧及びゆっくりスペースの素材集めを開始した。


 〜まりさ&れいむ〜

「ゆゆ! これはとってもゆっくりできるきのこだぜ! らっきーなんだぜ♪ 」
「まりさはすごいね、れいむもがんばってさがすよ! ・・・ゆゆ! きのこさんをみつけたよ! 」
(ゆゆ〜♪ はじめてみるけどとってもゆっくりできそうないろのきのこさんだね! )

 カプッ

「ゆぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛! ! ! にがい! にがいよお ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ !」
 れいむは味見のつもりで少しかじっただけであったが、口の中には強烈な苦味が広がっていった。
 食い意地が張っている事が仇になったが、少量であった事は不幸中の幸いである。
「ゆゆ! これはとってもゆっくりできないめずらしいきのこなんだぜ!
 めずらしいきのこはたべるまえにまりさにみせないとだめなんだぜ。」
「ごめんなざい! ごべんだざい! にがいよお ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ! だずげでえ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ! 」
 れいむは小一時間口の中に広がる苦味に苦しみ続けるのであった。


 〜ありす&ぱちゅりー〜

「とっかいてき〜♪ とっかいてき〜♪ 」
 ありすは歌を歌いながら都会的なゆっくりアイテムを探している。
「とっかい・・・・・ゆゆ! まぁなんてとかいてきなきのこなのかしら♪ 」
 ありすの目にはとてもゆっくりした色と形をしたキノコが映っていた。
「でもこまったわ・・・いっぽんしかみつからないわ。」
 持って帰ったら分配の際にばらばらにされてしまう、もしくは他のメンバーに持っていかれてしまう恐れがある。
 一目で気に入ったそのキノコをありすはどうしても部屋のインテリアとして自分の物にしたかった。
「とかいてきなめいあんをおもいついたわ! 」

「むきゅ〜♪ いいちょうしでしょくりょうがあつまってるわ♪ 」
 巣穴の中では他のメンバーが持ち帰った食料の中にゆっくりできないものが混ざっていないかぱちゅりーが検査して
 いる。
「ぱちゅりー、みて! とかいてきなはっぱをあつめてきたわ。」
 ありすは口から紅や黄色に染まった色とりどりの葉っぱを取り出した。
「むきゅ〜さすがありすね、とってもとかいてきよ・・・むきゅ?どこいくのありす?」
 一瞬ビクッとしたありすであったが、振り返るといつもと変わらぬ笑顔で返事を返す。
「おへやをとかいてきにこーでぃねーとするためにひろさのかくにんにもどるのよ。」
「むきゅ、そうだったの、とめてわるかったわね。」
 目の前の色とりどりの葉っぱに目を奪われているぱちゅりーはありすの頬のふくらみに気が付かなかった。


 〜ちぇん&みょん〜

「ちぇん、みょんをふみだいにしてあのきにのぼるみょん! 」
「わかるよーわかるよーきのみをとるんだねー! 」
 ちぇん種は通常種一身軽であり、跳躍力にも優れている。
 そのため、他の通常種が届かない場所にもその特徴を生かして登ることができる。
 大きさが物を言うゆっくり界においてちぇん種が生き延びられる理由がまさにこれである。
「せーのでとびのるみょん。」
「わかるよー、せーのだねー。」

「せーの! 」
 ピョンッ! ビヨ〜ン!

 ちぇんとみょんの息はぴったり合い、ちぇんは無事木の枝に飛び乗った。
「みょんがうけとるみょん。ちぇんはきのみをゆっくりおとすみょん! 」
「りょうかいしたよー。」
 ちぇんは木の実を口で取ったり木の枝を揺らしたりして順調に食糧を下に落としていく。
 しかしある枝を揺らした時ちぇんの表情は凍りつく。

 ・・・・・・・・・・ブーン・・・・・ブーン・・・
 ブーンブーンブーンブーンブーンブーンブーンブーンブーンブーン

 蜂の巣である。
 ちぇんを敵とみなした蜂達は一斉にちぇんを取り囲む。

 チクッ! チクッ! チクチクチクッ!

「いだいよお ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ! いだいよお ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ! わがらないよお ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ! 」

 ズルッ!

「おちるよお ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ! たすけでえ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ! 」
 足を滑らせてしまったちぇんは自由落下を開始する。
 身軽なちぇんと言えどこの高さから落ちたのではただでは済まない。

 ボヨン!
「み゛ょん! 」

 下にいたみょんのナイスキャッチによりちぇんは落下による傷を負わずに着地する事ができた。
「いったんここはにげるみょん! 」
「わ、わかったよー! 」
 ちぇんとみょんは近くの茂みに身を隠す事にした。
「うぅ、いたいよーいたよー・・・。」
「いまなめてあげるみょん。これでいたみもすこしはやわらぐみょん。ぺ〜ろぺ〜ろだみょん。」
 蜂に刺され始めてすぐに落下したため軽症で済んだものの、体の数箇所は刺されてしまっていた。
 みょんは丁寧に1箇所1箇所優しく舐めてちぇんの痛みを和らげていく。
「すこしいたむけどもうだいじょうぶだよー、かんしゃするよー。」
「わかったみょん。それじゃみょんがようすをみてくるからちぇんはここでまってるみょん。」
 みょんは辺りを窺いながらゆっくりと茂みから出て行く。
 辺りには蜂の羽音はせず、どこかへ飛び去ってしまっていた。
「どうやらはちはどこかへいったみたいだみょん。もうでてきてだいじょうぶだみょん。」
「ゆぅ〜、たすかったよー。」
 2匹は木から落とした木の実をそのまま木の根元へ置いて逃げてきたため回収に向かう。
「よかったみょん、きのみはぶじみょん♪ 」
 みょんが木の実を回収しているとちぇんの歓喜の声がみょんの耳(?)に飛び込んでくる。
「すごいよーすごいよーおおものだよー♪ 」
 ちぇんの口には蜂蜜のたっぷり詰まった蜂の巣がくわえられていた。
 蜂蜜、それはほとんどゆっくりが一生かけても口にする機会がまず訪れない自然界における最高のの甘味である。
 ちぇんが木から落下する際に蜂の巣がぶら下がった枝を強く揺すったため巣が落下したのだ。
「す、すごいみょん! だいきんぼしだみょん! ! ! 」
 ちぇんは貴重な蜂の巣をくわえ、みょんは口いっぱいに木の実をほおばりお家へ帰還した。


 季節は晩秋、越冬に向けての準備もいよいよ大詰めとなる。
「むきゅ〜! そろそろそとのしょくりょうもすくなくなってきたしおうちのいりぐちをふさぐわよ。」
「「「「「ゆっくりりかいしたよ! (よー! 、みょん! )」」」」」
 お家の入り口付近を小石や小枝で丁寧に隠し、中から砂と大きめの石で封鎖された。
 こうして様々なアクシデントに見舞われながらも無事越冬を開始する事ができた。

「みんなおはようなんだぜ! げんきなのぜ?」
 まりさは自分の居住スペースから元気良く顔を出し挨拶をする。
 この広場はもともとぱちゅりーが居住スペース用に指示して造ったため、6匹全員が集まっても十分余裕がある空間
 となっている。
「ゆゆ〜、まりさおそいよ! もうみんなおきてあつまってるよ。」
 既に広場にはまりさ以外のメンバーがあつまっており、楽しそうに談笑している。
「すまないんだぜ、すこしゆっくりしすぎたんだぜ。」
 メンバー全員がそろうとぱちゅりーが皆のまえに進み出る。 
「むきゅ〜♪ じゅんちょうにふゆごもりがすすんでるわ♪ みんななにかこまったことはない? 」
 さすがは群れの頭脳、メンバーへの気遣いをするところも能天気なリーダーとは餡子脳の格がちがう。
「まりさはだいじょうぶなんだぜ。」
「みんなといっしょだかられいむとってもたのしいよ。」
「ありすもなかなかとかきてきなふゆごもりをすごしてるわ。」
「ちぇんももいんだいないよー。」
「すこしからだをうごかしたいけどそれはがまんするみょん。」

 冬篭りの何気ない日常風景、この日常が春まで続くものと誰もが思っていた・・・。


 後編-2へ続く

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最終更新:2008年12月31日 18:58
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