ゆっくりいじめ系1925 怖いお顔 2



「やっぱり、お腹がすくわぁ〜……」

 れいむは、まりさのことが大好きだった。他のまりさ達より……いいや、他のどの
ゆっくりよりも、優しくてゆっくりとしているから。
 まりさの体がまだ小さかった頃は、お目々を一つ無くした自分の分まで狩りを頑張
ってくれた。子供がたくさんいるお家のために、体の弱いぱちゅりーのためにと、誰
にも言われていないのに、ご飯を集めてきた。たくさん頑張るまりさに励まされるよ
うにして、れいむもたくさん頑張った。今では、他のみんなに負けないくらいご飯を
集められる。
 えいえんにゆっくりしてしまった、まりさの家族達もそうだった。優しくて、そし
てとても勇気があって、群れのどの家族よりも狩りが上手だった。だから、れいむは
自分の家族と同じか、それ以上にまりさ達が大好きだった。れいむは一人っ子だった
が、まりさのお姉さん達はとてもよくしてくれて、れいむにとっても大切で大好きな
お姉さんだった。まりさの両親も優しくて、頼りになって、れいむはお母さんが4人
もいるみたいに思っていた。
 そんなまりさ一家の中でも、彼女が一番思いやりもあって、優しくて、一緒にいる
と一番ゆっくり出来るゆっくりだ。
 人間さんがやってきたあの怖い夜のことを、れいむはきっと忘れないだろう。えい
えんにゆっくりがする日が来るまで、忘れることはないはずだ。そして、その次の朝
の様子も、忘れないだろう。
 群れのみんなは、お引っ越しをせずに済んだことを喜んでいた。あてもなかったし、
この辺りは美味しい草さんがたくさん取れる場所が、あちこちにあるから。
 みんながれいむ達のお家へ来て、れいむにお礼を言ってくれた。れいむのおかげで
ゆっくり出来るよと笑ってくれた。お目々は痛かったけど、やっぱり自分のしたこと
は良いことだったのだと、嬉しくて誇らしかった。たくさんの人が、笑顔を見せにわ
ざわざお家まで来てくれることが嬉しかった。
 ずっと泣いていたのは、両親と……まりさだけだった。
 ごめんね、ごめんねと、三人とも泣きながられいむに謝ってきた。泣かれることが
悲しくて、謝られる理由もわからなくて、れいむも泣きそうになったけど、頑張って
笑い続けた。痛くても、笑顔で居続けた。自分まで泣いちゃうと、お母さん達もまり
さも、ずっとずっと泣き続けて、お顔がふやけてしまうと思ったから。
 れいむの分まで狩りをするから。そんなことを言ってくれたのは、お母さん達以外
では、まりさしかいなかった。
 自分のお目々を、れいむにあげたい。そんなことまで言ったのは、まりさ以外には
いなかった。
 とてもとても、優しいのだ。
 だから、ドスになれるのも不思議ではないと、れいむは思っている。
 どうしてドスになれるのか、その不思議はいくら考えてもれいむにはわからないが、
まりさがドスになれることはちっとも不思議ではなかった。

「はぁ……お腹がすいたわぁ〜……」

 くすっと、笑ってしまった。今日だけで、もう何度も同じようなことを言っている。
優しいまりさは、れいむが気を遣いすぎないようにと小さな声で言っているつもりな
のだろうが、体が大きくなっただけ声も大きくなったのか、れいむにはしっかり聞こ
えていた。でも、聞こえないフリをしておこう。自分が返事をすると、今度はまりさ
が気を遣ってしまうのだから。

「ドスぅ♪ ゆっくりしていってね!」
 ゆっくりしていってね、ゆっくりしていってね、と元気な挨拶とともに、もう遊び
始めていた早起きの子供達が駆け寄ってくる。
 みんな、まりさが大好きなのだ。
 ドス化が始まる前から、まりさの側にいるだけでとてもゆっくり出来た。ドスにな
り始めると、もっともっとゆっくり出来るようになり、ゆっくり出来る範囲も広くな
った。たとえジメジメした日でもまりさの側にいるだけで、綺麗なお花畑でぽかぽか
のお日様を浴びているような……いや、それ以上に心地よく、ゆっくり出来た。
 それがわかっているから、みんなでまりさのお家を広くして、いつでもみんなで遊
びに行けるようにした。雨が何日か続くと、子供達はまりさのお家でお泊まり会をす
るのが恒例になってきている。
「ゆ〜っくりしていってね〜。でも、まりさのことはまりさって呼んで欲しいわ〜」
「「「ゆ! ゆっくり理解したよ、おっきなまりさ!」」」
「おっきなも、あんまり……うぅん、やっぱり、それでいいわ〜」
 このやりとりも、何度もされている。まりさの側にいると、ゆっくりふんわりした
気持ちになって、ついついれいむも「ドス」と呼んでしまいそうになる。
 ドスになると、ゆっくりは不思議な力を身につけられるのだと言う。どんな時でも
みんなをゆっくりさせることが出来るのも、その一つだ。
 元々、側にいるとゆっくりした気持ちにさせてくれたまりさは、やっぱりドスにな
ることが相応しかったのだろう。
 だけど、まりさはドスになりたくないと思っている。だから、ドスとは呼ばれたく
ないのだ。
「みんな。今日は、群れのみんなで話し合いをする日なんだよ。一緒に来ても良いけ
ど、静かにゆっくりしていてね?」
「「「ゆゆ! ゆっくり理解したよ、れいむお姉ちゃん!」」」

 だかられいむは、まりさを一度も「ドス」と呼んだことがなかった。

  ***  ***  ***  ***  

「むきゅ! 今こそ“特別な狩り”をすべきよ!」

 自分の発言に、群れのみんなが静まりかえった。当然だ。
 自分は、両親ともにぱちゅりー種の、言ってみれば純血の賢者なのだ。自分より賢
い者はいないし、自分ほど多くの知識を持つ者など存在しない。
 自分が頭脳となり、みんなは手足となって働けば、この群れはどこよりも豊かにな
る。頭の悪いみんなも、そのことをゆっくり理解してきた頃だろう。
「“特別な狩り”が何を意味するのか、わかって言っているのかしら?」
「むきゅん、もちろんよ。愚かな人間が独り占めしているお野菜を、取り返して来る
ことよ」
 自分の答えに、長が渋い顔をする。この優秀なぱちゅりーが、答えに困るところで
も見たかったのだろうか。だとしたら、愚かだ。やっぱり長も、ちょっとみんなより
長生きしているだけで、頭の悪さは大差ないらしい。
 だいたい、今の長がぱちゅりーには気に入らなかった。ありす種なのだ。ありす達
はレイプ魔化して、他のゆっくり達を犯し殺し、産まれようとする赤ちゃん達を食い
殺すような、そんなおぞましい存在なのだ。たまたま長はレイプ魔化することもなく、
だから誰からも嫌われずに長生き出来たようだが、所詮はありす種だ。まぁ、あれだ
け老いてしまえばレイプ魔化する確率は低いだろうが……それでも、取り柄はその長
生きしたという点だけだ。
「私は、反対だわ〜……絶対に、人間には近づいちゃいけないのよ〜」
「そうね。ドスの……いいえ、まりさの言うとおりだわ。人間には近づいちゃいけな
い。大人達はみんな、あの夜のことを憶えているわ。若い者達だって、憶えているで
しょう?」
 そうだそうだ、その通りだ、ドスと長の言うとおりだと、何も考えていない愚かな
連中が言い始める。
 まったく、嫌になる。
 ドスと言っても、まりさはドスのなり損ないだ。ちっとも大きくならないし、相変
わらずオドオドしてばかりだ。
 だいたい、あの夜のことを憶えているなんて言いながら、みんな忘れているではな
いか。

 まりさは、一人だけ逃げてきた卑怯者の、妹なのだ。

 あの夜のことは、自分だってよく憶えている。いや、群れの中で自分が一番鮮明に
憶えているはずだ。
 賢い自分は、騒ぎが起きたときもお家からは出なかった。誰にも見られないように
気をつけながら、お家の入り口から様子を伺っていたのだ。
 あの日の“特別な狩り”は、ぱちゅりー自慢の賢い両親が立案し、しかも二人揃っ
て陣頭指揮を執ったのだ。失敗するはずもなかった。
 きっと、あの卑怯者が策戦を無視して行動したのだろう。だから失敗した。だから
あの卑怯者だけが逃げてこられた。そうでもなければ、あの賢い両親の策戦が失敗す
るなんてあり得ない。愚かな人間達なんて、ぱちゅりー達の知恵と知識と賢明さには
叶うはずもないのだ。
 実際に、あの夜やってきた人間達は「これで全部」と言っていた。用心してお家に
隠れていた自分に気づきもせずに、群れの全部だと思ったのだ。きっと人間というの
は、数も数えられないに違いない。
 そして人間達は、何も出来ずに逃げ帰った。愚かで、注意力もなく、そして行動力
もない。そんな人間を恐れる必要がどこにあるのだろう
 長は、年を取りすぎたからなんでも面倒くさいと思っているのだろう。
 まりさは、意気地無しなだけだ。
 意気地無しで卑怯者の妹でも、そこそこ役には立ってきた。ぱちゅりーが豊富な知
識から、ほんの少しアドバイスをしてやると、いつも感謝して食事を自分のところへ
持ってきた。おかげで、あまり狩りをしなくてもぱちゅりーはご飯に困ったことがな
い。だから、自分の手足として使ってやることにしたのだ。
 まりさの両親や姉達も、手足だった。ぱちゅりーの両親が、優秀な手足だと褒めて
いたのだ。だが、せっかく優秀な手足だと褒めて、使ってやっていた家族の中から、
卑怯者が現れてしまった。きっと優しい両親は、みんなを信じすぎたのだろう。手足
である群れのみんなが、卑怯な真似をするわけがないと。
 優秀な自分は、疑うことを学んだ。卑怯者がいるかもしれない。そのことを忘れな
ければ、完璧な策戦が綻び失敗に終わることもないだろう。だからいつも、まりさの
ことは注意していたのだ。必要以上に、側へ寄らないようにもしていた。
 ドス化が始まり、これでさらに使い勝手の良い手足になると思っていたのに、結局
はなり損ないで中途半端に大きく邪魔な体があるだけだ。卑怯者の妹だけに、足を引
っ張るかもしれない。
 だから、ぱちゅりーは初めからまりさを策戦に加えるつもりがなかった。

「ぱちぇは、ただお野菜が食べたくて言ってるんじゃないわよ。成功間違い無しの策
戦だって、考えてる。何よりたくさんのお野菜があれば、群れが豊かでゆっくりした
ものになるのよ」
「でも〜……人間さんには近づいちゃいけないって……」
「まりさは黙ってなさい!」
「でも〜……」
「ぱちゅりー……策戦と言っても、あなたは人間の村がどういうものかも知らないん
じゃなくって?」
「たとえ長でも、この賢者ぱちゅりーを侮辱することは許さないわよ。人間の村のこ
とくらい、よく知ってるわ」
 両親が、あの日の“特別な狩り”の準備を整えるために、群れのみんなを使って調
べ上げたことを、ぱちゅりーはちゃんと聞いていた。それは、今でもきちんと憶えて
いる。
 群れのみんなに、策戦をざっとではあるが説明をする。どうせ、事細かに話したと
ころで、すぐに忘れてしまうのだ。きちんと説明するのは、後で良い。
 人間は、川を堰き止めて流れを変え、お池を造っているらしい。なぜそんなことを
するのか、愚かな人間の考えなんてわかりようもないが、その川の流れを変えている
物を、一隊が先行してまず壊す。そうすれば、元の流れに戻った川が激しく流れるか
もしれない。あるいは、お池が枯れてしまうかもしれない。どちらにしても、人間は
大慌てだ。その隙に、別の一隊が畑に生えているお野菜を取ってくる。先行する一隊
も、危ないことはない。人間が気付かないうちに壊す物を壊して、さっさと逃げてく
ればいいのだ。
 説明を終えてぱちゅりーがみんなを見渡すと、よくわかっていない者がほとんどの
様だった。それでも、どうやら簡単にお野菜を手に入れられるようだと、驚き感心し
ている者も多い。策戦自体がよくわからなくても、群れのみんなにも容易く出来るこ
とだという点は伝わったらしい。
「言っては悪いけど、策戦になっていないと思うわ。だって……」
「長!」
「なにかしら、ぱちゅりー?」
「こういう大切なことを話し合うとき、長は意見を言わないで審判役に徹するのが、
この群れでの決まりだったはずよ」
「……そうだったわね。では、私は黙っていましょう」
 面倒くさがりの年寄りは、黙っていればいい。どうせ、策戦を実行するのは若い者
達なのだ。
 誰か意見はないかと長が問うと、まりさがまた「人間さんには近づいちゃいけない」
と繰り返した。つい、まりさが意気地無しなだけだと言いそうになる。卑怯者の遺言
など聞く必要はないとも、言いそうになる。
 でも、それはグッと堪えた。なり損ないでも、群れのみんなはドスとして扱ってい
るのだ。そのまりさを罵れば、余計な反発を買ってしまうだろう。大切な策戦前に、
それは慎むべきだ。
「まりさ。あなたもドスの立場なんだから、私と同じよ。自分の意見を、みんなに押
しつけちゃいけないわ」
「長……」
「さぁ、私の隣に来て、みんなの意見を聞きましょう」
「……はい」
 まりさが、ズリズリとその大きな体をゆらゆらさせながら長の隣へと移動させる。
それでいい。弱気なことしか言えない意気地無しは、黙って聞いていればいいのだ。
 飛び跳ねもせずに、ズリズリとゆっくり動くまりさが長の隣で向き直るまで、ずい
ぶんと長い時間がかかったが、その間発言する者は誰もいなかった。
 それも当然のことだ。自分に反論できるほど賢い者など、いるはずもない。
「ゆっくり発言することを許してね、長」
「なにかしら、れいむ?」
「あの夜以来、誰も人間に近づいたことはないよね? だとしたら、れいむ達が知ら
ない間に人間の村も変わっているかもしれないよね?」
「そうね」
「もしかしたら、人間達もみんなでお引っ越しをするかもしれないし……だとしたら、
人間の村なんてないかもしれないよね?」
「そうかも知れないわね」
 片目を無くした醜いれいむのくせに、わかったようなことを言わないで欲しい。時
間をかけて考えて、そのくせ言うことが「しれない、しれない」ばかりだ。何も知ら
ないのなら、黙ってぱちゅりーの言うとおりにすればいいのに。
「だから、やっぱり人間の村へ近づくのは危ないって、れいむは思うよ。なにより、
れいむはえいえんにゆっくりした人の言ったことを、ちゃんと守りたい」

「この群れを救ってくれた恩人の言いつけを、ちゃんと守りたい」

 とんでもない勘違いをしている。やっぱり、れいむは頭が悪くて動きも鈍くて何も
出来ない、ゆっくり出来ないゆっくりだ。
 しかもあの醜いれいむは、誰よりも弱虫なのだ。あの夜、群れの誰よりも早く人間
に命乞いをした家族の子だ。群れのみんなが裏切り者を罵り、人間と戦おうとしてい
る間も、ずっと土下座をして自分達だけ助かろうとしていたほどだ。
 そして、愚かで注意力もなく行動力もない人間に、片目を奪われた。
 そんなれいむ一家を、翌朝には群れのみんなが嘲笑いに行っていたのを憶えている。
ぱちゅりーは、優しい上に無駄なことをしない賢明さもあるので、わざわざれいむの
お家まで行くようなことはしなかったが。
「他に、何か言いたいことがある者は、いるかしら?」
 長がそう言っても、誰も声を上げなかった。それも仕方のないことだ。常日頃から、
この群れにはぱちゅりーとまともに話し合う知性を持った者がいないほどなのだから。
 せいぜい、大賢者ぱちゅりーの手足となって働けばいい。
「ぱちゅりーは“特別な狩り”をすべきだと言い、れいむは人間には近づいてはいけ
ないと言う。みんな、賛成だと思う方へ集まりなさい」
 ぱちゅりーは、勝利を確信していた。れいむの発言は、意見といえるようなもので
もなく、しかも見当違いなのだ。
 さっそく、策戦を具体的に組み立てていく。誰を、どの役目に割り振るか。まりさ
や長はもちろん、れいむも狩りには連れて行かない。当然、行かない者の取り分は少
なくできる。

 体が大きい大食らいの取り分が少なくて済むのは、群れのみんなも歓迎するだろう。


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最終更新:2009年01月11日 13:39
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