この、ゆっくりちぇん
聞けば加工場に捕らえられたが、ずさんなメーリン印の加工場であったため
冷凍赤ゆっくりに混入し生き延びたらしい。
サイズが子ゆっくり程もあり知能もなかなか高そうなので子守役として飼ってみる事にした。
「わかるよー!お兄さんは愛でお兄さんなんだねー!」
「まあ、そんなところだ。(ゆっくりの餡子を愛でる的な意味で)」
さっそく赤ゆどもに、ちぇんをお母さんとして紹介する。
1「ゆっ!おかーしゃん!ゆっくちちていっちぇね!」
2「おかーしゃん、まりしゃとすーりすーりちてね!」
3「おかーしゃん!れいむおなかちゅいたよ!」
4「ゆ~ん!おかーしゃんゆっくちちていっちぇね!」
5「まりしゃ、みゃみゃとすーりすーりしてゆっくちねちゃいよ!」
6「ゆゆ~ん!ゆゆ~ん!」
ちぇんの方も赤ゆどもと初対面。
もともと可愛い赤ゆっくりが好きなちぇんはニコニコとしていたが
赤ゆどもを見たとたん表情がとたんに険しくなった。
れいむ種に対してである。
「ちっ」
ちぇんの口から舌打ちのような声が漏れたが空耳だろうか。
俺のほうを振り向いた時には元の笑顔に戻っていて
赤ゆどもに挨拶をする。
「わかるよー!みんないいこたちだねー、ゆっくりしていってねー!」
その言葉に心の底から喜んではしゃぐ赤ゆども
思い返せば生まれてから一度も赤ゆどもは「ゆっくりしていってね!」と声をかけられていなかったのだ。
「ゆっきゅりー!」「ゆゆん!ゆっくちー!」「ゆわぁぁあ~ん、ゆっくちちていっちぇねー!」
姉妹で体を摺り寄せながら、母であるちぇんに少しでも傍に寄りたいとダンボールの壁をカリカリと音をさせた。
それが社交辞令的な「ゆっくりしていってね!」だとしても。
その日、一日様子を見た。
ちぇんは餌の白米をよく噛んで餅の様にして赤ゆに与えた。
「おかーしゃんが、むーちゃむーちゃしてくれるごはんはおいちいよ!」
「やわらか~い!むっちゃむっちゃ、ちあわちぇー♪」
床につい、うんうんを漏らしてしまう赤ゆがいれば、ちぇんはしからずに優しくなだめてから、その掃除をした。
「おかーしゃんごめんにゃちゃい!もうれいみゅはちゃんとおちょいれでうんうんちゅるよ!」
「ゆぅ~ん!」
お昼ねしたいと言った赤ゆのため親れいむの様な子守唄も歌った。
赤ゆが眠るまで「すーりすーり」をしてあげた。
「まりしゃ、ゆっくちねみゅくなってきちゃよ・・・」
うん、これなら大丈夫そうだな。ちぇん種は面倒見がよくゲスは滅多にいないと聞く。
赤ゆどもをダンボールから出してやり、かわりにそのダンボールを逆さにして入り口をこしらえ家を作ってやった。
俺も明日から仕事にいかないといけないし、箱にいれたままではちぇんが赤ゆに餌をあげたりゆっくりさせる事ができないと思ったからだ。
しかし、俺は知らなかった。
このちぇんに秘められたれいむ種にまつわる過去を。
ちぇんは胎生妊娠によってらんしゃまとちぇんのつがいから産まれた。
らんしゃまとちぇんは互いに妊娠していたが、巣には大量のごはんを蓄えていたのであくまで計画的な妊娠だ。
通常は赤ゆっくり達を子守する母役と、餌を調達する父役に別れて役割分担をするものだが
稀に、赤ゆ達との時間を大切にしたいという理由で
冬篭り並に餌を蓄えて家族全員で子ゆっくりが外に出れるまで一緒に過ごすゆっくりがいる。
「ゆっくりしたおちびちぇんだね!」
「わかるよー、らんしゃまからうまれたからかわいいちぇんなんだよー!」
「ゆっくちちていっちぇねー!」
ちぇんは幸せだった。
優しい親らんしゃまと親ちぇんがずっと自分のそばにいてくれる。
すーりすーりもしてくれるし、口移しでごはんを食べさせてくれる。
それに、これから自分の姉妹も産まれる。
そうしたら賑やかでもっともっとゆっくりできる。
お母さん達とポカポカ陽気のお外へピクニックへでかけて、自分が姉妹の先頭を歩く
妹らんしゃまが転んだら自分がペーロペーロしてあげよう、妹ちぇんが歩きつかれて泣いていたら自分の頭に乗せてあげよう。
それから皆でお昼寝する。姉妹で寄り添ってお母さん達とすーりすーりして子守唄を聞きながら寝ていたいだけ眠る。
「こっちからたべもののにおいがするよ!」
ぽい~ん!ぽい~ん!っと大き目のゆっくりの足音が聞こえた。
「ゆっくちー!」「ゆっゆ~!」「ゆっくり~!」
その後を3匹の子ゆっくりがつづく。
巣穴の奥のほうまで来てわかった。
成体のれいむと子れいむが3匹だ。
突然の来訪者に父らんしゃまと母ちぇんは手間取った。
胎生妊娠中は満足に動けず、ちぇんを産んだらんしゃまにしてもまだ胎内に赤ゆっくりを宿している。
「ここは、れいむのおうちだよ!ぶたみたいにこえてるゆっくりはでていってね!」
「でていってね!」
「おー、ぶたぶた」
「でちぇいっちぇね♪」
4匹は家主であるらんしゃまとちぇんを豚と言い放ち
勝手にずかずかと入り込んで
お家宣言をする。
そして、冬篭り並に貯蔵していた食料に気づいた。
「ゆっ、こんなにブタみたいにこえてるくせにまだたべものをかくしもっていたよ!
これいじょうこえないようにれいむがたべてあげるね!」
「ゆっくちたべりゅよ!」
「ぶたにはもったいないごちそうだね!」
「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー♪」
本来なら上位種であるらんしゃまだが、この侵入者たちに対して何もできず、ただ赤ちぇんを自分の背後へと隠す。
しかし、一生懸命2人で貯めた食料までもっていかれては困る。
もし食料がなくなれば植物型妊娠と違って、これから産まれてくる赤ちゃんに食べさせるものがなくなるからだ。
押し黙ってやり過ごすつもりであったが母ちぇんがついに抗議した。
「それはちぇんとらんしゃまでいっしょうけんめいあつめたごはんだよー!
これからうまれてくるあかちゃんのためのごはんだからゆっくりわかってねー!」
「ゆ?」
むーしゃむしゃっと一家団欒し、他人のごはんに舌鼓をうっていたれいむ達に
その言葉はとても不快だった。
必死な形相で懇願する母ちぇんに対し
豚のくせにれいむたちに何か文句があるの?そんな表情を浮かべている。
「なにか、このぶたがゆっくりみたいなことばをしゃべったきがするよ!」
「ゆっ、なまいきだね!」
「それにれいみゅたちになにかもんくがあるみちゃいだよ!」
「ぷんぷん、なまいきなぶたにはおもいしらせないといけないよ!」
母ちぇんは、ぷくーっと膨らんでれいむ達を威嚇するが、それは逆効果となった。
ガブリっと母ちぇんの2本の尻尾のひとつを子れいむが噛み付く。
「ニャ”!」
っと悲鳴をあげたやさき、今度は親れいむが鼻先に体当たり。
「ゆべっ!」
他の2匹の子れいむは手当たり次第に噛み付いて、完全にリンチだ。
「やめてください!ちぇんをゆるしてください!
わたしたちがなにかわるいことをしたのならあやまります、ごはんもあげます!」
らんしゃまが動けないまでも身をよじりながら、ちぇんを許すように謝罪するが、それを聞き入れるれいむ達ではなかった。
「ぶたがゆっくりのことばをしゃべるんじゃないよ、ブヒーでしょ!ぷんぷん!」
「あちゃまのわるいぶただね!」
「これはせいさいだよ!」
「せいいがまったくつたわらないよね!」
なおも母ちぇんへの暴行はつづき、顔はパンパンに膨れ上がって泡を吹いて気絶していた。
それはひょっとしたら母ちぇんにとって幸せだったかもしれない、これから起こる事を見ないで済んだのだから。
母体である母ちぇんの生命餡子レベルが低下したことにより、その危機を胎内の子らんしゃまが感じ取り出産がはじまった。
胎生妊娠の場合、胎内で子ゆっくりサイズまで成長してからの出産となるが、ゆっくりはピンポン玉のサイズ程あれば自我を持つ。
母体に危険がせまっている場合、子ゆっくりサイズまで成長していなくても自ら外に出ようとする事があるのだ。
気絶した母ちぇんの産道は緩みきり、胎内の赤らんしゃまが顔を覗いた。
そこには親れいむの顔。
「ゆっ・・・」
自分の親を見つけて、ゆっくりしていってね!と挨拶をしようとしたのだろう。
親らんしゃまにも「ゆ」という一言だけが聞こえた。
ところが、次の瞬間その言葉を発しようとした赤らんしゃまがどこにもいないのだ。
父らんしゃまは、何が起こったのかわからず
目を見開いて、「ゆっ?ゆっ?」っと赤らんしゃまを探す。
みれば親れいむがさっきまで大口を開けていたのに今は口を閉ざしていた。
「もごもごもご・・・むーしゃむーしゃ、しあわせ~♪」
親れいむは母ちぇんの産道からできてたばかりの赤れいむを、まるで食後のデザートとでも言わんばかりに味わっていた。
「おちびちゃんたち、ここに口をつけてゆっくりしていれば、おいしいあまあまがでてくるよ!」
「あまあまたべちゃいよ!」
「れいむもれいむも!」
「ゆっくりじゅんばんでたべようね!」
父らんしゃまは動けない自分の体を呪った。
母ちぇんに「いっしょにうめばもっとゆっくりできるよ!」と提案してしまったことを呪った。
これは夢、悪い夢
目をつぶってただジっとして耐える。
それ以外できる事は何もない。
10分か20分かどれくらいの時間が過ぎたのだろう・・・
つらい時間はとても長く感じ、実際にはわずか数分程しか時間は流れていなかった。
「ぴぎゃゃやぁああああ!」
耳をつんざくような悲鳴で父らんしゃまを恐る恐る目をあけた。
「この、あまあま、ましゅまろみちゃいでおいちーよ!」
侵入者の4匹の中でも一番小さい、赤ゆっくりに近い子れいむが豆粒のような塊をほうばっていた。
それは、赤らんしゃまの目玉。
産道から出てきたばかりの2匹目の赤らんしゃま。
産まれてはじめて味わう苦痛に悲鳴をあげて地面に転げ落ちる。
そこには父らんしゃまと母らんしゃまが敷き詰めた柔らかい葉のお布団が敷かれていたが
目を抉られた苦痛の前に何の救いにもならなかった。
「いちゃいよ~!らんしゃまのおめめがいちゃいよ~!まっくらでにゃにもみえにゃいよぉおお!」
「ゆっ、きちゃない」
足元に転がった目のない赤らんしゃまはコロコロと別の子れいむの足元へ
目の場所が黒い空洞で気持ち悪いと感じた子れいむは「きたない」と言ってそれを避けた。
「こんなのたべれないよ!ふみつぶそーね」
「やめぇてぇえええ!」
父らんしゃまは涙を流して懇願する。
それを親れいむが「ブタはぶひーでしょ?」といってこづいた。
今はともかく救いにすがるしかない。
父らんしゃまはプライドもなにもかもかなぐり捨てた。
「ブヒー!ブッヒィィイイ!」
自分はブタです。
だから、ちゃんとつくったらんしゃまの子供を殺さないで
なんでも言うことを聞きます。ごはんも全部食べてかまいません、このおうちもあげます
だから・・・だから・・・
ビチッ
少し大きめの子れいむが虫でも踏みつけるかのように、目を失った赤らんしゃまを潰した。
「ゆっゆっ~♪」
子を潰された親らんしゃまがブタの鳴きまねを一生懸命する表情のまま静止していて
それがあまりに滑稽で親れいむも子れいむもドッとふきだす。
巣穴は凄惨な光景にもかかわらず、外から人間が覗いたのなら明るい一家団欒のように見えただろう。
「ユ・・・ユルサナイ・・・」
「ゆっ?かわいいかわいいれいむたちになにかいった?」
「ぶひーでしょこいつめ!あたまのわるいゆっくりはさんぽあるいたらもうわすれるからきらいだよ!」
「ゆっくちりかいちてね!」
「それから、はやくおかしをうんでね!」
今度は父らんしゃまに対して暴行が始まる。
複数あるしっぽをかじって、味が甘すぎるだのイマイチだの言い合ったり
目元を狙って執拗に体当たりをしたり、産道から赤ゆっくりを取り出そうと舌をねじいれたりした。
母ちぇん以上の苦痛だろうが、父らんしゃまは悲鳴ひとつあげずに、かわりに死の間際にのろいの言葉を遺した。
「ユルサナイ・・・オマエタチハ・・・ニンゲンニヨッテ・・・ソノショウガイ・・・クツウノママ・・・マクヲトジル・・・」
上位種であるらんしゃまには他のゆっくりにはない不思議な力があるという。
それが呪いであるのか、それとも未来を予知するものなのか、結局は死に際の負け惜しみだったのかはわからない。
あまりの形相に気味悪がり、らんしゃまを食す気も失せたれいむ達は巣穴かららんしゃまの屍骸を引っ張り出して綺麗にしようとしたが
うんともすんともビクとも動かない。
死んだまま、まっすぐとれいむたちを見据える目は空洞になっても尚、巣穴のどこへいても目線が合っている気がした。
「なんだか、きもちわるいよ!」
「おかーしゃん!れいみゅきょわいよ!」
「こんないえもういらないよ!」
「ゆっくりできないよ!」
そして、とうとう「もう、おうちかえる!」と言い出し巣を放棄した。
こうして、生き残った赤ちぇんは巣穴の僅かばかりのごはんと、そして半死半生の母ちぇんによってその後も命を永らえ今に至る。
2「おとーしゃんいきゃないで!」
3「れいみゅずっとおとーしゃんといっしょにいたいよ!」
4「ゆっく・・・おとーしゃんがどこかいっちゃう・・・ゆえぇ~ん!」
5「しゅーりしゅーり!かべがじゃまでおとーしゃんにとどかにゃいよぉ!」
6「ゆぅ~ん!ゆゆぅ~ん!」
翌日、仕事へ行くために身支度を整えると赤ゆどもが騒ぎ出した。
服を着替えるとどこかへ行ってしまうという事を覚えたのだろうか。
1「ゆっ!みんにゃ!おとーしゃんのじゃまをしちゃだめだよ!
おとーしゃんはみんにゃのためにかりにいくんだよ!れいみゅたちもおおきくなったらいっしょにかりにつれてってもらえるから
いまはゆっくりまつんだよ!」
1番れいむはさすがしっかり者だ。
ひょっとしたら、この1番れいむがいれば親代わりのちぇんは別にいらないかもしれないが
もし、他のれいむやまりさが勝手にごはんを食べたり部屋を荒らしたりした時に体の大きさが同じでは止めることができないだろう。
「それじゃ、ちぇん。あとは頼んだぞ。餌はチビどもに届かないように少しだけ段差のある皿に盛っておくから
ちゃんと分けてやってくれな。あと、部屋を荒らしたりしたら殴ってもいいぞ。」
「わかるよー!ちぇんはゆっくりりかいしたよー!」
ダンボールの中に餌を入れれば赤ゆどもは好きなだけ食べてしまう。
かといって子ちぇんはダンボールの壁を乗り越えて中の赤ゆに餌を与えられるほど大きくない。
だからダンボールから赤ゆどもを出してやり、家をちぇんに任せて仕事へ行った。
「いまからちぇんがおまえらのおかーさんだよ!わかるねー!」
2「ゆぅ?おかーしゃんにゃの?」
3「おかーしゃん、れいみゅおにゃかすいちゃよ!」
4「おかーしゃん!おかーしゃん!」
5「まりしゃ、おかーしゃんとしゅーりしゅーりしちゃいよ!」
6「ゆぅ?ゆぅ?」
1「おとーしゃんがおかーしゃんだっていってたからおかーしゃんだね」
ー お昼 ー
「はい、それじゃあれいむはそっちにならんでねー!まりさはこっちだよー!」
これからご飯を分配してくれるんだと思った赤ゆどもは、ちぇんの言うとおりに並んだ。
まりさが前列に3匹、2番5番6番
れいむが後列に3匹1番3番4番
「まりさはこれくらいで十分だよー!」
ちぇんは皿からごはんを口にいれると、赤まりさの前にごはんを吐き出した。
それはお兄さんが食べさせてくれる量の半分。
2「おかーしゃん、まりしゃたちこれじゃたりないよ!」
5「しゅくにゃいよ!ぷんぷん!」
6「ゆぅ~ん!ゆぅ~ん!」
1「おかーしゃん、まりさたちにちゃんとごはんあげてね!」
3「れいみゅもごはんたべたいよ!れいむにはまりさのばいちょうだいね!」
4「れいみゅもおにゃかすいたよ!」
ちぇんは後列のれいむ達に視線を移すと、ぴこぴこと歩いた。
「れいむは、はをくいしばってねー!」
1「いちゃい!」
3「ぴぎゃ!」
4「ゆっ!」
ちぇんはれいむ達に体当たりをお見舞いした。
1番れいむが「なんで?」という顔をしたので、もう一発
おまけ。
1「ゆべっ!」
「おまえたちはブタだよ!ごはんがほしければブヒーってへんじをしてねー!」
2「ゆっ!れいみゅたちをいじめにゃいでね!まりしゃのいもうちょだよ!」
5「まりしゃのごはんちゃりにゃいよ!もっとちょうだいね!」
6「ゆゆー!ゆゆー!」
「ごはんがほしければ、ちぇんのいうことをきいてねー!まりさたちにはれいむのぶんもたべさせてあげるよー!」
・・・つづく
過去の作品
最終更新:2009年02月01日 20:58