輝夜×ゆっくり系2 輝夜の暇つぶし

永遠亭に棲む蓬莱山輝夜にはよい暇つぶしがある。
巷に溢れるゆっくりと遊ぶことだ。
そのために無数の妖怪兎、通称イナバに言って特別の遊戯室を設けたほどに熱を上げている。

ゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙がイナバによって連れてこられた。
「ご所望のゆっくりを持ってまいりました」
「ご苦労様。下がりなさい」
ここは輝夜の部屋。
「ゆっくりしていってね!」
「ゆゆ?ここはゆっくり?」
輝夜が目の前のゆっくり二匹にご馳走の並んだ皿を置いた。
その量はゆっくり二匹程度の腹などたやすく満たせるほどだった。
「っゆ~♪おいしそうなにおい!!」
「くれるの?くれるの!?」
輝夜は涎を垂らさんばかりにテンションの急上昇した二匹に、夜も照らされるような笑顔で頷いた。
「これらは貴方たちのために拵えられたのよ。存分に味わって頂戴」
「ゆ!ありがとう!きれーなおねーさん!!」
「きれーでゆっくりできるおねーさんだね!!」
がつがつと卑しさを丸出しにして食事に飛び掛り、むさぼる。
一口食べると、
「しあわへ~~~~」
と叫び、二口目には、
「うっめ!!めっさうんめぇ!!」
となり、さらに三口目には全てがなくなっていた。
あれだけあった食事が三口目には忽然と、煙のように消えてしまった。
ゆっくりたちは困惑している。
対して輝夜はころころと珠を転がすような笑い声を上げていた。
「ゆ!?あれ?」
「ど、どうしてなくなっちゃったの!?」
「きれーなおねーさん!ごはんがなくなっちゃったよ!!!」
「どこ!?まりさのごはんどこーーー!!」
泣き乱れながら輝夜に訴えかける二匹。
一口含んだだけでも天上の味わいを感じたのだ、それがたった三口でなくなってしまったのだ。
泣き叫ぶのも無理はない。
「あらあら、よく思い返して御覧なさいな。全部貴方たちが平らげてしまったわよ」
輝夜の言葉に疑問符を浮かべながらも、ゆっくりと思い返す二匹。
たしかに豪勢な食事を食べた記憶がある。それを証明するかのように、全身に満腹感がある。
ご馳走はとつぜん消え去ったのではなく、しっかりと食べ終わっていたのだ。
だが、それらの美味しさを味わった記憶だけがない。
がつがつと食べて、お腹が膨れていく記憶が確かにあるが、味を思い出せないために実感がない。
まるで、別人がうめぇもんを腹いっぱい食べているところを見せられているような、そんな感覚。
「ど、どぉして~~~!?」
「うめぇもんが、うめぇもんがぁ!!」
二匹が泣き叫ぶ。
輝夜はそれを見てにんまりと笑っていた。

種明かしをすると、これは蓬莱山輝夜の持つ能力に起因する。
永遠と須臾を操る程度の能力。
それを用いて、二匹がご馳走を味わっている時間を、須臾に変えてしまったのだ。
須臾とはとても短い時間のことを指す。
刹那ほど短くないが、それでも一瞬と呼ぶにはふさわしい。
ゆっくりたちの食事をするという経過を吹ッ飛ばし、食べ終わったという結果だけを認識させたのだ。
「どう、美味しかったでしょう?」
「ゆ、ゆっくり~」
「ゆぅ~」
答えられない二匹。気が付けば食べ終わっていて、味わった覚えがないのだ。返答のしようがない。
しっかりと食べてしまったのだから、輝夜に文句をつけることも出来ない。
「あら?美味しくなかったかしら?それとも、貴方たちにはわからない味だったのかしらね?」
「ゆ!そんなことないよ!ゆっくりおいしかったよ!!」
「そうだよ!まりさたちはゆっくりとあじがわかるんだよ!!」
「それは良かったわ」
そういうと、輝夜は二匹を抱えて部屋を出た。
「ゆ?きれーなおねーさんどこいくの?おへやでゆっくりしないの?」
「しょくごはゆっくりしたいよ!」
「食後にゆっくりすると、牛になっちゃうわよ」
「うし?」
「うしってなぁに?ゆっくりおしえてね」
「角が生えてる生き物よ。牛がゆっくりしてると、人間に殺されて食べられてしまうの」
「ゆ゛!たべられる!?ゆっくりできないよ!」
「いやぁ!!しょくごにゆっくりしない!!」
とたんに怯えすくむ二匹。
とても愉快そうな輝夜。
「大丈夫よ。これから、貴方たちをゆっくりさせないための遊戯室へ行くのだから」
「しょくごはゆっくりしたくない!ゆっくりさせないでね!!」
「ゆっくりさせないでね!」
「ふふふ」

道中通りかかった赤い目のイナバに、部屋の片付けを命じて、輝夜はその部屋に着いた。
『ゆっくり遊戯室』
と達筆なんだかそうでないんだか判別のつかない字で書かれた看板が掲げられている。
毛筆のそれは、墨痕淋漓として力を感じるが、幽かなたおやかさも持っているというよく分からない一筆だ。
輝夜が戯れに書いたものであった。
中に入るとすでに一匹がトランポリンで遊んでいた。
仲間の元に駆け寄っていく二匹。
その一匹はサクラだった。いや、サクラとはいえないかもしれない。それもここで死ぬのだから。
ぽよんぽよんと跳ねる三匹。
このトランポリンは円形のもので、表面にゆっくりの顔を模した模様が描かれている。
材質は永琳謹製の特殊素材。どれだけの衝撃をも吸収し、跳ね返すと豪語していた逸品だ。
だからどれだけ高さを伸ばそうとも、優しく受け止め、かつまた飛ばすことが可能だった。

きゃっきゃっと楽しそうに遊ぶ三匹。
その高さはすでに25メートルをゆうに超えていた。
サクラが動いた。
そのゆっくりは、輝夜の連れてくる二匹と遊び、しばらくしたらトランポリンから外れるように飛べと命じられていた。
報酬はご馳走と美人なゆっくりだ。
食欲と色欲に支配されたそれは躊躇うことなく命じられたとおりに動いた。
「ゆ!?どこいくの?」
「ゆっくりしていってね!」
上下に跳ねている二匹はあらぬ方向へ跳び出した一匹を見守っていた。
ぐしゃり。
「あ」
「え」
潰れた。やたらと平べったくなっている。
それを見て震えながら跳ねる二匹。
落下し、トランポリンに弾かれ跳びたった瞬間、輝夜は備え付けのボタンを操作し、トランポリンを床下に収納した。
30メートルの高みに到達したゆっくりが見たものは、トランポリンが無くなった硬い床だった。
視界にはべったりと張り付いているゆっくりの姿が見える。
末路を悟った二匹は顔面をゆがめた。涙が溢れる。
数秒後の未来を思うと叫びが止まらない。
「じにだぐないっ!!ゆっぐりじだいっ!!!あああああああ」
「ぎれーなおねーざん!!たずげてっ!!まぢざだぢをたづげで!」
輝夜は哂っていた。口を三日月のように歪めて。
「もっどゆっぐりぢだがっだよぉぅぅうううぶぎゅぅっ!」
「ゆっぐりぢだげっががごれぇええぇぇぇっぶりりっ!!」
二匹は全てをブチ撒けて死んだ。


10秒、20秒、30秒、1分が経過したが、いまだに床に叩きつけられないことに二匹は気づいた。
断末魔の叫びは口から出続けているし、視界には潰れた同胞と、きれーなおねーさん。さらに隣にはおともだちがいる。
だがその体は固定されたように宙に捕らわれていた。
いや、わずかだが、ほんとうに微々たるものだが、ゆっくりと、じつにゆっくりと落下しているのが分かる。
なにが起こったのかはわからないが、自分たちはゆっくりと落ちていくらしいと悟った。
口は叫び続けているから喋れないが、意識はいつもどおりだ。ゆっくり落ちるのならばゆっくりできるだろう。
勢いがないのならば、潰れはしないだろう。そう思った。誤りであった。

そして1時間が経ち、1日が経ち、1年が経ち、100年が経った。
やっと、地面についた。これでゆっくりできる。二匹は老いさらばえた精神で安心した。
体が接地した。
瞬間、走る激痛。叩きつけられ、皮膚が裂けて行き、中身にまで被害をもたらしていく様をゆっくりと味わっていく。
二匹はその苦痛に声を出すことすら出来ない。
いや、痛みを訴えようとしても、この100年間ずっと叫び続けていた断末魔がまだ続いていたのだ。
「ゆげっ!いだいゅ!ゆっぐりいだい!!いだいいだいいだいいだい!!だじげでっ!!おねーざぁん」
「ゆぎゅうっ!!いやだよ!いたいよぉ!!ゆっぐりでぎないよぅ!!!ぎれーなおねーざん!!!たじげでぇぇぇ」
意識の声が痛みをうったえ叫ぶ。ゆっくりと痛みが広がっていく。
「ごろじでぇっ!!ゆっぐりざぜないで!ごろぢでぇっ!!!い゛ぎぃい゛い゛ぃぃぃ!!」
「ゆっぐりじだぐない!!ばやぐじにだいぃいっ!!!あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
衝撃がゆっくりと侵食し、皮は潰れ、割け、飛び散りながら中身がぐしゃぐしゃに揺れる。
その苦痛を10年味わって二匹はやっと潰れた。やっと死ねたのだった。

輝夜はその様子を、顔を紅潮させて見守っていた。
二匹が落下し、潰れて死ぬまでの数秒を永遠にまで引き伸ばしていたのだ。
傍目にはただゆっくりが激突死したとしか見えないだろうが、輝夜と二匹にはそれが110年に及ぶものであった。
「あは、あはは♪あはははっはは!あははははは!あははははははは♪」
愉快痛快だと言わんばかりに腹を抱えて笑っている輝夜。
ただの暇つぶしに100年以上も浪費するという贅沢な娯楽。
実質数秒だから、本当に暇つぶし。
蓬莱山輝夜にだけ許された暇つぶしであった。


おまけ
永遠亭の地下に巨大な施設がある。
ゆっくり生産場だ。その敷地には、あらゆる種類のゆっくりが並んでいる。
れいむ、まりさ、みょん、ちぇん、れみりゃ、ふらん、などなどだ。
みな一様に3メートルになんなんとする巨大ゆっくりだが、それらは壁にがっちりと固定されている。
これでは、いかな超重量級と言えど身動きひとつ出来ない。
さらに体中には無数のチューブがくくりつけられている。スパゲティ症候群もかくやという様相。
それらは栄養剤の点滴であったり、睡眠導入剤であったり、覚醒剤であったりした。
この施設の肝は産卵誘発剤だ。
それにより、定期的に一定数のゆっくりたちを生み出している。
産道には柔らかく、かつ丈夫なカテーテルが挿入されており、人工的に臨月を迎えた赤子たちはそこを伝って出産される。
そこを転がって出た子ゆっくりは産声を上げる間もなくベルトコンベアで輸送され、イナバたちによって選別される。
基準は健康状態だ。
劣悪なものは即座に潰し、栄養剤の点滴の材料に回される。
優良なものはそのまま育成されて輝夜の玩具となる運命だ。
巨大ゆっくりはたまに夢うつつに喋ることがある。覚醒剤の効果が起因しているかもしれないとは、永琳の言。

「ゆっくりできるいいこにそだってね」


終わり。

前半は
『空の雲はちぎれ飛んだ事に気づかず!消えた炎は消えた瞬間を炎自身さえ認識しない!』
『結果』だけだ!!この世には『結果』だけが残る!!
で、後半は
「い…痛ぇ!鋭い痛みがゆっくりやってくるッ!うおあああああああああ」
って感じ。

著:Hey!胡乱

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最終更新:2008年09月14日 05:28
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