バスケの人からのお題SS 「ゆかりんとゆゆこ」
ある山に住む
ゆっくりの群れの中、二匹のゆっくりは群れの真ん中にある岩の上に乗っかって日向ぼっこを満喫していました。
「きょうもいいてんきねぇ……」
「そうねぇ……」
吹く風は少し冷たいけれど、二匹は気にすることなく陽の光を浴び続けています。
太陽の光は暖かく丸い体を包んでくれて、二匹の瞼は段々閉じていきました。
まだお日様は高い所にあるけれど、お昼寝するには気持ち良い時間です。
だが、二匹は眠らせてもらえませんでした。
「ゆっくりしすぎだよ!!」
後ろから大きな声で叫んだゆっくりまりさは、そのまま日向ぼっこを楽しんでいた二匹に体当たりをしたのです。
体当たりをされた二匹はそのまま岩から落っこちて、顔を地面へとぶつけます。
「ゆかりもゆゆこもゆっくりしすぎだよ!! もうそろそろふゆになるんだからごはんあつめなきゃだめだよ!!」
岩の上から体当たりをしたまりさは怒鳴り散らします。このまりさは山に住むゆっくりの群れの長でした。
長として群れのゆっくりの面倒をみているまりさですが、自分の言うことを聞かないこのゆかりとゆゆこに苛立っているのです。
元々この二匹は長まりさの群れの仲間ではありません。この食料が豊かで安全なゆっくりプレイスを二匹で独占していた悪いゆっくりだとまりさの群れに思われていました。
そんな二匹を長まりさは勝手に群れの仲間に入れてやった事にして、二匹を
冬篭りのご飯集めの手伝いをさせようとしました。
勿論二匹はそんな事をする訳がありません。穏やかにゆっくりしてきたのに、今までのようにゆっくりできなくなる事は嫌でした。
最初の頃はまりさもこんな体当たりはせず、言葉だけで仕事をするように頼んでいました。
しかし、ゆかりもゆゆこも言うことを聞かず、長のまりさは暴力を二匹に振るうようになりました。
長まりさだって暴力に訴えるような事を本当はしたくはありません。でも、いう事を聞かないこいつらが悪いのだと考えるようになりました。
せっかく群れの仲間に入れてあげたのに、せっかく独り占めしていた事を皆で許してあげたのに。
そんな風に長まりさは考えるようなると最近は、二匹がゆっくりしている姿を見ると長まりさは容赦なく体当たりをするようになってしまいました。
そこには、自分だってゆっくりしたいのに好き勝手にゆっくりしているゆかりとゆゆこの姿に我慢できないという想いもあったのかもしれない。
さて、そんな長まりさに毎日理不尽な暴力を振るわれているゆかりとゆゆこ達ですが、今は地面に落っこちた時に付いた顔の土を舐め合っています。
「あら、こんな所にもついてるわよ」
「ありがと、ゆかり」
のんびり時間を掛けて丁寧に顔についた土を舐め取っていくゆかりとゆゆこ、そんな姿を見てまたまりさは怒り出します。
「ゆっくりしてないでごはんをあつめてね!! ふゆのあいだにごはんたりなくなってもまりさもみんなもわけてあげないからね!!」
まりさはそう怒鳴ると、ピョンピョン跳ねてどこかへ行きました。長である為、自分も食糧を集めに行くのです。
残されたゆかりとゆゆこですが、再び岩の上へ登ります。せっかくこんな良い天気な日に日向ぼっこをしないのは勿体無いと思ったからです。
ゆかりが踏み台になり、岩に登ったゆゆこが上からゆかりを引っ張りあげます。
先ほどまでいた位置に戻ると体を寄せ合い、陽の光に包まれながらゆかりとゆゆこはすやすやと眠り始めました……
食糧集めから長まりさはが戻ってくると、二匹が岩の上で眠っている姿を見つけました。
あんなに怒ったのに、どうして言う事を聞かないのか…… もうまりさには我慢できませんでした。
思いっきり飛び上がり岩の上へ乗ると、昼間の様に後ろからゆかりとゆゆこに体当たりをして叫びます。
「もうまりさは我慢できないよ!! まりさのいうことがきけないならここからでていってね!!」
長であるまりさからすれば、本当は仲間を追い出すなんてことはしたくありません。
でも、食糧を集めないでただゆっくりし続けるゆかりとゆゆこは追い出す事に決めました。
群れの真ん中でゆっくりしてばかりいる二匹の姿を見て、まだ幼い子ゆっくり達もずっとゆっくりするようになったら困るからです。
ゆっくりの群れは助け合う事で成り立っている。働くゆっくりがいるから皆がゆっくりできる事に繋がるとまりさは考えています。
それなのに怠惰な二匹の姿を見て今の子供達が働かなくなるようになってしまったら、群れは存続できなくなってしまうとも。
群れの未来の為にも、今この二匹を追い出す事に決めました。
「しかたないわねぇ」
「そうねぇ、またあそこにいきましょうか」
長まりさの迫力に負けたのか、ゆかりとゆゆこは山道を下っていきます。
「もうここにもどってきちゃだめだよ!! どっかで野たれ死んでね!!」
ゆかりとゆゆこの後姿に向かって長まりさは声を掛けました。
二匹は長まりさにとって、せっかく群れに迎えてあげたのに恩を仇で返す駄目なゆっくりでした。
そして、これを子供たちの教育に生かそうとも考えています。お世話になったらどうすればいいのかを。
子供達の育成も、長の大事な仕事の一つだからです。
翌日、山の麓にある村にて。
大きな村長の家の縁側の下に、ゆかりとゆゆこはいました。
騒ぐことなく、静かに静かに寝ています。
「おや、今年は随分早いな」
二匹の姿を見つけた村長はポツリと呟きました。
いつもは山に住んでいる二匹は、村にとってはいつからかマスコット的な存在になっていました。
村に来ても人間に何も要求せず、いつも二匹でただ好き勝手にゆっくりしているこの二匹。
そして、この二匹が村に来たという事はある目安になっていました。
「こりゃ今年のゆっくりは性質が悪そうだ……」
村長は村の人間に仕掛けを施すよう伝えんとなぁと思いながら、家の中に入っていきます。
冬篭りの為に移ってきたゆっくりは、子供を産んで数を増やします。
それは春になってからか、もしくは冬篭りに入る前に畑の野菜を狙いだします。
この二匹が追い出されるのがこれだけ早ければ、間違いなく冬篭りに入る前に狙い始めるでしょう。
村のマスコットのゆかりとゆゆこは、村の対ゆっくり対策にも貢献しているのです。
終
こんな駄文を最後までお読みいただきありがとうございます!!
昨日の麻雀で見事に負け、バスケの人から出されたお題は「ゆかりとゆゆこ」でした。
自分の中の二匹は何も食べずにずっとゆっくりしているイメージがあります。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。お目汚し失礼!!
最終更新:2009年01月26日 10:19