家族・動物表現があります。
ゲスっぽい表現もあります。
ある所に
ゆっくりの家族が居た。
大きな木の洞の家にれいむとまりさとその子供たちが毎日ゆっくりと暮らしていた。
そしてその家の一番奥には、一匹のゆっくりれみりあがいた。
ゆっくりれみりあと言えば、捕食種として他のゆっくりからは恐れられている存在だ。
だが、その家族はれみりあと同じ家に居ながら、食べられる事もなく暮らしていた。
「うー!うー!」
家の奥で地面に転がっている羽のないれみりあが呻き声を上げた。
「うるさいよ!ゆっくりしずかにしていってね!!」
れいむが眉を顰めて怒鳴る。
「そろそろたべごろなんじゃないかだぜ?」
まりさはれみりあの方を見てかられいむに問い掛けた。
まりさに問い掛けられたれいむは品定めするようにれみりあを見てから言った。
「そうだね!きょうはれみりあでゆっくりしようね!!」
「わーい!!わーい!!」
今日はご馳走だ、ご馳走を食べてゆっくりして、一家全員でゆっくり団欒する日だ。
それを聞いた子供たちはピョンピョンと飛び跳ねたり、ゴロゴロと転がったりして全身で喜びを露にした。
一緒になって喜ぶまりさに潰されて一匹の小まりさが死んだが喜んでいる一家は誰一人として気づかなかった。
ご馳走を取るためにれいむとまりさがれみりあに近づいていくと、
れみりあは大きく口を開き鋭い牙を見せ威嚇する、だが羽が無ければ地面を這いずる
ぐらいの事しか出来ない事を知っているれいむとまりさは一向に怯まなかった。
「うーうー(笑)だってさ」
「おお、こわいこわい(笑)」
れみりあも無駄と判りながらも必死で威嚇を繰り返した。
「うー!うー!うっ!……う゛ー!う゛ー!」
れいむとまりさは、まず、れみりあの両脇についた生え掛けの小さな羽を食い千切った。
れみりあの羽は硬く食べられた物ではない、放っておいて跳べるようになっても困るので、
こうして定期的に食い千切っているのだ。
れみりあ種には驚異的な再生力がある。
時間は掛かるが、体の一部を失っても何の障害も残らずに完治させる。
普通のゆっくりもそれなりの再生力があるが、精々傷口が塞がる程度である。
さらに、その再生力に寄るものなのかれみりあは何も食べなくとも死ぬ事はない、
食べきらずに残しておけば、こうして繰り返し食料として利用できるのだ。
「む~しゃ♪む~しゃ♪しあわせー!!」
れみりあは美味しい、中には濃厚な肉汁の滴る豚肉の餡が詰まっている。
齧り付けば熱すぎず冷たすぎず、食べるのに丁度よい温度で口のなか一杯に肉汁が広がる。
大雨が降った次の日に水溜り中で溶け掛かっているれみりあを拾ってから
一家は何度もこのご馳走を食べていた。
まりさとれいむの子供、3番目の小れいむはれみりあが嫌いだった。
捕食種であるれみりあを好きなゆっくりはそうそう居ないが、この小れいむはれみりあを食べるのが嫌いだった。
なぜ、嫌いなのかというと、小れいむはある日突然気づいてしまったのだ。
れみりあだってゆっくりだ、こんなひどい事をするのはゆっくりしてない事だと。
生まれたときから家にれみりあが居て、食料として利用してきた事で、
小れいむにはれみりあに対する警戒心や恐怖心があまり無かった。
それ故にゆっくり話し合えば一緒にゆっくり出来ると思っていた。
一家団欒のご馳走の日も、両親によって食い千切られていくれみりあの姿に心を痛めていた。
だが、小れいむはその事を誰にもいえなかった。
一度、れみりあを食べたくない、ゆっくりさせてあげたいと、それと無く言って見た事はあるが、
食べたくないという言葉に家族は、食欲が無いのか?体調が悪いのか?と小れいむの事を心配し、
ゆっくりさせてあげたいという言葉には、れいむとまりさは耳を疑って何て言ったのか聞き返してきた。
その時は、適当にいい間違いとして誤魔化したが、
両親のあまりに驚いた反応は、自分は間違った事を言ってしまったのではないか、
自分は変なゆっくりなのではないかと小れいむに思わせた。
一家が寝静まった頃、
れみりあは小さなうめき声を上げていた。
何時ものように全身を食いちぎられ、ジンジンする痛みで眠る事も出来ない。
この一家につかまってからというもの毎日がこんな感じだった。
ご馳走の日から数日たったある日の夜、れみりあが痛みに体を震わせていると、
一匹の小れいむが起き上がりれみりあの元へとやって来た。
小れいむは口から虫や草を吐き出しれみりあに向かって言った。
「ゆっくりたべていってね……」
れみりあは戸惑った。こんなものを出されても如何したらいいのかわからない。
それにこの小れいむは何を考えているのだろうか、もしや毒でも入っているのだろうか。
そんな事を考えながら差し出された虫や草を見つめるれみりあ、
虫や草を食べた事はなかったが、一家がご馳走の日以外はこういった物を食べているのは知っていた。
少なくとも食べられるもの、そう思うとれみりあの体は急速にそれを求めた。
小れいむの出した虫を口に含み噛みしめると、辛いような苦いようなピリピリとした感覚が口の中に広がった。
久しぶりの感覚にそれが美味しいのかどうかは判らなかったが、虫を食べつくすと直ぐに草を口へと運び一心不乱に食べ続けた。
小れいむの運ぶ食事によってれみりあの傷は、それまでよりも早く再生する様になった。
次第に元気を取り戻すれみりあを見て、小れいむも嬉しそうにしていた。
しかし、それは結局の所、余計にれみりあを苦しめる事になった。
再生が早くなった事により一家のご馳走の日は増え、
れみりあも小れいむも苦しむ回数が増えた。
小れいむは、その事に気づいた後も食事を運び続けていた。
小れいむには、れみりあの言葉が判らず、もう食事を運ばない方がよいか、直接聞くことは出来なかった。
食事を運ぶと、れみりあは小声でうーうーと喜び、最初は無表情だったのも、いつの間にか美味しそうに食事を平らげるようになっていた。
少なくともれみりあが喜んでいるのは間違いない、という思いで食事を運び続けていた。
月日が流れ、れいむとまりさの子供が、もう大人といえる大きさに成長した頃、
大人になった小れいむは、れみりあについて思っている事を両親に話すことにした。
「れみりあをゆっくりさせてあげてね!かわいそうだよ!!」
れいむの言葉に両親はたいそう驚いた。
二人とも驚きのあまり両目が飛び出し失明してしまったが、れみりあを解放する事はなく、
れいむは変なゆっくりのレッテルをキョンシーの御札の様に貼られ、家族から奴隷同然の扱いを受けるようになった。
れいむは朝から晩まで餌集めをさせられ、家にいる時でも絶えず両親から嫌味を言われ続け、
遂には目が見えないストレスのはけ口として暴力を振るわれるようになった。
両親の目が見えない事によるストレスは溜まる一方だった。
外を散歩する事も出来ず、家の中でも不用意に動けば何かにぶつかったり転んだり、
昼も夜も判らないれいむとまりさは次第に精神を病んでいった。
楽しく話してたかと思えば急に怒り出したり、怪我をするのも構わずに暴れだしたり、
これにはれいむ以外の子供達も困り果てていた。
両親が失明してから1ヶ月もした頃には家の中は常にギスギスとした空気が漂い、
子供達は外に出かけている時間が長くなり、つがいになるゆっくりを見つけると家を出て行った。
家の中には、れいむとまりさの夫婦、奴隷のれいむ、非常食のれみりあのみとなった。
れいむは決意した、れみりあと逃げよう。
逃げて二人でゆっくりしよう。
逃げるのは簡単だった。
家にいるのは目の見えないれいむとまりさだけ、そのまま出て行ってもよかったが、
両親が寝ている間にコッソリ出て行ったのは、まだ家族の情が残っていたからだろう。
れいむは両親のために家に溜め込めるだけの食料を集めた後で、れみりあと共に家を出た。
「これで……これでゆっくりできるね!」
「う~♪う~♪」
れいむはれみりあに寄り添うように跳ねながら新しいを家を探した。
羽がまだ再生しきっていないれみりあは這いずる事しか出来ず、
れいむよりゆっくり動く事しか出来なかった、だが、れいむとれみりあの顔は満面の笑顔に包まれていた。
運のよい事に新しい家は直ぐに見つかった。
それまで済んでいた家と同じ様に木の根もとの洞で前の家よりかは若干狭いが
れいむとれみりあの2匹には十分な大きさだ。
その夜は、歩き疲れていたのもあり、家について直ぐに眠る事にした。
2匹は寄り添うようにして、もう二度と訪れないと思っていたゆっくりとした夜を過ごした。
次の日
「……ゆ~……ゆっくりしていってね!!!」
目を覚ましたれいむは元気一杯に朝の挨拶をした。
「……う~…………う~う~」
れみりあはまだ眠そうだったが、れいむが起きたのでゆっくりと起き上がった。
「ゆっくりごはんをあつめてくるよ!!れみりあはゆっくりしていってね!!!」
れいむはれみりあの分もご飯を集めるべく、張り切って外へと出かけた。
れいむを見送ったれみりあはやはり眠かったのか直ぐに二度寝に入った。
れいむ達が新しい家に来てから1週間がたった頃、
遂にれみりあの羽が治り、空を自由に飛ぶ事が出来るようになった。
「う~♪う~♪う~♪♪」
家の外で、れみりあはれいむの頭上をくるくると飛び回りながら嬉しそうに声を上げた。
れいむもそれを嬉しそうに見上げていた。なんなに嬉しそうなれみりあを見るのは初めてだ。
れいむがれみりあを見上げていると、
空を飛んでいたれみりあはれいむの元まで下りてきて、上から頭の天辺を甘噛みし、再び空へと舞い上がった。
「ゆ?ゆゆゆゆゆ!!わ~い♪おそらをとんでるみた~い♪」
一瞬戸惑ったれいむだったが、それまで見た事のない空からの眺めに直ぐに心を奪われた。
おそらく普通のゆっくりであれば一生に一度あるかないかの体験である。
「わ~い♪わ~い♪」
れいむとれみりあは、夜になるまでゆっくりと空中散歩を楽しんだ。
巣に戻った2匹は何も言わずに頬擦りを始めた。
翌朝、れいむの頭からは蔦がのび、そこには小さな小さなれいむとれみりあの子供が実っていた。
その日から、れいむが家にのこり、れみりあが食べ物を集める事になった。
れいむは蔦に実った子供たちとれみりあを見送り、れみりあはれいむと生まれてくる子供達の為に一生懸命食べ物を集めた。
れみりあが食べ物を集めるのにもすっかりなれた頃、
二人の子供達が誕生の時を迎えようとしていた。
蔦の一番先端に実っているれいむがプルプルと震えだす。
れいむとれみりあが、生まれてくるのを今か今かと見つめていると、
プチッという音と共に蔦から離れ地面へと落ちた。
地面へと落ちた小れいむはまだ目を閉じたまま、
すこしだけ震えている小れいむを、れいむとれみりあはじっと見守っていた。
体をモゾモゾと動かし、長い長い眠りからさめるように小れいむは目を開いた。
「…ゆ…ゆっくぃ……ゆぅ………ゆっくりしていってね!!!」
言えた、初めてのゆっくりしていってね、この瞬間小れいむはゆっくりれいむとしてこの世界に誕生した。
「ゆぅうう!とってもゆっくりしたあかちゃんだよ!ゆっくりしていってね!!!」
れいむは目に大粒の涙を溜めながら喜びの声を上げた。
「うー♪うー♪」
れみりあは羽をパタパタとさせて喜びを表現した。
その後、最初の小れいむに続くように次々と子供たちが産まれた。
小れいむが3匹、小れみりあも3匹、総勢8匹の大家族となった。
「おかさん!おなかすいたよ!」
生まれたてでお腹が空いている小れいむ達が言った。
「うー!うー!」
小れみりあ達もお腹が空いている。
れいむとれみりあは、待っていましたと言わんばかりに、
この日の為に集めておいた食料を子供たちの前に差し出した。
どれもこれも、れいむとれみりあによる選りすぐりのご馳走だ。
「ゆっくりたべていってね!」
小れいむ達は差し出されたご馳走に跳びつく様に口をつけた。
それに続いて小れみりあ達も目の前のご馳走に飛びついた。
む~しゃ♪む~しゃ♪しあわせー!!
2口、3口と、小れみりあ達は飲み込むようにあっという間に食事を終えた。
あっという間の事に、れいむもれみりあも、食べられた小れいむも、小れいむが食べられている事に気がつかなかった。
「ゆ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛う゛う゛う゛!!と゛う゛い゛う゛こ゛と゛!!!!」
小れみりあ達が小れいむ達である事を、ようやく理解したれいむは泣き叫ぶように言った。
れみりあも同じ様に理解したが何もいえなかった。
「ゆっくりせつめいしてね!ゆっくりせつめいしてね!!」
れみりあを問い詰めるれいむは、これはきっと見間違いだ、
小れみりあ達が手品かなにかで小れいむ達はどこかに隠れているんだ、
そうだ、そうに違いない、そう思ってれみりあを問い詰めた。
問い詰められたれみりあは、れいむの問いに対する答えを持つには持っていた
それもそうだ、れみりあ種にとってご飯と言えば他のゆっくりだ。だから目の前の小れいむ達をご飯だと思ってしまったのだ。
だが、その事をれいむにいえず、れみりあは声を詰まらせた。
お腹の膨れきらない小れみりあ達は、れいむの上をクルクルと回るように旋回し始めた。
れみりあには、次の獲物はれいむなのだと判った。このままではれいむが危ない、
しかしれみりあとして他のゆっくりを食べるのは当然の事、
れいむを守るか、小れみりあの好きにさせるか、れみりあは究極の2択を迫られた。
れみりあはれいむを選んだ。
れいむの上を飛んでいる小れみりあ達を羽で叩き落し、口を広げキバを見せて威嚇する。
叩き落された小れみりあ達は、どうしてこんな事をするのといった瞳でれみりあを見つめたが、
れみりあはそれを冷たい瞳で睨み返した。
そして小れみりあ達の瞳も、親であるれみりあと同じ冷たい物に変わった。
「うー!うー!」
最後に一度、大きく叫んでから小れみりあ達は家を後にした。
「どうして……どうしてこんなことに………」
2匹だけになった家の中にれいむの声が消えた。
ある木の洞の中
「れいむ!れいむはいないの!はやくでてきてね!!」
一匹のれいむがあたりに撒き散らす様に怒号を放った。
「れいむ、れいむはもういないんだぜ、うるさいからしずかにするんだぜ」
隣にいたまりさがれいむをなだめるが効果はまるで無かった
「れいむ!まりさがごちゃごちゃうるさいよ!!れいむ!れいむ!れいむはどこなの!!!」
れいむは相変わらず隣の家にも聞こえそうな大声で怒鳴り続けた。
「やれやれなんだぜ……」
まりさはいつもの事といった様子で足元の土を口に運んでいた。
「これうっめ、これめっちゃうめぇ」
その時、3匹のゆっくりがその家の中に入ってきた。
「れいむ!れいむなの!?れいむならはやくごはんをもってきてね!!れいむじゃないならはやくでていってね!!!」
うーうーと鳴く3匹のゆっくりは、後に『赤い三連星」として恐れられる3匹のれみりあだった。
作者:れみりあ大好きあき
最終更新:2009年02月01日 21:03