ゆっくりいじめ系2125 大往生

とある豊かな森の奥深くに、静かに暮らす二匹のゆっくり一家が居た。
この親ゆっくりのゆっくりゆかりんはゆっくりにしては相当長生きしており、
既に自力で餌を取りに行く事も出来ず、子供のゆっくりらんに面倒を見て貰っていた。
元々は下の子であるゆっくりちぇんと一緒に、二匹でゆかりんの世話をしていたのだが、
ちぇんは長雨が続いた時に巣の中で跳ねて遊んでいる際、うっかり壁に激突して死んでしまった。
それ以降らん一匹で食糧の備蓄とゆかりんの世話を全てこなしていた。
ゆっくりの天敵になるような動物が少なく、食糧が豊富な森に住んでいるからこそ、辛うじてこの生活は成り立つのだった。
だが、そんな大変ながらも幸せな生活にも終わりが近付いていた。



ある晩、寝る前にゆかりんはらんに宣言した。
「らん、よくきいてね。ゆかりんはもうすぐずっとゆっくりすることにするよ」


ずっとゆっくりする。これはゆっくりに取っては、死ぬという意味合いの言葉である。
特に外敵に襲われたり飢えたりして死ぬのではなく、天寿を全うするという場合に使われる。


らんもその時が近いと薄々感じていたのか、特に取り乱す事も無く、静かに問いかける。

「あとどれくらいいっしょにゆっくりできるの?」
「おひさまがあとさんかいのぼっておちるころだよ。そしたらゆかりんはずっとゆっくりするよ」
「あとさんかい……」
「なかないでねらん。ゆかりんはらんといっしょにすごせてとってもゆっくりできたよ」
「うん……らんもおかあさんとくらせて……すっごくゆっくりできたよ……!」

その晩、二匹はぴったりと寄り添って眠った。



翌朝、いつものように二匹で朝食を済ませて、らんは狩りに出かけた。
本当は残り少ない時間をずっとゆかりんと過ごしたかったのだが、
いくら森が豊かだとは言ってもそんな風にのんびり過ごせる程余裕がある訳でもない。
だからせめて、ゆかりんの好きな食べ物をうんと持って帰ってあげようとらんは張り切っていた。
ふと見ると、ある木にゆかりんの好物の木の実がなっていた。

(あれをもってかえったらきっとおかあさんはうんとゆっくりできるよ!)

だが木に登って取ってくる等という事は、体に対して大きな尻尾を持つらんには到底不可能だ。
そこでらんは、余程の事が無ければ使わないようにしている奥の手を使う事にした。
ゆっくりらんの尻尾の中にはぎっしりと米粒が詰まっており、それを口から吐き出す事でちょっとした飛び道具になるのだ。
瑞々しく熟した木の実に当てれば、木から落とす事も不可能ではない。

「すぅ~~~…………」

らんは大きく息を吸い込み、しっかりと狙いを定めて、

「ぷっ!!」

勢い良く米粒を吐き出した。
尻尾から米粒が抜けていく僅かな喪失感と同時に、『これは当たる』という確かな手ごたえをらんは感じた。
だが運悪く風が吹き、米粒は狙いを大きく逸れて跳んでいった。

「ゆっ! ……かぜさん、ちょっとでいいからゆっくりしててね!!ぷんぷん!!」

軽く愚痴をこぼして風がやむのを待ち、再度息を吸い込み、吐き出した。

「すぅ~~~…………ぷっ!!」

今度は風が吹く事もなく、見事木の実に命中した。だが木の実は僅かに揺れはしたものの、落ちてくる事は無かった。

「ゆぅぅ……もっとちからいっぱいやったらおちそうだね! きのみさんゆっくりおちてきてね!!」

「すぅ~~~~~~~~~…………ぷぅっ!!!」

発射。今度は先の発射よりずっと勢いが付いている。『これならきっと落ちる!』らんはそう確信した。
だが、通常よりもずっと力を入れてしまったせいで口元が狂い、米粒は明後日の方向に飛んでいった。

「またしっぱいしちゃった……あんまりうつとゆっくりできなくなっちゃうよ……つぎでさいごだね!!」

大きく大きく息を吸い込み、今度は外さぬようしっかりと狙いを定める。

「すぅ~~~~~~~~~……………………ぷぅっ!!!」

吐き出された米粒は、今度こそ木の実に命中し、ブラブラと大きく木の実を揺らし、落とした。

「やったよ! これでおかあさんにゆっくりしてもらえるよ!! はやくもっていってあげるよ!!」

嬉しさを全身で表現するかのように元気良く飛び跳ねるらんを、森の生き物達が見送っていた。



翌日、らんはとても上機嫌で狩りに出掛けていた。

(きのみをたべて、おかあさんすっごくゆっくりできてたよ! きょうもゆっくりさせてあげるよ!)

またあの木の実を採ろうと木の方へ向かうと、木の周辺に数匹のゆっくり達がたむろしていた。

「みんなおはよう! ゆっくりしていってね!!!」

「ゆっ? ゆっくりしていってね!!!」

一斉に挨拶を返すゆっくり達。皆この付近に住んでいるゆっくりであり、らんも度々顔を合わせる事があった。

「みんなもきのみをとりにきたの?」

「ちがうよ! きのうからひとりかえってこないこがいるからさがしにきたんだよ!!」

「それはたいへんだね! らんもてつだってあげるよ!!」

「だめだよ! らんはゆかりんおかあさんがいるでしょ! ゆっくりごはんをもっていってあげてね!!」

「ゆぅ……わかったよ! てつだってあげられなくてごめんね!!」

「きにしちゃだめだよ! それじゃあれいむたちもういくよ!!」

「ゆっくりがんばってね!!」


ぞろぞろと移動するゆっくり一家を見送ると、らんは木の実がなっていないか探し始めた。
だが、前日落とした木の実が最後だったのか、もうその木に木の実を見つける事はできなかった。
仕方なく他所へ餌を探しに行き、前日とは別の種類のゆかりんの好物を発見した。
やはりらんには登れない木の上に成っていたので、前日と同じく米粒で落とす事にした。

「ゆぅ……きのうたくさんうっちゃったからきょうはいっかいでおとすよ!!」

大きく息を吸い込み、慎重に狙いを定め、米粒を打ち出すその瞬間、
蝶が顔の前をひらひらと舞い、米粒は明後日の方向へ飛んでいった。

「せっかくおとせそうだったのに……むしさんはゆっくりたべられていってね!!」

一度しか無いチャンスを潰されて腹を立てたらんは、ひらひら飛んでいく蝶を追いかけて走り出した。



「ゆっぷ! すてっぷ! ……ゆーるいす!!」

蝶に追い付き、大きくジャンプして空中で捕食し、着地した目の前には先程のゆっくり達が居た。

「ゆ? またあったね! みんなゆっくりしていってね!!!」

「ゆっ! ゆっくりしていってね!!」

「さがしてるこはみつかった?」

「まだみつからないよ! しかもまたひとりはぐれちゃったよ!」

「ゆっ?」

よく見てみると、確かに先程より一匹少なくなっている。
どうやら居なくなったのは一家の中で一番やんちゃな子ゆっくりの様だ。

「さがすのてつだおうか?」

「もうきょうはつかれたからゆっくりかえるよ! きっとあしたになったらかえってくるよ!」

「……そうだね! らんもゆっくりかえることにするよ!」

どう考えてもそれは無いだろうとらんは思ったが、流石に口にする事はせず、一家とその場で別れた。
木の実は手に入らなかったが、十分な量の食料を手に入れる事は出来た。

(あしたにはおかあさんはずっとゆっくりするんだね……よし、あしたはずっとおかあさんといっしょにいるよ!)



翌日。
らんはゆかりんと朝食を摂った後狩りには出かけず、ずっとゆかりんと話をしていた。
自分が生まれた時からこの日までの沢山の思い出を一つ一つ話していた。
辛く悲しい出来事も沢山あったが、それでもゆかりんと一緒に過ごせた時間はとても幸せでゆっくり出来た日々だった。


話がひと段落付いて昼食の用意をしようとした時、外かららんを呼ぶ声が聞こえてきた。

「なんだろう? ちょっといってくるね!!」

らんが外へ出るとそこには数匹のゆっくりの親子がいた。
居なくなった子供を捜している親子だった。

「ゆっくりしていってね!!」

とりあえず挨拶をするが、親子は一匹も返事をしない。
代わりに帰ってきたのはある質問だった。

「らん……きのうのきのうのひに、きのうあったきでなかみをうった?」

木の実を落とした時の事を聞かれたのだとすぐに気付き、何故そんな事を聞くのか不思議に思いながらも答える。

「うん、うったよ! きのみさんをおとそうとし」

「やっぱりらんがれいむのこどもをころしてたんだね!!!」

「ころした? なにをいってるのれいむ? それよりこどもはみつかったの?」

「とぼけないでね!! こどもたちはらんがころしたんでしょ!! ちゃんとみたこがいるんだよ!!」

「たしかにみたんだよー! きのうも、きのうのきのうも、そこのらんしゃまがなかみをうちだしてたんだよー!」

目撃ゆっくりは一人暮らしをしているゆっくりちぇんだった。
最近この森にやってきたばかりらしく、らんは会うのは初めてだった。

「へ、へんなこといわないでね!! らんはただきのみさんをおとそうと」

「それでこどもたちになかみをぶつけてころしたんでしょおお!!」

その瞬間らんは気付いた。昨日も一昨日も、確かに米粒を外していた。
その外れた米粒が、偶々通りがかったゆっくりに当たって死なせてしまったのだと。

「わ……わざとじゃなかったんだよ!! こどもたちがちかくにいるなんてしらなかったよ!!」

「そんなことしらないよ!! このゆっくりごろしのらんしゃま!! れいむのこどもたちをかえしてね!!」

「しょうだしょうだー!」

「おねえしゃんをかえしちぇね!!」

「ゆっくりしないでいもうとをかえしてね!!」

「おねーちゃんはとってもゆっくりしてたのに!!」

「わかるよー!! このらんしゃまはらんしゃまなんだねー!!」

「ゆ、ゆぅぅ……」

確かにこの一家の言う通り、理由はどうあれらんが子供達を殺したという事実は揺るがない。
らんは妹のちぇんが死んでしまった時とてもとても悲しかった。
その悲しみを自分が目の前の一家に与えてしまったのなら、言い訳をしても許してもらえないだろう。
一家の悲しみを考えれば、乱射魔という、ゆっくりらん種にとって最悪の暴言であっても耐える事は出来た。

「なんとかいったらどうなのらんしゃま!!」

「しょうだしょうだー!」

「はやくおねえしゃんをかえしちぇ!!」

「おへんじくらいしてね!!」

「らんしゃまはゆっくりしないでね!!」

「いいことおもいついたよー! このらんしゃまをゆっくりできなくすればこどもたちもよろこぶよー!」

「や、やめてね!! おわびはなんでもするよ!! でもきょうだけはゆっくりさせてね!!」

慌てて懇願するらん。今後どんな報いを受けても仕方が無い。
けれどせめてゆかりんを看取る事は許して欲しい。
そう、怒り狂う一家に必死で伝えるが、被害者側である一家がその様な言葉を受け入れる筈も無く。

「ゆ、ゆ、ゆぎぎぃぃぃ!! こどもたちをころしておいてそんなことをいうらんしゃまはゆっくりしね!!!」

怒りに身を任せて、一斉にらんに襲い掛かった。

「ゆっくっ!!」

高く飛び跳ねて何とか体当たりを避ける。

「にげないでゆっくりやられてね!!」

「ゆっくりまってね!! きょうはおかあさんがずっとゆっくりするんだよ!! だからきょうだけはまってね!!」

ぴたり、と一家の動きが止まる。

(ずっとゆっくりする?らんしゃまのおかあさんが?れいむたちはゆっくりできないのに、らんしゃまはゆっくりできる?)

ずっとゆっくりするというのは、極めて脆弱な体を持つゆっくりにとって何よりも難しく、そして最大の幸福である。
幼い家族を殺された一家にとって、加害者が家族がずっとゆっくりするのを見届けるのはとても許容できない事だった。

「そんなことさせないよ!! みんな、らんしゃまのおかあさんを……ゆかりんをゆっくりできなくするよ!!」

「「「「ゆーっ!!」」」」

ゆかりんをゆっくりできなくする。
その言葉を聞いた瞬間、らんはこれまでにない程素早く行動を起こした。

「ぷぅっ!!」

「ゆ゛べしっ!!」

「…………ゆぅ?」

ゆかりんが居る巣に入り込もうとした子ゆっくりを、らんは米粒で撃ち倒した。
大きく息を吸う予備動作は無く、代わりに口の中に思い切り力を入れて勢いを増し、ほとんど一瞬で子ゆっくりを殺した。

「おがあざんにてをだじだらゆるざないよ!!」

息を吸い込まずに米粒を射出した分、人間で言う喉に当たる部分に負担がかかったのか、声がガラガラになっている。
その声と尋常ではない表情に一家はたじろいだが、目の前で子供を殺されて黙って引き下がる訳もなく。

「このゆっくりごろし!! らんしゃま!! ゆっぐりじねええええええええ!!!」

「「「ゆうううううううううう!!!」」」

殺し合いが始まった。





「ゆびぃぃぃぃ~~~……ゆびぃぃぃぃ~~~……」

「ゆ゛っ……ゆ゛っ……」

らんは、満身創痍で最後の一匹、地面に転がって喘いでいる親れいむににじり寄る。
既にらんの体はゆっくり一家の攻撃と、許容量を大きく上回る米粒の消費によってボロボロであった。
一方親れいむも、何発も米粒を当てられ、体当たりを外して地面や木の幹や石にぶつかり、死ぬ寸前だ。
辺りには潰れたり穴が開いたりした子ゆっくりの残骸や、打ち出された米粒が散乱しており酷い有様だ。
ちなみに元々無関係な目撃ゆっくりのちぇんはとうに逃げ出して、流れ米粒に当たった衝撃で転んで枯れ枝に刺さって死んでいた。

「おがあざん……おがあざんどゆっぐりじないど……」

親れいむも動けなくなっているのを確認すると、巣の中にいるゆかりんの元へ向かうらん。
もうらん自身の命も長くはない。けれどせめてゆかりんのゆっくりした最期を見届けたい。
その一心で、動く筈の無い体を引きずって巣の奥へ向かう。
その場に残ったれいむが、らんの背中を睨みつけていた。


「らん……」

「おがあざん……!」

ゆかりんはまだ生きていた。
全身ボロボロになっているらんにも気付いたが、残り少ない時間をそのような話に使う事はしなかった。

「もうすぐおわかれだよらん……いままでゆかりんとゆっくりしてきてありがとうね……」

「おがあざん……らんも…らんもおがあざんどいでずっごぐゆっぐりでぎだよ…ありがどう……」

語るべき事は既に前の晩に語った。今はただ少しでも、この最期のゆっくりタイムを噛み締めていたかった。

「あ、もうじかんだよ……らん…ゆっくり、していってね」

ゆかりんが、ゆっくりと目を閉じて、ずっとゆっくりした。

「おがあざんも、ゆっぐりじでいっ

ゆかりんに語りかけるらんの言葉は、最後まで発される事は無かった。

「ゆっ……きゅい……ちね……」

らんの背後から、小さな木の枝を突き刺した子ゆっくりはそう言って地面に崩れ落ちた。
それは真っ先にらんとゆかりんの巣穴に入ろうとして打ち倒された、一番小さい子ゆっくりだった。
口から木の枝を生やしたらんは、虚空を見つめて、もう二度と動かなくなった。



(ちぇん……らんしゃまは、なんとかおかあさんをずっとゆっくりさせてあげられたよ……)

(らんしゃまー! ちぇんみてたよー! だからわかるよー! らんしゃまはうんとがんばったんだよー!)

(ちぇん……またさんにんで、ゆっくりしようね……)

(うん! あ、おかあしゃんだー! これからはさんにんいっしょなんだねー! またゆっくりできるんだねー!)

(そうだよ……また、ゆっくりできるんだよ……)

(らん!! ちぇん!! うつくしくゆっくりゆかりんとゆっくりしていってね!!!)

「ゆっくりしていってね」

微かな音が巣の中に溶けていった。





END


麻雀お題「らんしゃまはがんばった」

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最終更新:2009年02月03日 21:53
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