ゆっくりいじめ系2145 ゆっくり7

 *fuku5204の表示を調整したものです。*

 *虐待少な目です*
 *とても良い目に合うゆっくりがいます*
 *とても良い目に合うお兄さんがいます*


 踏まれてゆっくり


 とてもゆっくりできる場所で、今までに誰も見たことのないゆっくりが居る。
 目撃されたと噂されている、その時点で語るに落ちてはいるのだが、つまりは
新種のゆっくりだろう。

 ゆっくりづての話ではあるが、暇だった私はここを訪れたのだ。
 人の立ち寄らぬ山奥。ゆっくりがゆっくり出来る、ここ一帯の中でも最高のゆ
っくりプレイスがあると、ゆっくり達は言っていた。そうは聞いていたが、まさ
かこれほどまでにゆっくりしているとは思いもよらなかった。
 最も近隣の村から数えて、約1万5千ユクリード(1ユクリードは標準的なゆ
っくりが一跳ねする程度の距離)程はあるのだろう。人も踏み込まぬ聖域と化し
たこの場所は、谷と急斜面が入り組んでいることもあり、獣も少ないのだろう。
華咲き乱れ実りは熟し、穏陽差し込み抜ける風蒼し。豊穣の女神が2ダースくら
い乱舞しているのかと思わせるような、ゆっくりの楽園であった。
 世話をしているゆっくりを共に連れてきたのだが、かつて見せたこともないほ
どゆっくりした表情を浮かべている。
「わかるよー」
 しきりに頷いているのが、なんかずるい。

 その「誰も見たことのない新種のゆっくり」は、ひっそりと木陰で涼んでいた。
「ゆっくりしていってね」、と挨拶する。『ゆっくりしていってね!』、そう返
事が来るものとしか思っていなかった私は、衝撃を受けた。
「ああ、是非ゆっくりして行ってください」
 礼儀正しい!?
「わかるよー、ゆっくりしていくよー!」
 それに比べてうちの子は。しかし、妙に嬉しそうだな。「らんしゃまを探す」
「見たことの無いゆっくりと友達になる」。目的の半分を消化したのであるから、
わからないでもないが。実を言うと、ただ山を歩き回るだけでなく、こいつのお
婿さんを探してたのである。新種が見つからなかった場合の、精神的口実に備え
て。両方やらなければならないというのが、ゆっくり飼い主としては辛いところだ。
「よろしくね、ちぇん。それと、おね……にいさん?」
「おねえさんだ馬鹿者」
 近寄って軽く踏みつける。
 短めの髪に活動的な雰囲気を身にまとった私は、まあ男性に見られることも少
なくないのだが、とはいえ乙女の純情を踏みにじった対価は、自分が踏みにじら
れることで支払わせるしかないだろう。
 ちなみに山林を踏破するためにくるぶしまで隠れる丈夫なズボンを履いて来た
ため、躊躇はない。
 小娘が好んで着るようなひらひらとしたスカートであっても、躊躇はなかった
だろうが。
 まあそんな服飾は私には似合わないんだよなと――背中に忍び寄りつつある嫌
な予感から逃避するかのように、足の下に居るゆっくりとやらをやさぐれた心の
傷だけぐりぐりと踏みにじる。耳に良い影響を与えないような音響は、脳の片隅
で遮断しているので、例えばゆっくりみたいな変な物体の泣き叫ぶ声とかそんな
音があったとしても、何も聞こえない。あーあー、きこえなーい――考えつつ、
多分20分くらい続けて、諦めた。
「で、ちぇん。これ何ゆっくりだ?」
「ゆっくりはゆっくりだよ? わかるよー?」
 小首をかしげる猫又なゆっくり。ううむ、かわゆい。近くの木に寄りかかり、
頬をつい、となぜてやる。
「たとえばお前はちぇんだな。向こうではしゃいでいるのは、まりさやれいむだ。
さてこいつは何ぞや?」
「むむっ! うーと、まりさ……いやぱちゅりー……? わ、わからないよっ!?」
 だろうなあ。視線をさまよわせて悩み込んだちぇんを尻目に、観察してみる。
 まず目につくのは飾りの多さだ。まりさの帽子やれいむのリボンなど、ゆっく
りの飾りの切れ端を、ドスまりさもかくやと言う程に髪に飾りつけている。黒髪
は5分で刈り上げ、黒目をまとうまつ毛の切れは、なかなかに鋭いものを思わせ
る。ゆっくり特有の下ぶくれはなく、全体的に精悍な顔つきだ。
 こんなところより公園のベンチでツナギを着たまま座っているのがお似合いな
印象を受ける。あくまで印象だけだが。赤く染まった目元に残る涙の後が、過去
にあったであろう悲惨な不幸を思わせる。きっとたぶん明かに確定的に、今日以
前の過去にひどい仕打ちに遭遇した、その名残なのであろうな。
 つーかもしかしなくても、こいつってさ。
「はい、自分は『ゆっくりおにいさん』です。ゆっくりしていってね。もう痛い
ことはゆっくりやめてね!」
 誰何の疑念が声に出ていたらしく、そいつは礼儀正しく自己紹介した。
「ていうかお前ゆっくりじゃないだろ。地面に埋まって、首を出しているだけだろ!!?」
「はっは、ばれましたか。自分はこうやってゆっくりとしむぎゅ」
 勢いをつけて顔の中心を踏み抜く。
 バカバカしいぞ本当。乙女がこのためだけに、一体何日の野宿を重ねたと言う
のか。その柔肌を幾度の雨露に曝してきたと言うのか。
「い、痛いですっ!?」
「黙れ馬鹿」
 自分がおろかであることを否定するかのごとく、目の前の「ゆっくり」を踏みに
じり続ける。
「あ、あまり上品だとは言えませんよっ!?」
「もし自分の精神安定のためだけに他人を攻撃するとしたら、その人格は社会から
否定されることだろう。それほどまでに忌むべき行為であろうな。が、このまれに
見るゆっくりプレイスにいるのは、どうやら私と、とてもゆっくりしているゆっく
りだけのようだ」
「いや自分は」
「そして人里では野良ゆっくりを攻撃することは村全体への間接的奉仕となるため、
この行為はもうまったくの慈善活動だ。やれやれ、自己を省みない奉仕の心が、ど
うやらここでも遺憾なく発揮されてしまったようだな。本来ならば何らかの対価を
以て充当すべき行為ではあるが、その支払いに応じてくれるような存在は、山二つ
を超えてなお存在しないのであろうな。我が事ながら頭が下がってしまって、もう
諦めて力任せに足を踏みにじるくらいしかやることがない」
「その足の下には哀れなおにいさんが居るんですけどねっ!?」
「もしお前が『おにいさん』とか言う、人間に準じる程度の小汚い種族であるならば、
何かそれを証明出来るよなあ。具体的にはこの行為への対価だが。いやいや何とは言
わないが、まあ亜人間種であることを証明することの出来る程度には価値のある、社
会経済を発展させる上で極めて重要な位置づけを占める物とか」
「お、お金なんて持ってませんんんんんっ」
 例え身につけていたとしても、私には掘り起こせないのだろうが。
「おやおや、声はすれども人の姿は見えず。果てさて、面妖なことじゃなー。ちなみ
に棒読みだ。あまりにも感情が入りすぎて棒読みに聞こえないかもしれないが、それ
は内面からにじみ出る憤怒によるものであるが、私はちゃんと棒読みを心がけている
のだぞ。ぐりぐり」
「やべでえええええ」
 空が青いなあ。帰るの面倒だなあ。どうやって帰ろうかなあ。らんしゃま見つかる
かなあ。見つかるといいなあ。
「自分は、自分は、……虐待お兄さんなんですぶううううう」
 ふと、ちぇんを見やる。どうやら馴れないことを考えていたからであろうか、寝て
しまったらしい。ゆっくりとしている夢でも見ているのだろう、ぴくぴくと反応する
しっぽがほほえましくて、ついつい足にも力が入るというものであった。

「わかるよー! ……わかー?」
 先ほどのゆっくりプレイスから、斜面を少しばかり上った所。
 土中に埋まっていた、自称ゆっくりおにいさんこと元虐待お兄さんから、労働及び
赤く汚れた靴の対価として借り受けた――巻き上げたわけではない。あくまで有利な
状況で結んだ賃貸契約に過ぎない――、小さめの屋敷とでも言えるくらいに頑丈で広
い作りとなっている山小屋で人心地ついていると、目覚めたちぇんが不思議そうに見
回していた。
「さっきのゆっくりはね、ゆっくり出来ないゆっくりだったんだ」
「わ? わからないよー?」
 眉を寄せるちぇんに――ついでにしっぽもくるりと丸まっている――、ゆっくりと
説明をする。
 土中に埋まっていた変人は、つまるところ虐待に飽きた元虐待お兄さんであった。
人との交流を避け、来る日も来る日もゆっくりを虐待していたため、一切の新鮮味が
無くなってしまったのだという。生きる糧を失った彼は、ゆっくりとして生きること
で逆にかつて持っていたゆ虐の精神を取り戻そうと考えたそうだ。ところが何の因果
か、彼にはゆっくりをゆっくりさせることの出来る才能があったらしい。自ら土に埋
まりながらも、ゆっくりに排斥されることなく、珍しいゆっくりとして認識され、慕
われたのだと言う。各種の飾りはその慕情の証であったのだろう。とは言え食事や生
活など何らの考えなく埋まった彼にとって、ゆっくり達からの援助無くして生きるこ
とは不可避であっただろうことも、想像に難くない。
 ゆっくりとの共生のために、彼女らに知恵と知識を与えるしかなかった彼の心境は、
いかなるものだったのだろうか。もはやゆ虐の民としての誇りは失われたのであろうか。
 ここで私が出来ることは、ただ一つ。彼の遺志を継ぎ、ゆっくりを虐待することで
しかない。私は特にゆっくりの虐待が好きなわけではない。だが彼が失った誇りと魂
を昇華させるために、あえて。そう、あえて、なのだ。……「まあどうでもいいか」
と思えることをせねばならないんすよ。主にらんしゃまが見つかるまでの暇つぶしく
らいの感覚で? まあ、暇だし? ぶつぶつ。
「わかるよー! らんしゃまを探すんだね! 早く行こうよー!」
 話聞いてないよな、こいつ。
「うん、今日は疲れたし、軽く近くを見て回ろうか。ご飯集めなきゃね」
「わかるよー」
 ちぇんは、ぴょいんと私の肩に飛び乗ろうとして、目測を誤りずり落ちた。
「やっぱゆっくりって可愛いなあ。虐待するの面倒なんだよなあ。台詞考えたり、濁点
付けたりするのが特に」
「ゆ? おねえさん何か言った?」
「いやいや、ただ誰か本当に状況と種族ごとに分類した台詞データベース構築して関連
用語抜き出せると楽でいいんだよなあとか、突然閃いただけだよ」
 どういう意味なのかは自分でもわかんない。わからないよー。

「やあおねえさん。おや、着替えたんですか? スカート姿も似合いますね。ゆっくり
していってね!」
「「「ゆっくりしていってね!」」」
 元虐待お兄さんと、その周りで一緒になってゆっくりな歌を歌っていた大小様々なゆ
っくり達が、私たちを歓迎した。遅めの昼食を終えた私達は、再度このゆっくりプレイ
スへと赴いたのであった。小屋を借りた手前もあるし、作りすぎた昼食の差し入れに来
たのだ。普段ろくな物食べてないだろうしね。べ、べつに、あまりにもみすぼらしいと
か、哀れすぎるとか、変なにおいが気持ち悪いとか言う理由じゃないんだからねっ!?
 ……言い訳完了。これで誰も、こいつがみすぼらしいとか哀れだとか変なにおいがす
るだなんて、ひとかけらも思わないだろう。
 ちなみにスカートに履き替えたのは、さっき男と間違えられたことが悔しいからなど
では決してなく、小屋周辺に限ればとても穏やかな地形で、過ごしやすいことが判明し
たからで、決してさっき男と間違えられたことが悔しいからではないのだ。大切なこと
なので二回言った。ふう、言い訳完了。
 ……なんだか言い訳してばっかりだ。
「細くて白い足がとても綺麗ですね! こうしてみるとまるで女の子のように見えぶぎゃっ」
「黙れ馬鹿。ぐりぐり」
「やべてー! ていうか、見えちゃいますよ!?」
「ん? 何が?」
「え、気づいてない? まじで? 気づいてないなら見ちゃいまぎゃあああああ」
 目を開けた瞬間を狙い、かかとで踏み抜いた。まあこれくらいにしといてやろう。
「お、おねーさんゆっくりしていってね!?」
「ゆっぐりでぎないよおおお!」
 周りからゆっくり達の悲痛な声が聞こえてくる。そういえばゆっくりがいることを、
しゃっきりぽんと忘れていた。
「ああ、大丈夫だよ。こう見えても私はね、このお兄さんとは仲がいいんだ、ほらこう
してご飯を持ってくるくらいに」
 差し入れを見せて、敵意がないことを示すと、途端にゆっくり達は周りに集まって来
た。ていうか地面に置いた土産に群がってやがる。
「ぐううう、めがあああ、ぐ、ぐぎぃ、くろ……え、ご飯くれるの? 俺に? まじで?」
「まあな。家くれたし。あ、ゆっくりいくつか貰ってくから」
「うん、わか……今なんて?」
「おーいおまえら、それはこいつのご飯だぞ、我慢しとけ。代わりに、そうだな、家に
連れて行ってやろう」
「「ほんと!? ゆっくりできる!?」」
「え、なんて言ったの? ねえ何か変な事言わなかった? ねえねえ!?」
 その場に居たゆっくりは、れいむ、まりさが1匹づつ、赤れいむ、赤まりさが3匹づつ。
多分ではあるが家族なのだろう。
「わかるよー、ちぇんと一緒にゆっくりするんだねー」
 肩から飛び降りたちぇんが、早くもゆっくり達と追いかけっこをして遊び始める。
 その間に私は元虐待お兄さんから小屋の作りや道具についてレクチャーを受ける。
「えーと、何かするんですか? 黒ですか? そのゆっくり達を”可愛がる”んですか?
 ひょっとして黒ですか? ところでそのスカートの下に身につけていらっしゃるであ
ろう衣服の色彩を一言で言い表したとしたならば、万人が万人諸手をあげて『黒』と答
えるであろう色で間違いはないですよね!?」

 会話の間に執拗なまでに挟まれる漆黒なる台詞を流しながら、ようようにして聞くべ
きことのあらかたを聞き終えた私は、何かを期待する変態の眼差しに、残念な事実を告
げてやる。
「ジャージ」
「うがああああああああああああああああああああああああああああああああ」
 おお、物の見事に失望してやがる。あわれあわれ。
 土産は簡単な野草サラダだ。地面に置いた皿に軽く盛っておいた。こうしておけば、
お腹が空いたときにでも食べられるだろう。
「さ。みんな帰るよ」
「わかるよー!」
「まっちぇにぇ! ゆっきゅりかえりょうね!」
「ゆゆっ、待つんだぜみんな、ここにゆっくり出来るごはんが落ちているぜ!」
「「「ゆっきゅりー! むーちゃ、むーちゃ、しあわしぇー!」」」
「ってそれ俺のおおお! 半年ぶりの、まともな飯がああああ!」
「おにいさん、ここはれいむ達のゆっくりプレイスだよ! ゆっくり出来ないなら出て
行ってね!」
 ですよねー。
 まあどうせ、こいつは動けないし、どうあがいても食えなかったのだろうけど。話に
聞いたほど慕われてはいないみたいだし。むしろおもちゃの扱いを受けているんじゃな
いか? 飾りも、親愛の証などではなくて、所有権の主張だったりして。
「もう行くよー」
「「まって、まってにぇ!」」
 陽の傾いた森の中、ゆっくりの速度に併せて家路に付くのもオツな物かもしれない。
 後ろから、明日は何も履かないで来てねぇぇと言う誰かの魂の叫びが聞こえた気がす
るが、多分気のせいだろう。あいつの名前は今から”変態”に決まったことは、だから
ただの偶然だ。変態なんだからそんな不条理も許されるのだ。がんばれよ、変態。


 小屋の改装――といっても大してすることもなく、動きにくくなっていた装置に油を
差したり、簡単な掃除をした程度だ――を終えた頃だろうか、遊びつかれて寝ていたゆ
っくりの家族が起きだした。
 気配はすれども、ゆっくり独特の発声が聞こえてこない。声の出ないよう、彼女達が
寝ている間に、口に布を詰め込み、塞いでおいたからだ。
 ちぇんは別室で寝かしつけているので、防音に優れたこの小屋の中では、大声を出し
たところで気付きはしまい。これは、虐待に馴れていない私が、不愉快にならないため
の処置だ。
「まあわざわざ虐待する必要なんてないけど、ものは試しってやつで」
 誰に言い訳するでもなく、とは言え私を第三者の視点で見ている者などは存在し得な
いのだから、自分に対して言い訳をしているのは確定的に明らかなのだが、それはさておき。
 異変に気付き恐慌に陥るゆっくり達に向かって、私は説明を始めるのであった。
「諸君。お気づきのとおり、君たちは今声が出ない。なぜなら、私が『ゆっくりできな
くした』からだ。そう、私は実は、美しく麗しい『ゆっくりできない』お姉さんだった
のだ。これからの諸君らの命運は辛苦に染まることになるだろう。ここで死ぬまで私に
蹴られ、殴られ、辱めを受け、子を為して子に食されるのだ、例えるとするならばだが。
諸君らは標準的な被虐ゆっくりとして生きることになるだろう。ゆっくりの知能でこの
部屋を脱出することは不可能だから、もし私が愛想を尽かしたとしても、諸君らはここ
で餓える以外の選択肢を持ちようがないのだ。諸君らが私に対して、何らかの延命措置
を述べたいと言うのであれば、私を満足させる行動を以って請願する他に、どういった
手段が取れるだろうか。否。そもそも諸君らは……えい」
 親ゆっくりが体当たりをしてきたので、自分でも意味不明であった演説を中断し、踏
みつける。口が塞がっているんだが……踏みつけた足を通して、悲鳴だか呻きだかが漏
れてくる。おお、愉快愉快。
「説明が悪かったか。ええとだな、つまり、お前達は『一生ゆっくりできない』と言う
ことだ。私に逆らうと」
 ゆっくり達を舐め回すように観察する。未だ状況を理解できない赤れいむ。期待の眼
差しを親に向けている赤まりさ。我関せずとばかりに寝ている赤れいむ。
「赤んぼう可愛いね。でも体当たりされて足が痛いんだよね。むしゃくしゃするから、
よし、潰そう」
 踏みつける対象を、親まりさからねぼすけの赤れいむに変更した。
「あ、これ面白い。足の裏で、今にも潰れそうな体を、必死にひねって逃げようとして
るんだよな。その蠢いている感触がこそばゆい。あと一押しで皮が裂けて、腐った芋の
ようにぶにゃりと崩れそうなんだよね」
 親達の体当たりがより強くなる。だが気にする程ではない。
「きっと痛いなんてものじゃあ、ないよなあ。大きな石で体を潰されている感触かな?
 丸太に皮の端が挟まって、そのまま丸太の下敷きになる見たいに。餡子が、ゆっくり、
ゆっくりと外側へ移動して行くのって、とても痛いんだろうねえ。人間で言うと、皮膚か
ら剥離した骨や筋肉が、砕かれながら搾られているような物だしねえ。可哀想に、まだ小
さい赤ちゃんだと言うのに、私に反抗するゆっくりなんぞを親に持ったばかりに!」
 絶命寸前であろう赤れいむを親に見えるよう、足を移動させた。後頭部を押付けている
ため、親と対面しているのはぱつんぱつんに膨張し、今にも張り裂けようとしている赤れ
いむのいびつな顔であろう。内容物によって限界まで引き伸ばされた皮は、奇妙な笑み以
外に表情を浮かべることは出来ないであろう。横長に膨らんだ赤れいむの左右で、こぼれ
落ちてしまうのをかろうじて堪えているうつろな眼球は、果たして何かを映してはいるの
だろうか。空気の詰まった紙風船のように、容易く裂けてしまうであろう赤れいむのその
命を握っているのが誰であるのか、さすがのゆっくりであっても理解出来たのだろう。親
ゆっくりは赤ゆっくりに駆け寄り、助け出そうと健気に私の足を押し返す。
 私に反抗しないこと、これからする説明をよく聞くことを理解させた上で、解放する。
瀕死の赤れいむに、言葉を掛けてやることも出来ない家族。ほお擦りすら余命を縮める行
為なのだろうと、ゆっくりなりに理解しているのだろう、力なく舌を使って舐める程度だ。
 死んでは元も子もないので、煮詰めた野苺を与えておく。餡子が漏れたわけでもないし、
すぐに回復するだろう。
「説明を再開するよ。ええと、この部屋には、『罠』が仕掛けてあります。50ユクリード、
かっこ1ユクリードは標準的なゆっくりが一跳ねする程度の距離かっこ閉じる、四方のこの
部屋に、タイルが敷き詰められているのです。床を見ると、白と黒がまだらになっているだ
ろ? このあるマスを踏むと、ゆっくり出来なくなると言うことだ。例えばこのマスは落と
し穴で、下に槍が隠れている。ほら、ぱかぱか開くだろ?」
 足で踏むと、開いたタイルの底に、鈍く光る刃が隠されていた。
「君たちは『れいむ』と『まりさ』に分かれて、交互に罠を掛け合ってもらう。……のだが、
今説明しても理解が追いつかないだろうから、今日はこのへんでお終い。みんなゆっくりし
ていってね!」
 罠の設置された部屋で、声を出すことも出来ないゆっくりがどうやってゆっくり出来るの
かは私は知らないが、まあなんとかなるだろう。食事は取らせるしね。
 声も上げられず身を震わせて嘆いているゆっくりの家族を後に残して、部屋を出た。その
際、殺傷力のないただの落とし穴を踏み抜いてしまったことは乙女の秘密だ。

 寝室に戻ると、ちぇんはいまだ寝ているようだった。もう昼だと言うのに。窓から差し込
む木漏れ日が、秋の深まりを優しく告げているように思える。
 雪が降るまでには、家に帰らないといけないなあ。
「らんしゃまぁ~」
 つぶやいた寝言は、まだ見ぬ伴侶に向けてのものだろうか。
 彼女を起こさぬように胸に抱いて、私も午睡を嗜むことにした。


 *次回予告*

 家族を襲う数々のゆっくり。
 だがそのゆっくり達とて、自分達を襲わねば死あるのみであったことを、ゆっくりの家族は
己の身を持って知ることとなる。
 引き離された家族が出会うのは、殺戮の罠の中でしかないのか。
 次回「愛、罠、ゆっくり」
 1億円宝くじが当たるくらいの期待度で待て!

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2009年02月13日 01:20
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。