ゆっくりいじめ系632 ゆっくりの木

※元ネタあり。植物的なゆっくりの絵を見て衝動的に書いてみた。
















 このー木なんの木 気になる木

 みんながあつまる 木ですから

 みんながあつまる 実がなるでしょう


『日立の樹』歌詞より引用








 ある森の中に、妙に短く太い木がそびえ立っている。

 子供達が肩車をすれば枝に届く程度のそれは、しかし他の木に比べるとどこか独特の存
在感がある。

 周りには黒ずんだ丸い何かの跡が、地面に点々と存在している。それが餡子だと気づい
た者達は、揃って視線を木へ向ける。

 そこで幹に描かれた顔に、初めて気づく者も多い。

 青々とした葉の隙間からは、枝に実をつけたゆっくり達の顔がちらほら見える。

 その木の名はゆっくりの木と言った。

「ゆっくり~していってねぇ~」

 野太くゆったりとした声が森に響き渡る。幹の顔から発せられた声だ。

『ゆっくりしていっちぇね!』

 その声と揃えるように、実のゆっくり達の大合唱が響き渡った。

 普通の木と違い、ゆっくり達の体から芽が出、徐々に木質化して饅頭から樹木と成長す
るゆっくりの木は元々の生態から言葉を理解し、喋る事が出来た。

 そのため、こうして育ちきった今でも、周りの木々をゆっくりさせようと声をかけ続け
ている。

 自分の出した声に満足すると、ゆっくりの木は静かに口を閉じ、目をつぶって嬉しそう
に日を浴びる。

『ゆっくりしていっちぇね!』

 もうじき成熟し、枝から落ちる寸前の実達の合唱も、木の心に安らぎを与えた。

 うとうとと、気持ちよさげに木が眠っていた頃。

 草をかき分け、こちらに近づいてくる気配があった。

「……ゆっ?」

 草をかき分けてくる音に目を覚ますと、木はそのまま音の方へ視線を向けてみる。

 動かない体で視野は狭いものの、どうにか見えた先には、近づいてくる人間達の姿があ
った。

「ゆーっくりー」

 伸びやかな声で挨拶をする。

 ゆっくりの木に人間達が訪れる事は珍しくない。人里が近いからか、特に子供達は頻繁
にやって来ては、頑丈な木の幹を蹴り飛ばし、実を落としては持って帰っている。

 自分の実が可愛がられるのはいいことだ。

 ほとんどの場合、実を拾う子供達をゆっくりの木は笑顔を浮かべて見守っていた。

 しかし今日来たのは子供達ではなく大人達だ。

 また自分の身の元気な様子を見に来てくれたのかなと、木は笑顔を絶やさずに出迎えて
いた。

「この木か」
「ああ、周りに餡子落ちてるからわかりやすいな」
「よし、それじゃ始めるぞ」

 男は袖を捲り、太い腕を露出させる。

 手には、大きな斧を持っていた。

「あらよっと!」
「ゆーーー……ぐっ!?」

 木の幹が揺れ、突如走った痛みに、ゆったりとしていた木が唸り声を上げた。

 幹の根元には、斧の刺さった跡が大きく描かれている。

「いだいよぉおおぉおぉ~、どうじでごんなごとずるのぉおおぉおぉ~!」
「活きがいいですね、こいつ」
「マサ、どんどん悲鳴を上げさせてやれ」
「もちろん!」

 斧を刺し、木を倒す方向を決めたマサは改めて斧を構える。

 勢いよく何度も、幹に斧が刺さっていった。

「それそれそれそれっ!」
「あぎゃっ! きゅげっ! やめでぇええぇえええっ!! れいむのからだごわれぢゃう
゛ぅう゛ぅう゛ぅっ!!」
「ああ。こいつ、れいむ種だったんですね」
「道理で。断面が餡子臭いと思った」

 やがて、幹の半分以上に亀裂が入り。
 マサの合図で、木に男達が集まっていった。

「あ……あぁ……」
「それじゃ行くぞ、せーの!」
「おいせっと!!」

 男達の鍛え上げられた肉体が、木の幹を突き押していく。

 破滅の音を立て、ゆっくりの木が傾いていく。

『ゆっくりしでいっちぇね!』
「いやぁぁあぁあぁあぁっ!!」

 状況を理解できていない実達と声を揃えながら。
 大きな震動と共に、ゆっくりの木は地面に横たわった。

「れいむの……でいぶのからだがぁあぁあぁあああぁっ!!」

 泣き叫ぶ木の声に揃って上がる声はない。

 枝に成った実達は地面と衝突し破裂、または太い枝が突き刺さり、成熟に関係なく命を
落としていった。

 生き残っている実はせいぜい数匹程度だろう。

「どうじでごんなごとずるのぉおおぉおぉっ!!」

 木の絶叫に、しかし男達は揃って不思議そうな顔を浮かべていた。

「そりゃ……お前が煩いからに決まってるだろう」
「ゆっ!?」
「毎夜毎夜、ゆっくりゆっくり絶叫されたらなぁ……」
「俺たちは頼まれて伐採しに来たんだよ。あの木を切り落としてくださいってな」
「そ、そんにゃぁ……」

 木は確かに夜通しでゆっくりを呼びかけていた。

 しかしそれはみんなをゆっくりさせようと思ってだ、決して迷惑なんてならなかった筈
だ。

 れいむの好意が邪魔になるわけがない! 木はそう結論づけた。

「うぞずがないでね! でいぶばうるざぐなんでない゛よっ!!」
「だから煩いって言ってるだろがっ!!」
「うぶっ!?」

 一閃。

 マサの斧が木の顔辺りを縦に叩き割り、口が真っ二つに別れた。

 目から樹液を流し、抗議しようとしているが、割れた口からは何も聞こえてこない。

「それで、こいつどうするんですか?」
「どうするかねぇ……木材にするには脆すぎるし、加工所も独自で栽培してるって話だか
らな……」
「いっそ、切り落とした祝いに村で燃やしますか?」
「お、いいなそれ! 盛大に燃やそうや!」

 ゆっくりな丸太の処分について、男達が話し合っていく。

 恐ろしい言葉の連続に、ゆっくりの木はただただ樹液を流し続ける。

 涙のようなそれは拭き取られる事なく、ただ昆虫が美味しそうに舐めていくだけだった。





 End








 実も交えて色々しようかと思ったけど、長くなるし、やはりシンプルに。
 ゆっくりの木とか聞いたら伐採しないといけないと思った。あまり反省はしていない。
 むしろ近所にも生えて欲しい。蹴りにいくから。





by 762

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最終更新:2008年09月14日 05:44
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