ゆっくりいじめ系2634 軍人鬼異惨の試練

「ゆぅ…。うっかりしてまたすっきりしちゃったよ…。」
「これじゃかぞくともだおれだよ…。」

日が沈んだ森の中、無責任なれいむとまりさが何の計画も立てずすっきりしてしまった。
2匹の間にはすでに6匹の赤ゆがいる。今回茎に実っていた赤ゆの数は7匹…。
どう考えてもそんなに育てられる訳が無い。2匹は激しく後悔した。

「こうなったらぱちゅりーにそうだんしようよ!」
「そうだね!きっとなんとかしてくれるよ!」

他力本願で解決すべく、まりさは茎が生えているれいむを置いてぱちゅりーの元へ向かった。

「…むきゅ!はなしはわかったわ!それならいいはなしがあるわよ!」
「ゆっ?どういうこと?」

ぱちゅりーの話によると、育てきれなくなった赤ゆを引き取ってくれる
とても親切な人間がこの近くに住んでいるというのだ。

「そのひとにおねがいすればきっとかいけつするわ!」
「わかったよ!さすがぱちゅりーだね!!れいむにおしえてくるね!!」

まりさはすぐにれいむに報告し、なるべく急いでその場所に向かった。
もちろん前からいた6匹の赤ゆはお留守番だ。
…そしてそう遠くない場所に一軒の小屋を発見したのだ。
周りにはゆっくりが侵入できないように有刺鉄線が仕掛けてあったが、
一か所だけ安全地帯が存在し、そこに押しボタンが設置してあった。
まりさが恐る恐るボタンを押してみると、中から人間が出てきた。

「ああ、さては赤ゆを引き取って欲しいんだね。」
「ゆっそうだよ!れいむのくきをとってね!!」
「まだ実ゆのままとは有り難いねぇ。受け取っとくよ。」

人間の青年は慣れた手つきで茎を引っこ抜き、根っこを砂糖水に漬けた。
れいむは赤ゆを失ったことで自責の念に駆られたが、まりさに慰められ落ち着いた。

「しょうがないよ…。いまいるあかちゃんたちをしあわせにしてあげようね…。」
「そうだね…。おにいさん、あかちゃんたちをよろしくね…。」
「言っとくが2回目以降は受け取らないよ。同じ依頼をする奴が多くてね。」

青年はこっそりまりさの帽子に軽く切れ目を入れておいた。
こうすることで前にここに来たか分かるからだ。
2匹はやや寂しげに帰っていった…。

「最初からすっきりなんかしなきゃいいのに…。まぁおかげでいっぱい赤ゆが集まったな。」

青年は赤ゆが大量に冷凍保存されている箱を郵送である所に送った…。

その頃…

「まりさ…。せめていまいるこたちだけでもゆっくりさせてあげようね!」
「そうだね…。ただいま~あかちゃん!いまかえ…!」

2匹が巣に戻ると、そこには飛び散った餡子とリボンと帽子の残骸、そして…。

「…ゆっくりしね…。」
「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁっ!!!!ふらんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
「どぼじでっ!!?あがぢゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!」
「ゆっくりしね…!!ゆっくりしね…!!!」
「ごっぢごないで…ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…!!!」

2匹揃って巣を空けた隙に狙われてしまったようだ。
れみりゃ以上に凶暴であるふらんに襲われ2匹は一瞬で皮だけになった…。





…赤れいむは茎にプラプラとぶら下がり、生まれる時を待っていた。
すでに根っこを砂糖水に漬けられ郵送されているとも知らず、
赤れいむは親とのすりすりを楽しみにしていた。
まだ目も開けられないし言葉もしゃべれないが、赤れいむの心は
期待と夢と希望に溢れていた…。

それから数時間後、いよいよ誕生の時を迎えた。
茎が赤れいむの重みで軽くしなり、反動を付けて赤れいむは体を上下に揺すった。
そして茎からプツリと離れ、一瞬の浮遊感の後、ポスンと地面に落ちた。

「ゆっきゅちしちぇいっちぇね!!!」

上手く言えた…。それだけで嬉しかった。すぐに周りを見渡し親の姿を確認しようとしたが、
何故かお父さんもお母さんもそこにはいなかった。

「ゆ~?おかーしゃんとおとーしゃんはどきょ?れーみゅはきょきょだよ?」

しばらくキョロキョロしていると、同じ茎から次々と妹たちが落ちてきた。
7匹全員無事に着地し、お決まりの挨拶を飽きるまで繰り返した。
種類は赤れいむは4匹、赤まりさが3匹であった。
皆で誕生した喜びを精一杯噛みしめ互いにすりすりして祝福した。
だが肝心のお父さんとお母さんはやはりいない…。

「ゆぅ…。どきょいっちゃの?」
「ゆえ~んゆえ~ん!」

…ポトッという音がすると、悲しんでいる7匹の前に茎が落ちてきた。
泣いてたせいで無駄にエネルギーを消費していた7匹は茎をバクバク食べた。
だがやはり心は満たされず、7匹を身を寄せ合って互いを励まし合った。

「きょきょどきょ?にゃんだかへんだよぅ…。」

1匹の赤まりさが自分たちの状況に気が付いた。
良く見ると、自分たちは見えない壁に仕切られた箱に入れられていたのだ。
いくら進もうとしても壁のせいでそれ以上前に進めない…。
それだけでは無い。自分たち以外にも沢山の赤ゆが箱に入れられて区切られていた。
皆寂しいだのここどこだのお父さんお母さんだの喚いていた。皆この状況に戸惑った。

「どうやら実ゆだった奴も全員この世に生を受けたようだな…。」
「ゆ!?だりぇあにょひちょ!?」
「まりしゃをきょきょかりゃだしちぇ!!!」
「おかーしゃんどきょにゃのー?おしえちぇねー!」

大量の赤ゆたちの前に現れたのは軍服を着込み軍人用の帽子を深くかぶった人間だった。
赤ゆたちは必死に質問を繰り返したが、その人間は一言だけ言った。

「黙れ…!さもないと我の強化空気銃が貴様らを貫くぞ…!!」

人間は改造エアガンを天井に向けると、すさまじい轟音とともに発砲した。
本物と同じような音が出るよう勝手に改造したのだ。
あまりの大音量に一瞬にして赤ゆたちは恐怖に支配され黙った…。
ぱちゅりー種に至ってはショックで失神してる者さえいた。

「我は人呼んで『軍人鬼異惨』だ。まず最初に言っておく。貴様らは全員親に捨てられた。」

一瞬赤ゆたちは固まった。この人は何を言ってるんだろうという顔で…。

「ゆぅぅ!おかーしゃんとおとーしゃんがまりしゃをしゅてるはずにゃいんだじぇ!!」
「しょーだしょーだ!みゃみゃはありしゅをうんじぇくれたちょかいはなおやにゃのよ!?」
「れーみゅたちをおとーしゃんとおかーしゃんにあわしぇてね!!!」

全ての赤ゆが猛抗議した。もちろんあの長女の赤れいむもすごく怒って叫んだ。
当然だ。刻まれた記憶では自分たちはお父さんとお母さんに愛されることになっている。
捨てる?そんなこと自分をゆっくりさせてくれる親がするはずが無い。皆そう思っていた。
すると再びエアガンが発砲され、赤ゆたちは恐怖を思い出し黙ってしまった。

「いいか?我は下らん嘘は嫌いだ。今言ったことはまぎれもなく現実であり事実だ。
 貴様らは何らかの理由で親に見放された哀れな赤ゆなのだ。
 思い出してみろ。すでに赤ゆだった者なら覚えているだろう。
 貴様らの親が人間に自分たちを渡す姿を…。」

長女赤れいむたちはまだ実ゆだったので何のことかさっぱりだったが、
一部のそうでない赤ゆは顔を真っ青にした。
かすかに覚えている…。両親が夜こそこそ話をしていたのを…。
そして自分たちを人間に引き渡し、さっさと帰ってしまったことを…。
そこから先は…そうだ、寒い部屋に入れられて寝てしまったんだ…。

「分かったか?貴様らは親にとってただの邪魔者でしかなかった。
 だから我々に譲り渡したのだ。現にあれからだいぶ時間が経っているが、
 誰も貴様らを迎えにはこなかった…。その意味が分かるな?」
「ゆ…ゆあぁぁぁぁぁぁん!!おかぁしゃぁぁぁぁん!おとぉしゃぁぁぁぁん!!!」
「わきゃりゃにゃいよぉぉぉぉぉ!どうじでみゅかえにきちぇくれにゃいのぉぉ!?」
「ぱちゅりぃをどうじでずでだにょぉぉぉ…ごほっごほっ!!」
「ちょかいはじゃにゃいよぉぉぉぉぉ!ゆあぁぁぁぁぁぁん!!!」

三度銃声が響き、赤ゆたちは泣きながらも必死に黙った…。

「そういうことだ。貴様らは必要とされない命だ。
 その気になれば貴様らを皆殺しにするなど造作も無いこと…。
 だが我は貴様らにチャンスをやる。生き残るチャンスだ。
 我の試練に耐え切り我に認められた奴のみゆっくりさせてやる。」

ほぼ全員だいたい状況を察した。つまり逆らえば死ぬということだ。
だが察した赤ゆは『ほぼ全員』であり、残念ながら『全員』では無かった…。

「そんにゃのしりゃにゃいじぇ!まりしゃはくるちいのはいやだじぇ!!」
「しょうだよ!おかーしゃんにあいちゃいよぉぉぉ!!!」

すると軍人鬼異惨は文句を言った赤ゆが入っている箱に印を付け始めた。
そしてこう言い放った…。

「残念だがこの印を付けられた箱に入っている赤ゆは全員処分する。」
「ゆ…ゆえぇぇぇぇぇ!!?」
「どぼじでそんにゃこちょいうにょぉぉぉぉ~!!?」
「まず貴様らは命令違反だ。我は最初に『黙れ』と命令したはずだ。
 ここでは上官命令は絶対!故に貴様らは我に従わなくてはならない!
 全員処分するのは連帯責任だ。貴様らは家族単位で入れてある。
 1匹でもクズがいる所は全員クズと判断した!!
 よって貴様らは我に背いた反逆罪で死刑だ!!!」

冷たく言い放った後、印を付けられた箱に入っていた赤ゆはその場で全て足を焼かれ、
1列に並べられエアガンの餌食となった。
あまりの凄惨な光景に残った赤ゆたちはただガタガタ震え目を瞑るしかなかった…。
あの長女赤れいむもギュッと目を瞑り妹たちと震えていた。だが声は聞こえてくる…。

「やめちぇぇぇぇぇぇっゆぴゃげっ!!!」
「おにぇぎゃいいやぁぁぁぁぁっぎゅぺきっ!!!」
「やべでっぴぎゃっぷげっぎゅぎゃ…っ!!!」
「わぎゃりゃにゃっぺぎっぷきょぺぎゃっ!!!」
「ちんぴょぉぉぉぉぉっぴぎゃ…!!!」
「そこだっ!遅いっ!ふんっ!」

まさに百発百中、BB弾が吸い込まれるように赤ゆを貫いていく…。
30分にも及び処刑は続いた…。そして静寂が辺りを包みこんだ…。
箱の中の赤ゆたちは失禁しブルブル震えていた。例外無く全員だ。

「おおしけいしけい。おおきょわいきょわい。」

一部例外も混じっていたが…。

「分かったか!ここではルールは絶対!覚えぬ者は切り捨てる!!
 今ので連帯責任と逆らったらどうなるかは覚えただろう!!?
 周りを見ろ!これから貴様らは集団で活動する!!
 後ろを見るな!死した者は置いていけ!それが生き残る秘訣だ!!」

鬼異惨がかっこ良く言い終わると、恐る恐る質問してきた赤ゆがいた。
あの長女赤れいむである。

「あ…あにょ…。」
「何だ?発言を許す!!!」
「れーみゅたちにゃにしゅるの…?しれんって…にゃに…?」
「まずは簡単だ。生きることが課題だ。」

全員意味が分からなかった。自分たちは今ちゃんと生きている。
確かに死んだ者もいたが、いったいどういう意味であろうか?

「貴様らにはまず過酷な環境の中で1週間生き延びてもらう。
 守ってくれる者などいない。貴様らだけの力で生きるんだ。」
「ゆぅぅ…。れーみゅたちだけ…?そんにゃのきょわいよ!!」
「まずはその弛んだ甘えと他力本願な根性を捨てろ!!
 無事生き延びたゆっくりのみ次のステップへ進む!!! 
 貴様らに足りないのは本来野生動物が持っているはずの生存本能だ!
 どんな手を使ってでも生きるんだ!!以上っ!!!」
「しょんにゃのひぢょい!!あんみゃりだよ!!!」
「ぱちゅりぃはそんにゃのむりぃ…。」
「ちょかいはじゃにゃいぃぃ!!ひどしゅぎだよぉぉ!!!」

4回目の銃声によって赤ゆたちの抗議はまたもかき消された…。
そして中に入ってきた部下たちにより赤ゆたちは運ばれていった。
箱全部に睡眠ガスをたっぷり入れられ、赤ゆたちは眠りの世界に強制送還された…。

「エリアCに送っておけ。見せしめで数は多少減ったがまだまだ沢山いるからな。
 今回は何匹生き残るかな…?」

鬼異惨は帽子を取り長い髪の毛を振るった。
実は鬼異惨は女だった。ただ称号が『鬼異惨』なだけなのだ。紛らわしい…。

「ところで疑問に思ってたんですけど、何で女なのに鬼異惨なんですか?」
「馬鹿め…。そっちの方がかっこいいからに決まっているだろう!!
 『悪姐惨』なんて誰が名乗るか!!男にナメられるだけだ!!」
「はぁ…(でもそんなあなたに痺れます!!)」




「ゆ…ゆっきゅりしちぇいっちぇね!!!」
「ゆぅ…?ゆっゆっきゅりしちぇいっちぇね!!!」

7匹は目を覚ました。気が付くとそこはもう知らない所であった。
辺り一面木々が生えており、そこが森の中だということがすぐに分かった。
分かったが何しろこの7匹にとっては初めての世界だ。
記憶が継承されているおかげで森だと分かったが、それ以外は何も分からない。
7匹はただ途方に暮れた。すると長女赤れいむが6匹の妹たちを元気づけた。

「だ…だいじょうびゅ!きっちょしゃっきにょはゆめだよ!」
「ゆぅ…?ゆめぇ…?」
「そうにちぎゃいにゃいよ!きっちょおとーしゃんとおかーしゃんがむきゃえにきゅるよ!
 みんにゃでいいきょにまちょうね!!!」

この発言は気休めでも励ましでも無い。本気でそう思っていた。
きっとさっきのは悪い夢だ。そうに違いない。
長女赤れいむは思いっきり現実逃避していた。
そしてその言葉を聞いて6匹の妹たちも現実逃避を始めた…。

「しょうだね!みんにゃでまちょうね~♪」
「おとーしゃんがおいちいごひゃんをもっちぇくりゅまでいいきょにまちゅよ!」
「しょれまじぇヒミャだきゃらおうちゃをうちゃおうね~♪」
「ゆ~ゆゆ~ゆ~ん♪はやきゅみゅかえにきちぇね~♪」

親が迎えに来てくれると勝手に思い込み、呑気に茂みのど真ん中で歌を歌い始めた。
ここは軍人鬼異惨が管理する特別地区『エリアC』だ。
自然の森がそのまま残されており、恵みも危険も普通の森と同じであった。

鬼異惨の目的…それは優秀なゆっくりを探り出し兵隊にすることだった。
捨てられた赤ゆを様々な試練によって淘汰し、
生き残ったゆっくりだけをさらに鍛え上げ忠実な家来にしているのだ。
兵隊となったゆっくりは命令に従うことが最もゆっくりできることだと刷り込まれており、
ゲスゆっくりの群れの殲滅や被害にあった畑の見張りなどを行う。
今回の赤ゆたちもその試練の真っ最中という訳だ。

そして歌を歌っていた赤ゆたちは背後から来た脅威に気付かなかった…。

「ゆ~ゆゆ~♪ゆっきゅちしちぇ…ぴっ!!」
「ゆ…?まりしゃ…?」
「う~♪うーうーう~!!」
「れ…れみりゃだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「うー!」
「れーみゅのいぼうちょがぁぁぁぁ!!!!」

そう、れみりゃ(胴無し)の襲撃だ。この森は木が多くて薄暗く、昼間でもれみりゃが徘徊していることがある。
初めて見たが、それがどれだけ危険だがすぐに分かった。れみりゃ…ゆっくりできない存在だ。
このれみりゃは元からこのエリアに住んでいる天敵だ。
れみりゃから見ればこの赤ゆたちは格好の獲物だ。襲わないはずが無い。

「おとぉしゃぁぁぁぁぁぁん!!!おかぁしゃぁぁぁぁぁぁん!!!たしゅけっぴぎぃぃぃぃぃぃっ!!!」
「ま…まりしゃぁぁぁぁぁ!!!!ゆぎゃぁぁぁぁっこっちこにゃいでぇぇぇぇ!!!!」
「みんにゃにげちぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
「う~う~!!うーーーーーーーー!!!!」
「いぢゃいっいぢゃいぃぃぃぃっ!!!だじゅげでおねえぢゃぁぁぁぁ…か…!!!」
「ぎょべんねぇぇぇぇ!!!みんにゃちょまっちゃだめぇぇぇぇぇ!!!!」

天敵の攻撃にあっという間に狩られていく赤ゆたち…。
幸いここは入り組んだ森の中、知恵など無い赤ゆでも隙間に隠れることで何とか逃げ切れた…。
れみりゃは満腹になったのか元気良く飛び去って行った…。

「ゆぅ…たしゅかっちゃよ…。ゆぅぅぅ…。いぼうちょがぁぁぁ…。」
「おねーしゃんがぁぁぁ…。ゆええぇぇぇぇん…。」

生き残ったのは赤れいむ1匹と赤まりさ2匹だけであった…。
長女赤れいむと、次女赤まりさと四女赤まりさだ。
どうしてお父さんもお母さんも助けてくれないの…。
赤れいむは考えているうちに、徐々に現実逃避から目覚めていった…。
そうだ、何をとぼけていたんだろう。
自分たちは捨てられたんだ。助けに来るはずが無いのだ。
赤れいむに眠る生存本能が開花した瞬間だった…。

「よくきいちぇね…。きょきょはきけんだきゃらまじゅおうちをさぎゃすよ!」
「ゆぅ…。きょわいよ…。おとーしゃん…。おかーしゃん…。」
「おとーしゃんもおかーしゃんもたしゅけちぇくれにゃいよ!れーみゅたちだけで
 がんびゃらにゃきゃだめにゃんだよ!もういもうちょをしにゃせにゃいよ!!」

赤れいむの考案によりすぐにその場を離れることになった。行くあてなど無い。
ただ怖かった。これは現実、生き延びないといけない…。
死んだ妹たちのためにも絶対生き延びないといけないのだ。

3匹が移動を開始した頃、他の地域でも阿鼻叫喚の地獄絵図が繰り広げられていた…。

「おにゃかしゅいた…。」
「くしゃしゃんにぎゃいよ…。む~ちゃむ~ちゃ…ゆげぇ…。」

ある赤ゆは食べられる物が分からず飢えに苦しみ…

「みじゅしゃんにょむよ!ご~きゅご~きゅ…ゆぴっ!?」
「う…うぎょけにゃい…わきゃりゃにゃい…よ…。」
「きゃらだが…どぼじでちょけてるのぉぉ…。」

ある赤ゆは水の飲み過ぎで体が溶け始め…

「きょきょはありしゅのゆっくりピュレイシュだよ!ぷく~!!」
「ブ~ンブ~ン!!」
「ゆぱぺぺぺぺぺぺっむしちゃんやべでぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「むししゃんゆっくりちゃべりゃれてね!む~ちゃむ~ちゃ…ゆべぇぇぇぇぇ!!?」

ある赤ゆは蜂に襲われたり毒虫を食べたりして苦しみながら中身を吹き出し…

「ゆぅ~~~~!こりょぎゃるよぉぉぉぉ!」
「むきゅきゅきゅきゅっ!!?」
「ゆっ?おしょらをちょんでるみちゃ…ぴぎゃふっ!!!」
「あ…いぢゃ…お…が…ぢゃん…!!」

ある赤ゆは坂道を転がり崖にダイブ、地面に叩きつけられ…

あらゆる自然の猛威と赤ゆ自らの無知さで次々と赤ゆは死んでいった…。
この最初の試練…実は誰も生き残らず全滅するケースの方が多い。
仮に生き残っても100匹に1匹いるかいないかぐらいだ。
だからこそ生き残ったゆっくりは立派な兵隊になれるのだ。

案の定、あれから3日が経った時点ですでに全体の半数以上の赤ゆが死に絶えた。
死亡理由は実に多岐に渡るが、弱く学習しない赤ゆから死んでいったのは言うまでも無い。

そんな中、あの3匹はまだ生き残っていた。
上から垂れてきた朝露を啜り、虫の死骸を食べ、長い道のりをひたすら歩いた。
時折あまあまが落ちておりそれを食べて恐怖を紛らわした。
ちなみにそのあまあまは死んだ赤ゆの成れの果てであるが、3匹は当然気付かなかった。
…そして長い道のりの末、3匹は洞窟を見つけた。

「ゆっ!きょきょをれーみゅたちのおうちにしゅるよ!!」
「ゆ~♪やっちょゆっきゅりできりゅよ…。」
「ゆぅ…ゆぅ…ゆぅ~!」

洞窟はお世辞にも広いとは言えなかったが、赤ゆサイズなら十分にゆっくりできる広さだ。
3匹は久しぶりに緊張から解放され、やっと少しゆっくりできた。
ここに来るまでに、長女の赤れいむは目覚ましい成長を遂げていた。
2匹の妹を守りたいという願いのおかげか、ゆっくりとは思えない速度で物事を覚えた。
野生の感で食べてはいけない食べ物も何となく理解できるようになった。
夜になるとれみりゃの数が昼より増えることも学び、夜は極力動かないようにし、身を隠した。
水場の近くで破れたリボンや髪飾りを発見し、水は沢山あるとゆっくりできないことも覚えた。

覚えたと言ったが、これらの記憶は全て親から受け継がれた記憶である。
だが普通の赤ゆは親に守ってもらえるという安堵感からそれを自力で思い出すことは無い。
この赤れいむは極限の状況と姉としての使命感でそれらを急速に自分の記憶として取り戻していたのだ。

「まりしゃおにゃかしゅいたよ…。ゆぅぅ…。」
「まっちぇね!れーみゅがちょってくりゅよ!!」

赤れいむは必死に親の代わりに食料を集めた。
赤ゆが集められる食べ物などたいしたものでは無いが、無いよりはマシだ。
高い所にある木の実などは取れないが、落ちて潰れた木の実なら入手できた。
昨日から何も食べてなかったっけ…。赤れいむはできるだけ口に食べ物を含み、
妹たちに分け与え仲良く食べた。

「む~ちゃむ~ちゃ…。しあわしぇぇ~…!」
「しょうしょう…。れみりゃにみちゅかりゃにゃいようにしじゅかにちゃべりゅんだよ…。」
「ゆ~♪おねーしゃんといりゅとゆっきゅりできりゅよ…!」






5日が経った日には雨が降った…。洞窟の奥にできるだけ移動し震えて過ごした。
雨は絶対ゆっくりできないと分かっていた。外に出たくても出られなかった…。

その頃他の場所では…

「おみずしゃんがふっちぇるよ!ご~きゅご~きゅ!」
「おみずしゃん!ゆっきゅりしちぇいっちぇね!!」

この2匹の赤れいむは愚かにも雨の中元気にはしゃぎ回っていた。
雨など初めて見たので恐ろしさが分からず、むしろ初めての雨に興味を示してしまったのだ…。

「ゆぅぅ?にゃんかきゃらだがうぎょかにゃい…どぼじでかりゃだとげでるのぉぉぉ!!?」
「ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛…!」

言わんこっちゃ無い。このように雨を警戒せず溶けて死んだ赤ゆは少なくなかった。
また、雨を凌げるおうちを見つけられなかった赤ゆも溶けていった…。

「むきゅ!きょきょにゃらへいきよ!」
「ぱちゅりぃーはかしきょいねー!わきゃりゅよー!きょきょにゃらあんしんだねぇー♪」
「うぁ?うー♪」

逃げ込んだ所に雨宿りしていたれみりゃがいた…なんてこともあった。

「うー!」
「わぎゃりゃにゃいよぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!わぎゃりゃ…にゃ…。」
「むぎゅぎゅぅぅぅ!!ゆっきゅりできにゃいぃぃぃ!!!」

赤ちぇんが食われているうちにそこから逃げた赤ぱちゅりーだったが…。

「ぶぺぺぺぺぺぺぺっぺちゅむげっぴゃ…っ!!」

ちょうど雨が強くなり赤ぱちゅりーは弾丸のような雨粒によって蜂の巣になった。

雨はゆっくりにとって死の使い…。容赦無く赤ゆの命を刈り取っていく…。
結局雨は次の日に止んだが、赤ゆの数は当初の1割以下になっていた…。





雨が止んだ6日目、あの3匹の中の1匹に異常が起きていた。

「いぢゃいぃぃ…!ぐりゅじぃよぉぉぉぉぉぉ…!!」
「ゆぅぅぅぅ!じっがりじでぇぇぇぇぇ!!!」

次女のまりさが突然苦しみだし、体中に黒い斑点ができていたのだ。
原因は言うまでも無く『カビ』である。
湿った洞窟でじっとしていたため、運悪くカビに浸食されてしまったのだ。

「ゆぅぅ!まっちぇちぇね!れーみゅおいちいもにょとっちぇくりゅよ!!」

もう1匹の赤まりさに看護を任せ、赤れいむは食べ物を集めに向かった。
沢山おいしいものを食べればきっと元気になるはず。赤れいむはカビのことまでは知らなかった。

「ゆぅぅ!いもうちょのためにちゃべられちぇね!!」

頑張ってジャンプして休んでいたバッタを捕まえた。
死んだばかりで原形を留めていた他の赤ゆを噛みちぎり、中身を吸い出した。

赤れいむは思えば他の生きている赤ゆに1度も会っていなかった。
それ程エリアが広くバラバラに家族単位で解放されてた訳だが…。
他のゆっくりに出会えないということは情報が得られないということでもある。
あの斑点の正体が分からない以上、食べ物を集めることしかできなかった…。

1時間ほど経ち、赤れいむは体を2倍近く膨らませ洞窟に戻った。
これを食べればきっと元気になってくれる…そう信じて…。

「いみゃかえっちゃよ!ゆええっ!みちぇみちぇ!いっぴゃいありゅよ!!」

だが現実はどこまでも残酷で非情である。

「ゆぅ?れーみゅのいもうちょどきょ?かえっちぇきちゃよぉ…?」

洞窟を見渡して見たもの…赤れいむは何だか分からなかった…。

「ゆ……?ゆ……っ!?」

凍りつく赤れいむ。赤れいむが見たもの…

それは

真黒になって朽ちた何かと

潰れて痙攣している赤まりさの姿だった…

「ゆぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!どぼじでっにゃにがあっちゃのぉぉぉぉぉぉ!!!!?」




…赤れいむが帰って来る5分ほど前…

「いぢゃいっいぢゃいいぢゃいいぢゃいいぢゃいぃぃぃぃぃぃ!!!!」

赤まりさのカビは全身を浸食し激しい激痛を与えていた。
健康な方の赤まりさは姉が帰ってくるまで懸命に看護をした…が…

「いぢゃいいぢゃいいぢゃいぃぃぃぃぃ!!!!じんじゃうぅぅぅぅぅぅぅっ!!!!」
「ゆぅぅぅ!!?あびゃれにゃいでね!あびゃれ…ぴぎゃっ!!?」

暴れるカビまりさのタックルを食らい、健康な赤まりさは壁に激突した。
その際に運悪く尖った部分に激突してしまい致命傷を負ってしまったのだ。

「ゆ…ゆげぇっゆげぇ!!いぢゃいぃぃぃぃぃぃ…!!」
「いぢゃいいぢゃいぐるじ…ゆびゅげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!」

そして赤れいむが帰ってきて現在に至る。
すでに手遅れであった。カビた赤まりさはすでに絶命し、
壁に当たった赤まりさも出餡多量で死んでしまった…。

「うしょ…。うしょでしょ…。どぼじで…どぼじでぇぇぇぇぇぇ!!!!
 ごべんねぇぇぇぇぇ!!まみょってあげりゃれにゃくてごべんねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

赤れいむは自責の念に駆られ、絶望と孤独感からひたすら泣き叫んだ。
れみりゃに気付かれなかったのが不幸中の幸いであったが…。
その日赤れいむは2匹の死を受け入れ、そっと土を掘って埋葬した…。
集めた食べ物をお供えして…。





そして約束の日、エリアCに軍人鬼異惨の部下が『ゆカウター』という道具を使い生存ゆっくりを探していた。
ゆカウターはゆっくりの中身に反応し場所を突き止める便利な道具だ。

「見ろ。生存ゆっくり発見したぞ。」
「本当だ…。今回も全滅だと思ってたがな…。」
「ゆ…ゆ…。」
「死にかけてるぞ!死なれたら迷惑だ!すぐに治療してやれ!!」

赤れいむにもカビが移っていたのだ。人間のオレンジジュース治療によって
回復したが、心の傷は決して癒えなかった…。

「報告です。今回1匹だけ生存ゆっくりが存在しました。れいむ種です。」
「ほう…。れいむ種とは珍しいな…。1匹だけでも良しとするか…。」

軍人鬼異惨は赤れいむが入っているケースに近づき声をかけた。
赤れいむは精神的にだいぶすり減っていたが、それも計算のうちだ。

「まずはおめでとうと言いたいが、貴様も苦労したろう。
 大切な家族を失ったか?それは何故だと思う?」
「ゆ…?ゆ…。」
「それは貴様の親が貴様らを見捨てたからだ。
 見捨てずに大切に育てられればこんなことにはならなかっただろう。
 だが貴様は生き延びた…!本来なら死んでいるはずなのに見事に生き抜いたのだ…!!
 分かるか?貴様は自分を捨てた親に勝ったのだ!!」
「ゆ…。れーみゅの…かち…?」
「そうだ。例え大切な姉妹が死んでしまっても、貴様さえ生きていればその死は無駄では無い!
 我に付いてこい…。貴様を立派な軍ゆに育て上げ、強くしてやる…!!
 強くなればもう大切な者を失うことは無い。もう自分の無力さに嘆くことも無くなるのだ!!」
「ゆぅ…。れーみゅ…ゆっきゅり…できりゅ…?」
「それは貴様次第だ。貴様が真に強いゆっくりになった時、
 貴様は本当の意味でゆっくりできるようになるだろう。」

鬼異惨の説得に赤れいむは奮い立った。死んでいった者たちのためにも…。
自分がその分頑張ってゆっくりするんだ…!
そして自分を捨てた親を見返してやるんだ…!!

「れーみゅ…ぎゃんばるよ!しぇきゃいいちのゆっきゅりににゃるよ!!」
「その意気だ!死んだ仲間たちも天国で応援してるぞ!さぁ、我と共に来い!!」
「えい、えい、ゆぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」

赤れいむは見事に洗脳されていた。
自分たちがこんな目に遭ったのも結果から見ればこの鬼異惨のせいなのに…。
だが知らぬが仏、嘘も方便。
今の赤れいむには鬼異惨と歩む栄光の道しか見えていなかった。




「いや~、ナイス演説でしたね!あの単純饅頭あっさり引っ掛かって…って痛っ!!?
「愚か者め!我は強き者が好きだ。無論ゆっくりでもだ。
 あのれいむ…鍛えれば必ず立派なゆっくりとなろう。」
「いたた…。オレも強いっすよ!だから今度一緒に食事でも…って痛っ!!?」
「このヘタレめ!我はあのれいむを鍛え上げる作業が残っているのだ!」
「変わったお方だ…(ああ、もっと殴って…っ!!)」


…その後この赤れいむはゆっくり専用の格闘技『Y-1』で優勝を飾るほどの強さを手に入れ、
軍人鬼異惨の良き相棒となった。


訓練の過程で多くの弱きゆっくりを死に追いやり、
その冷徹さを買われいつの間にかゆ虐七連星にスカウトされた軍人鬼異惨。
組織に入ることでより確実に強いゆっくりを探せるようになると考えた鬼異惨は
七連星に入ることを承諾したのだ。

軍人鬼異惨は幼い頃親に捨てられ孤児院で暮らしていた頃があった。
それでも努力して今の強さを手に入れたのだ。
彼女は頻繁に捨てられ、そして死んでいく赤ゆのことを見て、
自分の過去と重ねていたのかもしれない…。

ゆっくり…愚かで弱くて害獣と言われているが果たして本当にそうであろうか?
彼女はそうは思わない。必ず強い心を持つゆっくりは存在するのだ。
弱い立場のゆっくりを強くすることが彼女の生き甲斐であり、
過去のトラウマを消す唯一の方法なのである。


軍人鬼異惨…ゆ虐七連星の紅一点。弱きゆっくりを嫌い強きゆっくりを好む。
男顔負けの態度と強さで今日も強きゆっくりの発掘・訓練を行っている…。




過去作

2517 ちぇんマー投げ
2526 ゆンペルダウン
2550 痙攣鬼異惨の日曜日
2560 分からないだらけのゆん生
2570 馬鹿とゆっくりは使いよう
2585 ゆっくり飼育書
2600 食ゆ鬼意山の罠
2619 少年と秘密の箱庭
2627 生死の要因

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2009年05月18日 14:06
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。