※最初で最後の
ゆっくり虐待に挑戦中です。
※どくそ長いです。
※うんうん、まむまむ描写あり。
※標的は全員ゲスです。
※虐待レベルはベリーハードを目指します。
※虐待パート小休止中。虐待のほかにもいろいろ書きたいことはある。
※以上をご了承頂ける方のみどうぞ。
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『永遠のゆっくり』14
この群れの中で、私たちは飼われることになった。
どれだけ懇願しても聞き入れられなかった。
群れはもとより、私のあのれいむさえ、私の懇願に耳を貸さなかった。
「おねえさん、いいかげんにしてね!
むれのみんながそろそろおこりはじめてるんだよ!!
ききわけがわるいとおもわれるとおしおきされちゃうよ!!」
「れいむ。本当に、お世話してくれるのは有難いと思うわ。
だけど、私たち人間は、あなたたちゆっくりとは違うの。ここではゆっくりできないわ」
「おねえさんはまだほんとうのゆっくりをしらないんだよ!!
にんげんさんのむれより、ここのほうがずっとゆっくりできてるよ!
ほんとうのゆっくりをおしえてあげようって、おねえさんのためにみんながんばってるのに、
おねえさんがすなおにいうことをきかないからみんながおこってるんだよ!
ゆっくりりかいしてね!!」
「れいむ……」
「きょうのごはんだよ!!ゆっくりたべていってね!!」
上から落とされるのは、私たちの食事だった。
野草、茸、芋虫、蝶の死骸。
とてものこと食べられる代物ではない。
「こんな……食べられないわ。人間はこういうものは食べないのよ」
「もんくをいわないでね!!
むれのみんなが、とくべつゆっくりできるごはんをおねえさんたちのためにわけてくれてるんだよ!!
ごはんはそれしかないからね!すききらいをいうともうあげないよ!!」
れいむのその言葉を、私は苦い気持ちで聞いていた。
それは、かつて私がれいむに言っていた言葉だった。
『ご飯はそれしかありませんからね。好き嫌いするならもうご飯はあげませんよ』
『ゆゆぅ~!ごみぇんなちゃい!!むーちゃむーちゃ、それにゃりー……』
『わあ、ちゃんと残さず食べられたじゃない。偉いわよれいむ!』
『ゆっへん!れいみゅはしゅききりゃいしにゃいよ!』
『いい子のれいむはなでなでしてあげましょうね』
『ゆゆっ!おねえしゃんのなじぇなじぇだいしゅき~!』
「れいむ……お願いよ、せめてここから出して。逃げたりしないわ」
「ゆっ!おねえさんはまだゆっくりできてないからだめだよ!」
「でも……」
「くちごたえしないでね!むれのなかには、にんげんさんをきらってるゆっくりもいるよ!!
ゆっくりできないままでそとにでたら、ほかのゆっくりにいじめられちゃうよ!!
いいこになったらおそとにつれていってあげるからね!!ゆっくりいっしょにがんばろうね!!」
『おしょとにでちゃいよ!!おしょとにでちゃいよ!!おしょとでゆっきゅりしちゃいぃ!!』
『まだ駄目よ、れいむ』
『なんじぇえぇ!?おしょとであちょびちゃいぃ!!おちょもだちちゅくりちゃいいぃ!!』
『お外には、野生のゆっくりを嫌っている人もいるの。
今のままで外に出たら、そういう人たちに苛められちゃうわよ』
『ゆゆっ!?いじめりゃれるのはいやぢゃよ!!ゆっきゅりできにゃいよ!!』
『そうね。でもね、れいむが言うことをよく聞くいい子になれたらバッジをもらえるわ。
バッジをもらえば、もう人間さんにいじめられないの。
そうしたらお外に連れていってあげられるのよ』
『ゆっ!!ゆっきゅりわかっちゃよ!!れいみゅがんばっちぇいいきょになりゅきゃらね!!』
『うふふ、一緒に頑張りましょうね』
毎日、ゆっくり達は丈夫な蔓を垂らし、
その蔓に掴まってこの穴の底まで下りてきた。
その蔓を奪って上に登る手も考えたが、蔓がどこに繋がれているかもわからない。
ゆっくりが地上で蔓を掴んでいるだけかもしれず、だとしたら、
ゆっくり程度なら支えられはしても、人間が体重をかけたとたんに蔓ごと落ちてきかねない。
何より、そういう時は決まってドスまりさが笑顔で見守っていた。
ドススパークという兵器を備えているドスの監視下では、どんな抵抗も無意味だろう。
「ゆっゆっ!!おねえさんはゆっくりできてる?!」
「だめだよ!きょうもごはんさんをたべてないよ!!」
「ゆっくりできないね!!おねえさん!ぐずぐずしないでごはんをたべてね!!」
群れのゆっくり達は、降りてくるたびに食事をすることを要求した。
私はその度に首を振ったが、ゆっくり達の苛立ちは日増しにつのるようだった。
「なんでごはんさんたべないのおぉぉ!!?ゆっくりできないでしょおおぉぉ!!」
「わかるよー、すききらいするにんげんさんはゆっくりできないよー」
「むきゅう、あまやかされてしたがこえちゃってるのかしら?
みんな、しんぼうづよくしつけましょう!」
「ゆっくりわかったよ!おねえさん!!さっさとごはんをたべてね!!」
施設から運び出したあのゆっくり達も毎日降りてきていた。
この子達の目的は明確に長浜圭一だった。
「ゆっへっへ!!ごみくず!!きょうもかわいがりにきてやったんだぜ!!
かんしゃするんだぜ!!どげざしておれいをいうんだぜええ!!」
「ひきょうなてをつかってまりささまにかったぐらいでかんちがいするなだぜぇ!!
いまこそけっちゃくをつけるんだぜ!!ゆっ!!ゆっ!!ゆっくりしね!!」
「しね!!しね!!あかちゃんかえせぇぇぇ!!!ゆっくりするなあぁぁ!!!」
「ごみくず!!よくもよくもあんなことができたね!!なんとかいってねぇ!!」
「すっきりするな!!ゆっくりするな!!いなかものおぉぉぉ!!!」
「あやまれ!!あやまれえぇぇ!!」
十三匹のゆっくりが、寄ってたかって長浜圭一に体当たりを浴びせる。
本来なら人間にとってたいした痛手ではないが、
折れた脚をかばっている状態では相当辛いらしく、
長浜圭一は黙って受けながら、しばしば苦痛に顔をしかめていた。
「ゆっ!ころしちゃだめだよ!!つがいがしんだらおねえさんがゆっくりできないよ!!」
群れのゆっくりは止めるでもなく、遠巻きに声をかける。
「ゆっくりわかってるよ!!」
「いわれなくてもすぐにはころさないのぜ!!いっしょういじめぬいてやるのぜぇ!!」
長浜圭一は何も言わず、うつむいたままただ黙って耐えていた。
この男があのゆっくり達にしてきたことを考えれば、止める気は起こらなかった。
ざまあみろ、という子供じみた心情がなくもなかったが、
しかし、正直、見ていて楽しい光景でもなかった。
「ゆっ!!おねえさん、よくみててね!!
ゆっくりをいじめたにんげんさんはああいうめにあうんだよ!!ゆっくりりかいしてね!!」
「ああなりたくなかったら、とかいはなありすたちのいうことをよくきいてせれぶなにんげんさんになりましょうね!!」
「ゆぅ~、れいむのおねえさんはだいじょうぶだよ!!あんなふうにはならないよ!!」
「でもこのおねえさん、わがままだよ!!いうことをきかないよ!!」
「ゆっ、とまどってるだけなんだよ!!そのうちおちついたらいうことをきくはずだよ!!」
群れのゆっくり達が諭してくる。
しかし、私は頭上に開いた穴から覗きこんでいるドスまりさに向かって今日も訴えた。
「ねえ、私の言うことを信じて!
本当に危ないの。もうすぐここに人間さんがやってくるわ!」
「ゆゆぅ~、それはききあきたよ!!もういいよ!!」
「取り返しがつかないことになるのよ!
あのゆっくり達が、いいえ、もしかしたら他のゆっくり達も巻き添えになるかもしれない。
次に人間に捕まったら、本当の地獄の苦しみを与えられることになるわ!
それこそ、あのお兄さんがやったことなんてままごとよ!それぐらいの目に逢うのよ!!」
「ゆふぅ~、どすはにんげんさんなんかにまけないよ!!
ゆっくりできないにんげんさんはどすがどすすぱーくでやっつけるよ!
どすのむれはどすがまもるからね!ゆっくりあんしんしてね!!」
「ゆぅぅ、どすはゆっくりできるね!!」
「どす!!どす!!ゆっくり!!ゆっくり!!」
この話を持ち出すたびに、いつもこのパターンでうやむやにされる。
威勢のいいことを言うドスに、群れのゆっくり達は興奮して飛び跳ね騒ぎ、私の言うことになど耳を貸さない。
無力感に襲われながら、私はもう一つの訴えを口にした。
「ねえ、春奈はどこ!?」
「ゆっ?ちいさいおねえさんのこと?」
何度も名前で呼んでいるが、人間の名前は覚えてくれない。
「私の子供、おちびちゃんなのよ。お願いだから子供に会わせて!」
「むきゅ、なんどもいってるわよ!!だめよ!!」
今度はぱちゅりーが口をはさんでくる。
周囲のゆっくり達がひそひそと言葉を交わした。
「ゆぅ、やっぱりにんげんさんはあたまがわるいんだね!」
「なんどもいってるのにおぼえられないみたいだよ!かうのはむりだよ!!」
「ゆゆっ、れいむのおねえさんならだいじょうぶだよ!!
なんかいもいっていればおぼえてくれるよ!みんな、がんばってしつけようね!!」
ぱちゅりーは私に向かって続けた。
「おねえさんのおちびちゃんはほかのところにかくりして、むれのためにはたらいてもらってるわ!
だからあんしんしなさい、むきゅ!」
「一目でもいいから会わせて!食べるものもないのよ!」
「むきゅ、ちゃんとたべてるからしんぱいしなくていいわ!」
「たべてないよ!」
群れの中から、口を挟むゆっくりがいた。
「ごはんはあげてるけど、ちいさいおねえさんもたべてないよ!」
「むきゅ、よけいなことをいわないでね!!
よけいなしんぱいをさせたってなんにもならないでしょ!!あんしんさせようときをくばってるのに、むきゅ!!」
「ゆゆっ!!ゆっくりごめんなさいだよ!!」
ぱちゅりーの一喝でそのゆっくりは口をつぐんだ。
「ねえ、食べてないの!?お願い、会わせて!!ここじゃ生きていけないのよ!!」
私はそのゆっくりにすがったが、そのゆっくりは口をつぐんだままそそくさと群れの後方へ引っこんでしまう。
代わりにぱちゅりーが言葉をかぶせてきた。
「おだまりなさい、むきゅ!
かんたんなことよ!にんげんさんがいいこでいれば、すぐにこんなところはだしてあげるし、
おちびちゃんにもあわせてあげるわ!
いまおちびちゃんにあわせたら、にんげんさんだけでゆっくりしすぎて、むれではいきていけなくなるおそれがあるのよ!
ゆっくりりかいしてね!」
群れの他のゆっくり達が、ぱちゅりーに同調して飛び跳ねる。
「おねえさん!れいむたちだって、おねえさんにおちびちゃんとゆっくりしてほしいよ!!」
「そうだよ!!かぞくでいっしょがいちばんゆっくりできるよね!!」
「だけど、いまゆっくりしすぎたらゆっくりできるにんげんさんになれないよー。
ちぇんたちだってつらいんだよー、わかってねー」
「ねんをおすけど、すっごくかんたんなことなのよ、むきゅ!
みんなのいうことをすなおにきいて、ゆっくりできるにんげんさんになればいいだけよ!
おちびちゃんにあいたかったらよくかんがえなさい!」
夜になれば、穴はふさがれた。
ドスまりさが蔦を結び合わせて作った大雑把な網が穴の口に差し渡され、
葉の多い木の枝が何本も網にかけられてカモフラージュされた。
この穴は、もともとゆっくりの巣だったらしい。
地下に掘られていた巣が、天井が崩れて大穴があいたために捨てられたのだろう。
空腹と心労で眠るどころではなかった。
ここに来てからもう三日が経つ。その間何も食べていないし、飲んでもいない。
腹がぐうと鳴り、みじめな気分になる。
穴の壁にもたれかかり、私は呻いた。
「腹が減ったか?」
見ると、長浜圭一が近付いてきていた。
暗がりでよくわからなかったが、片膝立ちでこちらににじり寄ってきたらしい。
「あなたは?」
「俺はいい。あんたは?」
「お腹すいてるわよ」
「食うものならあるぞ」
そう言って、長浜圭一は右手に何かを載せて差し出してきた。
暗くてよくわからなかったが、近付いて目をこらすと、餡子らしかった。
「あなた……どうしたの、これ?!」
「別にゆっくりを潰したわけじゃない。
昼の間、あのゆっくり共が俺をいじめていたろう。
その時に糞もかけられた。それを集めたんだ」
「………うんうんなの?」
「人間にとっちゃ、ゆっくりの排泄物はただの餡子だ。問題なく食えるだろう」
「……あなたは食べないの?」
「俺の分はもう食った。食え」
差し出されるまま、私はその餡子を受け取って口に入れた。
水がほしかったが、それでも餡子はとてもおいしかった。
私が食べるのを見届けると、長浜圭一はすぐに離れ、
穴の反対側の暗がりに引っこんでしまった。
すでに三日目の夜がふけようとしていた。
進退きわまり、私はこの穴の底で思い悩んでいた。
予想していたよりも遅すぎる。
あの車の発信機で、長浜圭一はバイクですぐにここをつきとめた。
長浜圭一と須藤春奈、計画の首謀者が二人行方不明となっている今、捜索が始まっていないということはないだろう。
捜索が始まったなら、足跡を辿るなり付近のゆっくりを問い詰めるなりして、
一日もかからずにここは突き止められるはずだ。
しかしすでに三日が経とうとしている。
想像していたよりも捜査が困難なのか、
それとも、考えにくいことだが、なにかの事情で見捨てられたか。
携帯電話があれば知人に連絡がとれるのだが、
悔しいことに、携帯を含めた荷物はすべて車の中に置いてきてしまった。すぐに戻ってくるつもりだったからだ。
長浜圭一はといえば、目隠しをしている間になにかの拍子に落としたと言っている。
外界と連絡する手段は一切が立たれていた。
本来、望ましい成り行きのはずだった。
あのゆっくり達を追っ手から逃がすためにここまで来たのであり、
探しても見つからないのであれば喜ぶべきなのだ。
しかし、私はどうなる?
穴の底から這いあがれず、ドスまりさに見張られてどうすることもできない。
助けがこないなら、私と長浜圭一は、ここでどうすればいいのか。
いや、どうなるのか?
ゆっくりの排泄物を口にしながら、ここでずっとゆっくりに飼われながら生きていく?
その可能性に思い当たり、私は心底ぞっとした。
悪寒、屈辱、閉塞感。
冗談じゃない。
「おねえさん…」
暗闇の中に、声が響いてきた。
見上げると、穴の口をふさぐ枝の一部をどかし、一匹のゆっくりが見下ろしているようだ。
声のニュアンスで、私のれいむだと知れた。
「おねえさん、ゆっくりできてる?」
「…………ゆっくりできてないわ」
「ゆゆ~、ゆっくりしていってね……」
私は立ち上がって叫んだ。
「れいむ!お願いだから話を聞いて!!」
「ゆゆっ?なんでもいってね!」
「今すぐここから出して!春奈にも会わせて!
ドスまりさのいない今ならできるわ!」
「ゆっ!だめだよ、おねえさん!!
ここじゃないとほんとうにゆっくりできないんだよ!!おねがいだからゆっくりりかいしてね!!」
もしかしたら助けに来てくれたのではないかという淡い期待はもろくも裏切られた。
本心から、このれいむは私をペットだと思っている。
「おねえさん……どうしてみんなのいうことをきかないの?」
「人間はここじゃ暮らせないのよ。
あなたたちゆっくりの食べ物は私たちは食べられないわ!」
「ゆっくりがまんしてね!ここのごはんさんはそれしかないよ!」
「私の家に住んでいた時は、あなたももっとおいしいご飯を食べていたでしょう?」
「ゆゆっ!あまあまはゆっくりできたよ!
でもむれのみんなとむーしゃむーしゃするほうがもっとゆっくりできるんだよ!!
にんげんさんのむれはゆっくりできなかったよ!!」
「にんげんさんはゆっくりできる」、それがこのれいむの口癖だった。
そのれいむが今、人間はゆっくりできなかったと断定していた。
いざという時のことを考え、日頃から甘くない食事をする訓練をしていたことを、
私は初めて後悔した。
いっそのことあまあまばかりを食べさせて舌を肥えさせておけば、
野生の群れに溶け込むこともできず、私の脱出に協力してくれただろう。
「そんなにここがゆっくりできるの?」
「ゆっ!あたりまえだよ!!ここはさいこうのゆっくりぷれいすだよ!!
おねえさんもすなおになってこころをひらけばすぐにわかるよ!!」
「群れは楽しいことばかりじゃないのよ?冬籠りは辛いわよ。
森の食べ物なんてすぐに食べつくして、いつも移動しているのがゆっくりの群れ。
れみりゃやレイパーに襲われることだってあるのよ?」
「ゆゆぅ~、だいじょうぶだよ!みんなとちからをあわせればのりこえられるよ!!」
ゆっくりの群れに初めて参加したばかりのれいむは舞い上がっているようだった。
大勢の同種の仲間ができたことを今はひたすら喜んでいるが、
自然の厳しさがまるで実感できていない。
人里に近い群れでは、冬籠りを初めとした自然の厳しさに苦しみ、人里に下りてくるゆっくりが後を絶たないというのに。
冬が来れば、人家の庇護に慣れきったれいむが早々に根をあげることは目に見えている。
しかし、今は夏だった。
どれだけ言葉をつらねても、「みんなとちからをあわせればへいきだよ」の一点張りで一蹴された。
「おねえさんはゆっくりできてなかったよ!」
れいむはそう言った。
「にんげんさんのむれは、みんないつもいそがしそうにうごきまわっててゆっくりしてないよ!
おねえさんだって、まいにちおそとにいって、れいむたちとあそんでくれなかったよ!!」
「それは……しょうがないのよ、れいむ。
人間の群れでは、みんな働かないと御飯が食べられないのよ。
ゆっくりだって狩りをするでしょう?」
「そんなのおかしいよ!ゆっくりよくかんがえてね!!
かぞくやおともだちといっしょにゆっくりするのがいちばんだいじなおしごとでしょお!?
かりもだいじだけど、それがおわったらみんなずっとゆっくりしてるんだよ!!
おねえさんのかりはながすぎるよ!!ぜったいおかしいよ!!」
『おねえしゃん!!どきょいきゅのおぉぉ!?』
『お姉さんはお仕事よ。いい子でゆっくり待っててね』
『いやぢゃ!!いやぢゃ!!ここにいちぇよおぉ!!あしょんでよぉぉ!!しゅーりしゅーりしちぇえぇ!!』
『めっ!わがまま言わないの。おしおきよ?』
『ゆうぅ!おしおきはやめちぇぇ……ゆっきゅりわかっちゃよぉ……』
『いい子ね。帰ってきたらたっぷり遊んであげるわ。お土産買ってくるからね!』
『ゆうぅぅ!!はやきゅ!はやきゅかえっちぇきちぇにぇぇぇ!!
おねえしゃんもゆっきゅりしちぇねえぇえ!!』
「……れいむ、ごめんなさい………」
「ゆっ!だいじょうぶだよ!!ここならおねえさんもゆっくりできるんだよ!!
たっぷりゆっくりしていってね!!」
私は首を振るしかなかった。
れいむはそれからも説得を重ねてきたが、私はうなずくわけにはいかなかった。
こんなところで一生を過ごすなんて考えられない。
ついにはれいむが癇癪を起した。
「いいかげんにしてよおぉ!!なんでわかってくれないのおぉぉ!!?
れいむやむれのみんながきびしいことをいうのはぜんぶおねえさんのためなんだよぉ!!
にんげんさんなんてゆっくりできないのに、
みんなはやさしいからおいださないでめんどうをみてくれてるんだよ!!
おねえさんがわがままをいってもがまんしてかってくれてるのに、
なんでおねえさんはじぶんのことしかかんがえられないのおおぉぉぉ!!?」
「れいむ…………」
れいむは怒鳴り、そのまま穴の淵から消えてしまった。
『わがままを言うんじゃありません!なんでわからないの?』
『ゆゆっ……』
『おねえさんはれいむには厳しく見えるかもしれないわ。
でも、れいむが憎いわけじゃないの。
れいむがいじめられたりしないように、れいむにはバッジが必要なのよ。
今はつらいけど、一緒にがんばりましょう』
『ゆゆぅ~……ばっじしゃんはゆっきゅりできりゅ?』
『ええ、とっても!』
『ゆっ!れいみゅ、がんばりゅよ!』
『そうね。そのためには自分のことばかり考えてちゃだめよ?
他の人やゆっくり達がゆっくりできるにはどうするかを考えられるのが本当のゆっくりなの』
『おねえしゃん……でも、れいみゅにはわきゃらにゃいよ……』
『それはこれからお姉さんが教えてあげるわ。少しずつ覚えていきましょうね』
『ゆっ!!みんにゃをゆっきゅりさせりゅよぉ!!』
苦い回想を噛みしめていると、数分後にれいむが再び顔を出した。
れいむは言った。
「……おねえさん。
ついきびしいことをいったけど、ほんとうにおこってるんじゃないよ。
れいむはいつもおねえさんのみかただからね。
みすてないからあんしんしてね。……ゆっくりおやすみなさい」
それきり、れいむは本当に行ってしまった。
私は泣いた。
悔しかった。
生まれたときから何年も躾け、愛し、人間との上下関係を教えてきた。
生来プライドの高いゆっくりを辛抱強く訓練し、
私の方が飼い主であり、人間に飼われているという立場を自覚させ、
その線引きをわきまえてこそゆっくりできるのだと教えてきた。
ゆっくりの本能に打ち勝ち、れいむの心身に沁み込んだと思いこんでいたその教えが、
ゆっくりの群れに入ったとき、一瞬でたやすく覆されてしまった。
今、私のれいむは、大勢の仲間たちに同調し、私をペットとして下に見ている。
理性では、当然のこととして理解できていた。
違う種族よりも、自分と同じ種族の言うことに従うのは生物として自然なことだろうし、
人間のもとで躾られ、様々なことを我慢させられてきたれいむにとって、
ゆっくりすることが何より優先され、正義とされるこの群れはまさに天国だろう。
今のれいむがやっていることに、生物として、不自然なところは全くなかった。
しかし、理屈でそう理解できても、感情まではコントロールできなかった。
私は地面に突っ伏して泣きじゃくった。
「あらゆるゆっくりと、考えうるかぎりの接し方を経験し、ゆっくりと仲良くなる方法を研究してきた」
長浜圭一が、暗がりの奥で喋っていた。
「あんた、そう言ったな」
「…………」
「ゆっくりに飼われる、というパターンは試さなかったのか?」
返答する気力もなく、私は泣きつづけた。
四日目の昼が訪れようとしていた。
「ゆっ!!ゆっくりしないでごはんさんをたべてね!!」
「おちびちゃんたちもおしえてあげてね!!」
「ゆゆっ、おねえしゃん!!ごひゃんしゃんはゆっきゅりできりゅんだよ!!
みちぇちぇにぇ!!むーちゃむーちゃ、ちあわちぇ~♪」
「ほら、おちびちゃんにだってできるんだよ!おねえさんもがんばろうね!!」
ゆっくりに囲まれながら私は苦しんでいた。
服の下を脂汗がしたたる。
切実な問題が私の体を襲っていた。
便意だ。
もともと多少便秘気味ではあったが、いいかげん限界だった。
オシッコの方は、真夜中に暗がりの奥でなんとか気付かれないようにすませたが、
大きいほうは気付かれないようにというわけにもいかない。
なにしろ証拠が残るのだ。
とうは立っているが、女として、排便を見られるのだけは避けたい。
そんなところを見せるぐらいなら死んだほうがましだ。
そう思って耐えてきたが、もう限界だった。
痛む腹を抑えながら、私はゆっくり達に訴えた。
「お願い……お願い、ここから出して……」
「またわがままいううぅぅ!!」
「いいきゃげんにしちぇにぇ!!れいみゅもおきょるよ!!」
「駄目よ。本当に駄目なの………あの、あれ、うんうんしなきゃ……」
「ゆゆゆっ!!」
ゆっくり達が顔を見合わせた。
「ゆっ!おといれさんをおしえるちゃんすだね!!」
「おねえさん!うんうんはきめられたところでしかしちゃいけないんだよ!!」
「いまおといれさんをつくってあげるからね!!」
見る間に数匹のゆっくりが、上から草の束を運んで洞窟の端に積み上げた。
「ちょっと……何、それ……?」
「ゆっ!おといれさんだよ!!うんうんはここでしてね!!」
血の気が引いた。
どうあってもここでしろというのか。
「い、嫌!嫌よ!絶対に嫌!!」
「なんでいうこときかないのおぉぉ!!?」
「おねえさんのためにせっかくつくってあげたんだよおぉ!!もんくいわないでつかってねえぇ!!」
私は拒否したが、拒否したところで事態は好転しそうになかった。
私は、せめてもの譲歩を願った。
「わかった……そこにするわ、するから……見ないで。みんな上に上がって待ってて」
「ゆっ!!だめだよ!!」
「そうだぜ!!まりさたちがおしえてあげないと、きっとまちがえるのぜ!!
なれるまではうんうんのしかたをおしえてあげるんだぜ!!」
「間違えない……間違えないから!!」
「いいかげんにしてねぇ!!さいしょからじょうずにできるわけがないでしょおぉぉ!!?
だまってれいむたちのいうとおりにしてねぇ!!」
ゆっくり達が意地になって飛び跳ねる。
私は長浜圭一の方を見た。
長浜圭一はいつもの様に、施設のゆっくり達に取り囲まれて体当たりを受けていたが、
今の話を聞いていたのか、こちらには完全に背を向けてうずくまっていた。
気遣いはありがたかったが、それでも踏ん切りがつかなかった。
わめきたてるゆっくり達に、私は首を振り続けた。
その時、施設のありす達が蔦に捕まって降りてきた。
今日も長浜圭一を苛めにきたようだが、遅れてきたのは珍しかった。
「ゆっ!おそかったね!」
施設のまりさがありす達に声をかける。
ありすは紅潮した頬を震わせて答えた。
「ゆふぅ~……きょうもたっぷりすっきりしちゃったわ!
にんげんはやくたたずのいなかものだけど、おはだとまむまむだけはとかいはね!!」
人間?
すっきり?
「どういう事?」
私は思わず聞いていた。
「ゆゆ?かちくのくせにありすにはなしかけないでね!
ごみくずとちがってありすはこうきなせれぶなのよ!」
「すっきりって何!?人間って誰のこと!?」
「ゆゆっ、きまってるじゃない。おねえさんのおちびちゃ――」
「よけいなことをいわないでね!!」
私のれいむが遮った。
「むれになれて、けいかいしんがとけるまでいっちゃだめっていってるでしょおぉ!?
せっかくおねえさんがなつきそうなのにいぃ!!」
「ゆふんっ、おしえてあげればいいじゃない!」
嗜虐を顔に浮かべて、ありすは言い放った。
「おねえさんのおちびちゃんは、むれのすっきりようにんげんとしてはたらいてもらってるわ。
にんげんのおはだはとってもすべすべですっきりできるってことを、
とかいはなありすがみんなにおしえてあげたのよ!
それからみんなあのおはだとまむまむにむちゅう。
やくにたたないくそどれいだったけど、むれでのおしごとができてよかったじゃない。
にんげんがあいてならあかちゃんはできないから、めんどうごとがなくてべんりよね!」
「いいかげんにしてね!おねえさん、ぜんぶうそだからね!!ね、みんな!!」
私のれいむが群れに賛同を求めると、不自然に統一された返答が返ってきた。
「ゆゆっ!れいぷなんてしてないよ!おねえさんはあんしんしてね!!」
「まりさもしてないのぜ!!あんしんするのぜ!!」
「しんぱいしないでおねえさんはゆっくりにしゅうちゅうしてね!!」
「にんげんさんはきもちいいけど、れいむはしてないよ!!あんしんしてね!!」
「おねえさんはしんぱいしなくていいから、みんなのいうことをきいてね!!」
ドスまりさも頭上から叫んでいる。
春奈。
まだ十一歳になったばかりの私の娘。
私の春奈が、おそらく食事もできないまま、何十匹ものゆっくりの慰みものにされている。
私は生まれて初めて、ゆっくりを潰したいという強い衝動にかられた。
しかし自分の力では穴から出ることもできず、ドスまりさが見張っている状況下ではそれもできなかった。
「私の子供には手を出さないで!」
「ゆゆっ!だからなにもしてないよ!!ゆっくりしんじてね!!」
「だいじょうぶだよ!!
にんげんさんはほかにおしごとがないからしかたないんだよ!!」
「おしごとをしないにんげんさんはおいておけないよー、わかってねー」
「そうなんだぜ!!でもまりさたちはなにもしてないのぜ!!」
「すっきりしたいなら私がしてあげるから!子供は許してよ!!」
私は叫んだが、あの施設のありすが断定してきた。
「くそばばあじゃすっきりできないわよ!いなかものね!
おちびちゃんのおはだのほうがすべすべですっきりできるわ!!
いちばんすっきりできるのは、うまれたばかりのおちびちゃんよ!!
わかったらもっとあかちゃんをつくりなさい!!」
「そんな……!」
「ゆゆっ!!」
群れのゆっくり達が色めきたった。
「おねえさん!!あかちゃんつくってね!!」
「れいむたちはなにもしないよ!!あんしんしてあかちゃんつくってね!!」
「あかちゃんはすっきりできるよ!!……まちがえたよ!!ゆっくりできるよ!!」
「おちびちゃんにはなにもしないからね!!あかちゃんつくってね!!」
満面の笑顔で、ゆっくり達は要求しつづけていた。
一縷の望みでもあれば、土下座でもなんでもして懇願しただろう。
悪意からの監禁であれば、相手の気がすむように自分を貶めてみせただろう。
しかし、このゆっくり達は、善意で私を監禁していた。
こうしたほうが私のためになると、心底から信じこんでいた。
私が何を懇願しようと、万が一にも聞き入れられることはないだろう。
私の願いを聞けば、私のためにならないと思っているのだから。
道は一つしかなかった。
このゆっくり達に服従し、群れのペットとして言われるままに従う。
そうやって安心させれば、ここから出られる。
出られさえすればチャンスもあるだろう。
長浜圭一が依然として背を向けているのを確認した後、
私は泣きながら、ズボンのベルトに手をかけた。
「やったよおぉぉ!!うんうんできたよおおおぉぉ!!!」
群れのゆっくり達が飛び跳ね、はしゃいでいる。
「ここがおといれさんだからね!!うんうんはいつもここでしてね!!ゆっくりおぼえてねぇ!!」
「みんな!れいむのおねえさんはやっぱりいいこだったでしょ!!ゆっへん!!」
「みんなでがんばったかいがあったねえぇ!!」
「えらかったね!!えらかったね!!」
「すーりすーりしてあげるね!!すーり、すーり!」
「おねえさん、そのちょうしだよ!
これからもいうことをよくきくいいこでいれば、いつもすーりすーりしてあげるからね!!」
「ごほうびをあげるね!!まりさのだいじなたからもののいしさんだよ!!
おねえさんがはじめていうことをきいたきねんだよ!!
これからもみんなのなかまになれるようにがんばろうねぇぇ!!」
「ゆゆぅ~、くちゃいよ!!にんげんしゃんのうんうんはゆっきゅりできにゃいよ!!」
「ゆゆっ、そんなこといっちゃだめだよ!!おねえさんはがんばったんだよ!!かわいそうでしょ!!」
自分たちの努力と勝ち取った美談に酔い、互いに頬を取り合って屈託なくはしゃぐゆっくり達。
そのどれもが、一点の曇りもない善意と達成の確信に満ちた表情を浮かべ、満ち足りている。
私は、うつむいてただ泣いていた。
泣いても無駄だとわかっていたが、どうしても涙を止めることができなかった。
その日から、私はゆっくり達の命令に服従した。
虫はどうしてもだめだったが、それ以外の食事はなんとか口に押し込んだ。
「うぶ……うぐっ」
「ごはんさんをたべたらむーしゃむーしゃしあわせーしてね!!
しあわせーをしないとゆっくりできないよ!!」
「む……むーしゃ、むーしゃ、しあわせー……」
「もっとおおきなこえでわらいながらいってね!!ゆっくりできるよ!!」
「むーしゃむーしゃしあわせー!!」
「よくできたね!えらかったね!!ごほうびにすーりすーりしようね!!」
『むーちゃむーちゃ、しあわちぇー!』
『こら!しあわせーはまだ駄目!黙って食べなさい』
『どぼちちぇえぇ!?むーちゃむーちゃちあわちぇーちにゃいとゆっきゅりできにゃいよ!!』
『食べながらしあわせーを言ったらご飯がこぼれちゃうでしょ?
ほら、こんなに散らばっちゃってるじゃない』
『ゆゆっ!!でもちあわちぇーちにゃいとおいちくにゃいよ!!』
『しあわせーは全部食べおわってからならしてもいいわ。
たくさん我慢してから最後にしあわせーしたほうがゆっくりできるわよ?』
『ゆぅぅ……ゆっきゅりわかっちゃよ……むーちゃ、むーちゃ』
『むーちゃむーちゃもだめよ。静かにお行儀よく食べてね。お行儀のいいゆっくりになればバッジがもらえるわよ』
『ゆゆぅ~………しあわせー!!』
『はい、よくできました!明日は「ごちそうさま」を覚えましょうね』
『れいみゅがんばっちゃよ!!なーでなーでしちぇにぇ!!』
「うんうんちゃんとしてるね!!いうことをきくおねえさんはゆっくりできてるね!!」
「うんうんをかたづけてくるからね!!おといれさんをきれいにしてあげるよ!!」
「おにいさんもおねえさんをみならってね!!そんなところにうんうんしちゃだめだよ!!」
長浜圭一のほうは、さすがに私の傍で便を処理するわけにもいかず、
夜中に反対側の壁に穴を掘ってすませているらしかった。
「おうちのなかでおといれさんいがいにうんうんするとゆっくりできないよ!!」
「おねえさんはいいこだからもうわかってるよね!!」
「ゆっくりできるね!!」
『これは何!?』
『ゆっ!おねーしゃん、おきょっちぇるにょ?れいみゅわりゅいこちょしちぇにゃいよ!』
『いいから答えて。これは何かしら』
『ゆゆっ!きゃわいいれいみゅのうんうんだよ!!』
『こら!決まったところ以外でうんうんしちゃいけません!』
『ゆっ!?れいみゅはうんうんがしちゃかっちゃんだよ!!ゆっきゅりきゃいしちぇにぇ!!』
『言い訳になってません!謝らないとおしおきよ?』
『ゆゆっ!やめちぇにぇ!やめちぇにぇ!!ごめんなちゃいぃ!!』
「ゆっくりおうたをうたおうね!!れいむがうたうからよくきいてね!!
ゆっゆっゆ~~♪ゆゆゆゆゆ~♪ゆ~ゆ~♪」
「れいむのおうたはゆっくりできるんだぜ!!
おねえさん、まねしてうたってみるんだぜ!!」
「……ゆっゆっゆ~~♪」
「ゆゆっ!やめてね!ゆっくりできないよ!!」
「きたないこえだね!!ゆっくりしたおうたをうたえないとなかまにはいれないよ!!」
「ゆっくりおしえてあげるからね!!がんばってゆっくりうたえるようになろうね!!」
「ゆっゆっゆ~~♪ゆゆゆゆゆ~……」
「きくにたえないんだぜぇぇ!!まじめにやるんだぜぇ!!」
『ゆゆ~ゆっゆ~♪ゆゆゆゆ~ゆ~♪』
『れいむ、静かにしなきゃだめよ。お隣さんの迷惑になっちゃうでしょ?』
『ゆゆっ!!れいみゅはおうちゃをうちゃいたいよ!!おうちゃはゆっきゅりできりゅよ!!
おねーしゃんもれいみゅのおうちゃでゆっきゅりしちぇにぇ!!ゆっゆっゆ~♪』
『だめよ!むやみに歌っちゃだめ。ゆっくりのお歌が嫌いな人間さんもいるんだから』
『にゃんでぇぇぇ!?うちょいわにゃいでにぇ!!』
『嘘じゃないわ。これからは、お姉さんがいいと言った時だけ歌うようにしてね。
明日は広い野原に連れていってあげるから、そこで一杯歌ってね』
『ゆゆゆっ!たのちみ~♪』
いつまでたっても助けはこなかった。
夏場の洞窟はひどく蒸し、服を変えることもできず、
汗や便の悪臭が洞窟内に充満した。
その悪臭のために、ここに下りてくるゆっくりはやや減少したが、
教育熱心なゆっくりや、長浜圭一への復讐にかられた施設のゆっくりは毎日やってきた。
一週間が過ぎたころ、私の心にはあきらめの影が差しこみはじめていた。
本当に、一生をこの群れの中で過ごすのかもしれない。
よしんば仲間と認められて外に出られたところで、私に割り当てられる仕事は何になるのか。
まさか本気で、私に子供を産ませ、それをすっきりに使う気でいるのか。
人間の常識も倫理もここでは一切通用しない。
まして家畜の子供など、鶏の卵のように利用されるだけだとしても不思議はない。
自殺の可能性さえ頭をよぎる。
助かりたかった。
この地獄から一刻も早く抜け出したかった。
同時に悲しかった。
自分の中でのゆっくり像が、憎々しいものに変わっていくのをどうすることもできなかった。
毎日ゴミ同然の雑草を食べさせられ、大勢の注視のもと排便させられ、罵られながら喉が涸れるまで歌わされた。
この生き物を、もはや前のように愛することはできないだろう。
そしてまた、自分自身も悲しかった。
確かに、私が今されていることは、かつて私がゆっくり達にしてきたことなのだ。
食事中の「しあわせー」を禁じ、歌も制限し、好き嫌いを許さなかった。
ゆっくりの要求を殆ど抑えつけ、一方的に人間に都合のいい常識を押し付けてきた。
それでも、ゆっくり達は曲がりなりにも私になついてくれた。
私のれいむがここで私の躾をしているのも、私を愛しているからこそだろう。
意趣返しというか、上に立つことの優越感は十分楽しんでいるようだが、私にそれを責める権利はない。
ここで世話をされながら、私はゆっくりに感謝することができなかった。
かつて私のゆっくりたちがしてくれたようには、自分の常識を曲げてまで相手の善意に報いることができない。
あれほどゆっくりを愛していたはずなのに、その善意に応えることができない。
ゆっくりのように、自然に無邪気に、強者の膝元に這いつくばることができればどれだけ楽か。
明らかに相手より弱い立場にいながら、私は弱肉強食という自然の摂理に逆らい、
人間としてのプライドに縛られて相手を怨むしかできない。
あれほど、ゆっくりを愛しているつもりでいた。
それは結局のところ、自分のほうが上に立っているという安全地帯での傲慢なままごと遊びでしかなかった。
いまや私は、
はやく見つけ出してもらい、娘ともども助け出してほしいというただそのことのみを願い、
ゆっくりをあの悪魔のような計画から守るという当初の大義は雲散霧消してしまっていた。
そんな私の弱さが何よりも悲しかった。
やがて八日目の昼になると、助けが現れた。
最終更新:2011年07月28日 19:51