※以上をご了承頂ける方のみどうぞ。
※最初で最後の
ゆっくり虐待に挑戦中です。
※どくそ長いです。
※うんうん、まむまむ描写あり。
※標的は全員ゲスです。
※虐待レベルはベリーハードを目指します。
※虐待パート小休止中。
※以上をご了承頂ける方のみどうぞ。
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『永遠のゆっくり』15
その日は特別暑い日だった。
私は疲れ果てていたが、ゆっくりに囲まれて歌わされていた。
無理に笑顔を作り、リズムをとって声を絞り出す。
「ゆっゆっゆ~……ゆ~ゆ~ゆゆゆ~……」
「ゆゆっ、ぜんぜんだめだよ!!やるきあるの!?」
「にんげんさんはほんとうにゆっくりできないわ、むきゅ!」
その時、突然、上空で物音がした。
バシュウウウ、となにかが吹き出すような音。
上を見ると、穴の口から見える空が、薄いピンク色の霧に包まれている。
「ゆゆっ!?なんなの!?ゆっくりできるもの!?」
「けむりさんはゆっくりしていってね!!」
ゆっくり達はしばらくうろたえていたが、やがて弛緩して地面に横たわり始めた。
「ゆゆぅぅ~~~……なんだかとってもゆっくりできるよ……」
「ゆゆゆぅ……ゆっくりしていってね……」
「ゆっくりするよぉぉ~~………」
だらしなく顔をゆるめ、地面に延びるゆっくり達。
声をかけてみても、ゆっくりするのに夢中といった様子で無反応だ。
しばらくしてから、ヘリコプターの音が聞こえてきた。
待っていると、果たして人間の姿が見えた。
「圭一さん!須藤さん!」
渇望していた人間の声だった。
あの施設の男たちらしい。
あれほど見つかるまいとしていた相手に対して、私はうれし涙を浮かべて声を返した。
「助けて!!助けてーっ!!」
すぐに縄梯子が垂らされた。
「圭一さん、来たわ!助けが来たのよ!!」
「ああ」
長浜圭一はさして感動もない様子で頷いた。
「大丈夫?登れる?」
「左足だけでも充分登れるさ」
長浜圭一を先に行かせ、尻を押してやる。
彼が無事に上がったのを確認すると、私も続いて梯子を登っていった。
「ゆっくりぃぃ~~~……」
「ゆっくり………ゆっくり………」
「ゆふぅ……ゆふぅ………」
地上に上がると、全てのゆっくり達が弛緩して地面に広がっていた。
どれもが究極のリラックスといった表情で、侵入者の人間たちを前にしてさえ反応しない。
ドスまりささえ弛緩してだらしなく広がり、その下に数匹のゆっくりを下敷きにしているが気づいていない。
十何メートル離れた草地にヘリコプターが止められており、
十数人のスタッフが集まって何事か準備している。
縄梯子を垂らしてくれた二、三人の男たちに聞いた。
「これは……何をしたの?」
「『ゆっくりオーラ』ですよ。
ドスゆっくりが常に微量のゆっくりオーラを放っていて、
周囲のゆっくりをゆっくりさせていることはご存じかと思います。
そのゆっくりオーラの成分を凝縮して強化し、さらにゆっくり以外に効力が現れないように合成したものを、
ガス爆弾にして上空からここに投げ込みました」
「そんなものまで作ったの?」
「いえ、あなたの娘さんの作品ですよ」
「……そう」
ゆっくり研究の第一人者である娘なら、こういうものを作ってもおかしくなかった。
一瞬聞き流しそうになったが、私は思い当たり、聞いてみた。
「そういうものを、娘があなたたちに預けていったの?」
「そうです」
「いつ?」
「出発の直前です」
「出発前って、誰の……?」
男は肩をすくめ、地面に腰を下ろしている長浜圭一のほうを見た。
長浜圭一が言った。
「ああ、もう言ってもいいだろう。あんたがあの施設を出発する前日だよ、須藤さん」
どういうことなのか飲み込めなかった。
混乱する思考がまとまらないままに、私は質問を繰り返した。
「出発………って?どういうこと?娘が……え?」
「あとは娘さんに直接聞いたほうがいい。
おい、博士はどこにいるんだ?」
長浜圭一が男たちに聞くと、ノートパソコンを携えた男が答えた。
「今から突き止めるところです。録画した映像です」
ノートパソコンの画面に映像が表示される。
それはひどく低い視点の映像で、暗い洞窟の中を映していた。
その洞窟の中、正面にいるのは……長浜圭一だった。
視界の隅には私の姿が時々覗いている。
「昨日録画したものです」
言葉を失って凝視しているうちに、視点が変わっていく。
映像は洞窟の中から地上に移り、森の中を縫って進んでいた。
「ありすの映像ですが、この後須藤春奈博士のところへ向かいます。
たどっていきましょう」
ノートパソコンの映像で道筋を確認しながら、長浜圭一が男たちの肩を借りて森の中へと進んでいく。
私はわけもわからず、その後を追った。
「んほおぉぉぉぉ!!おねえさんのまむまむぎもじいいいいぃぃぃ!!!」
「にんげんのおはだとかいはだわぁぁぁ!!んっほおおおぉぉぉぉ!!!」
「んほほほほほほほすっきりいぃぃぃーーーーーーっ!!!」
岩壁に穿たれた自然の洞窟の中に、私の娘はいた。
上半身を露わにして横たわる娘に、何匹ものゆっくりが身をこすりつかせていた。
スカートとパンツの他に何もつけていない春奈の体中がゆっくりの粘液にじっとり濡れている。
一週間もの間、恐らく何も食べていないだろう春奈がゆっくり達の慰みものになっていた。
脳髄に焼けた鉄が詰まったような怒り、いや激怒。
怒りのあまりに声も出せず、私はその洞窟に踏み込んだ。
「ゆゆっ!!にんげんさんだよ!!かってにぬけだしたの!?」
「かってにでちゃだめよ!!ゆっくりできないわね!!」
「れいむがおくってあげるからおうちにかえろうね!!」
順番待ちらしき、入口近くにたむろしていたゆっくり達が私のほうへ跳ねてきた。
その横っ面を力まかせに蹴りつける。
「ゆびぇ!!?」
蹴ったのは一匹のありす種だった。
そのありすは蹴られた勢いで吹っ飛び、洞窟の壁に叩きつけられて潰れ、カスタードをまき散らした。
明確な殺意をもってゆっくりを殺したのは初めてのことだったが、
怒りにかられている今の私は、そのことを意識さえしなかった。
放心状態で呆然としているゆっくり達を無視し、春奈の元にたどり着く。
春奈の体に身をこすりつけているゆっくり達、いや、ゆっくり共はすっきりに夢中で私に気づかないようだった。
「まむまむ!!まむまむ!!にんげんまむまむぎもじいいぃぃぃぃんほほほほほおおおお!!」
そのれいむは、春奈の口にぺにぺにを突っ込んで顎を振っていた。
私に背を向け、全身から粘液を飛び散らせながら一心不乱に顎を振るそのゆっくりの頭には、見慣れた飾りがついている。
私の……私がつけてあげたゴールドバッジ。
「んほっ、んほっほっほっほっヤバヤバヤバイ、イクイクイクイクイクんほっほっほおおおおおーーーーーっ!!
でるっ、でるでるでるよおおおおいっぱいでちゃうううぅぅ!!
かわいいれいむのおちびちゃんのもとたっぷりのんでねえぇぇぇぇ!!!
すっ、すっ、す、すすすすすっっっっきりいいいいいーーーーーーーーーーっ!!?」
れいむは、春奈の口の中に精子餡を流し込むことはできなかった。
射精の瞬間に後頭部を掴まれたれいむは、
私の手に掴み上げられた状態で空中に精子餡をまき散らしている。
「ゆっ!?ゆっ!?ゆゆゆゆゆっ!?ゆっゆっ!?」
「………れいむ。何をしてるのかしら?」
「ゆっ!?すっ、すっきりっ!?ゆううぅ!?れいむじゃないよ!?れいむなの!?ゆっゆゆゆゆゆ」
射精直後の放心状態も手伝って状況がつかめずにいるらしいれいむを、私はそっと地面に下ろした。
下ろされたれいむは、すぐにぷるぷると体を振り、正気を取り戻したようだ。
私のほうに向かって叫びはじめた。
「おねえさんなにしてるのおおおぉぉぉ!?
かってにでてきちゃだめでしょおおぉぉぉぉ!!!だれがでてきていいっていったのおおおぉぉぉ!?
おねえさんはまだまだゆっくりしてないんだよ!!べんきょうしなきゃいけないんだよぉ!!
わかってるの!?わがままもいいかげんにしてねえぇぇぇ!!」
バァン!!
私は靴を脱ぎ、靴の底をれいむの眼前の地面に叩きつけた。
「ゆっ」
れいむは硬直し、私の顔を見上げた。
その表情には、かつての「主」に対する感情が戻り始めていた。
「もう一度聞くわ、れいむ。私の娘に何をしていたの」
「ゆっ………ゆっ…………か、かわ、かわいいれいむをおこらないでね?ゆっくりして」
「答えなさい!!!」
再び靴を地面に叩きつける。
れいむのまむまむからちょろちょろと小便が漏れ始めた。
「ゆ…………ゆ…………ごべ、ごべんなざ……」
「誰が謝れなんて言ったの?何をしてたのかと聞いてるのよ」
「ず、ず、ずずずずずっぎ、ずっぎ………ごべ………ゆるじ、ゆるじでぐだざ……」
「すっき、何!?最後まで言いなさい!!」
「すっ、すっき……すっき……しょ………しょうがないでしょおおおおおおおおおお!!!?」
れいむは逆ギレして叫び始めた。
「これぐらいしかにんげんさんのおしごとがなかったんだよおおぉぉぉ!!
かりもできないし!おうちもつくれないし!かわいくないし!ゆっくりできるおうたもうたえないし!!
なんのやくにもたたないからすてようってみんながいうのをれいむがかばったんだよ!!
そしたら、そしたら、ありすがいったんだよ!にんげんさんはすっきりできるってえぇ!!
だからおしごとをあげたんだよ!!やっとにんげんさんのおしごとがみつかったんだよおおぉ!!
おしごとをしないとおいてあげられないでしょおおおぉぉぉ!!?」
言葉を失っていると、春奈が起き上がってきた。
「春奈!」
「やるって言ったのはあたしだよ、ママ」
そう言い、春奈は周囲のゆっくり達を掴んで投げ捨て、上半身裸のまま伸びをした。
「服はどうしたの!?」
「ゆっくりが持っていっちゃった。布団にしてるってさ。
スカートとパンツは髪の毛だと同じって言ったから助かったけどね」
「春奈……」
下半身のほうを見る。足は粘液に濡れていたが、内部まではわからない。
私の視線の意味を察知した春奈が説明してきた。
「大丈夫だよ。まむまむっていうのは、ここ」
春奈は自分の口を指差した。
「ここがまむまむだって教えてあげたの。それで、みんなこの中に出す出す。
つまり、食べ物には困らなかったってわけ」
それでも、娘は辛そうに息を吐いた。
「お茶飲みたい……一週間胸焼けしっぱなし」
「水なら持ってきていますよ」
「ありがと」
男の一人が水筒を差し出し、娘はごくごくと飲んだ。
「よかった………」
私は春奈を抱きよせた。
「わっ、ママ臭っ」
「あ……ごめんなさい」
「お互い様だけどね」
春奈が立ち上がり、男から差し出された大きなタオルを肩からまとう。
「本当によかった……あなたに何かあったら、ママは……」
「ファミリードラマをやってる状況じゃないんだ、ママ。
全部計算ずくだよ、こっちは」
「……何を言ってるの?」
「あのね、ママ。もう言っちゃうけど、最初から全部バレてるの」
春奈が言うには、私がゆっくり達をあの施設から逃がすと言い出したときから、
すべては施設のスタッフに筒抜けだったらしい。
春奈が早々にスタッフに伝えたこともあるが、そもそもはすべて監視カメラに映っている。
あの施設には、ほぼすべての部屋に監視カメラがあったらしい。
最新技術による監視カメラは小型かつ目立たない形状で、私には見つけられなかった。
「ママ、ドラマや映画の見過ぎ。
ヒーロー気取るのは簡単だけどさ、正義感だけじゃ運も環境も味方してくれないよ。
ママの脱出計画じゃ大雑把すぎて、気づくなってほうが無理だったよ」
「…………じゃあ……なんで止めなかったのよ」
「使えるかなって思ってさ。
あのゆっくり達の髪飾りに細工してあるのね、カメラと発信機。
あれがあれば、どこに行っても居場所はわかるし、カメラで見てる景色や話し声も筒抜け」
「…………」
「あたしは考えたのね、もしかしたらもっとドラマができるんじゃないかって。
一旦は人間に捕まって、ひどい復讐を受けるゆっくり。
ところが心優しい人間がゆっくり達を逃がしてくれる。
さて、人間に逃がしてもらったゆっくり達はどうするか。
逃がしてくれた恩人に対してどういう態度をとるか。
そういう事、全部記録してみたくてさ」
「……どこまでもゆっくりを悪役にしたいわけね」
「そういうこと。万一あれらが、もう人間に関わらないようにしたとしても、
こっちから細工してそうせざるをえないように仕向けるつもりでした。
キャンペーンのために、そういう映像は沢山あったほうがいいし、
それから生態研究のためもあるし、あと他にも映像の使い道を考えててさ」
私はがっくりとうなだれた。
ひどい徒労感に襲われて顔を上げることもできなかった。
「……あんたって子は………」
「でも、何が起こるかなんてわかんないもんだよね、ママ!
あんな穴があって、そしてこの一週間でしょ。
こんなに面白い映像が撮れるなんて思わなかったよ。ゆっくり達みんな、
あたしたちが仕向けるまでもなく、たっぷりと悪役を、というか敵を演じてくれたわ。
すぐに助けを呼ばなかったのも、たっぷり記録するためよ」
そう言って、春奈は携帯電話らしきものをポケットから取り出した。
普通の携帯のようには見えない。特殊な通信機らしい。
「すぐに駆けつけて、皆さんを助けだすことは容易でした」
背後で男が言う。
「ですが、須藤春奈博士のご指示により、しばらく時間を見ました。
すべては記録されております」
「………私のことも?」
「……失礼ながら。
ただ、あの……『問題の場面』に関しては……遠隔操作で映像記録は中断しております。
どうか御信用ください」
排便させられていた事を言っているのはすぐにわかった。
「あとね、『処置』はもう全部終わってるの」
春奈が言った。
「ママ止めようとしてたけど、出発する前にあのゆっくり達はもう処置しちゃった。
もう手遅れだよ。『計画』はもう始まってるんだ」
私は顔を上げたが、言葉は出なかった。
暴れ出したかったが、それよりも脱力感が勝っていた。
なにを言っても無駄なのはわかっていたし、自分一人だけが道化を演じ続けていたことがわかった今は空しいだけだった。
ここで怒り散らしたところで、道化は道化でしかないだろう。
「こんなこと言うのはなんだけどさ、ママは怒る権利ないんじゃない?
あたしたちがこんな目に逢ったのも、元をただせばママの失態でしょ。
あたしがもし携帯電話持ってなかったら、どうする気だったの?娘の人生」
洞窟の地面を眺めながら、私は春奈の言葉をぼんやりと聞いていた。
その声を聞いても、自分の娘の声だという実感はわかなかった。
袂を分かったのだ、という気がした。
住む世界も歩む道も、娘はもう私には理解できないところにいるのだ。
「長浜さんもごめんね?足は大丈夫?」
「俺の心配はしなくていい」
「でもごめんね。まあ、もともと長浜さんが勝手に追いかけてきたんだし。
なんであんなことしたの?」
「……さあね。見届けたかったのかもな」
「わっかんないなあ」
「ゆっくりそこまでだよ!!」
振りかえると、洞窟の入り口近くでゆっくり達が固まっていた。
私のれいむ始め、娘に群がっていたゆっくりが徒党を組んでこちらを睨んでいる。
「いうことをきかないおねえさんはゆっくりできないよ!!」
「よくもありすをころしたね!!ありすにはちいさいおちびちゃんがいたんだよ!!
もうしわけないとおもわないのおぉ!?」
「にんげんなんかかおうとおもったのがまちがいだったね!!
こんなにあたまがわるいなんておもわなかったよ!!」
「おねえさん!!」
顎を反らし、れいむは居丈高に言い放ってきた。
「れいむはおねえさんがだいすきだけど、こんかいばかりはおおめにみられないよ!!
れいむはむれのなかまだから、むれのるーるはまもらなくちゃいけないよ!
ゆっくりごろしはどすにどすすぱーくをうってもらうよ!!」
「どすすぱーくだよ!!どすすぱーくだよ!!」
「ゆっくりどすのところまでついてきてね!!にげようとしてもむだだよ!!
おねえさんはゆっくりつみをはんせいしてね!!れいむだってつらいんだよ!!」
私たちを促しながら、れいむ達は歩きはじめた。
私たちは眼を見合せてから、ゆっくり達の遅々とした歩みについていった。
歩きながら、れいむは何度も何度も私たち親子に話しかけてきた。
「れいむはがんばったんだからね!!ずっとがまんしておしえてたんだよ!!
わるいのはおねえさんたちだからね!!」
「なんでわかってくれなかったの?そんなにれいむがきらいなの?
れいむはおねえさんがだいすきだったんだよ!!」
「そのめはなんなのぉ!!わるいことしたってわかってるの!?」
「れいむはおしおきなんかしたくないんだよ!!
どんなにあたまがわるくても、ゆっくりできなくても、
れいむはずっとおねえさんたちといっしょにいたかったよ!!
それなのにおねえさんたちはれいむをうらぎったんだよ!!れいむのかなしみがわかってるのぉ!?」
私たちは一度も答えなかった。
「ゆゆっ!!みえてきたよ!!どすたちがいるよ………ゆゆゆっ!?」
ドスまりさを始め、群れのゆっくり達は全員が補縛されていた。
施設の使用人たちが数台の車やトラックで乗りつけており、
トラックの中に網でまとめて補縛されたゆっくりが次々と押し込められている。
すでにゆっくりオーラガスの効力は切れたらしく、
網の中のゆっくり達は口々に人間を罵っていた。
「だしなさいいぃぃ!!いなかものおぉぉぉ!!」
「わからないよー!!わからないよー!!」
「ひきょうなのぜ!!まりささまとしょうぶするんだぜぇぇ!!」
「かわいいれいむをここからだしてね!!だしてねえぇ!!」
見ると、ドスまりさは網ではなくロープで、横向きに板に固定されていた。
まだトラックに運び込まれていないが、帽子を奪われてなすすべなく泣き叫んでいる。
「おぼうしいいぃぃぃ!!どすのおぼうしかえしてねぇぇ!!
おぼうしさんがないとゆっくりできないよおおおおぉぉぉぉ!!」
ドススパークを撃つのに必要な特殊なキノコも帽子の中なので、
帽子が奪われて固定された今、ドスまりさは無力だった。
「むきゅううぅぅぅ!はなしなさいいぃぃぃ!」
ドスまりさの傍らには、参謀役のぱちゅりーがやはり縛られている。
「ゆ、ゆ、ゆゆゆゆゆ…………?」
「ゆゆゆっ!!たすけがきたよ!!れいむはゆっくりしないでたすけてねぇ!!」
「まりささまをたすけるんだぜ!!はやくするんだぜぇぇぇ!!」
「むきゅ!れいむ、むれをまもりなさい!
むれのみらいはあなたにかかってるのよむきゅうううぅぅ!」
やってきたれいむ達に向かって、網の中のゆっくり達が一斉に助けを求めはじめた。
れいむ達は「ゆっ?ゆっ?」と鳴きながらおろおろと右往左往するばかりだった。
「例の十三匹はすでに車に乗せてあります」
「御苦労さま」
男たちの報告を受け、春奈が頷いた。
「群れは全て運び出しますか?」
「うーん、こんなにいらないかな。ドスとぱちゅ、あと五十匹ぐらいで、他はほっといていいよ」
「では、ドス達を。すでに五十匹以上集まってます」
指示していた春奈が、私に向かって聞いてきた。
「それはどうしようか?あたしはどっちでもいいけど」
春奈が指したのは、私のれいむだった。
れいむを連れて帰るのか。
ドスがいなくなったこの群れで、飼いならされたれいむが生き抜き、まして冬が越せるとは思えない。
放っていくことは殺すことと同義だろう。
しかし、今のれいむを私の家に迎え入れたいとはどうしても思えなかった。
善意からであれ、れいむがここで私にしたことを忘れ、水に流すことは私にはできなかった。
それでも、私は踏ん切りがつかず、対話を求めた。
「……れいむ」
「ゆゆゆっ!!」
トラックに運び込まれていく群れを呆然と眺めていたれいむが、
ぴょんっと軽快に跳ねてこちらを振り向き、満面の笑顔を浮かべて叫んだ。
「ゆっくりしていってね!!」
「……え?」
何を言われたのか一瞬わからなかった。
「おねえさん!れいむおいたをしちゃったね!!
ゆっくりごめんなさいだよ!れいむをおこってる?」
「………」
「ゆゆゆっ!!おこらないでね!!おこらないでね!!
れいむにおしおきしてね!おしおきはつらいけどがまんするよ!!
そしたられいむいいこになるからね!!」
「れいむ……」
「おねえさんがおこってるとれいむはかなしいよ!!
れいむはんせいするからね!ゆっくりしていってね!!」
「あなたは悔しくないの!?」
「ゆゆゆっ!?」
私はれいむの前に膝をつき、助けを求め続けている群れを指差して叫んだ。
「これを見てなんとも思わないの!?」
「ゆゆっ!おこらないでね!おねえさんこわいよ!!
ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!」
「いいから聞きなさい!!
あなたの群れでしょう!?このゆっくり達があなたの家族でしょう!?
家族を縛られて連れ去られて平気なの!?怒らないの!?」
「ゆゆゆっ!?きっとみんながわるいんだよ!!
わるいことをしたからにんげんさんにおしおきされるんだね!!
れいむもおいたしちゃったからおしおきがまんするよ!!」
「悪いことって何よ!?
あなたたちが何をしたのよ!言ってみてよ!!」
「ゆゆっ!?」
れいむはわざとらしく、可愛い仕草で小首をかしげてゆんゆん鳴いた。
かつては、この仕草をされると私は怒る気が削がれてつい甘くなってしまったものだが、
今、その仕草は火に油を注ぐ効果しかなかった。
「ゆっ!ごめんなさい!れいむはゆっくりわからないよ!!
れいむにおしえてね!ゆっくりがんばっておぼえるよ!!」
「私が大好きなんでしょう!?
好きだから!ここで!私を飼ってたんでしょ!?
私が群れの仲間になるためにしつけてたんでしょ!!?」
「ゆゆゆ!だいすきだよ!!れいむはおねえさんがだいすきだよ!!
ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!」
れいむは突然にこにこして飛び跳ね始めた。
それが伝わっているなら安心だ、と思っているのだろうか。
「だから私を飼ってたんでしょ!?」
「ゆゆゆっ!?ちがうよ!おねえさんがれいむをかってるんだよ!!
れいむはわかってるよ!ゆっへん!!」
「さっきまで言ってたことと全然違うじゃない!!」
またわざとらしく首を振り始めた。
眉を八の字に困らせ、もみあげで唇をつついて考えるふりをしている。
無知ゆえの過失ということにしてごまかそうとしているのは明白だった。
「ゆゆぅ~?れいむ、わからないよ?
れいむ、なにかゆっくりできないことをいったの?おねえさん、おしえてね!」
「私を!ここで!飼うんでしょう!?
私たちをゆっくりの仲間にするんでしょう!!」
「ゆゆゆっ!!そんなこといったの!?
きっとれいむはかんちがいをしてたんだよ!!れいむ、ゆっくりできないね!!
ゆっくりできなくてごめんなさい!
れいむがゆっくりできるいいこになれるように、れいむがわるいことしたらおしえてね!!」
かつて私が躾けた、人間に対する挨拶をれいむは繰り返し叫んだ。
私はそれから、れいむがやったことを一つ一つ並べ、どういうつもりだったのか問い詰めた。
私を穴に閉じ込め、どれだけ拒否しても雑草や虫を与えようとし、排便までさせたこと。
いじめられている長浜圭一を助けようとしなかったこと。
そして、私の娘を犯したこと。
しかし、まったく会話にならなかった。
私が何を言ってもれいむは空とぼけて、
「れいむはわからないからわるいところはゆっくりおしえてね!」を繰り返すばかりだった。
「ゆゆゆ~♪かわいくてごめんねっ♪」
ついには媚びはじめた。
「かわいくてごめんね」を繰り返し、小首をかしげてみせる。
この仕草が私は昔大好きだった。
こうすれば私の機嫌がよくなると、このれいむは知っていた。
ちらちらとこちらの表情を窺いながら、ひたすら無知を装い、媚び、へつらい、
こちらの怒りが逸れ、うやむやになって収まるのを期待して待っている。
なぜ私が怒っているのかという原因には、全く関心がないらしかった。
それは、かつて私が愛したゆっくりの姿だった。
躾の行き届いた、飼い主に愛らしさを振りまく、理想的なゆっくりだった。
このれいむだけではない、私がかつて世話した何百匹のゆっくりが、
根気強い躾の末に、こういうゆっくりになった。
しかしそれは、心底から礼儀作法を重要視しているのではなかった。
自分たちのほうが立場が強く、人間の言うことを聞かなくてもいい、
そんな状況になれば、あっさりと脱ぎ捨てられる程度の仮面でしかなかった。
立場が逆転したのを理解した今、このれいむは、あわててその仮面をかぶり直そうとしている。
私はそこでようやく、苦い事実を知った。
「あんたは………」
「ゆゆっ?」
「あんたは私と話すことなんかないわけね」
「ゆゆっ?おはなしするよ!れいむはおはなしがとくいなんだよ!
どんなおはなしがしたいのかいってね!ゆっくりがんばるよ!!」
「命令を聞くだけなんだ……家族なんかじゃなかった……」
「ゆゆゆっ!そんなことないよ!れいむはおねえさんがだいすきだよ!
ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!」
私が、生まれてから世話し、その死を看取った何百のゆっくり。
その中で、ただの一匹として、私に心を開いたゆっくりはいなかった。
私ひとりだけが空回りして、家族だと思っていたのだ。
ゆっくりにとっては、
「とにかく言う事を聞いてさえいれば世話してくれる便利な生き物」でしかなかったのに。
私は地面に突っ伏して泣いた。
「当たり前じゃん」
後ろで春奈が言っていた。
「人間の言う論理なんて、ゆっくりの価値観じゃぜんぜん理解できないの。
理解できない躾にハイハイ従うっていうのは、つまり強者への盲従で、思考停止だよ。
思考停止してる相手に、情も信頼もないでしょ」
最終更新:2011年07月28日 19:52