※最初で最後の
ゆっくり虐待に挑戦中です。
※どくそ長いです。二十回は……ちょっとだけ超えそう。
※うんうん、まむまむ描写あり。
※標的は全員ゲスです。人間から見れば。
※虐待レベルはベリーハードを目指します。
※次回から虐待ラストスパート。
※以上をご了承頂ける方のみどうぞ。
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『永遠のゆっくり』16
目が覚めたとき、しばらくは状況がつかめなかった。
最初に白い天井が見えた。
仰向けのままひとしきり天井を眺めてから、伸びをして起き上がると、
周囲に家族の姿があった。
まりさ種もありす種も全員含めて、
起きているもの、眠っているもの、とにかく十三人全員がそろっている。
「ゆゆっ!?ゆっくりしていってね!!」
考える前に、れいむは挨拶した。
「ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしていってね……」
主に自分の子供たちから挨拶は返ってきたが、元気のない声だった。
「ゆぅ~?ゆっくりしてね!」
しかし、周りを見渡し、自分たちの置かれている状況が飲み込めてくるにつれ、
れいむもなんだかゆっくりできない気分になってきた。
「ゆゆっ?とうめいなかべさんがあるよ!」
自分たち十三匹の四方を、大きくて透明な壁が囲んでいる。
どちらを向いても出口は見当たらず、
体当たりをしたところで壊れてくれるようなものでもないことを、れいむは体感的に知っていた。
「ゆっ……ゆっくりできないきがするよ!!
ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!」
れいむは飛び跳ねて叫んだ。
子供のれいむ達も同調する。
「ゆっくりできないよ!!かべさんはゆっくりどっかいってね!!」
「れいむをここからだしてね!!ゆっくりしないでね!!」
「かわいいれいむがでたがってるんだよおぉ!?なんでむしするのぉ!?ばかなのおぉ!?」
どれだけ叫ぼうと、壁はどいてくれる様子がなかった。
れいむは知っていた。このかべさんはゆっくりできない。
前にもこのかべさんに閉じ込められたことがあった。
そしてその時、自分たちは何をされていたのか。
「ゆぅうううううううううぅ!!?」
不安感がますます膨れ上がっていく。
思い出したくもないトラウマがれいむを焦らせる。
あそこからは逃げ出したはずだ。
あんなゆっくりできないことは、もう終わったはずだ。
「だしてね!!だしてね!!かわいいれいむをだせえぇぇ!!ゆっくりするなぁぁぁ!!!」
暴れているうちに、ガラスケースが一つではないことがわかってきた。
殺風景な白い部屋の中心に、どうやら自分たちはガラスケースに入れられ、テーブルに載せられているらしい。
そして自分たちの右側、部屋の中心部からずれたところにもう少し小さいテーブルがあり、
その上では、小さなガラスケースの中にあのれいむが入っていた。
金色のバッジをリボンにつけたそいつは、
あの施設から脱出するときに案内させたれいむだった。
「ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしていってね!」
挨拶をすると返事が返ってくる。
れいむは金バッジに向かって質問した。
「かわいいれいむたちをゆっくりここからだしてね!」
「むりだよ!れいむもでられないんだよ!ゆっくりりかいしてね!!」
「ゆゆっ!れいむはやくたたずだね!!いいわけしないでどりょくしてね!!」
「どぼじでぞんなごどいうのおおぉぉ!?」
口論しているうちに、部屋の中に入ってきたものがあった。
「ゆゆっ!!にんげんさんがきたよ!!
ゆっくりここからだしてね!!あまあまもちょうだいね!!」
「あまあまちょうだいね!!それからしんでね!!」
入ってきたのは人間だった。
顔の確認もせずにれいむは色めきたったが、やがて顔を確認すると、別の感情から騒ぎ始めた。
「ゆゆゆぅ!!?ごみくずぅぅ!!
れいむのおちびちゃんをころしたごみくずはれいむをここからだしてゆっくりしねぇ!!」
「だせぇぇ!!ここからだせぇぇ!!ごみくずぅぅ!!
またいたいめにあいたいのかぜぇぇ!!?
まりささまはてかげんしてやってたんだぜぇ!!つぎはほんきでおしおきするのぜぇぇ!!」
「はやくだしなさいいいいぃぃぃいなかものおぉぉぉ!!!」
変な棒で体を支えながら入ってきたのは、
かつて自分たちをガラスケースに閉じ込め、とてもゆっくりできない目に逢わせていたゴミクズ。
そのゴミクズを前に、れいむは涸れることのない怒りを爆発させる。
他の家族たちも同じようだった。
あの群れの中で、自分たちはこのゴミクズにたっぷりとお仕置きをしてやった。
そのおかげで、あんな棒をつかなければならないほどよろめいている。
もちろんあんなもので済ませるつもりは毛頭なく、これからも死ぬまでいたぶるつもりだ。
しかしとにかく、言語を絶する暴力にさらされ、たっぷりと訓戒を受けたゴミクズは、
自分たちとの上下関係を理解し、自分たちを恐怖しているはずだ。
ちょっと脅してやればすぐに言うことを聞くだろう。
れいむは確信し、ここから出すように命令した。
「ごみくずはぐずぐずしないでれいむたちをゆっくりここからだしてね!!」
「いやだね」
ゴミクズの答えに、れいむは耳を疑った。
なんだと?
もしかしてこの人間は、あれほどのお仕置きをもう忘れたのか?
「にんげんさんがばかなのはしってたけど!ここまでばかだとはおもわなかったよおぉぉ!!
ここからだせ!!だせ!!おしおきしなおしてやるからだせぇぇぇ!!!」
「だめだよ。もう出さない。ここでずっと苦しんでもらう。
前に言ったろう?お前たちはもう、永遠にゆっくりできないんだよ」
見ると、ゴミクズのほかにも二人の人間が入ってきていた。
一匹は小さい人間で、あの群れですっきり用人間として飼ってやっていたペットだ。
もう一匹はもっと大きくて、ずっと言うことを聞かなかったのろまなペット。
「ゆっ!おねえさん!ゆっくりしていってね!」
金バッジが箱の中で飛び跳ねはじめ、大きいペットのほうに媚びた声をあげはじめた。
しかし、ペットのほうは黙って見ているだけだった。
「れいむはおねえさんがだいすきだよ!!
ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!」
くにゃりと頭を斜めにかしげ、にっこり笑ってみせている。
しかしペットのほうは、立場をわきまえていないらしく、話しかけてやっているのに返事をしようともしない。
「くそばばあ!かわいいれいむがはなしかけてあげてるんだよぉぉ!?へんじぐらいしてねぇぇ!!」
仲間が無視されているのにたまりかねてれいむは叫んだが、それでも返事は返ってこない。
「はーい、みんな、こっち向いてねー!」
小さいペットが両手を叩いてなにやらわめいていた。
皆がそちらを向くと、小さいペットは叫んだ。
「そっちのゴールドバッジをつけた子は別だけど、
プラチナバッジをつけたこっちのみんなは、これから死ぬまでゆっくりできませーん!
死ぬまで永遠に、痛くて苦しくて気持ち悪くてゆっくりできない目に遭ってもらいまーす。
ゆっくり理解してね♪」
その言葉を聞いた反応はさまざまだった。
「ゆっ!ゆっ!れいむはゆっくりさせてくれるんだね!
おねえさんはれいむがだいすきなんだね!れいむもおねえさんがだいすきだよ!ゆっゆっゆ~♪」
自分は助かるという事実に安心してぴょんぴょん跳ねる金バッジ。
「げらげらげらげら!!やれるもんならやってみろだぜぇ!!
すっきりさせるしかのうのないくそにんげんがまりささまをくるしめるとか、ぷげら!!」
「ほらほらぁ~♪くるしめてごらんなさぁ~い♪ゆっほほほほほほ!!」
自分よりはるかに劣る生物の妄言をせせら笑うまりさやありす達。
しかし、れいむは笑う気になれなかった。
「くそごみくずぅぅぅぅ!!!なにをいったああぁぁぁ!!
れいむたちをくるしめるううぅぅぅぅ!!??そんなこといっていいとおもってるのおおぉぉ!?
いっていいこととわるいこともわからないのおおおぉぉぉぉ!!!?
あやまれ!!いますぐあやまれええぇぇ!!ぐずぐずするなぁぁぁぁ!!!」
どんなゴミクズだろうと、自分たちをゆっくりさせないなどと言う異常者は許すわけにはいかなかった。
れいむは怒りのあまりわめき続け、他のゆっくり達も同調して怒鳴り散らした。
「は~い、シャラ~ップ♪」
ガァン!!
小さいペットが、鈍く光る棒のようなものを握ってガラスケースに叩きつけた。
大きな音と伝わってきた衝撃に、一同は一瞬委縮する。
「みんな、これ覚えてるかな~?」
そう言って、小さいペットは部屋の隅にある黒い箱を指差した。
黒い箱はそれまで真っ黒なままだったが、その時ぱっと明るくなり、中に何かが映っているのがわかった。
「これは君たちです。二週間前の映像ですよー」
確かにそれらは自分たちだった。
頭の飾りと、そして置かれていた状況の記憶が認識する。
フックで上顎からつり下げられ、歯の抜けた口を限界まで開かされ、トウガラシを詰め込まれて痙攣するまりさ達。
我が子を救うために走り続け、歌いつづけ、様々な終わりなき苦行を強いられているれいむ達。
孫ありすの海の中で休みなく犯されつづける子ありす達。
電極を性器につなげられて際限なくすっきりしつづけるありす。
「ゆんやああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!??」
極限の苦しみのトラウマがまざまざと甦り、れいむ達は絶叫した。
同時に、どうにもならなかったあの無力感が記憶に呼び覚まされる。
この人間共は、今また、同じ苦しみを味わわせるという。
「やべろおおおおおおおおぉぉぉぉーーーーーーーっ!!!」
まりさが叫んでいた。
「まりささまににどとそんなまねはさせないのぜ!!!
あれはひきょうなてをつかったからそっちがかったんだぜ!!
こんどはそっちがいじめられるばんなのぜええ!!」
「はいはい、じゃあさっさと済ませようね」
小さいペットが箱の中からまりさを掴み上げ、床に下ろした。
「じゃ、かかっておいで。あたしをいじめてごらん」
「ゆっ……ゆっへっへっへ!!
くそごみくず!まりさのこわさがわかってないようなんだぜぇ!?
まりささまのちからをおもいしらせてや」
「はいはい、時間が押してるよー」
「ゆぎぇべぇぇっ!!?」
たちまちのうちに、まりさが壁に叩きつけられていた。
何が起きたのか理解できなかった。
大きくて強いまりさは、ドスまりさを除けば、ゆっくりの中では一番強いと言っていい。
少なくともれいむはそう確信していた。
しかしそのまりさは、小さいペットの前に、なすすべなく蹂躙されていた。
「ゆびぇ!!やべ!!やびぇっ!!ぼっ!!げらだいでぇぇぇぇばっ!!」
「うん、負けを認めるかなー?」
「みどべばず!!みどべばずがらぼうやべでええええええ!!!」
「はいOK!」
言うが早いか、小さいペットはまりさを掴むと、
さっさとガラスケースの中に投げ込んで戻した。
「はい、他ににんげんさんと戦いたいゆっくりはいるかなー?」
「……………!!!」
一番強いまりさを赤子扱いした相手に対し、名乗りを上げる者はいなかった。
「はいじゃあ、また苦しんでもらいまーす。いいですねー」
そう言い、小さいペットはいまだに映像を流している黒い箱を指差す。
「い!!いやぢゃあああああああぁぁぁぁぁ!!!」
「わっがざんぼういやあああああああああああああゆっぐりでぎだいいいいいいいいいぃぃぃぃ!!!」
「ゆっぐりでぎだいどいやあああああああああいやああああああああああああーーーーーーっ」
「もうべにべにいじべだいでえええええ!!!おでがいじばずうううううううううう!!!!」
「はい駄目でーす。逃げ場はないよー?逆らってもまりさみたいにやっつけられちゃうよー。
君たちにはどうすることもできませーん」
「ゆんやあああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁ!!!!」
なぜだ。
あの時、自分たちは人間たちに逆転勝利し、逆に人間を制裁してやったはずだ。
しかし、今また、どうしようもない窮地に追い込まれている。
なぜ勝てないのだろう。
なぜあの時は勝てたのだろう。
わからない。
しかし少なくとも、今自分たちは、どうあっても勝てない相手になすすべなく苦しめられるしかないことはわかった。
れいむの心を絶望が染める。
絶望に染められた心の中に、ひとつの衝動、疑問が渦巻く。
どうして。
どうして自分たちだけが、こんなひどいことをされなければいけないのだ。
「どぼぢで……………」
「ん、何かな?れいむちゃんどうぞ」
「どぼぢでごんなごどずるのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!??」
絶叫するれいむに、小さいペットは手を叩いた。
「はい、いい質問ですね!
あのね、これは罰なんだねー。
君たちが悪いことしちゃったから、お仕置きしてるの。わかるかなぁ?」
お仕置き?
こんな下等で野蛮な獣どもが、自分たちにお仕置きするなどという傲慢さも我慢できなかったが、
それ以上に不可解なことがあった。
「れいむなにもわるいことしてないいいいいいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
「したよー。したした」
「れいむたちがなにをしたのおおおおおぉぉぉぉ!!?
なんでっ!!れいむがっ!!わるいのおおぉぉ!!?むちゃくちゃだよおおぉぉぉ!!!」
「えーとね、根本的なことを言えば、ゆっくり風情が人間をバカにしたことだよねー」
れいむは耳を疑った。
自分たちゆっくりが、人間をバカにした。
それが悪いのか?それが罪なのか?
単なる事実ではないか。バカという言い方だって、人間ごときにだいぶやさしいほうだ。
「ばかでしょおおおおおおおおお!!!?
ばかをばかといってなんでわるいのおおおおおおおぉぉぉぉ!!?」
「うん、ところで、それよりもっと問題なのはやっぱり人殺しだよね。
長浜さーん、あと、どうぞー」
「ああ、はい」
小さいペットが声をかけたのはあのゴミクズだった。
ゴミクズは椅子にかけたままで少しの間れいむたちを眺めわたしてから、口を開いた。
「お前たちは俺の子供を殺した」
「ゆっ?」
「覚えてないのかい。俺の奥さんを転ばせて怪我をさせ、そのお腹にいた子供を殺しただろ?」
おぼろげな記憶をたどる。
「ゆゆっ!!にんげんのあかちゃんはおはだがとってもとかいはだったわぁぁ!!」
ありすがぺにぺにを屹立させていた。
忘れられぬすっきりの快感を反芻してよだれをたらしている。
れいむの中にも、忘れかけていた記憶が甦る。
そういえばそんな事をした。
この男のつがいの腹を何度も叩き、子供を出させ、それをありすが犯し。
この男の泣き顔を眺めたときの快感。
まさか。
まさか、まさか、あの時のことを言っているのか?
自分たちをあんな目に逢わせ、死ぬまでゆっくりさせないというその理由が、
まさかあの時のことなのか?
「俺の奥さんは首を怪我して、ずっと眠ったままだ。
人間はあそこを怪我すると動けなくなるんだよ。
そして俺の赤ちゃんは、そこのありす達に犯されて死んだ」
れいむは、自分の耳が信じられなかった。
「だから……」
「うん?」
「だから……だから……あかちゃんをころされたから……れいむたちをゆっくりさせないの?」
「そうだよ。俺はお前たちを恨んでいるし許さない。一生ゆっくりさせないつもりだよ」
一瞬、思考が止まった。
ほぼ真っ白になりかけた視界がぐらぐらと揺れる。
あまりの怒りと、そして呆れが、れいむの体内の餡子を攪拌していた。
そんなことのために。
そんなことのために、この人間共は、れいむ達を憎んでいるのか。
そんなことのために、れいむ達の赤ちゃんを殺したのか。
そんなことのために、れいむ達は死ぬまでゆっくりできなくされるのか。
あまりにも理不尽で、想像を超えていた。
動機と行為がまったくつながっていない。
これではまるでギャグではないか。
このにんげんさんどもはいったいなにをいってるの?
なんでそうなるの?
「なにばかなこといってるのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!??」
口が勝手に叫んでいた。
どうしようもなく溢れてくる激情を抑えることができない。
「ばか!!ばか!!ばか!!ばか!!くそばかあああぁぁぁぁぁ!!!!
そんなっ!!そんなかんちがいで!!あんなことっ!!あんなっ!!ぜったいにゆるさないよおおおぉぉぉ!!!」
「勘違い?」
ゴミクズが不思議そうな顔をして聞き返してくる。
見下げ果てた。呆れ果てた。こんな白痴どもに道理を説くことさえ空しい。
しかし、無駄とは知りながら、殺された子供たちのことを考えると叫ばずにはいられなかった。
「かんちがいでしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉ!!!
なんでっ!!それでっ!!れいむがわるいのおおおおおおおおおぉぉぉぉ!!?」
「だって、お前………俺の子供を殺しただろう?」
「それがなんだっていうのおぉぉぉぉ!!?ゆっくりちゃんとせつめいしてみろおおぉぉぉ!!!」
「説明しろって……説明しなきゃ駄目なの?
え、殺すのは悪いことだろ?」
「っっっっっばかあああああぁぁぁぁああああ!!!!」
取り返しのつかない失敗。れいむは自分を責めた。
人間の呆れるほどの馬鹿ぶりを軽視していたこと。
そして、一番基本的なことをきちんと躾けておかなかったこと。
まがりなりにも言葉を喋る生物なのだから、
そんなことぐらい、本能レベルで理解しているはずだと思っていたのが間違いだった。
低能すぎる人間に常識は通用しなかったのだ。
ほんの些細な教育の手間を惜しんだために、
自分たちは理不尽かつ筋違いの逆恨みを受け、子供たちは殺された。
「ごべんねえええええぇぇぇぇ!!!
おぢびぢゃんだぢごべんねええええええええええええぇぇぇ!!!
おがあざんがじづげをうっがりじでだがらぁぁぁぁあ!!おがあざんをゆるじでねええええぇぇぇーーーーっ!!!」
「お、おい………」
「ぐぞばがごみぐずううううぅぅぅーーーーーーーーーーーっ!!!!!!
ゆるさない!!ゆるさない!!いまごろきづいたってゆるさないからねええ!!
よのなかにはとりかえしのつかないまちがいがあるんだよおおおおおぉぉぉぉ!!!」
「あの、何かおかしかったんでしょうか?」
わざわざ言葉にして教えてやらなきゃならないということが、れいむはあまりにも情けなかった。
情けなさ過ぎて気分が萎えそうになるが、恨みを言葉に載せて叫んだ。
「ゆっくりとにんげんさんはちがうでしょおおおおおぉぉぉぉ!!?」
「うん、そりゃぁ、違うよ」
「ぜんっぜんちがううううううううううううううぅぅぅぅ!!!
おまえらがじぶんのこどもをころされたからって!!
ゆっくりのあかちゃんをころしていいわけないでしょおおおおおおおおおおおぉぉぉぉ!!?
なんでっ!!そんなことが!!わからないんだあああああああああぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ」
「…………」
「おまえらのあかちゃんが!!さんびきころされても!!
もっといっぱいころされても!!もっともっといっぱいころされても!!
ゆっくりのおちびちゃんひとりだってころしちゃいけないんだよおおおおぉぉぉぉぉ!!!
なんでわからないの!?ぜんっぜんちがうでしょ!?
ひとりのゆっくりのおちびちゃんは、にんげんさんのこどもがなんびきあつまったよりゆっくりできるんだよおおおぉぉぉぉ!!」
「……………同感だな。一部を逆にすれば」
「にんげんさんなんかにっ!!いいこととわるいことのくべつがつくわけないでしょおおおぉぉ!!
にんげんさんがゆっくりをおしおきしていいわけないんだよおおぉぉお!!ゆっくりりかいしてねえぇぇぇ!!!」
れいむの剣幕に、他のゆっくり達は黙って聞いていたが、
れいむの言葉が溢れだすうちに「ゆっ♪ゆっ♪」と飛び跳ね始めた。
応援しているのだ。
「ふ~ん」
あの小さいペットが何か言っていた。
「そんなにゆっくりって偉いんだ」
「あたりまえでしょおおおおおおおおおおおお!!!」
「人間より偉い?」
「にんげんさんなんかとくらべるなあああああぁぁぁ!!!
なんでゆっくりとにんげんさんをくらべるなんてはっそうができるのおおおおおぉぉぉぉ!?
にんげんさんよりしたのいきものなんかどこにもいないんだよおおおぉぉ!!!」
「あらら、ずいぶん嫌われてるね。
じゃあ、鳥さんは?犬さんは?魚さんは?」
「とりさんもいぬさんもさかなさんも!ゆっくりよりしただよおぉ!!
くだらないしつもんをするなぁぁ!!!」
「この世界の生き物みーんな、ゆっくりより下なの?
ゆっくりが一番偉いの?」
「そんなこともしらなかったのおおおおおおおぉぉぉぉ!!?
ばか!!ばか!!くそばかぁぁぁ!!
こんなにあたまがゆっくりできないいきものが、
ゆっくりとおなじことばをつかうなんてはずかしくないのおおおぉぉぉ!!?
もうしゃべるな!!にどとしゃべるなああぁぁぁ!!!」
「ゆっ♪ゆっ♪ゆっ♪ゆっ♪」
「ゆっくり♪ゆっくり♪」
家族たちが人間をせせら笑いながら、リズムをつけて飛び跳ねている。
あの金バッジもケースの中で嬉しそうにぽいんぽいんと跳ねていた。
「じゃあさ、聞くけど。
なんでゆっくりがそんなに偉いの?」
「じぶんでかんがえろおおおぉぉぉ!!!
うまれたばかりのおちびちゃんだってそんなことぐらいわかってるよおおぉぉ!!」
「ごめんね、頭がゆっくりできないからわかんないや。
だって、ゆっくりに何の価値があるの?
少なくとも、人間よりは弱いよね。さっきわかったよね。
人間どころじゃなくて、犬にだって鳥にだって、ほとんどの生き物に勝てるとも思えないなぁ。
実際、森の中では強い敵から逃げ回ってるよね?」
「だからなんなのおぉぉ!!?
つよいいきものがいちばんえらいなんていわないでねえぇぇ!!
そういうのはやばんないきもののはっそうなんだよおぉ!!」
「……意外とまともなこと言うじゃん。
じゃ、ゆっくりの偉いところって何?」
「ゆはあああああぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~………………」
そんなことまで説明してやらなきゃいけないのか。
あまりの馬鹿さに辟易し、れいむは深く深くため息をついた。
「れいむはなんだかばかばかしくなってきたよ………」
「ゆっ!れいむ、がんばるんだぜ!!
こんどこそばかなにんげんさんをしつけてやるんだぜ!!」
「ありすもおうえんしてるわよ!!がんばりなさい!!
ゆっくりできるとかいはなただしいことをしてるんだから!!」
「おかあさん、がんばってね!おかあさん、がんばってね!!」
「がんばってね!!がんばってね!!れいむのおねえさんにおしえてあげてね!!」
周りのゆっくり達(金バッジ含む)の声援に頷いてみせ、れいむは人間共に向きなおって静かに言った。
「………ゆっくりかんがえてね。
ごみくずはだれのおかげでゆっくりできてるの?」
「うん?」「へっ?」「え?」
白痴じみた表情で、三人の人間は聞き返してきた。
ふん、と鼻を鳴らしてれいむは講義を始めた。
「さいしょからかんがえてね。
おまえたちがゆっくりできるようになったのはいつから?」
「いつからって………別に、覚えてないけど。子供のころから?」
「れいむたちがおまえたちにはなしかけてあげたときからでしょおおぉぉ!!!」
「ええ?」
「………ほんとにおぼえてないんだね。
れいむとまりさがゆっくりぷれいすをみつけたときに、ごみくずがまよいこんできたよね。
かわいいかわいいれいむとまりさをみたしゅんかんに、うまれてはじめてゆっくりできたでしょ?」
人間への憎しみを今は抑え、辛抱強くれいむは諭してやった。
「あのゆっくりをおもいだしてね。
うまれてはじめてゆっくりできたあのよろこびをおもいだしてね。
それをおぼえていれば、れいむにかんしゃするはずだよ!!」
「…………」
「ゆっくりはね、このよのなかで、ゆいいつゆっくりできるいきものなんだよ。
ほかのいきものさんは、にんげんさんだってさかなさんだってとりさんだって、
どれもこれもぜんっぜんかわいくないし、みっともないし、こえもひどいし、せかせかしてるよ。
そんな、ゆっくりをしらないふこうないきものさんたちに、
ゆっくりはかわいいじぶんをみせてゆっくりさせてあげてるんだよ。
どうしてかわかる?ゆっくりはやさしいからだよ!!」
「…………」
「ゆっくりはやさしいから、ほかのいきものがゆっくりできないのがかわいそうなんだよ。
だから、わざわざじぶんのかわいいすがたをみせて、きれいなこえもきかせてあげるんだよ。
そうすると、ほかのいきものさんはうまれてはじめてゆっくりするんだよ。
おまえたちはじぶんでゆっくりできてるつもりかもしれないけど、
そのゆっくりをおしえてあげたのはれいむなんだよ!!」
「…………だから、人間の子供を殺してもいいって事かい?」
ゴミクズが痴呆じみた表情でとぼけたことを聞いてくる。
思わずかっとなったが、れいむは自分を抑えて言い聞かせた。
「ゆっくりをおしえてあげたれいむにかんしゃしないで、
れいむたちのせわからにげだそうとしたから、
それかられいむのかわいいあかちゃんをころしたから!
ばつとしてごみくずのあかちゃんをまびきしてあげたんだよ。
おまえたちがわるいんだよ!!おまえがいってるのはさかうらみだよ!!
れいむたちのこえをきいて、あかちゃんもみて、すっきりまでみせてもらって、
さんっざんゆっくりしておいて!!なんでそんなことでさかうらみできるのおぉぉ!!?」
「生き物を殺して平気なのか?」
「ゆっくりできないいきものさんなんか、ほんとうはいきてるかちがないんだよ!!
ゆっくりできないゆんせいをおくるのはかわいそうでしょぉ!?
ころしてあげるのもゆっくりがやさしいからなんだよ!!ゆっくりりかいしてね!!」
「そうよ!だいたいあのあかちゃんは、
ありすたちのとかいはなあいにつつまれてしあわせーにしんでいったのよ!!
にんげんごときがとかいはなあいをうけるなんてとくべつなのよ!?かんしゃしなさいよ!!」
ありすが口を挟んでいた。
ゴミクズは口をつぐみ、椅子の上でうなだれた。
小さいペットも、大きいペットも、何も言わなかった。
「どうしてじぶんをきゃっかんてきにみられないのおぉ!!?
おまえたちにんげんなんか!!ゆっくりできないよ!!
ぜんぜんかわいくないみにくいすがたでそとをうろつきまわって、なんではずかしくないの!?
ぜんぜんゆっくりできないがあがあしたこえでほえて、みっともないったらありゃしないよ!!
おまえたちのどこが!!ゆっくりよりえらいっていうんだあぁぁあ!!!」
言ううちに、れいむは再び激しはじめてきた。
「ゆっ♪ゆっ♪ゆっ♪ゆっ♪」
「おかあさんすごいよ!!ゆっくりしてるよ!!かんどうしたよ!!」
「さすがまりささまのおよめさんなんだぜ!!ごみくずたちはぐうのねもでないんだぜ!!」
「とってもとかいはなたんかだったわ!!ほ、ほめてあげてもいいのよ!?」
「にんげんさぁ~ん♪じぶんがどれくらいばかなのかわかりまちたかぁ~?」
家族達はれいむの熱弁に感動し、勝ち誇って飛び跳ねていた。
一方の人間共は、言われながら反論の言葉もなく押し黙っている。
ようやく自分のしたことの重大さがわかりかけてきたらしく、悔悟の表情だ。
しかし許さない。
れいむはぜったいにおまえたちをゆるさないよ。
れいむは慈悲を捨て、厳かに厳罰を言い渡した。
「いまごろはんせいしたっておそいよ!!
これから!いっしょう!!ばつをあたえつづけるからね!!
もうゆっくりさせてあげないよ!!れいむたちのかわいいかおも、かわいいあかちゃんもみせてあげないよ!!
かわいいこえもきかせてあげないし、おうたもにどときけないよ!!
これからはれいむたちのかおをみることはゆるさないよ!!ゆっくりぷれいすにあまあまだけおいていってね!!
しぬまでゆっくりはんせいしてね!!」
「そうだよ!!にどとうたってあげないからね!!それだけのことをしたんだからもんくないでしょ!?」
「いっしょうあかちゃんみられないよ~♪
くやしい?みたい?でもみせてあげなぁ~い♪」
「どげざしておねがいしたら、またありすのとかいはなすっきりをかんしょうさせてあげようかしら?
まあ、ぜったいにみせてあげないけどね!!ばぁーか!!」
「ゆっ!!ゆっ!!きいた?れいむのおねえさん!!」
金バッジが大きなペットに向かって飛び跳ね叫んでいた。
「ゆっくりあやまってね!!いまならゆるしてあげるよ!!れいむはおねえさんがだいすきだからね!!」
大きいペットが、手で顔を覆って泣き崩れた。
それでも許そうとは思わなかった。
これから死ぬまで、一生苦しみ、反省し続けてもらう。
勝利に沸き、飛び跳ねるゆっくり達に囲まれながら、
れいむは毅然とした表情で、自分の犯した罪の大きさに狼狽する人間どもを睨み続けていた。
「いいよ。十三匹いれば充分だしね」
春奈は約束してくれた。
「ママのれいむは勘弁してあげる。
それどころか、世界一幸せなゆっくりの一匹になるんじゃないかな?
ゆっくりの幸せなんか人間にはわかんないし、興味もないけどさ」
荷物を詰め込んだ鞄を肩に提げて、私は施設の門前に立っていた。
すぐ先には車が止められ、私が乗り込むのを待っている。
「ママ、これからどうするの?」
「何が?」
「またゆっくりを飼うのかな、てこと」
私は首を振った。
ゆっくりは家族ではなかった。
所詮、私たち人間が力で抑えつけ、服従させていただけだったのだ。
飼われる立場を自ら体験してそれが分かった今、
もはやゆっくりを飼う理由はなかった。
家にはまだ大勢のゆっくりがいるが、
野生に戻る訓練を施してから、みんな森に放すことになるだろう。
今はもう、一切ゆっくりに関わりたくはなかった。
「全部幻想だったってことね」
「まあそうですけど、飼われてたゆっくりはとりあえず快適だったんじゃないですか」
そう言って笑ったのは長浜圭一だった。
私は長浜圭一の顔を見た。
右足にギプスをはめ、松葉杖で痛々しく体を支えていたが、
その表情は不思議なほどに晴れやかになっていた。
始めてここに来て顔を見たときは、暗い酷薄な表情をしていたのだが、
今の彼はとても復讐者の顔には見えない。
「何です?」
「あなたは……まだゆっくりを憎んでるの?」
「俺ですか?うーん。どうかな」
長浜圭一は小首をかしげてみせた。
「もちろん嫌いですし、たっぷり苦しめてやる気でいますけどね。
憎んでるかというと、まあ、そこまで入れ込んではないですよ」
「どうして?」
「同じなんだもの」
明るい声で、彼は笑った。
「あいつらの話を聞いて、ようやく納得ができました。
俺の見たところ、ゆっくりと人間は全く同じです。
己の種族の価値観で全てを裁き、他の種族までもいい個体と悪い個体を選別して管理しようとする。
やってる事は全く同じですよ。たまたまこっちの方が強かった、それだけです」
「…………」
「今まで、俺はどこかでゆっくりを人間扱いしてたんだと思います。
だから、あいつらが「悪意ある人間」に思えて、憎んでました。
たとえそういうふうに育てたのが俺だとしてもね。
でも、あいつら独自の価値観がわかった今、憎めるものじゃないです。
あいつらも俺たちと同じく、種族の本能に従って自然に振る舞っていただけですよ」
「家族を殺されても……?」
「山奥に入り込んで熊に食われたり、海で沖に流されてサメに食われるのと同じですね。
俺達が自然を甘く見ていたということでしょう。
辛いことですが、誰を恨む筋合いもないです」
長浜圭一は、気持ち悪いぐらいに物わかりがよくなっていた。
「でも………計画は遂行するんでしょう?」
「そうです」
「今でも…ひどすぎるとは思わないの?」
「もちろんひどいですよ。
それでも、ひどいとわかっていながらやってきたのが人間でしょう。
あらゆる動物の棲家を奪い、木々を切り倒しながら地球に蔓延する。
自分の身の安全と快適な生活が確保されてから、ようやく他種を愛でる余裕ができる。
あらゆる動物を動物園に押し込んで鎖につないでから、動物愛護を唱えはじめるのが人間というものですよ。
所詮、動物愛護なんてのは個人の趣味、遊びです。俺はそういう趣味はない、それだけです」
長浜圭一の理屈は筋が通っていないように思えたが、
今更それに反論してみせる気力もなかった。
「ママはゆっくりが苦しむのが辛いっていうけどさ、
だったらどうして素直に飼われてあげなかったの?
ゆっくりの価値観と幸せを知る貴重なチャンスだったのに」
「…………」
「自分が飼われる立場になってでも、ゆっくりを深く知ろうとする覚悟。
そういう覚悟が、結局ママにもなかったってことだよね。
人間の価値観しか受け入れずに押し付けるしかないなら、
愛護も虐待も、結局やってる事の本質は一緒だと思うな、あたしは。あはは、仲間じゃん」
私と長浜圭一を交互に指差し、春奈はけらけら笑った。
私は返す言葉がない。
それでも、私は、納得しきれず、なんとか声を絞り出した。
「………それでも、ゆっくりと人間は違うわ」
「そうですか?」
「ゆっくりは……生物として弱すぎるわ。
目先の快楽に捉われて、長期的に生き延びる選択肢をとることができない。
人間はそうじゃないわ。社会、歴史というスケールで物事を見て、種族の繁栄を志すことができる。
横暴かもしれないけれど、
人間がゆっくりを飼うことと、ゆっくりが人間を飼うことがお互い様だとは言えないわ」
「どうでしょうかね。
人間だけはそれを言う筋合いはないんじゃないですか」
「………」
「さんざん地球環境を破壊してきて、専門家がどれだけ危ないと警告しても、
先進国の国民や企業は、誰かがなんとかしてくれるだろうと思って誰一人真剣に考えず、日々ゴミを吐き出している。
結局、人類の自滅は目と鼻の先にまで迫っています。数多くの他種の生物たちを道連れにしてね。
ゆっくりに比べれば自分たちは賢いと言ってみたって、所詮はどんぐりの背比べ。
貧しいプライドというものでしょう」
「それは……飛躍じゃない?」
「ご自由に。
あのゆっくり達と同じで、人間も、はたから見れば身勝手な種族の価値観でしたい放題やってるだけです。
俺はただ、人類が少しでも長く生き延びられるように努力するだけですし、
ゆっくりが役に立つとなれば使うだけです。そういう事ですよ」
「……そう」
「あとは、ガキのケンカですね。
俺をナメる奴は許さねえ、思い知らせてやる、そういう衝動です。結局、そこに尽きるね」
長浜圭一はまた笑った。
私は打ちひしがれていたが、それでもなんとか答えた。
「今なら……あなたの気持が、ほんの少しわかるような気がするわ」
「ふざけるなよ」
私はぎょっとして顔をあげたが、長浜圭一は笑っていた。
「ま、お元気で。
あなたにはこういう場所は向かないですよ。早く忘れて、ご自分のお仕事をなさって下さい」
「…………ええ。娘を、よろしくお願いします」
「こちらこそ。娘さんにはお世話になります。
人類を代表して、お礼を言わせていただきますよ」
長浜圭一がうやうやしく頭を下げる。
春奈が手を振っていた。
「じゃ、元気でね。ときどきは会いにいくよ」
「ええ……」
私は頷き、車に乗り込んだ。
運転手がアクセルを踏み、車が走り始める。
私は、二度と後ろを振り返らなかった。
別れ際に春奈が言っていたことが、頭にこびりついて離れなかった。
「断言。ゆっくりを一番ゆっくりさせられるのはやっぱり人間だね。
証明してみせるから、まあのんびり待っててよ。
完璧なユートピアの正体ってものを見せてあげるからさ」
最終更新:2011年07月28日 19:52