何の躊躇もなく、それは
ゆっくりれいむに体当たりした。
ゆっくりにとって想像すらできないようなスピード、
れいむは数メートル跳ね飛ばされる。
元々硬いアスファルトの地面、元々脆いゆっくりの皮、
お互い衝突し、転がったのならどうなるか、想像は容易い。
追突の衝撃、地面に叩きつけられた衝撃、口や眼孔から中身が飛び出し、
転がる間に皮は破れ、そこからも漏れだす。
ゆっくりはずっと転がっていくような滑らか球体ではない。
れいむの場合は、リボンで一度跳ね、もみあげで一度跳ね。次第に勢いを失っていく。
何度か回ると、リボンは破れてしまうが、もみあげの方は髪の毛が何十本か千切れてはいるが、
まだ身体から離れてはいない。
ゆっくりまりさは番であるれいむにすぐさま駆け寄るが、
その行動が仇になる。れいむに追突した事で止まっていたそれが、再び動き出した。
「れいむ、ゆっくりできる?」
必死に呼びかけるまりさ、それの挙動など知る由もない。
踏まれた。帽子や髪を巻き込んで、後頭部の一か所から中身を押し出されるかのように。
勿論、ゆっくりの支えられる重さなど、それの重量の10分の1もない。
一瞬だ。まりさは背後に音を感じた瞬間、もう中身が左の眼球を体外に押し出していた。
右の眼は飛び出すよりも前に地面とそれに挟まれ潰れている。
一回、二回踏まれ、まりさの容姿はすっかり変貌していた。
身体の右半分、特に頭頂部近くは完全に潰れていて見る影もない。
「れぇ・・・・むぅ」
口からは微かに番を思いやる言葉にならぬ声が聞こえる。
致命傷だが、即死には至らない。意識のあるまま、まりさは死ぬ。
ろくに動けもしない。目はもう無いかられいむの様子を確認する術もない。
呼びかけて返事がない事が、唯一、れいむの様子をまりさに伝えていた。
画面は青色に戻り、部屋が明るくなる。
哀れに思ったか、それとも怖いのか、泣いているゆっくりも中にはいる。
始まる前の騒がしい空気とは違い。飼い主の膝に座るゆっくり達はどれも皆、黙り込んでいる。
ペットのゆっくりを対象にした交通安全指導、その中で放送されるアニメーション、
細かい描写で酷くグロテスクな様はクレームになるほど。
ゆっくりは作りものと分からず、まるで自分の目の前で同属が死んだかのように錯覚する。
こうしてゆっくりは車に対する恐怖を知る。
それから細かな交通ルールを覚える講習に入っていくのだが、
それでも、交通事故は無くならない
最終更新:2011年07月27日 23:55