※注意 ギアスネタは特にありません。
小鳥の囀りと朝の空気が耳に心地よく私を眠りから解き放った。
気持ちのいい朝だと今日一日頑張れる気がしてくる。
朝日もこんなに素敵にキラキラ世界を照らして
「ゆっかりしていってね!」
とてもいらついたので踏んでおいた。
「ズギマ゛!」
朝ご飯にしようと棚から出したまま放置してそのまま眠ってしまったようだ。
この
ゆっくりスキマはゆっくりには珍しく中身が納豆という甘くない素材なのでごはんのおかずに重宝する。
ただやかましい上にうっとうしくすぐ箱から逃げ出すのが難点だ。
ならさっさと中身を取り出してそれを採っておけばいいとまわりは言うのだが私にはこだわりがあった。
「よっと」
「ゆっ?」
ゆっくりを抱え込んで足で固定する。
「お兄さんの足少女臭がするよ!」
臭くて悪うございましたね。
悪態をつきつつナイフでゆっくりの頭を切り開いて中の納豆に箸を突き刺した。
この臭い、やっぱり納豆はこうでないといけないと思いうんうんと頷いた。
「ズギャマ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!な゛に゛を゛ずる゛の゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!」
スキマ納豆は頭から直接ご飯にかけるのが一番うまいというのが私の持論だ。
賛同者は少ないがこれだけは譲れない。
私はタレを中身に少々垂らすとゆっくりとかき混ぜ始めた。
「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っ」
ゆっくりが激しく痙攣を始めるが足でしっかり押さえつけているので大丈夫だ。
その時玄関から戸を叩く音が鳴り響いた。
「ちょっとー!○○さーん!」
全く人の朝食を邪魔するとは無粋な奴である。
私は仕方なく納豆の粘着力でゆっくりの傷口を接着して玄関に向かった。
「はー、また畑をゆっくりが荒らしてると」
「なんとかなりませんかね」
玄関先で眉根を寄せた農家の男の苦情を朝っぱらから聞くことになるとはなんとも憂鬱な話だ。
ちなみに何故こんな苦情を朝から聞く羽目になっているというのかと
私は里の長の補佐する人々の下っ端、要は役所の職員のようなものとして住民の苦情解決係
つまるところなんでも屋のようなものをやっているので朝からこうして苦情を聞いているわけである。
「あーあれだ、加工場から出てるゆっくり除けというのが出てるじゃないですか
あれを畑の周りに置けばいいんじゃないですかね」
「畑の周りにずらーっと置いていたら金がかかって仕方がありませんよ
里のみんなが困っているんだからそちらの方でなんとかしてくださいよ、ねぇ?」
「うーん、まあ追々対策を考えて行きますから今日はこの辺りで…お互い朝ごはんもまだでしょう」
「ほんとにもう、頼みますよ!」
そう言って農家の男は肩を怒らせて帰っていった。
苦情はちゃんと受付通して言ってもらいたいものである。
「さて、納豆をほっぽりっぱなしだったな」
気を取り直して私は家の中へ戻っていった。
「私の中身を食べようとするつもりだよ、おおこわいこわい」
食卓に戻ってきた私に開口一番でゆっくりはそんなことを言った。
「生きたまま中身を取り出して直接ごはんにかけようとしたんでしょう?
野蛮極まりない、なんて醜いんでしょう」
おかしい、このゆっくりはこんなしゃべり方をするゆっくりだったろうか。
確か買ったときはもっと子どもじみたしゃべり方だったように記憶しているが
成長したにしてはいくらなんでも早すぎる。
これでも鮮度には気を使う方だというのにと首を傾げた。
調べてみようと思いむんづとゆっくりを掴んだ。
「離せ!離せこのゆっくり出来ない人間め!」
「うーん」
掴むとゆっくりは激しく暴れだした。
やはりさっきとは明らかに違うと再び首をかしげる。
まさかいつの間にか別のゆっくりと入れ替わったのだろうか、そう考えて頭を見るがやはりちゃんと切り開いた痕が残っていた。
食中毒でも起こしたら怖いので箱の中に閉じ込めておかずには別のゆっくりを食べることにした。
「お前さぁ、あの納豆の食い方やめろよマジで」
朝のゆっくりのことが気になり、上の空気味だったもののなんとか無難に仕事を終わらせ
同僚と途中まで道を共にしつつ帰路についている最中のことでだった。
同僚が言っているのは恐らくゆっくり納豆の食べ方のことだろう。
「一番うまい食べ方をして何が悪い」
「あのやり方すると臭いがすごいんだよ」
同僚が鼻をつまんで臭い臭いとジェスチャーした。
「納豆が臭くなくてどうする」
「物には限度ってのがある」
「いやそこまで酷くは無いだろ」
「酷いっての、お前の部屋入ると納豆の臭いがするし」
「流石にそれは気のせいだろう」
「いやいやマジで、まあやめなくてもいいけどもうちょっと控えろ
別に納豆だけが食べ物ってわけじゃないんだからさ、たとえば…」
そういうと同僚は道をそれて茂みに入り何かを探し出した。
「おい、何をやって…」
「こういうのでもいいじゃんか」
「あたいったらゆっくりね!」
何事かと思い声をかけようとするやいなや友人は青っぽいゆっくりを抱えて戻ってくると
私にぽん、と手渡した。
なにやら無駄に自信ありげな青い髪のゆっくりがこちらを見つめている。
「青系の食べ物は生理的に受け付けないんだが…」
その青い頭を見て眉をひそめる。
どうもこういう色の食べ物に対しては食欲がわかない。
「中身は別の色だろ、まあもって帰って納豆の代わりにおかずにでもしろ
おっと、お前は帰りそっちの道だったな
そんじゃ明日もしっかり職場出ろよ」
「当たり前だ」
たわいも無い会話を交わしているうちに別れ道まで来たのでお互いの家の方へとそれぞれ歩いていった。
「納豆の食べ方か…そういえばあのゆっくり、混ぜたまま放置していたんだな」
無理やり手渡されたゆっくりを眺めながらさっきの会話を反芻していてふと、朝のゆっくりがおかしくなった理由が思い当たった。
一つ家に帰ったら試してみるか。
家に戻ると私は同僚からもらったゆっくりを箱詰めにして保管すると
好奇心の赴くままに私は箸を手に箱を開けてゆっくりの頭部の傷にぽん、と手をかけた。
「ゆっくり出来ない人間風情が…離せ!離せ!」
ものすごく暴れだしたが私のあふれる好奇心には勝てない
指を二本添えて外側に引っ張るように撫でるとクパァ、と頭の傷を開かれた。
ぷぅんと納豆独特の臭いがあたりに広がる。
「い゛や゛ああああああああああ!生きたまま頭を弄られるのはい゛や゛あ゛あ゛あああ゛あ゛あ゛あ!!!!!!!!!
や゛め゛てや゛め゛てや゛め゛てや゛め゛てえええええええええええええ!!!」
随分はっきりと自分がこれからされることを理解しているようだ。
やはり朝起きたときと同じゆっくりとは思えない賢さである。
この上中身をさらにかき混ぜたらどうなるのか、私の好奇心は高まった。
箸が糸を絡めながら大豆と大豆の間に突き刺さる。
奥まで入ったのを確認すると私はぐるぐると回し始めた。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
ねちゃりねちゃりと音を立て、大豆と大豆を繋ぐ糸がさらに複雑に絡み合っていく。
「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っ、ごわ゛れゆ゛っ゛の゛ぉ゛ま゛たゆ゛っがりゆ゛っごわ゛れ゛っゆ゛っ
ゆがゆ゛っゆ゛っん゛っがゆ゛がりゆ゛っじゃなぐなっでっゆ゛っぐの゛お゛…!!
い゛や゛い゛や゛い゛や゛い゛や゛い゛や゛い゛や゛ゆ゛っがり゛んゆ゛っゆ゛っは゛
ゆ゛がり゛んどま゛ま゛でいだいどにいゆ゛っいゆ゛っいいゆ゛っいゆ゛っいいゆ゛っ!!!!!」
悲痛なその言葉とは裏腹にゆっくりの表情は恍惚としたものだった。
このゆっくりは自分が壊れていく恐怖をひたすら訴え続けていた、壊れた先に次はどんなものが現れるのか。
それが無性に知りたくて知りたくてたまらない。
泡立つほどにひたすら納豆を混ぜ続けた。
「…………………」
混ぜ続けること10分ほど、頭を納豆で接着しなおしたゆっくりはただただ虚空を見続けるだけの存在になっていた。
やはり無理があったのだろう、心が壊れてしまったようだ。
私はもっと面白い物が見られるかもと思ったのにこんな結果に終わってしまい少々落胆した。
こうなってしまっては仕方ない、明日の朝ごはんにでもしようと決めそのゆっくりはその場に放置して床に着いた。
夏の空気がねっとりと私の体にまとわりついているのを感じながら私は目を覚ました。
寝汗が酷く目覚めは最悪といったところだ。
井戸で水を汲んで顔を洗ったら早く朝ごはんにしよう。
「無い…無い!どこにも無い!」
昨日、放置していたゆっくりが消えていた。
それだけではない、箱詰めにして保管しておいた食用生ゆっくりが軒並み消えてしまっていた。
あの箱は加工場から販売されているものでゆっくりに逃げ出されるということはまず無いはずなのだがそれが軒並み空になっていた。
まさか夜中に泥棒でも入ったのだろうかと考え慌てて財布や貴重品があるかを確認しに走ったがそちらは大丈夫だった。
一体どうなっているのだろう、その日は朝ごはんは抜きでそのまま職場へ向かった。
あれから半月ほどが経った。
里では突然食品店などのゆっくりがどこかへ消えてしまう事件が多発し、私もその対策に追われていた。
事件はあの日、私の家からゆっくりが消えてしまった頃から始まっているようで私は何か得体も知れない胸騒ぎがして仕方が無かった。
博麗の巫女が動き出してくれればいいのだが同僚が異変解決を依頼しに行った所
「ゆっくりが居なくなったからってなんだっていうのよ、うるさいのが居なくなって静かになってちょうどいいじゃない」
という返事が返ってきておりこちらもまだ妖怪など危険な存在が関わっているという確信も無いので強くは言えず協力は絶望的と見られている。
仕方なく里長の指揮下のもとで調査することになり私もそのためにここ一週間はずっと里を歩き回っているのだが一向に手がかりは見つからない。
人間か、妖精のいたずらかはまだわからないが私には相手はかなりのキレ者だと感じられた。
「親父さん、胡椒とってくれ」
「あいよ」
そして今は調査の合間をぬって里のハズレにある屋台でラーメンをすすっている最中だった。
しかし今日はなんて落ち着かない日なんだろうか。
なんだかザッザッ、という耳鳴りがさっきから聞こえて仕方ない。
私は胡椒瓶を掴むと、ふと気になって外の景色を眺めるようとした。
この辺りは里に隣接するかのように青々と茂ったきれいな草原が見えるのだ。
それをみた時私は耳鳴りの原因、ひいては私がここのところずっと感じていた胸騒ぎの正体を見た。
「なんだ…あれ…!」
その存在に気づくと私はそれを確認するために即座に屋台を飛び出した。
「な、待ちやがれこの食い逃…な、な、な…」
「親父さん、すぐに…里のみんなに知らせてきてください」
草原を覆い隠すかのように、何千何万というゆっくりが里を囲んでいた。
「おい、なんだよこれは!?」
確認のために使わされた同僚が茶碗にいっぱい盛ったごはんを片手に叫んだ。
食事中に呼び出されたようだ。
他にも里の人間が何人も集まってきていた。
「私が聞きたいよ、一体何が起こっているんだ…」
何千何万…いや、何十万かもしれない
それだけの数のゆっくりがゆっくり同士で諍いを起こすでもなくきちんと整列して静かに里を睨み付けている。
余りにも異常な光景に私は冷や汗がが止まらなかった。
『 ゆ っ か り し て い っ て ね ! 』
その時、ゆっくりの大軍勢から凄まじい数のゆっくりによる号令が飛ぶとまるで守矢の巫女が湖を引き裂くかのように
ゆっくりの軍団が割れ、その間を通って一匹のゆっくりが姿を現した。
「里の代表は居るかしら」
大軍勢を代表するかのように現れたゆっくりはあのゆっくりスキマだった。
脇には他のゆっくりが数匹連れ添って歩いていた。
あああの青いのは私が同僚からもらったゆっくりだろうか。
「まさか…あの時の…」
「これだけのゆっくりを集めて…何が目的だ!」
驚愕の余りただ立ち竦んでゆっくりスキマと同僚の姿を見ているしかなかった。
「私達の目的は…私達ゆっくりに対して非道な行いを続ける人間達が住まう里の消滅、それだけですわ」
「なん…だと…?ふざけるなよ!博麗の巫女さえ出てくればお前らゆっくりなんていくら集まろうと簡単に」
「私達の斥候の情報によれば博麗の巫女は今神社で惚けていますから向こうからやってくることはまずありませんわ
私達の大軍勢を突っ切ってこの状況を知らせにいけるならどうぞどうぞ」
「くっ…もし里に何かあれば人間を糧にする妖怪達だって黙っちゃいないはずだ!」
「あれだけえばり散らしていた人間様もいざとなったら妖怪頼り、クスクスクス
確かにこの大軍勢をもってしても妖怪たちにはかないわしません
ですがその前に里を滅ぼし、幻想郷から人間を駆逐してしまえば妖怪と人間のバランスは崩れ
人間を襲うことも異変を起こす相手の人間も居なくなればやがて妖怪はその存在意義を失い衰退していく
私達は逃げながら増え続けてその日を待てばいいだけ
この幻想郷は…美しい私達ゆっくりのおうちになるのよ!」
「そんなこと…出来るわけが無い!」
「やるのよ、まずはその手始めに人間の里を滅ぼす」
「この…ゆっくり風情が…!」
「富みて奢る無きは易し
鼻につくわ、その人間特有の上から目線
美しく残酷にゆかりん達のおうちになるこの大地から住ね!」
その啖呵を聞いてゆっくり軍団から大きな歓声が鳴り響いた。
遂に言葉の無くなった同僚が膝をついた。
「私の…私のせいだ…私がお前を…」
どういう理由かは門外漢の私にはわからないがゆっくりスキマの中身をかき混ぜることで
スキマの知能は飛躍的に向上し、その知能を最大限に利用してこうしてゆっくりの軍団を編成し里に攻め込んできたのだろう。
消えていったゆっくりはスキマの手引きでこの軍団に参加していたのだ。
幻想郷中のゆっくりが里を囲んで滅ぼそうとしている。
涙が頬を伝う。
私のせいで里が、幻想郷が壊れてしまうだなんて
取り返しのつかないことをしてしまった。
「あなたのおかげで前の私は壊れてしまったけれど
おかげでこうやって仲間を集めてこうやって人間に反旗を翻すことが出来たわ
ありがとう、それじゃあなたも壊れちゃいなよ」
そう言って後ろを振り向くとゆっくりスキマはゆっくり軍団の中に消えていこうとした。
「畜生、畜生ぉお!」
もはややけくそで手に持っていたものをブン、と投げつけた。
どうせならせめて一矢報いてから地獄に落ちようと思う。
「ちーんぽ!」
ゆっくりスキマの横に控えていたゆっくりみょんがさっと前に出て木の枝を口で振るい、私が投げつけたものは粉々に砕かれた。
「哀れね」
もはや一瞥もせずそのままゆっくりスキマがゆっくりの中に消えようとしたその時。
「ふぇっ…へっ…へっ…へくちっ!!!
…ズビー、あたいったらかぜぎみね!」
同僚に貰った青っぽいゆっくりがスキマに向かってくしゃみをし、スキマはカチン、と凍りついた。
「ゆ、ゆー!?へくち!」
「へっくち!ゆかりんしっかりしてね!」
「⑨はゆっくり死ね!へっくち!」
周りのゆっくりも慌てながら、くしゃみをしている。
「あ…」
よく見るとさっき投げたのはラーメン屋から盛ってきてしまっていた胡椒瓶だった。
ちなみに右手には箸を持ちっぱなしだ。
「ゆかりんをゆっくりさせるよ!」
「ゆー!ゆー!」
頑張って体をこすり付けて凍りついたスキマを溶かしているようだった。
努力の甲斐あってかスキマの周りの氷は大体溶けたようだ、まだ霜は残っているが。
『ゆー!ゆかりんふっかつ!ゆかりんふっかつ!ゆかりんふっかつ!』
「ゆ、ゆー?」
大喜びする周りのゆっくり達となんだかボーっとしているスキマ。
「ゆかりんはやくしじをだしてね!にんげんたちをやっつけるよ!」
「ゆ?」
「しじをだしてね!」
「ゆー…ゆっかりしていってね!」
指示を仰ぐ側近らしいゆっくりにスキマはなんだかよくわからないといったようすでとりあえずいつもの挨拶を返した。
「ゆっかりしていってね!だよ!!!」
「わかるよー、ゆっかりしていってね!」
「ゆっかりしていってね!これでにんげんたちをたおせるよ!」
「ゆっかりしn…ゆっかりしていってね!」
即座に指示が伝わり次々とゆっかりしていってね!と叫んでいくゆっくり軍団。
部下の信頼厚いカリスマゆっくりである。
「な、なんじゃありゃ」
同僚や里の人たちはその光景を唖然としながら眺めている。
私にだけは何が起こったのかがピン、と来た。
「ゆっかりーん」
私はフランクリィにスキマに声をかける。
「ゆー?」
「いちたすいちはー?」
「ゆーん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・わからないよー!」
じっくり三十秒ほど考えたがわからないようだ。
予想がほぼ確信に変わる。
青ゆっくりのくしゃみで凍りつくことにより箸で中身をかき混ぜるのと逆の効果が発生したのだ。
細かいことはわからないが頭が固くなったということだろうか。
「ちょっと借りるぞ」
「あ、お前俺の昼飯・・・」
未だ呆然と眺め続けている同僚からごはんを奪うと私はゆっくりスキマの方にまっすぐ歩いていく。
「ゆ、にんげんはこないでね!」
「ゆっくりできないくせになんでこっちくるの?ばかなの?しぬの?」
「ゆかりーん、おいしいご飯があるよー」
「ゆー、ゆっくりもってきてね!」
『ゆ、ゆー?』
「はいこっちで食べるよー」
即座に近寄ってくる私を警戒する側近ゆっくり達であったがスキマが満面の笑でごはんを持ってきてね!というのでとめるにとめられないでいた。
困惑しながらこちらを睨み付ける側近ゆっくり達を無視してスキマを抱えあげて元いた方へと戻っていく。
「はやくたべさせてね!」
「……」
安全そうな位置まで戻ると私は以前切開いたゆっくりの傷跡を見た。
まだうっすらと痕が残っている。
思えば私があんな食べ方をしなければこんなことにはならなかったのだろう。
私は心からそのことを恥、反省した。
「だからこの食い方をするのは今日で最後だ」
そう一人ごちて右手に持っていた箸をゆっくりの頭に突き刺した。
「ズギマ゛ああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
『ゆ、ゆかりいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいん!!!!!!!!』
ゆっくり達からいっせいに自分達の総大将の名前を呼ぶ声があがる。
「うおおおおおおおおおお!!!」
私はゆっくり達の悲鳴を無視して全快で豪快な勢いでかき混ぜるとそのままご飯にざばーっと納豆をかけた。
「うんめええええええええええええええええええええ!!!!」
あとはもうひたすら箸でお茶碗から口の中へ掻っ込む。
その間約30秒。
「食うの早っ…」
同僚も呆れ顔である。
「ゆかりんんんんんんんんんんんんんん!!!!」
「ひどいよ!あんなひとたちとはゆっくりできないよ!!!」
「ゆっくりゆかりんのかたきうちするよ!」
私は怒り心頭のゆっくり軍勢に向かって再びまっすぐ歩いていった。
「むこうからよってきたよ!とんでひにいるなつのむしだね!」
「自分からくるとかバカなの?しぬの?」
「ゆっくりしね!ゆっくりしね!」
気色ばむゆっくりたちをぐるりと一瞥すると私は側近だったらしいゆっくりを次々と踏み潰した。
「ぎゃあああああああああああああ!!!」
「ゆっくりできないいいいいいいいいいいいい!!!」
「わからないいいいいいいい!!わからないよおおおおおおおおおおおお!!!」
「指揮系統は潰したぞー、職員は害虫退治の時の装備で駆除に取り掛かれー、あと里の若いのに手伝ってくれるよう頼んできてくれー!」
私は里のみんなの方を振り向いて手を振った。
司令官を失い、指揮系統を完全に破壊されたゆっくり大軍勢と人間の戦いは
いや、もはや戦闘はおろか虐殺でさえない、単なる害饅頭駆除であった。
「ゆかりんの敵はゆっくり討ゆゆゆゆゆ!?」
「いやああああ!おうちかえる!おうちかえるぅ!」
司令官の敵を討つために前進しようとしていたゆっくり十数匹と
恐慌して逃げ出そうっとしているゆっくりの一団が正面衝突した。
急いでいるところを邪魔されてお互い怒り心頭だ。
「はやくどいてね!おうちかえる!」
「敵前逃亡は銃殺刑だよ!ゆっくり死んでね!」
そのまま強行突破しようとした逃走ゆっくり達に対して仇討ち部隊がしかけた。
「敗北主義者はゆっくりし」
『どかないならゆっくりしんでねええええええええええ!!!!』
しかし如何せん逃亡ゆっくり達の方が数が多く、そのまま力押しでどんどん押しつぶされていく。
命がかかっているだけあって凄まじい気迫だ。
「ゆ゛っ、や、やべれっぽぉ!?」
圧力に負けて次々と潰されて餡子をぶちまけていく仇討ち部隊。
それから仇討ち部隊が逃走を始めるのにものの3分もかからなかった。
「ゆかりんの旗の下ゆっくりできない人たちをえいえんにゆっくりさせるよ!」
「ゆー!ゆっくり全軍前進だよー!」
しかしさらに向こうから今度は司令官が死んだことを知らずに攻め込んでくる一個大隊が現れた。
「ゆー!もうゆかりんは居ないよ!おうちかえるからどいぶぎぇ!?」
『じゃまだからゆっくりどいていってね!』
さらに強大な数の暴力に逃亡ゆっくり部隊もあっさりと餡子片になった。
そのまま進んでいくゆっくり達の前に私の後輩が立ちふさがった。
「ゆ!まずはこいつから血祭りにあげるよ!ゆっくりかかってね!」
『ゆー!』
流石にあの数に一斉に襲われるとまずいと思い駆け寄ろうとすると後輩は手の平をこちらに向けてそれを制した。
何をする気かと見ていると後輩はリーダーらしきゆっくりれいむを掴みあげた。
「ゆ、ゆっくり離し…ゆ゛ぎぃぃいいいい!!?」
「ずっ、ずずずずず…」
後輩はリーダーゆっくりれいむに噛み付くと中の餡子を吸い出し始めた。
「やっ、やべっやべで!ゆっくりでぎな…………」
『れいむうううううううううううううううう!!!』
そういえばあいつは甘いもの好きだったか。
後輩は皮だけになったゆっくりれいむを足元に捨てた。
口にたっぷり餡子をためて周りをにらみつけている。
「れ゛い゛む゛をがえじでえええええええ!!!」
「れ゛い゛む゛うう!!敵はとるからねええええええ!!!」
饅頭皮にすがりつく周りのゆっくり達は復讐を誓ったようだ。
「ぶふううううううううううううう!!!」
『うげえええええええええええ!?』
そんな感動的シーンを演じるゆっくり達に口にたっぷりためた餡子が吹き付けられた。
途端ゆっくり達は真っ黒に染まる。
「ひゃっはああああ!!!もう我慢できねぇ!!スィーツ祭りじゃあああああああああ!!!!」
「たすけてえええええええええええええええ!!!!」
本能的に恐怖を感じたゆっくりたちが悲鳴を上げた。
後輩はゆっくり達の中にダイブすると次々と齧り付いた。
復讐の誓いはあっさりと破られゆっくり達は蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。
「あめええええ!うめえええええええ!」
「れ゛い゛む゛のあ゛だま゛がああああああ!!!」
「ぢぢぢっぢいぢーんぼおおおお!?」
「だづげぇぢぇお゛があざあああああああん!!!」
どうやらテンションがあがってイケナイハッスルをしてしまっているようだ。
なるべく目を合わせないようにしよう。
向こうでは同僚がゆっくりの死体から頭飾りを集めていた。
「おい、遊んでないで仕事をしろよ」
「待ちなって、ちょっと生ゆっくり持ってきてくれ」
私は仕方なく適当に生きているゆっくりまりさを捕まえると同僚のところへ持っていった。
同僚はそれを見てニヤリと笑うと死体から奪った飾りをそのゆっくりに無理やりかぶせた。
「やめてね!これはまりさのぼうしじゃないよ!
まりさのぼうしかえして!」
「そぅら!」
しっかり帽子を固定するとそのままゆっくりたちがたくさんいる地点に向かってぶん投げた。
ゆっくりまりさはゆっくり達の上に着地するとゆっくり起き上がった。
「ゆう……みんなくっしょんになってくれてありがとう!
いっしょにあのにんげんをにどとゆっくりできないようにしようね!」
まりさは感謝の言葉を述べるとこちらを向いて物騒なことを言っている。
同僚に投げ飛ばされたことを恨んでいるようだ。
どうしてくれる、と同僚に一瞥くれるとまあ見てな、とウィンクを返した。
気色が悪いのでゆっくり達の方を見ると様子がおかしい。
「ゆー、なんだかゆっくり出来ない臭いがするよ…!」
「まりさといたらゆっくりできないよ!」
「まりさはとっとと死んでね!」
そう言ってさっき投げたゆっくりまりさに対してリンチが始まっていた。
「や゛べでええええええええ!敵はあのにんげんだぢだおおおぎぃいいいいいい!?」
「ゆっくりできないまりさはゆっくりせずに死んでね!!」
間に挟まれたほかのゆっくりまで潰れそうなくらいゆっくりまりさに対しておしくら饅頭リンチが繰り広げられていた。
「な、使えるだろ?」
「うーむあんな習性があったとはしらなんだ」
同僚の無駄な博識さには感心してしまう。
「ああああああ!命がけの戦いで余計に燃えちゃうのおおおおおおお!!!」
「ゆっ、らめぇこんなところで…あ、あ、アリスゥウウウウ!んほおおおおおおおおおお!!!」
あちらの方ではこんな状況にもかかわらずゆっくりまりさとゆっくりアリスが交尾をしていた。
死んだ仲間の餡子を潤滑剤代わりにしているのかこすり合わせてる部分が妙に黒い。
「ちょっと踏み潰してくる」
私は同僚にそうつげ、あちらの方を指差した。
「おう、いってら」
同僚はしゃがんだまま軽く手を振った。
――――――――――――…
結局今回の騒動は七割方のゆっくりは逃走、一割ほどは里の人間の手で駆除され
残り二割はゆっくり同士の仲たがいや逃走時の事故により餡子片になった。
指揮系統はほぼ全滅しもうこうやって襲ってくることも無いだろう。
里の側の被害は里の周りが餡子まみれになってしまい片付けが大変なこ以外はこれといってなかった。
草木も眠る丑三つ時、責任を感じた私は他の職員が帰った後も片付けを続けていた。
「ふう、一週間や二週間じゃとても終わりそうにないな、これは」
恐らく加工場の職員に片付けの依頼をして手伝ってもらうことになるだろう。
どれだけの予算が使われるか考えると人事ながら胃が痛くなる。
私は溜息をついてそこらに転がってた石に腰掛けた。
「ゆぎゅっ!?」
「うわぁ!?」
誰も居ないはずの深夜の草原に響く声に私は驚いて悲鳴を上げた。
「なにすんのさ!?」
石だと思って座ったのはあの青いゆっくりだった。
「お前…家にいた奴か」
「あたいがゆっくりしてたのじゃましといてさいしょにいうのがそれ!?
やっぱりあんたってゆっくりできないにんげんね!」
この言い草、やはりあの時のゆっくりのようだ。
「何してたんだお前、他のゆっくりはみんな居なくなったのに」
「あたいがさいごまでせんじょーにのこってたんだよ!やっぱりあたいったらさいきょーのゆっくりね!」
事情もわかり私は潰してしまおうかと鍬を振り上げかけて思いとどまった。
「そういえばお前がくしゃみしたおかげでなんとかなったんだったな…」
そう、思えばこのゆっくりは里の救世主なのかもしれない。
「仲間も散り散りになったしよければ家に来るか?」
「さいきょーのあたいをぼでぃーがーどにしたいみたいね!そこまでいうならあんたのいえでゆっくりしてあげるよ!」
「よろしく頼むよ」
気まぐれにゆっくりの一匹くらい飼ってみるのもいいだろう。
私は作業を切り上げて青ゆっくりをつれて家路についた。
文々。新聞 号外
里を襲うゆっくり軍団、巫女動かず
先日人間の里を大量のゆっくりが襲うという異変が起きた。
ゆっくり達は一匹の異常に知能の発達したゆっくりゆかりんにより指揮されておりその数は数万は下らなかったという。
幸い、里の人間によりすぐに指揮をしていたゆっくりが駆除され事なきを得たものの里の周りが餡子まみれになるという甚大な被害をこうむった。
この異変が起きた際、博麗の巫女が神社でゆっくりれいむとお茶を飲んでゆっくりしていたことが発覚しそのことに対して非難が集中している。
巫女はこの件に関し
「大丈夫だったんだからいいじゃないの、ゆっくりが来たぐらいでいちいちうるさい。そんなに助けてほしければお賽銭もう少しくらい入れなさいよ」
と発言しておりさらに非難の声が上がっている。
里では青年団が有志を募り、神社に遊びに行くが賽銭は入れないという抗議活動を行うことを決定したという。
ゆっくりゆかりんの知能が異常に発達した件に関して文々。新聞では
永遠亭でゆっくりに関しての研究を行っている八意永琳氏(年齢不詳)へのインタビューに成功した。
「人間の脳にはニューロンという神経細胞がたくさんあって
ニューロン同士が軸策突起で繋がって複雑なネットワークを作ることで思考をしているのだけど
恐らくゆっくりゆかりんにとって納豆がニューロンでその間に引く糸が軸策突起だったんじゃないかしら
聞いた話だと急に頭が悪くなったらしいけど多分体を冷やすか何かして糸の部分が壊されてしまったんじゃないかと思うわ
それにしてもそのゆっくり、きっと誰かが食べようと思って頭を開いて混ぜた後ほうっておいたんでしょうね
食べ物を食べかけでほっておくのはいけないと思うわ」
と述べた。
最終更新:2008年09月14日 06:17