ゆっくりいじめ系411 ゆっくり焼き土下座(前)_2



 最初のうちは、傷のせいか味わった恐怖のためか、世話をされるゆっくり達は総じて大人しかった。
 だが何もしなくても餌がもらえてゆっくりできるという状況に、だんだん調子に乗り始めてきた。
「まりさのごはんはやくもってきてね!」
「せなかがかゆいよ! はやくかいてね!」
 などと、注文すらつけるゆっくりまで現れ始めた。
 無論、充分に反省し、大人しいゆっくりもいたにはいたが、それもほんのわずかだ。
 世話をするゆっくりの側もストレスが溜まり始めていた。
 怪我をしたのは本人のせいなのに、まるで王様のように振る舞うゆっくり達を、表面では気遣う振りをしながらも陰では忌々しく思っていた。
 加えて動けるゆっくりの数が減ったことで、群れ全体の食糧事情も芳しくなかった。
 今はどうにか頑張って、依然とほぼ変わらぬ量の食物を用意できていたが、それもいつまで続くかわからない。
 何より、全く働かないゆっくりと、危険を冒して餌を取ってきた自分達とが、同じ量しか食べられないというのは大いに不満であった。
 それでも暴行に走ったり餌を抜いたりしなかったのは、同じ群れの仲間であるという意識がまだあったからだ。
 何より、群れを取り仕切るリーダーれいむが、何も言わずにあのまりさの世話をしているのだから。
 リーダーれいむに限らず、大人ゆっくりや良識あるゆっくりは、あのふてぶてしいまりさが嫌いだったのだ。
 そのまりさを何より嫌っていたはずのれいむが、進んで世話をしているのだから、他のゆっくりは何も言えないでいた。
 だが、一番ストレスを溜めていたのは、そのリーダーれいむ本人だった。
「……たべものをもってきたよ」
 薄暗い木のうろに、れいむは取ってきた花や虫を運び込む。一人で住むにはやや広いここが、まりさの巣だった。
「ゆ! どこであぶらうってたんだぜ! おそいぜ!」
 嘲りと苛立ちをないまぜにした笑い声に、れいむは唇を引き結んだ。
 れいむがまりさの世話役を買って出たのは、同情や親愛といった気持ちからでは無論ない。
 自分以外では、このまりさの相手をするのは耐えられないと判断したからだ。
 他のゆっくりであればそのうち堪忍袋の尾が切れ、まりさを殺害するであろうことは容易に想像できた。
 それは連鎖的に、他の動けないゆっくりを排斥していく運動に繋がるだろう。
 そうなれば最早群れは崩壊するしかない。次はいつ自分が殺されるのか、という空気が仲間内に蔓延するだろう。
 その事態だけはどうしても避けなければならなかった。
 そしてまりさは、れいむのそんな思いを誰よりも理解していた。
「ふん! こんなりょうじゃまりささまはまんぞくできないんだぜ! もっとたくさんもってくるんだぜ!」
 れいむの持ってきた餌を一瞥するなり、そう罵倒する。まるで動けないとは思えぬほどの厚かましさだった。
「みんなとおなじりょうのごはんだよ! ゆっくりがまんしてね!」
「いやだね!」
 即答だった。
「どうして……どうしてそんなこというの!? けがしたのはまりさのせいでしょおおおお!?」
「けがにんはいたわるものだぜ! いたわれないれいむはひどいやつなんだぜ!」
「ゆっくりはんせいしないとごはんぬきだよ!」
「はいはいはんせいしてるはんせいしてる。だからさっさとえさもってくるんだぜ!」
 ギリギリとれいむは歯噛みした。
 どうして、どうしてそんなことを、平気な顔して言えるのか。お前のせいで、どれだけ自分が、仲間が苦労していると思っているのか。
 れいむはまりさの驕りを理解できなかったし、したいとも思わない。
 ただ許せない。そう思った。
「まりざがにんげんのところにいがなげれば、みんなけがじなかったのに……!」
 れいむは搾り出すように叫んだ。
「まりざがにんげんのごはんをどっだりなんかじなければ……!」
「それはちがうぜ! まりささまがにんげんのところからたべものをうばったから、みんなゆっくりできてたんだぜ?」
「それはまりざとありずとれいむが、みんなのぶんまでごはんたべちゃうからでしょおおおお!?」
 せせら笑うまりさに、れいむは激昂した。
「まりざがっ、みんなにぢゃんとごはんわけていればっ、みんないっじょにゆっぐりでぎだのにぃぃぃぃ!!!」
 怒りに震えるれいむの顔は真っ赤だった。
 だがそれをも、まりさは冷たくあしらう。
「ふふん、まりささまはそんじょそこらのまりさとはちがうんだぜ。たくさんごはんをたべるのはとうぜんのけんりなんだぜ!
 それに、まりさがいなかったら、れいむはむれをまとめられなかったはずなんだぜ!」
「……!」
 確かに、その通りだった。
 元々、この群れはれいむだけがリーダーをしていた。
 当時は今の半分程度の群れであり、それでもれいむは群れをまとめるのに四苦八苦していた。
 どんな集団にも問題児というものは現れる。そして、普通の者よりも世話が焼ける存在だ。
 そこに現れたのがまりさだった。
 元々人間に飼われていたというまりさは、しかし類稀な身体能力で、狩りにおいてはすぐに群れ一番の実力者になった。
 一度など、単独でれみりゃを追い払ったほどである。
 まだ若いゆっくり達は、そんな強いまりさに憧れ、自然と付き従うようになった。
 それにより群れは活気に満ち溢れ、また外部からゆっくりを受け入れる余裕もでき、現在の大きさまで成長した。
 時折素行の悪いゆっくりも入ってくるようになったが、そういった連中はまりさが元締めとなって仕切っていた。
 現在取り巻きとなっているありすとれいむも、外からやってきてまりさについたゆっくりであった。
 いつしか群れは、まりさを中心とする、若者や無謀なゆっくり達と、れいむを中心とする、年長や大人しいゆっくり達に二極化された。
 この二つのグループが、ちょうどよい緊張感を保つことで、群れは現在まで成立してきたのだ。
 その状態でまりさがいなくなっては、群れに大きな混乱が起きるのは確実だった。
 それゆえに、れいむは今までまりさに強く口出しできなかったのだ。
「ゆっへっへ、りかいしたか? りかいしたらゆっくりはやく、ついかのえさをもってくるんだぜ! このまりささまになぁ!」
「このっ……!」
 我慢できず、詰め寄ろうとしたれいむだったが、まりさは僅かに身を捻って身体全体で嘲弄した。
「いいのか? ここでまりさがこえをあげれば、どうなるかわかってるんだぜ?
 うごけないまりさといかりくるったれいむと……どっちがひがいしゃなのか、みんなにはんていしてもらうんだぜ」
「ゆぐぅぅぅぅぅぅぅぅ……ッ!!」
 れいむは口惜しそうに呻くが、やがて自分を取り戻し、まりさに背を向けた。
「ごはんはみんなとおなじだからね! それいじょうはふえないよ!」
 そして持ってきた餌をまりさの前に投げ出すと、去っていく。
「……チッ」
 忌々しげにまりさは舌打ちした。
 あのれいむのごうじょうにはまったくうんざりさせられるぜ。目の前の餌を貪りながらまりさは思った。
 いっそのこと、まりさとしてはれいむが襲いかかってきても良かったのだ。
 あのとき、巣の外から他のゆっくりがこちらを窺っていることは知っていた。恐らくれいむが心配だったのだろう。
 その目の前で、れいむが自分に襲い掛かり、それを返り討ちにしてやれば、立派に正当防衛が成り立つ。
 そうなれば、最早群れのリーダーはまりさのみだ。自分の邪魔をするものはいない。
 返り討ちにできるだけの自信もあった。
 足を焼かれ、頬を焼かれた今の状態でも、この群れのどのゆっくりが相手でも、負けないと自負していた。
 群れの仲間は誰一人信じていないだろうが──まりさは、以前、人間を殺したことがあった。
 殺したのは自分を飼っていた人間だった。
 その男は自分に厳しい食事制限を設け、その上激しい運動までさせた。まりさは男が大嫌いだった。
 だがそうやって躾けられているうちに、自分の力が見る見る伸びていくのが分かった。
 そしてもう充分強くなったと判断したところで、背後から襲い掛かった。
 男は倒れ、そして起き上がらなかった。
 まりさは人間に勝ったのだ。
 足を焼かれた今となっては、人間に勝つことは難しいだろうが、しかし同族程度に負ける気はしない。
 れいむがいなくなっても、自分には頂点に返り咲けるだけの力がある。まりさはそう信じていた。
 れいむが限界に達し、自分に襲い掛かるまで、そう長くはないだろう。
 そのときこそ、自分が真に群れの主となるときなのだ。



「むきゅう、れいむ、だいじょうぶ?」
「へいきだよ、きにしなくていいよ、ぱちゅりー……」
 仲間の気遣いに笑みを返すれいむだったが、自分でもちゃんと笑えているか自信がなかった。
 明け方の広場には、動けないゆっくり達を除いた全てのゆっくりが集まっていた。
「みんなよくきいてね。……れいむは、にんげんのところにいってごはんをとってこようとおもうの」
「「「!!!!!!」」」
 思いがけない言葉に、皆揃って驚愕した。
「れいむ! あなたなにいってるかわかってるの!? ばかなの!?
 にんげんのところになんかいったらころされちゃうわよ! それにそんなことしたら、まりさとおなじになっちゃうよ!」
 ありすがぴょんぴょん飛び跳ねて抗議した。
 ありすは、優しいれいむがそんなことを言うとは信じられなかったのだ。
「わかってるよ」
 れいむは静かに答えた。強張った表情は、れいむが悩み、その上で決断したことを示していた。
 れいむとて、あの腐れ饅頭と同じ立場に落ちるのは嫌だ。だが、そうしなければもはやこの群れは立ち行かない。
 昨日でとうとう備蓄食料もなくなり、日の出ているうちに帰ってこれる範囲にある餌はあらかた取りつくしてしまった。
 また、餌を取りにいったまま戻ってこなかったゆっくりが、今までに三匹出ている。
 群れの崩壊も時間の問題であった。その前に、れいむは最後の賭けに出ようとしているのだ。
「……むきゅっ、しょうがないわね」
 ぱちゅりーが一歩、れいむに歩み寄った。
「ひとりじゃごはんははこべないでしょ。わたしもついていくわ」
「ぱ、ぱちゅりーだけいいかっこしようったってそうはいかないわよ! ありすもいっしょにいくんだからね!」
 ありすも名乗りを上げ、そして次々と仲間達も自分も行くと言い出した。
 れいむは微笑んだ。久しぶりの、本当の笑顔だった。
「みんな、ありがとう! でもぜんぶはつれていけないよ!
 もしれいむたちがもどらなかったとき、むれをまもるひとをのこさなきゃいけないよ」
 れいむは、自分と共に行くゆっくりをふるい分けた。
 子供や母親は残され、年老いた者、子育てを終えた者、子を作れない者のみの七匹の決死隊が結成された。
「だめだよぉ! にんげんのところにいったらしぬっていったのれいむでしょおぉお!!??」
 一匹だけ、強く反発する子ゆっくりがいた。群れの若いゆっくりの中で一番優しい子まりさだった。
「だいじょうぶだよ。ちゃんとかえってくるよ。
 でも、もしれいむがかえってこれなかったら……まりさがみんなをささえてあげてね」
 れいむは子まりさに、一度だけ優しく頬ずりをすると、仲間を伴って出立した。



 そして最初のまりさ達と同じ罠にかかって捕まった。



「またか……」
 慧音は憂鬱な溜息を漏らした。一応ついてきた妹紅などは、寝転がって干し芋を齧っている。
「はぁしかし、慧音様、それが今回はどうも事情が違っていて」
「ふむ、まぁ、確かに」
 柵の中に入れられた七匹のゆっくりは、奇妙なほど大人しかった。
 半分べそをかいているものもいるが、どれも待ち受ける運命を受け入れてしまっているように見える。
「お前達、自分が何をやっているのかわかっているのか?」
 とりあえず、慧音はそう声をかけてみた。すると先頭にいたれいむが顔を上げる。
「ゆ、おねーさんがいちばんえらいひと?」
「……まぁ、この場ではそうなるが」
 慧音は戸惑った。普通、ゆっくりは何か聞かれたら反射的に答えを返す。それをしないどころか、逆に問うてくるとは。
「ならおねがいがあるよ。れいむはどうなってもいいから、どうかみんなをたすけてあげてね!」
「! れいむ゛ぅぅぅぅ! どうじでぞんなごどいうのぉぉぉぉぉ!?!?」
「むっぎゅううん! だめよ、じこぎせいはただゆっくりとかなしみをひろげるだげなのおおおお!!!」
 れいむの言葉をきっかけに、他のゆっくり達は一斉にわんわん泣き始めた。
「……一体全体、どうしたことだ」
 今度こそ、慧音は頭を抱えたくなった。
 れいむだけがただ静かに慧音を見上げていた。慧音はふと、訊いてみた。
「お前達は、この前ここにきたまりさ共の知り合いか?」
「ゆ? じゃあまりさたちのあしをやいたのもおねーさんなの?」
「……ああ、そうだ」
 答えて、慧音は反応を待った。だがれいむは「そう」と答えただけで、激昂したりはしなかった。
「復讐しにきたものとでも思っていたが」
「しかたないよ。あれはまりさがわるかったよ。でも、まりさ、あやまらなかったでしょ?」
「ああ、最後までふてぶてしいやつだった」
「だったられいむがかわりにあやまるよ。ごめんなさい」
「連中はどうしてる?」
「みんなおうちでゆっくりしてるよ。れいむたちがごはんをとってきて、わけてあげてるよ」
「あんな連中、よく生かしておけるな。正直、私達が殺しておいたほうが良かったか?」
「ゆぅっ……でも、まりさはくそまんじゅうだけど、でも、それでもれいむたちのなかまだよ!」
 最後の一言は自らに言い聞かすようではあったが、言葉に出来る程度には、その気持ちは確かにあるのだろう。
「……うぅむ」
 慧音は悩んだ。農夫達も、こんなゆっくりは初めて見るのか、戸惑っている。
「しかし、お前達、私達の野菜を盗みにきたんだろう? こんなに徒党を組んでまで」
 そう言うと、れいむははっとなって慧音のほうに近づいた。
「そうだよ! でもちがうよ! れいむがみんなをむりやりつれてきたの!
 いちばんわるいのはれいむだから、みんなはゆっくりにがしてあげてね!」
「ちがいまずぅぅぅぅぅ!!! ありずがわるいんでずっ!! ありずがれいぶをそそのかじだんでず!!」
「むっぎゅ! ぐろまぐはこのぱちゅりーさまなのよ! れいぶなんで、わたしのあやつ、あやづりにんぎょ……うあ゛あ゛ああああん!!」
 またも始まる泣き声の大合唱。
 耳を塞ぎながら、いよいよ慧音は対処に困った。
 どうにも、このゆっくり達はゆっくりらしからぬ仲間思いの心の持ち主であるらしい。
 いくらゆっくりとは言え、そのような者たちを無下に扱うのも気が引けた。
 しかしどんな事情があろうと、野菜を盗みに来た以上、みすみす見逃すわけにも行かぬ。先日のまりさの仲間となれば尚更だ。
 思い悩む慧音の肩に、ぽんと妹紅が手を置いた。
「どうした」
「うーん、この場、私に預けてくんないかなと思って」
 妹紅の手には、先日も使った焼印があった。
 慧音は少し悩み、
「ふむ、分かった。任せる」
「さんきゅー」
 笑って答え、妹紅は手の平に炎を点し、それで焼印を炙っていく。
「ゆ!」
 事態をいち早く察知したれいむが、皆を守るように前に出た。
「やめてね! みんなをいじめないでね! やるなられいむだけにして!」
「だめだ」
 にべもなく妹紅は答えた。
「『悪いことをしたやつは痛い目にあう』。あのまりさ達を見たんなら、それは分かるだろう。
 お前達は、悪いことをやろうとした。しかも悪いと分かっていた上でだ。
 まぁ結果的には未遂だし、同情の余地もあるけど……それでも、けじめは必要だ。分かるか?」
「ゆっ……」
 れいむは黙りこくった。妹紅の言い分を理解してしまったからだろう。
 他のゆっくり達も、どこか神妙な雰囲気で、動きを止めた。恐怖から身を震わせてはいたが。
「じゃあ焼くぞ」
「ぶぎっ……!」
 焼印が押し付けられ、れいむは迸りそうになった悲鳴を飲み込んだ。
 ここで無様に助けを乞えば、自分達は本当にあのまりさ達と同じ、薄汚い泥棒になってしまうと思った。
 他のゆっくりも、そんなれいむを見て、一言も漏らさずに耐え切った。
「んー、結構根性あるな」
 全てのゆっくりに焼印を押し終えた妹紅は、焼印を置くと、れいむの前で身を屈めた。
「ゆ゛っ!」
 れいむは恐怖から身を竦ませた。
 あのまりさ達は、焼印と一緒に足も焼かれていた。自分達も同じ目に遭うのだ。
 だが妹紅が口にした言葉は、ゆっくり達にとって思いがけないものだった。
「森の西側に岩場があるのを知っているか?」
「……ゆ?」
「お前達の住んでるところから、ちょうど太陽の沈む方向にある岩場だ。知ってるか?」
 何故そんなことを今聞いてくるのか、れいむにはさっぱり分からなかったが、とりあえず答えた。
「ゆ! それならしってるよ! れみりゃがすんでてあぶないところだよ!」
「ああ、そうらしいな。まぁ私は近寄ったことないんだけど。
 で、これも人から聞いた話でしかないんだが、その岩場を抜けたところに、また別の薄暗い森があるんだとさ。
 日は当たらんしじめじめしてるが、食べ物は豊富だし、人も滅多に入ってこないし、危険な野生動物もいないんだって。
 そこでなら、わざわざ人里を襲わなくても暮らしていけるんじゃないか?」
「ゆぅ……それ、ほんと?」
 訝しげにれいむは妹紅を見た。妹紅は肩を竦めてみせる。
「さてね、私も行ったことはないからな。けどいい年した樵の話だし、そこそこ信憑性はあるだろ。
 ま、お前達の足でも、朝早くから行けばれみりゃが目覚める前に岩場は抜けられるんじゃないか?」
「むっきゅ、でもわたしたちにはきずついたなかまが……」
「そんなことは知らんよ」
 妹紅はゆっくりと立ち上がり、細めた目でれいむ達を見下ろした。
「お前達の、誰が旅立ち、誰が残り、誰を連れて行くのか。そんなことは、私の知ったことじゃあない。お前達が選ぶことだ」
 そこまで言って、妹紅はひらひらと手を振った。
「さぁさぁ、もう帰りな。足は焼かないでおいてやるから。
 ただ、次にその焼印つけたゆっくりを見かけたら殺すってところは変わらないからな。
 もう里には来るな。それだけ理解したら、帰れ」
 ゆっくり達はしばらく迷っていたようであったが、やがて一匹また一匹と、森のほうに跳ねていった。
 最後にリーダーれいむが振り返り、何かを言った。聞き取れなかったが、その口の動きは「ありがとう」と言っているように見えた。
「見事な裁きであった」
 慧音が嬉しそうに頷いた。妹紅は途端に気恥ずかしくなって、顔を赤くする。
「裁きだなんて、そんなこと軽々言ってたらあの閻魔様に怒られちまうよ。私はただやりたいようにやっただけだからさ」
「では良い判断だった、ということにしておこう。あのゆっくり達ならば、もう人里に来ることはあるまい。
 ……それにしても、全てのゆっくりがああだったら、もっと私達もゆっくりできるのだがなぁ」
「いやまったく」
 妹紅だけでなく、農夫達も一様に頷いた。
 多分、全員の脳裏には、先日のあの憎たらしいまりさ達が浮かんでいることだろう。
「…………」
「けーね?」
「ん、いや、なんでもない。──それでは、撤収!」



 その翌日から、森の中でゆっくりの姿を見かけることはなかった。








あとがき
 長い。
 前回(ゆっくり実験室・十面鬼編)があまりにもあれだったので、真面目に書こうとした結果がこれだよ!
 あと焼き土下座とか言いながら、焼いてるの最初だけだし。土下座してないし。
 続きも早いうちに仕上げようと思います。長くなりすぎない程度に。

 ゲスなまりさもきれいなまりさも、どれも良いものであります。
 磨けば磨くほどに光る素材。それがまりさなのです、きっと。







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最終更新:2008年10月21日 23:43
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