※救われるゆっくりが出てきます
※東方キャラが出てきます
※幻想郷設定です
※れみりゃ・ふらんは胴無しです
※普段書かれないゆっくりが出てきます
※以上の事が大丈夫でない方は閲覧を控えた方がストレスがマッハにならなくて済みます







決断



春。
この山では冬を越した群のゆっくり達が思い思いに過ごしていた。
寒かった冬を皆で乗り切ったのだろう、その殆どが幸せな顔に満ちている。
日向でゆっくりするもの、大きく深呼吸するもの、元気よく飛び跳ねるもの・・・
それだけこの季節が待ち遠しかったのだろう。
そんな中、ひときわ大きな巣からどっしりした大きいまりさ―この群のドスが姿を現した。

「みんな、どすはしばらくここをるすにするね」

巣から出るや開口一番、群のゆっくりにそう告げたのだ。
ドスの話はこうである。
一部のゆっくりを連れて山に登る、というものである。
それも選んだものは群の多くがゆっくりしていないと日頃感じていたゆっくりである。

口五月蝿いぱちゅりー、やたらと何かを地面に埋めたがるゆうか、他のゆっくりをいじめることひめ。
すっきりしたくないとわめくれいむ、上からみんなをゆっくりさせないきすめ、何故か近くに住み着いたれみりゃとふらん。
いなかものなありす、ゆうかが何か埋めるのを手伝っていたまりさなどなど…
それら全てをどすは連れて行くという。

きっと群から追放するんだと、群のゆっくり達は喜んだ。
大勢が大賛成したので、どすは選んだゆっくりを連れて群から離れて深い森の中へ消えていった。

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結局、ドスは帰ってくることは無かった。
春の内はドスの帰りを待っていた群のゆっくりだが夏になるとすっかり存在を忘れていた。
秋に多くの食料とたっぷりのすっきりと、いい事づくめで過ごしていたこの群。
沢山の子供を抱えた所、山では食べ物が賄えなくなってしまったのだ。

「このままじゃふゆをこせないよ」
「そうだ!おやさいをとりにいこうよ」
「おやさいはにんげんがひとりじめしてるんだぜ、まりさたちとかわいいあかちゃんのためにたべられるべきだぜ」
「れいむのかわいいあかちゃんをみたらきっとゆっくりかんどうしてふゆをこせるぶんのたべものをくれるね!」

ゆっくりたちにも人間の話は耳に入っていた。
しかも沢山の食べ物があり、それを独り占めしているという噂付きだ。
勿論、過去にその噂を信じた強欲なゆっくりが人里に下りることもあったが、大抵一人なので返り討ちに遭ってしまうのが常だった。

今回は違う。
群のゆっくり全員が生き残るかどうかの選択なのだ。

「みんなでゆっくりするためにおやさいをひとりじめするにんげんをおいだしてさいこうのゆっくりぷれいすをてにいれよう!」

この群の思いは一つになり、そして決断した。
人里へ行こう、と。

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「やったね!」
「ようやくゆうかのねがいがかなったよ!」
「むきゅ、くろうしたかいがあったわ」

そこは柵に覆われた、沢山の野菜が育っている畑があった。
何匹かのゆっくりが喜びの声を上げているのをみて山から下りたゆっくり達は思った。
彼らがその場所を人間から奪い取ったと。

「どうやらさきをこされたみたいだぜ」
「だいじょうぶだよ!おなじゆっくりだからきっとゆっくりさせてくれるよ」
「そうだね!それじゃみんなあいさつしようよ!」

もっとも、一緒にゆっくり出来なければおうち宣言をして追い出せばいい。
そんなポジティブ思考のまま山のゆっくり達は挨拶することにした。

「「「「「「「「「「「ゆっくりしていってね!!!」」」」」」」」」」」

辺りに響く五月蝿い位の声。
その数ゆうに100は越えるだろうか。

その声を聞くなり走り去っていく柵の中のゆっくり。

「きっとおどろいただけなんだよ!」
「すぐにあつまってれいむたちをいれてくれるよ!」

きっと歓迎会の準備でもしているのだろう。
そう考えた群のゆっくりは暫くその場で待っている事にした。

暫くして、大きい体のゆっくり―ドスが現れる。

「「「「「「「「「「「ゆっくりしていってね!!!」」」」」」」」」」」

もう一度皆で返事をする。

ドスは一瞬悲しそうな顔をしたが、すぐに大量の群と対峙する。

「ここになにしにきたの?」
「どすはにんげんがひとりじめしているおやさいのはえてくるゆっくりぷれいすをてにいれたんだね!」
「まりさたちもゆっくりさせてね!」
「いっぱいおやさいたべさせてね!」
「どすがいればあんしんしてふゆをこせるね!」

見事なまでにあれこれと要求をする山のゆっくり達。
はぁ、と溜息を付く目の前のドス。

「わるいけどここはゆっくりぷれいすじゃないよ、それにまりさはどすじゃないよ」
「ゆゆ?なにいってるの?こんなにすてきなばしょがゆっくりぷれいすじゃないはずないでしょ?ばかなの?」
「これはゆっくりがたべるおやさいじゃないんだよ、それにまりさたちはむれなんてつくってないよ」
「それじゃあのゆっくりしてるゆっくりたちはなんなの?どすはみんなをゆっくりさせるためにいるんでしょ?」
「まりさたちは”おんぎ”をかんじているんだよ、そのためにいっしょうけんめいはたらいてせいこうしたからやっとゆっくりできるんだよ」
「おんぎ?なにそれ?そんなものなくてもゆっくりできるでしょ?」
「ゆっくりするためにはいきていかないといけないんだよ、いきていくためにはしんだらいけないんだよ」
「そんなのとーぜんだよ!だからかわいいれいむたちにおやさいちょうだいね」
「いきるためのしゅだんがそれしかおもいつかないんだね、これいじょうはむだだってわかったよ」
「むだなはずないよ!」

ドス―もとい大きいまりさと山のゆっくりは暫く口論を繰り返した。
しかし大まりさと山のゆっくりの認識は大きく違い、結論は中々出なかった。
いや、この大まりさが敢えてそうしていたのかもしれない。
その畑の奥で、一筋の煙が上がっていたのを、山のゆっくりの1匹たりとも気付く事が無かったのだから。

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「お、今回は結構多く来たのか」
「こりゃ狼煙を上げる訳ね」
「けーねさん!けーさつさん!」
「あら、あいずはとどいたのね」
「むきゅ、これでたくさんのわるいゆっくりもなんとかなるわ」
「いなかもののおのぼりさんにはおもいしらせないとね」
「どぉゆぅことなのぉぉぉぉ」

突如現れた人間に騒ぎ出す山のゆっくり。
それと同じくして、狼煙を上尾えたぱちゅりーとありすとことひめが大まりさの所に駆けつけた。

「まりさたちはにんげんに”しどう”をうけているんだよ」
「ほんらいならなにをされてもおかしくないのに、いろいろなことをおしえてくれてるんだよ」
「むきゅん、それに”おんぎ”をかんじるのはとうぜんのことよ」
「」
「つまりどすたちはばかなにんげんにだまされたわるいゆっくりなんだね」

人間にしたがっているゆっくりは悪いゆっくりという結論を出した山のゆっくり達。
こうなれば実力行使で目の前の人間と悪いゆっくりを永遠にゆっくりさせて自分達で思うままゆっくりしよう―
と、この集団は考えた。

「みんな!このわるいゆっくりとはたけをひとりじめするにんげんさんをやっつけるよ!」
「・・・しかたないね」

士気を高めた山のゆっくりが少ない山のゆっくりに、その場に現れた人間2人に、雪崩のように襲い掛かった。


「れみりゃ!ふらん!」
「うーうー、わるいゆっくり、ごはんー」
「わるいゆっくり、しね!」

大まりさが声を上げると2匹の捕食種が現れる。

「「「「「れみりゃだぁぁぁぁぁぁ!!!」」」」」
「「「「「ふらんだぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」」」

予想外の天敵出現に前のゆっくりの速度が落ちる。
それに気付かないまま突進する後ろのゆっくり。

「なんでとまるのぉぉぉゆぶぇっ」
「おさないでね!ぜったいおさないでね!!!ゆびぃっ」

前と後ろのサンドイッチ。
自分達の重さで幾らかのゆっくりはつぶれてしまった。
元からほぼ無いような統制が乱れ、山のゆっくりは思うように進めない。
更にそこへと追い討ちが掛かる。

「ゆうか、いくよ」
「わかったわ」

ゆうかが種を、大まりさが茸をほおばっている。
その後来るものは勿論。

ゴォッ

2筋の光線が、ゆっくり達にとっては耳を裂かんばかりの音を立てて発射された。
人間を火傷させうるだけの火力を持った光が、正面に居た多くのゆっくりを炭にする。

「やべでぇぇぇぇぇ」
「どずのばがぁぁぁぁぁ」
「なんでごんなごどずるのぉぉぉ」

大まりさに向かって吐かれる呪詛のような言葉。
どのような気分でその言葉を聴いているのだろうか―

立ち向かってくる山のゆっくり達は”指導”してもらっている少数のゆっくりによって駆逐されていた。
また、逃げ出そうとするゆっくりはいつしか集まってきた村の人間達に捕らえられた。

(ごめんね、みんな・・・・・・)
大まりさの目には涙が浮かんでいた。
群の皆が忘れていたが、元々ドスであっただけにその顔を忘れる事は無い。

「…これで、良かったのか?」
「うん、それがまりさたちがえらんだみちだから」
「ゆっくりにも色々あるのね」

死んだもの、連れて行かれたものの無念を噛み締めるように大まりさは佇んでいた。
その背中を、人里の治安を守る2人はしみじみと見つめていた。

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村を襲撃する前の、春の山の群。
食べ物の管理も、すっきりの規制もあっさり無視し、
都合のいい時ばかり頼る多くのゆっくり達。
何匹か滅多に見ないゆっくりを引き込み、それぞれの特性を生かそうとするものの他のゆっくり達が邪魔をする。
この冬は何とか越せたがこのままでは全滅させてしまうだろう。
もしそうなれば今度は群の皆が人間の所へ襲いに行くよう頼みに来る事は目に見えている。
しかしこのドスは自分達が人間に叶わないだろうと考えていた。
人間は冬も動けて、沢山食べ物を手に入れていて、普通のゆっくりよりもずっと大きい。
これだけ揃っていて勝てる見込みがある筈がない。

だから。

ドスは決断をしたのだ。

群のゆっくりが気付かない程元いた場所から離れた後、先ほど言っていた事とは逆に山を降り始める。
連れてきたゆっくり達もそれに従い、遂に人里の前まで降りてきたのである。
さて、ドスは里の中に入らず、近くにいた村人に声を掛けた。

「ゆゆ、すみません、ここのえらいひととおはなししたいんだけど、おねがいできる?」
「え、あ、ああ、ちょっと待ってくれ」


普段と違う展開に戸惑いながら、男は寺子屋へ足を運んでいた。
大体は「ここのおさとはなしをさせてね!」とか「きょうていをむすびにきたよ!」とか
明らかに高圧的な態度で、ずけずけと乗り込んでくるというのがゆっくりに対するイメージだったのだ。
それがどうしたことか、大人しく「すみません」だとか「おはなししたい」と言うのである。
絶対起こらないような事に戸惑い、自分達を教育してくれた人里の知者・上白沢慧音に掛け合ってもらう事とした。



「さて、お前がドスまりさか。こんな所まで来て何用だ?」
「まりさたちはね、ほごをうけにきたんだよ」
「保護?」
「うん、まりさはどんなゆっくりでもゆっくりさせてあげたかったんだよ」
「さいしょはゆうかたちみたいにちゃんとはなしをきいてくれるゆっくりばかりだったの」
「むきゅ、でもどすのところにはじぶんかってなゆっくりがおおくきてしまったのよ」
「かってにすっきりしたりたべものをすきなだけたべたり、ぜんぜんゆっくりできなかったよ」
「さいしょはことひめがわるいことをするゆっくりをちゅういしてたんだけど、どんどんふえるうちにだれもきかなくなって」
「だからまりさはきめたの。ほんとうにゆっくりできるなかまといっしょに、にんげんさんにほごしてもらいたいって」

そう、このドス―大まりさは自分の群を見限ったのだ。

「…まりさ、と言ったな。それがどういう事か分かって言っているのか?」
「ゆっくりわかっているよ。むれをすてるということだよ」
「何故、群を捨てたのだ?」
「ゆっくりできるはずのゆっくりがこれいじょうゆっくりしていないのをみるのがいやだったんだよ」

自分が思い描いているゆっくりの姿。
誰もが食べ物に困る事無く、迷惑もかけず、そして平和に過ごせる事。
自分達の愚かしさで死なない事。
大まりさはそれを望んだ。

「まりさはどうなってもいいよ、でもほんとうにゆっくりできるみんなをほごしてほしいんだよ」
「………」
「まりさだけではここのみんなをゆっくりさせてあげられないよ。そんなまりさはどすでなくていい、どすよりちからのあるにんげんさんにみんなをゆっくりさせてあげてほしいよ」

他のゆっくりとは違う、自らを省みず仲間をゆっくりさせたいと望むその姿を、慧音はじっと見つめた。
その間、大まりさも目を逸らす事は無い。


暫くの沈黙の後、慧音は決断した。

「……駄目だ、私達はお前達を”保護”する事はできない」
「……だめ、なんだね…」
「だが」

そう。

「保護はしないが…共存できるように力は貸そう」


ゆっくりと人間の共存への道を歩む事を。


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あとがき

ゆっくりから高圧的なものを除いてみました。
そろそろこれ位考えるドスが居てもいいかもしれないです。
虐待鬼意山とかなら速攻潰しそうなものでしょうけれど…





今まで書いたもの
博麗神社にて。
炎のゆっくり
ゆっくりを育てたら。
ありす育ての名まりさ
長生きドスの群
メガゆっくり
ゆっくり畑
益ゆっくりと害ゆっくり
ゲスの行き着く先
つかれたまりさ
噂・ゲスの宿命

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最終更新:2022年05月18日 22:15