※ドスまりさが出てきます
※何も悪い事をしていないゆっくりが殺されます
※虐待と言うより虐殺。しかも前編はほとんど描写無しです。
※ネタ、特にパロ多めです
上記の物が苦手な方はご注意ください。



ドスまりさ。
どういう理由でそうなったのかは知らないが、様々な特殊能力を持つゆっくりまりさである。
まず驚くべきはその大きさ。全長7mほどにもなり、人間など軽く凌駕している。
しかもその巨体に似合わず運動能力も高い。
さらにゆっくりとドスまりさに好意を持つ者以外にはその姿を見ることが出来ないというステルス能力。
他にも破壊光線や幻術、ゆっくり光線というものも使うがここではその性能は割愛する。


ある村のはずれの一軒家。
今しがた遊びに来ていた友人からドスまりさの話を聞いた青年はいてもたってもいられなくなった。

「まさかそんな面白そうなゆっくりがいるなんて。血が騒ぐぜ」

彼は虐待お兄さん。ゆっくりを虐めることが何よりも好きなちょっと変わった人だ。
現在、彼はドスまりさを探すための準備をしているところだった。
少し大きめの鞄に次々と道具を詰め込んでいる。
やがて準備が整い、お兄さんはきちんと戸締りを確認してゆっくりの住む森へと出かけた。

「さて、やってきたはいいが…どうやってドスとやらを探そうか」

美しい緑の木が生い茂る中、お兄さんは頭を悩ませていた。
意気込んでやってきたのはいいが、標的がどこにいるのかが全く見当が付いていない。
これは困った、とお兄さんが思っていると、彼の前をゆっくりれいむが呑気に歌いながら横断した。

「ゆゆ~♪ ゆゆゆゆ~♪」
「ゆっくりしていってね!」
「ゆっ! ゆっくりしていってね!」

お兄さんの呼びかけに本能的に返事を返すゆれいむ。
そこで初めてお兄さんの存在に気づいたようだ。

「ゆー? おにいさんだぁれ? ゆっくりできるひと?」

れいむが見慣れぬお兄さんに話しかける。

「もちろん、ゆっくりできる人だよ。ところで、君はドスまりさの居場所を知っているかな?」

その言葉にれいむは体を強張らせた。
目の前の人間を警戒したのだろう、その目が相手を値踏みするように上下に動いている。

「おにいさん、どすになんのようなの?」
「いや、特に用はないんだけどね。ゆっくりの英雄さんに一度会って挨拶がしたいと思ったんだよ」

もちろん嘘である。
これまで自分が出会ったことのないゆっくりを虐待したい、というのがお兄さんの本音だ。
嘘の理由を聞いたれいむの緊張が少し薄まる。しかし、れいむは完全にお兄さんに気を許したわけではなかった。
れいむは常日頃からドスまりさに人間を簡単に信用してはいけないと聞いていたからだ。

「よし、じゃあお近づきのしるしにこれをあげよう」

と言ってお兄さんは鞄からお菓子を取り出し、れいむに与えた。
最初は警戒していたが、結局漂ってくる甘い匂いの誘惑に勝てずに口をつけてしまった。

「むーしゃむーしゃ、しあわせー♪」

賞味期限切れのお菓子を貪り食うれいむ。
元々の量が少なかったこともあり、すぐにお菓子はなくなった。

「ゆっ! もうなくなっちゃったよ! おにいさん、もっとちょうだい!」
「そうだな、ドスまりさのところに案内してくれたらもっと沢山あげよう」

れいむはしばらく迷ったが、彼女はお兄さんをいい人間だと判断した。
自分に危害を加えてこないし美味しいお菓子もくれたのだから。
という風にれいむは正当化しているが実際はただ単に食欲に負けただけである。

「こっちだよ! ゆっくりついてきてね!」


時間にしておよそ一時間。
お兄さんがれいむに連れられてやってきたのは広大な草原だった。
見渡す限りの緑。鳥がさえずり、蝶がひらひらと舞い、まるでここだけ時間がゆっくりと流れているようだ。
まさにゆっくり達にとっては平和の楽園とでもいえそうな場所である。

「こんな場所があるなんて…今までまったく気付かなかった」
「おにいさん! こっちだよ!」

美しい緑色の草を踏みしめながら、れいむとお兄さんは歩く。
今度はすぐに目的の場所へと到達した。

「ほら! おにいさん、あそこだよ!」

れいむが体で指した方向をお兄さんは見る。
そこでは沢山のゆっくり達がその名の通りゆっくりと過ごしていた。
蝶を追いかけたり、家族で昼寝をしていたり友達と笑い合ったりしている。
そしてその群れの真ん中にドスまりさは居た。
お兄さんにその姿は見えない。だがそこにいるのが明らかにわかる。
もちろんそれは周りに数多くのゆっくりがいるからではない。そんなものは関係ない。
これほど離れていても伝わってくる、それほどまでの存在感。
これがドスまりさというものか、とお兄さんの頬を汗が流れた。

「へへっ…まいったな、オラすっげぇわくわくしてきたぞ」
「おにいさん! はやくおかしをちょうだい!」

約束通りここまで連れて来たのだからお菓子が貰えると思い、れいむははしゃいでいる。

「ああ、まずはウォーミングアップといこうか」
「ゆ? おにいさんなにいっゆぶぶぅぅぅぅぅっ!?」

とりあえずお兄さんはれいむを踏みつぶした。
草の上に広がる餡子。それは緑色の草の中に黒色の花を咲かせた。
何かの潰れる音とれいむの悲鳴を聞いた近くにいたゆっくり達が慌てて群れへと戻って行く。
ドスまりさはゆっくり達を避難させ、お兄さんの前に立ちはだかった。
いくら姿が見えないといっても、目の前に巨大なものがいることぐらいはわかる。
なのでお兄さんは透明な相手に挨拶をした。

「やあ、君がドスまりさかい? はじめまして、俺はお兄さんだ。宜しくな」
「……お兄さん、なにが目的なの?」
「おっ、君は漢字が使えるんだな。凄いじゃないか」

警戒しながらドスまりさは尋ねた。
お兄さんからは見えないがドスまりさからは相手がよく見える。
彼女からすると、目の前にいるのはとても小さな何の変哲もない人間である。

「いやなに、俺が見たことのないゆっくりがいると聞いたんでね。ちょっと虐めてやろうかと思って…ねっ!」

言い終わると同時にお兄さんはバッグから大きめのナイフを取り出し、襲いかかった。
ざっくりとした確かな手ごたえ。
しかし、それはドスまりさにとっては蚊に刺された程度の傷でしかない。
とても分厚い皮の表面しか切ることができず、餡子が漏れることもない。
ドスまりさが巨体を震わす。それだけでお兄さんは弾き飛ばされてしまった。
綺麗に着地し、ドスまりさがいるであろうあたりを見る。思ったとおり、そこにはナイフの柄が浮いていた。
自分以外のものは透明化できないのだ。
これで大体の位置は把握できる。

「お次はこれだっ!」

お兄さんはバッグの中から小型爆弾(河童製)を取り出し、ドスまりさめがけて投げつける。
爆発。炎と粉塵が舞いあがり、周囲にいたゆっくりも何匹か巻き込まれて死亡した。
だがドスまりさはまだ生きている。少し皮が破れ、餡子が出てしまったが活動には何の問題もない。
宙に浮かぶナイフの柄が勢いよく動くのを見て、お兄さんにもそれがわかった。

「ゆぅ! お兄さん、ゆっくりしていってね!」

ドスまりさがお決まりのセリフを言うと、突然彼女の周囲にオーラのようなものが漂い始めた。
ゆっくり光線。ドスまりさの周囲にいる生き物を強制的にゆっくりさせるものである。人間とて例外ではない。
よってそのオーラに包まれたお兄さんは次第にゆっくりし始め、ドスまりさに対する敵意を失っていった。

「な、何だ? なんだか…気分がゆっくりと…」

頭がボーっとし、フラフラとした足取りになるお兄さん。
そこにドスまりさは緩めの体当たりを食らわせた。

「ゆっ!!」
「!? しまっ――」

反応できず、お兄さんは見えないドスまりさの体当たりによって吹っ飛ばされた。
しばらく宙を舞い、地面に叩きつけられるお兄さん。その体からミシミシという音が聞こえる。
口の中に血の味が広がってゆく。顔にはいくつか切り傷ができ、鼻血が流れていた。

(まずい…体が言う事をきかない…)

なんとかして立ち上がろうとするお兄さん。
しかし上手くいかず、膝をついた状態になる。
そこへドスまりさがどしんどしんと音を立てて迫って来た。
相変わらずお兄さんにはその姿は見えなかったが、どうやら自分の正面で止まったということはわかった。

「ごめんね、おにいさん。すぐにここからたちさればいのちまではとらないよ」

それは裏を返せばこのまま戦うなら殺されるということ。
ドスまりさの威圧感も手伝ってお兄さんに戦慄が走った。
ここにいると命が危ない、そう思うとお兄さんの体は勝手に森の中へと進んでいった。



夜。草原を闇が包み、静寂が支配する。
普通のゆっくりなら洞窟なり巣穴なりで過ごす時間である。だがこの群れは違っていた。
ドスまりさを中心として未だに草原にいる。
別に巣が無いわけではない。ここが彼女たちの巣なのだ。
このあたりにはれみりゃ等の捕食種もおらず、もしたまたまやって来たとしてもドスまりさが守っているのだ。
まさにゆっくり達にとっては理想の環境である。
そして現在、恵まれたゆっくり達はドスまりさの周りで談笑している。
一匹のゆっくりまりさが意気揚揚と言った。

「さすがどすだぜ! にんげんなんてどすにかかればいちころなんだぜ!」

主な話の内容は昼間の出来事。ドスまりさが恐ろしい人間を撃退したことだった。

「わかるよー、いちげきだったよー!」
「そうね! あんなによわっちいなんて、にんげんってじつはたいしたことないんじゃない?」
「むきゅ! ありす、かんちがいしちゃだめよ! わたしたちにとってはとってもおそろしいいきものなのよ!」

わいわいと楽しげにお喋りするゆっくり達。その様子をドスまりさは優しく微笑みながら見ている。
ドスまりさは幸せだった。自分を慕い、言う事を聞いてくれるゆっくり達に囲まれている。
勿論、言う事を聞くとは理不尽な命令を聞くということではない。
みんな仲良くゆっくり過ごすように、人間は危険だからすぐには信用しないように、等の忠告のことだ。
他には何も強制はさせていない。後は各ゆっくりの自由である。
おかげで喧嘩もなく、比較的平和な群れとなっている。

「そういえば、どうしてにんげんをにがしたんだぜ? あいつはなかまをころしたわるいやつだぜ?」

まりさがドスまりさに聞いた。

「たしかにあの人間は悪いやつだね。でもだからといって殺しちゃったら、私達もあの人間と同じだよ?」
「うーん、まあどすがそういうなら…」

まりさは少し納得いかないようだったが、ドスの言う事はいつでも正しいと思っているので一応は納得した。
ドスまりさは知っている。
自分と比べると、人間はとても小さくて脆い生物だ。だが本当に恐ろしいのはその知恵だということを。
確かに人間一人程度なら簡単に殺すことは出来る。だがもし里の人間がそれを知ったら全力で自分達を潰しに来るだろう。
そうなればいくら巨大で丈夫な体を持つ自分でも太刀打ちできるかわからない。
何より群れのゆっくり達が危険にさらされる。それだけは避けなければならない。
今日やって来たあのお兄さんは自業自得だし、そんなに傷付けてもいないからきっと大丈夫だろう。

「ゆっ! みんな! はやくきて!」

と、ドスまりさがそんな事を考えている時にとあるれいむが呼ぶ声が聞こえた。
なんだなんだとれいむの周りに集まるゆっくり達。
れいむの頭には茎が生えており、その茎には十数個の赤ちゃんが生えている。
ぷるぷると震えているところを見るともうすぐ生まれるのだろう。
もうすぐ母親となるれいむの横では夫のまりさが微笑んでいた。

「ゆっ! れいむ、がんばってね!」
「うん! ゆっくりがんばるよ!」

その時、実が一つポロリと落ちた。
柔らかい草原の上に落ちた赤ちゃんはしばらくもぞもぞと動き、やがて大きな目をパッチリと開けた。

「ゆっくりしちぇいっちぇね!」
「「ゆっくりしていってね!」」

両親が我が子の第一声に感動の涙を流しながら返事した。
それを合図に次々と実が落ち始め、無事全ての赤ちゃんが生まれる。

「「「「「ゆっくりしちぇいっちぇね!」」」」」
「「ゆっくりしていってね!」」
「れいむやったね!」
「とってもかわいいあかちゃんだわ!」

また群れに新しい仲間ができた。
数多くのゆっくり達に祝福され、生まれた新たなる命。
この子達もきっと皆に支えられていい子に育ってくれるだろう。
どうかこの幸せがずっと続きますように、とドスまりさは流れ星に願った。




翌日、ゆっくり加工所に妙な男がやってきた。

「たのむ!力を…俺を改造人間にしてくれ!」

やってくるなりそう叫んだ変な男。それは昨日ドスまりさに返り討ちにされたお兄さんだった。
流石の加工所職員達もこれには頭を悩ませた。
今までもちょっと頭のおかしい人は何度かやってきたことがあるがここまで向こうにいっちゃってるのは見たことがないからだ。
仕事に支障が出てはたまらないので喚き立てるお兄さんを職員の一人が応接室へと案内した。

「それで、どうして改造人間…とやらになりたいのですか?」
「どうしても…どうしても虐めたいやつがいる!」

職員が詳しい話を聞くと、どうやらこの青年は昨日ドスまりさと戦って何とか逃げて来たらしい。
お兄さんの話に職員は呆れ果てた。
普通のゆっくりならまだしも巨大なドスまりさを虐めようなどとは自殺行為だ。
しかし、それと同時にこの職員は目の前のお兄さんの気持ちがわからないでもなかった。
何故なら、この職員も以前は虐待お兄さんの一人だったからだ。
虐待欲は大分治まっているが、ゆっくり加工所の職員として働いているのもその名残だ。
たとえ相手がどれだけ強かろうとゆっくりであるならば虐待する。
命をかけてその姿勢を貫き通すお兄さんにいつしか職員は好感を抱いていた。

「わかりました。貴方を改造はできませんが、これを差し上げます」

そう言って職員は別の部屋から小さな瓶を持ってきた。
その小瓶の中には何かの液体が詰まっている。

「これは一体なんですか?」
「名前はまだありません。そうですね、一種のドリンク剤というところです」

職員がドリンク剤についての説明を始める。
これを飲んだ人間は三時間だけ、ゆっくりに対して無敵で素敵なパワーを得るらしい。
しかし、その効用があるのは一部のゆっくりに対してとある感情、即ち虐めたいという気持ちを強く持つ者だけに限られている。
別に服用した者の本当の身体能力が上がるわけではないので、人間同士の喧嘩や妖怪相手には全くの無意味である。
巨大ゆっくり対策として永遠亭と共同開発されている物で、まだ試作段階であるため世間には発表されていない代物だ。

「本当に…そんな大事な物を頂いても?」
「貴方の熱意に負けました。但し、条件として使用後にどのような効果だったか報告に来てください」

お兄さんは職人に感謝の意を述べ、加工所を後にした。




「見てろよ、ド饅頭ども。昨日の恨みたっぷりと返してやる」

お兄さんは独り言を言いながら森を歩いていた。
その手には加工所で貰ったドリンク剤が握られている。
しばらく進んで昨日の草原近くまでやって来た時、お兄さんは瓶の蓋を開けて中の液体を飲みこんだ。

「うぐっ…!?」

直後、お兄さんに電流走る。
体の芯から熱くなる感覚。まるで手足の先まで灼熱のマグマが駆け巡るよう。
それに対して頭の方はCOOLに冴えきっている。

「何というパワーだ…この力さえあればドスだろうがチャカだろうが相手ではないッッ!!」

そう言って勢いよく草原へ飛び出すお兄さん。
見た目は変わっていないがどことなくフェロモンムンムンなのは気のせいだろう。
しばらく駆け回りると、遠くにお目当てのものが見つかった。

「見える…見えるぞ!」

数多くのゆっくりに囲まれたひときわ大きなゆっくりまりさ。その姿がお兄さんの目にはっきりと映った。
別にお兄さんはドスまりさに好意を持ったわけではない。その姿が見えるのもドリンク剤の効力によるものだ。
まるまるとした巨大な体の周りではたくさんのゆっくり達がゆっくりとしていた。
流れるような美しい金髪には信頼の証であるりぼんが所狭しと結ばれている。
その姿をみてお兄さんの心にふつふつと黒いものが湧き上がってきた。

「よくも昨日はやってくれたな…。ン! 絶対に許さんゾ!」

今やお兄さんは復讐者となっていた。

「さあ…お兄さんの逆襲、幕開けだ!」
お兄さんはゆっくりゆっくりとドスまりさに向かって一歩を踏み出した。


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最終更新:2022年06月03日 22:19