「奇形ゆっくり3~ゆっくりバッジ~」
ある日の午後。
夏の強い日差しが、草原に降り注ぐ。
水分に弱いゆっくりたちは、どうやら渇きにも弱いらしく…
多くのゆっくりが木陰か川の畔でゆっくりしていた。
分厚い雲が移動して、木々に囲まれた広場に大きな影を作る。
さらに、そこへ涼しい風が流れ込むので、他の場所よりとても過ごしやすい場所となった。
そうだと分かったゆっくりたちは、広々としていてかつゆっくり出来る場所に次々と移動し始めた。
「ここならゆっくりできるね!!」
「みんなでゆっくりしようね!!」
「ここはみんなのゆっくりポイントだね!!」
雲の影の下でゆっくりし始めるゆっくりたち。
お花畑で追いかけっこしたり、蝶を捕まえて食べたり…思い思いにゆっくりしている。
僕が訪れたのは…そんな即席のゆっくりポイントでゆっくりたちがゆっくりし始めた、その時だった。
「やぁ、ゆっくりしていってね!!」
「「「ゆっ!?ゆっくりしていってね!!」」」
僕が大声で呼びかけると、周囲の大小合わせて約50匹のゆっくりは全員で挨拶を返してくれた。
うむ、いい声だ。本能に忠実で、実に健常なゆっくりである。
「おにーさん!!ゆっくりしていってね!!ここはれいむたちのゆっくりポイントだよ!!」
「へー、なかなかいいところを見つけたね!!お兄さんもゆっくりしていくよ!!」
座り込んで周りを見てみると、数十匹のゆっくりが僕の周りを取り囲んでゆっくりしている。
しばらくすると、僕のすぐ近くにいるゆっくりれいむが異変に気づいた。
「おにーさん!!そのおなかには、なにがはいってるの!?」
僕の膨らんだお腹を見つめて、不思議そうに首をかしげている。
おいおい、僕が来てから10分以上経ってやっと気づいたのか?
しかも、気づいたのは僕の一番近くにいるれいむ一匹だけだ。
まぁいいか…とりあえず説明してやることにした。
「実はね……もうすぐお兄さんの赤ちゃんが生まれるんだよ!!」
「ゆゆ!?そうなの!?」
遠くまで聞こえるように説明してやったので、周囲のゆっくりがひしめき合いながら僕の周りに集まった。
どうやら新たな命の誕生となると、それが誰の子供であろうと気になるものらしい。
僕はお腹をさすりながら、皆に見えるように立ち上がった。
「おにーさんのあかちゃん!!ゆっくりいいこなってね!!」
「ゆっくりうまれてきてね!!うまれたらみんなでゆっくりしようね!!」
みんな子供思いのいい子だ。お兄さん嬉しくて涙が出てきちゃうっ…っていうのは嘘です。
人間の男が子供を生むことは無い、という一般的確定的事実を知らないのかよ。
きっと知らないんだろうな。ゆっくりはオスメスの区別なく子供を成すというから。
「あっ、もうすぐ生まれるよっ!」
苦しそうな声を出す僕。もちろん演技である。
「おにーさん!!ゆっくりがんばってね!!」
「あかちゃんもゆっくりがんばってね!!まりさたちがみてるからね!!」
「うまれたられいむがめんどうみてあげるよ!!ゆっくりかんしゃしてね!!」
興味深そうに、そして心配そうに僕のお腹を見つめながら、まわりのゆっくりたちは口々に励ましの言葉を
かけてくる。
うーん…そろそろ頃合かな。と、僕は苦しそうにする演技を止めた。
「なーんちゃって!!う・そ・だ・よ!!」
「ゆ゛ゆ゛っ!?」
「お兄さんには赤ちゃんなんていませんよーだ!!」
突然の状況の変化についてこれないゆっくりたち。僕は思い切って、お腹の部分の服をめくり上げた。
「ゆっ!!」
ぼよん!!
バレーボール大の、饅頭に毛が生えたような生き物が地面に落ちた。
実は、僕のお腹だと思われていたのは、一匹のゆっくりれいむだったのだ。
先ほどからずーっと、こいつは僕の服のお腹のところに押し込められていたのである。
「ゆううううぅぅぅぅぅ!!??」
周りのゆっくりたちは、混乱のあまりものも言えないという様子。
しかし、この程度でびっくりされては困る。これには、まだまだ“先”があるのだから。
「お、おにーさんのあかちゃん…なの?」
「だから違うって言ってるでしょ。この子は赤ちゃんじゃない、普通のれいむだよ」
そう言って、僕の脚の陰に隠れていたゆっくりれいむを、皆に見えるように前に押し出す。
この場から逃げようと精一杯の抵抗をして見せてくれたが、当然無意味だった。
周りのゆっくり全員に見える場所に、ゆっくりれいむは立たされることとなった。
「むっ!!むぐぐぐぐぐううぅぅぅぅぅ!!!!」
口に何かを含んでいるような、くぐもった声。いや、実際に含んでいるのである。
その中身を、僕は知っている。れいむ自身も知っている。
知っているからこそ、何があっても口の中身を外に出したくは無いのだ。
出してしまったが最後、れいむだけでなくその“中身”もゆっくりできなくなるのだから…
「ん?れいむ!!君は口の中に何か隠しているね?」
可能な限りの大声で、れいむに問う。周りのゆっくりへのアピールが目的であるのは言うまでもない。
「そうだね!!れいむのおくちがふくらんでるよ!!」
「なかになにがはいってるの!?ゆっくりそとにだしてね!!」
周囲からの呼びかけにもかかわらず、れいむは口の中身を出そうとしない。
早くこの場から立ち去りたいのだろう、涙目になっているが既に周囲はゆっくりの壁に囲まれているので
ここから逃げ出すことは到底できない。
そして、僕は追い討ちをかけることにした。
「きっと食べ物に違いないよ!れいむは食いしん坊だもんね!!」
この言葉を聞いた瞬間、ゆっくりたちの目の色が変わった。
「ゆゆ!!たべもの!?れいむもたべたいよ!!ゆっくりおくちからだしてね!!」
「まりさもおなかすいたよ!!まりさもごはんたべたいよ!!」
「ぷんぷん!!ひとりじめはいけないんだよ!!みんなでいっしょにたべようね!!」
「むぐぐぅぅぅぅぅぅ!!!んぐぐぐぅぅぅ!!!!」
今にも飛び掛りそうな勢いのゆっくりたちに、れいむは必死に首を横に振っている。
うむ、あと一発背中を押してやればいいだろう。
「よし!皆でれいむの口からご飯を引っ張り出そう!そして皆で食べようね!」
「む゛ぐう゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛ぅぅぅぅぅぅ!!!???」
「ゆっくりそうしよう!!」「ごはんをゆっくりだしてね!!」
数匹のゆっくりが、目にも溜まらぬ速さでれいむを取り囲んだ。
完全に退路を絶たれたれいむは、涙を流しながら口に力をこめている。
「ゆっくりかんねんしてね!!もうにげられないよ!!」
「ひとりじめはやめてね!!それはみんなのごはんだよ!!」
四方から重圧をかけて口を開かせる作戦に出たゆっくりたち。
実際にどうなるかと見ていたが、思いのほか効果的なようだ。
れいむは苦しそうにしながらも耐えているが、その口の隙間からは中身が覗いて見えている。
ここまでくれば、もう結果は見えたようなものだ。
「せーのっ!!それぇ!!」
「ゆ!?!ぶぎゃっ!?!?」
口の中身と共に、自分自身の餡子も吐き出してしまうれいむ。
四方からのゆっくりによる圧力に、れいむの身体が耐え切れなかったらしい。
ところどころ裂けた皮からも餡子を漏らし、びくびくと痙攣しているれいむ。
「ゆっぐぐぐっぎゅぎゅぎゅ……いやあ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁ…み゛な゛い゛でえ゛え゛え゛ぇ…!!」
悲痛な叫び声を上げるれいむ。その目の前にいるのは…
れいむが吐き出して草原に投げ出された、れいむの子供12匹。
ただし、全員奇形である。
ありすと強制的に交尾させ、その後廃油や毒物を与えていった結果、生まれたものだ。
次に悲鳴を上げたのは、母れいむではなくその周りのゆっくりたちだった。
四方から押さえ込んでいたゆっくりたちは、喚きながら群れへと戻っていく。
「うわっ!!これごはんじゃな゛い゛よ゛!!ぎもぢわ゛る゛い゛!!さわっぢゃっだよ゛!!」
「ゆ……ぎる……づて……いね!!」
口が癒着していてうまく喋れない赤ちゃんれいむ。
その赤ちゃんにちょっと触れただけで、ゆっくりまりさは嫌悪感に声を荒げる。
「ばっちぃよ!!ばっちぃあかちゃんはむこうにいってね!!」
「ゆぎゃ!!れいみゅはうごけないよ!!おねがいだからやさしくちてね!!」
突き飛ばされて転がった赤ちゃんれいむは、生まれつき地面に接する部分が硬化していて、
自由に動くことができない。先天性なので決して治ることは無いだろう。
自力での移動が出来ないので、常に周囲に“丁寧に”助けを求める。
それが、動けない赤ちゃんれいむが誰に教えられるでもなく身に着けた知恵なのだが…
「おねがいだよ!!れいむにやさしくちてんむぶぎゅえ゛え゛え゛え゛ぇぇぇぇ!!!!!」
「ばっちぃあかちゃんがいるとゆっくりできないよ!!だからゆっくりしんでね!!」
声は嫌悪感いっぱい、だがとても楽しそうな顔をして動けない赤ちゃんれいむの上で
どしんどしんと跳ねるゆっくりれいむ。
弾むたびに飛び散る餡子が、先ほどの衝撃で動けずにいる母れいむの顔にかかる。
「れ゛い゛む゛のあがぢゃんにな゛に゛ずる゛の゛お゛お゛ぉぉぉ!!!??」
「ゆぎゃっ!!おがーしゃん!!だじげで!!れいむをだじゅげでぇぇぇぇ!!!」
「ゆっ…ゆっぐりだずげるがらまっででね!!」
全身を駆け巡る激痛に耐えながら、母れいむは這いずって赤ちゃんを助けに向かう。
ゆっくり…だが、確実に母れいむは赤ちゃんれいむへと近づいていく。
でも、その努力は報われなかった。
「だ…だじゅげ……ゆっぐりじだがったよ゛お゛お゛ぉぉぉ……!!」
この言葉を遺して、赤ちゃんは完全にペシャンコに潰れてしまった。
「どぼじで!!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!!」
あと少しのところで、勢いよく餡子を撒き散らす赤ちゃんの身体。
赤ちゃんの衝撃的な最期を目の当たりにして、口から泡を吹きながら震える母れいむ。
そんな哀れな母れいむを尻目に、僕はポケットからバッジを取り出して、
赤ちゃんれいむの息の根を止めた優秀なゆっくりれいむにつけてやった。
胸を張って威張るゆっくりの姿が描かれている、イケイケ(笑)のナウい(笑)バッジだ。
「ゆ!?これなあに!?」
「今から説明するから待っててね」
と言い残して、僕は群れの真ん中に立った。
「みんな!!大事なことを言うから、ゆっくり理解してね!!」
「「「ゆっ!?」」」
パンパンと手を叩くと、群れの全員が僕に注目した。
「ここにはばっちぃ赤ちゃんがいるから、ゆっくり出来ないよね!!」
「そうだね!!きもちわるくてきたないあかちゃんがいるから、ゆっくりできないよ!!」
「そうだそうだ!!きたないあかちゃんはどっかいってね!!」
ふむ、掴みはOK。
「そうだよね!だから、皆で気持ち悪い赤ちゃんを殺しちゃおうね!!」
「ゆぎゅうううぅぅぅ!!?」
僕の発言に顔を真っ青にしたのは、母れいむと言葉を理解できる奇形赤ちゃんゆっくりたち。
一方奇形赤ちゃんの中には、耳が聞こえなかったり精神的におかしかったりという理由で、
言葉を理解できないやつもいるが……そいつらは今の状況すら理解できていない。
「やめで!!ぞんなごどいわないで!!」
抗議の声を上げる母れいむ。ショックの連続で身体が言うことを聞かないのか、まったく動けずにいる。
僕はそんなのお構いなしに説明を続けた。
「赤ちゃんを殺した子にはこのバッジをつけてあげるよ!!」
先ほどバッジをつけてやったれいむを高く掲げて、全員に見えるようにくるっと一回転する。
楽しく説明しているところに「おそらをとんでるみたい!」などと水を差しやがったが、
力をこめて指を食い込ませ、皮を2,3箇所破ったら黙ってくれた。
「バッジをもらった子には、あとでたくさんご飯をあげるからね!!頑張ってゆっくり殺してね!!」
パンっと一発強く手を叩く。
それを合図と認識したゆっくりたちは一斉に奇形赤ちゃんゆっくりたちに襲い掛かった。
「ゆっくりころすよ!!」「ゆっくりしんでね!!」
「いやあああぁぁぁぁぁぁ!!!やめでええええぇぇぇぇぇぇ!!!」
それは、一方的な虐殺だった。
「い゛だい゛!!み゛え゛な゛い゛よ゛!!だれがぞごにい゛る゛の゛!!?
やめでやめで!!!みえないのごわ゛い゛!!だれがだじゅげでよおおおおおぉぉぉぉぉ!!!」
「ゆっくりしね!!きたないあかちゃんはゆっくりしね!!めのないあかちゃんはゆっくりしね!」」
「れいむはばっじをもらうんだよ!!だからあかちゃんはさっさときえてね!!」
目のない赤ちゃんゆっくりを、寄ってたかって嬲り殺しにするゆっくりれいむたち。
「hgるうおおあおおああおあおあおあprごpれおぱぺろpgっろおえぽーーーー!!!!」
「やったね!!これでばっじをもらえるよ!!」
エイリアンのような風貌でエイリアンのような叫び声をあげる赤ちゃんれいむを、
真上からのプレス一撃で仕留めるゆっくりまりさ。
別の場所では、3匹の赤ちゃんれいむが横一列にくっついた奇形赤ちゃんが、虐殺から必死に逃げていた。
「あっちににげるよ!!」「こっちににげるよ!!」「むこうににげるよ!!」
ぐいーん!!
「「「ゆぎゅえ!!どぼちでじゃまずるのおおおぉぉぉ」」」
3匹の逃げる方向がてんでバラバラのため、3方向の力が打ち消しあった結果、
れいむ3兄弟はその場でジャンプをしただけにとどまった。
こんなチャンスを逃すほど、他のゆっくりたちはゆっくりしていない。
「ゆ!!こいつら3人くっついてるよ!!きもちわるいから、みんなできょうりょくしてころそうね!!」
「3人まとめてしんでね!!3人ころせばばっじが3つもらえるよ!!」
いや、僕はそんなこと言ってないけど…
「れいむはころさないでね!!れいむはゆっくりにげっ…ゆゆっ!?」
また別の場所では、虐殺から逃れるべく跳ねて逃げようとする赤ちゃんれいむの姿があった。
しかし、この赤ちゃんは餡子が偏っているために、重心が極端に上のほうにある。
だから…
「ゆぎゃ!!さかさまになっちゃったよ!!だれかゆっくりたすけてね!!」
跳ねたり転がったりしたら最後、上下が逆さまのまま安定してしまって自力では戻れなくなるのだ。
逆さまのまま身を左右に揺らして助けを求める奇形赤ちゃんれいむ。
だが、その声は皮肉にも食に飢えた虐殺者を呼び寄せる結果となってしまった。
「ゆっ!!こんなところにもばっちぃあかちゃんがいるよ!!」
「ほんとだ!!さかさまになっててきもちわるいね!!ゆっくりころそうね!!」
「ゆっぺぎゃああああ;あ;ぁぁぁぁぁ!!!ゆっぐりじだがっだおおおぉぉぉぉ!!!!」
左右から挟み撃ちにされ、圧力に耐え切れず餡子をばら撒きながら絶命した。
それからも、奇形赤ちゃんに対する虐殺は続いた。
目が無いもの、口が無いもの、音が聞こえないもの、楕円球の形をしていて安定しないもの、
目と口の位置が逆のもの、髪の毛の代わりにリボンがたくさん生えているもの…
「もうやめでよ゛ね゛!!れ゛い゛む゛の゛あがぢゃん゛い゛じめ゛な゛い゛で!!
あがぢゃんはれ゛い゛ぶがだずげであ゛げるがらね゛っ!!」
やっと体力を回復した母れいむが虐待を止めようとするが…
「ゆっ!!きたないあかちゃんをうんだおかーさんもきたないよ!!」
「そーだそーだ!!きたないあかちゃんをうんだ、きたないおかーさんもゆっくりしね!!」
「きたないおかーさんのせいでゆっくりできないよ!!あのよでゆっくりはんせいしてね!!」
体力が万全でない母れいむは、3匹の嬲り者にされてしまう。
3匹は交代で母れいむに体当たりを仕掛ける。まるでキャッチボールをしているようだ。
「ゆびゃっ!!やべっ!!どぎゅっ!!びぎゃっ!!みゅっぢゃあああああああああああああああ!!!」
皮が破れて饅頭本来の張りを失い、空気の抜けたボールのようになってしまった母れいむ。
母れいむがボールとして役に立たなくなったのを見て、3匹は別の子供を虐殺するべく去っていった。
「そこでゆっくりしんでね!!まりさたちはばっちぃあかちゃんをころしてあげるからね!!」
「やめでっ!!いがっ…ないでっ!!れいぶのっ…あがぢゃん゛!!ごろっ…ざっ…ないでっ!!」
形が崩れてしまった母れいむは、もはや自力で移動することも出来ない。
びくっと痙攣するたびに、全身の傷という傷から餡子をびゅっと吹き出した。
それでも絶命はしていない。母れいむの身体の中には、十分な量の餡子が残っているからだ。
目の前で殺されていく赤ちゃん達。
汚い汚い、気持ち悪い気持ち悪い、と罵られながら無残にも命を奪われていく。
降り注ぐ餡子を浴びて狂喜乱舞する野生のゆっくりたち。
そんなゆっくりたちの中で、特に活躍した12匹に…僕はバッチを与えた。
そして…奇形ゆっくりの悲鳴が聞こえなくなった。
言うまでも無く、それが意味するのはたったひとつの事実である。
僕は奇形ゆっくりの死体を集めさせ、餡子を吹き出しながら震えている母れいむの目の前に積み上げた。
合計12匹のゆっくりの残骸。
僕から見ればただの餡子の山だが、母れいむにとってはかけがえの無い子供たちの亡骸である。
「い、いまだすげであげるがらね゛!!まだまにあ゛う゛がらね゛!!ゆっぐりうごいでね゛!!」
傷が少し回復したのか、母れいむは焦点の定まらない目のまま亡骸の山へと這いずっていく。
奇形児しか産めない身体…そのせいなのか、母性は通常では考えられないほど強いようだ。
「だいじょうぶだよ゛!!みんなまだいぎでるよ゛!!だがらゆっぐりうごいでね゛!!」
餡子の山に自らの身体を擦り付ける母れいむ。
しかし、その山は決して動くことは無い。餡子の山が自力で動くわけが無いのだから。
一度消えた命は元に戻らない。皮をズタズタに切り裂かれて散ったゆっくりなら尚更だ。
「いますぐあんこをもどぜばなおるがらね゛!!はやぐげんぎになっでね゛!!」
そう言って餡子を口に含んで子供の皮に戻そうとするが…その皮が見当たらない。
当たり前だ、さっきの虐殺でほとんどの赤ちゃんの皮はバラバラに飛び散ったのだから。
一方周りのゆっくり達は、気が狂った母れいむなどまったく気にせずゆっくりしている。
「ゆ゛!!ゆっぐりしてないでてつだってよね゛!!はやぐじないどておぐれになるよ゛!!」
その言葉が、周りのゆっくりの怒りに触れたのだろう。
バッジをつけたゆっくりまりさが前に出て、母れいむを突き飛ばした。
「ゆぎゅ!!なにずるの゛!?あがぢゃんをだずげるんだがらじゃまじないで!!」
「きたなくてきもちわるいあかちゃんはみんなしんだよ!!
みんなできょうりょくしてころしてあげたんだから、ゆっくりかんしゃしてね!!」
そう言って、ふふんと胸を張るまりさ。バッジがきらりと光った。
汚いゆっくりを殺して、ご飯までもらえる。一石二鳥だ、とでも思っているのだろう。
だが、その言葉は母れいむには届かなかった。
「ゆ゛!!みんなてつだっでぐれないけど、おがーざんがたずげであげるがらね゛!!
げんぎになっだら゛いっじょにおうたをうたおうね゛!!おがーざんがおじえであげるがら゛!!」
身体を擦り付ける、その動作を止めた母れいむ。
僕はそんな母れいむにゆっくりと歩み寄る…
「いい゛?ごううたうんだよ゛!!
ゆっゆっゆ゛~!!ゆ゛ゆ゛ゆっゆ~!ゆ゛ーゆーゆ゛ーゆっゆ゛ー!!ぶぎゅえっあ゛!!??」
耳障りな歌は途中で途絶えた。
僕の拳が母れいむを押しつぶし、盛大に餡子をばら撒いて絶命したからだ。
別に母れいむを哀れんだわけではない。ここまで壊れるともう楽しめないから、消しただけだ。
あと…母れいむの歌が聞くに堪えなかった、というのもある。歌唱力的な意味で。
「さて、バッジをつけてる人はお兄さんの周りに集まってね!!」
大声で呼びかけると、期待に胸を膨らませた12匹が一瞬で集まってきた。
散々待たされたけど、ついにご飯がもらえる。いったいどれだけ貰えるんだろう!
口には出さないが、表情にはそう書いてある。
でも、その期待は…残念ながら現実にはならないんだ。
「この12人は頑張って汚い赤ちゃんを殺した、とても………悪いゆっくりだよ!!」
「ゆゆっ!?なにをいってるの!?」「ゆっくりせつめいしてね!!」
うろたえるのは当然12匹のバッジをつけたゆっくりたちだ。
汚いゆっくりを頑張って殺したのだから、きっと褒められるに違いない…と思っていたのだろう。
混乱していて状況を理解できない周りのゆっくりに向けて、僕はさらに説明を続ける。
「バッジをつけたゆっくりはとても悪いゆっくりだよ!!そんなゆっくりとはゆっくりできないよね!!」
「いやだぁぁぁぁぁぁぁ!!!どおじでぞんなごどいうのおおおぉぉぉぉぉぉ!!!」
自分の存在意義を否定され、涙する12匹。
自力でバッジを取ろうとするが、しっかり固定されていてゆっくりの力では絶対に外せない。
周りのゆっくりは、僕の言葉に無言で耳を傾けている。
バッジをもらったゆっくりに対する嫉妬は、もう消えうせていた。
そして…
「“ニセモノ”のバッジをつけてる、この悪いゆっくりを皆で協力して殺してね!!
頑張って殺した人には、ホンモノの“バッジ”をあげるよ!!ご飯がたくさん食べられるよ!!」
「ゆっぐりいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃや゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「ばっじほしいよ!!わるいゆっくりはゆっくりしんでね!!」
「わるいゆっくりをころして、ばっじをもらうよ!!わるいまりさはゆっくりしね!!」
そして再び始まる、一方的な虐殺。
僕はゆっくりの殺し合いを、ゆっくりと眺めることにした。
「ゆっぐりじだがっだよお゛お゛お゛お゛お゛ぉぉぉぉぉぉ!!!」
あとがき
「ごはんたくさんあげるから、仲間を殺してね」
ってだけだとよっぽど空腹じゃない限り同属殺しはしないと思った!
でも奇形ゆっくりと悪い(と思い込ませた)ゆっくりだと、ついつい殺しちゃうんだ!
自分がいいことをしてるっていう免罪符に似た思い込みがあるからね!!
それにしても、これがぬるいと思っちゃう俺は末期だね!!
作:避妊ありすの人
最終更新:2022年05月03日 16:07