※正解率50%の問題!少年が明日に行く工事現場はどこか!?



10歳になる少年は工事現場が大層お気に入りだった

『ガガガガガ』とブルドーザーの鋼鉄のフォークが瓦礫をおもちゃの様に押し崩し
『ガチャンガチャン』とショベルカーの大きなスプーンが土をプリンのようにすくい上げ
『ウィィィン』と高架クレーンが資材を空高く、ネコをつまみ上げるように持ち上げる

少年はそんな光景に心を躍らせ
毎日の様に工事現場でお気に入りの重機を飽きることなく眺めていた。

「僕も重機になりたい」

今日も近所のビル建設現場で、少年は心底そう考えて空想にふけっていた。

ブルドーザーのように力持ちな自分
ショベルカーのように手が長い自分
クレーンのように背の高い自分

実際には背が低く痩せっぽちな
(そしてさらに、それが原因でよく学校でからかわれる)少年には
そう思いを馳せる事がこの上無い幸福な時間だった。


影が長く伸びた時間帯


「どうしたら重機になれるのかな?そうすれば僕だって皆に馬鹿にされないのに・・・」

少年は自転車を押し歩きながら、楽園に後ろ髪を引かれるような思いで家路を歩いている。

「れいむおちびちゃん!おひさまがばいばいするからおうちかろーね!」
「ゆっきゅち!まりさ!またあしたあそぼーね!」
「まりさおちびちゃんも、ままといっしょにおうちかえろーね!」
「ゆっきゅり!れいみゅまたあしたゆっきゅりあそぼーね!」

伏目がちに取り止めの無い考えが頭を巡っている少年の耳に甲高い声が入り、顔を上げる。
何事かとびっくり顔で歩道から公園を覗き見ると
そこには芝生の上を隅のトイレの方へと行進するゆっくり親子が見て取れた。

「ゆ~ゆ~ゆっくりのひ~まったりのひ~」
「「ゆぅ~ゆぅ~ゆっきゅりのひ~まっちゃりのひ~」」
「ゆふふふ、おちびちゃんたち!おうたがとってもじょうずだよ!」
「ゆっへん!れいむは、れいむおきゃーさんのこどもだもん!」
「ゆ!まりさもれいみゅおねーちゃんにはまけないんだじぇ!」
「ゆゆ~ん、すっごいうれしいよ~」

彼の顔はすぐに曇った。
少年はゆっくりが嫌いだった。いや、大嫌いだった。
弱くて、脆いくせに何時だって自信たっぷりの言動。
そのくせ、ちょっと小突くと酷く卑屈になり
皮が破れれば、不気味な絶叫とともに死ぬ。

まるで『弱い自分の醜さ全てを見せつけられる』みたいで大嫌いだった

故に今、目の前で
ニコニコとした顔で、ゆ~ゆ~と歌い、プリんプリんと下膨れの顎を振りながら巣に戻る
ゆっくり達がたまらなく汚く、許せない気がした。

「・・・・ぼくは重機だ」

少年は、黙って公園の入り口に自転車を止めると、人影の無い園内へと入っていった。



「ゆ~ふっふんふ~ゆゆんゆう~おちびちゃんたちごはんにしましょ~」
「ごはんだじぇ!!ごはんだじぇ!!ゆっくり~」
「れいみゅおなかぺこぺこだよぉ!ゆっきゅり!」
「ゆふふ!あわてないでね!たくさんあるからね!ゆっくりたべようね!」

トイレの裏にダンボール箱の居を構えるれいむはシングルマザーだった。
亡き夫(人間に絡んで潰されたまりさ)との子供である、子れいむと子まりさを気丈にも独りで育てている。
町ゆっくりにしては母性の強い珍しいれいむだった。
日中は公園で知り合った他のゆっくり家族に子供を預け、れいむ自身は一日かけて
食料集めに駆けずり回り、夜に集めた食料を最愛の子供達と食べる。

「むーちゃ、むーちゃ、し、しあわせーーー!!」
「きょうもごはんさんとってもおいしいのじぇ!!」
「ゆふふ、おちびちゃんたちあわてないでね。ゆっくりたべるんだよ。」
「「ゆっくりりかいしたよ!!」」

ごはんをむーしゃむーしゃする子ゆっくり達の喜びの声が響き渡る。
みかんのダンボール箱を横にしたただけのおうちではあるが
赤ちゃん言葉も抜け始めた遊び盛りの子ゆっくり達には多少狭くもあるが
町ゆっくりにとっては立派な住まいだ。

「それでね!おきゃーさん!きょうれいむね!ぱちゅりーにおうたをほめられたんだよ!とってもゆっくりしてるって!」
「まりさはありすにこくっはくされたんだじぇ!おとなになったらいっしょになろうねっていわれたんだじぇ!」
「ゆゆ~ん!おちびちゃんたちはきょうもとってもゆっくりできたんだね!えらいよ!」

食後の団欒の一時。子ゆっくり達は先を争って一日のゆっくりとした出来事を報告する。
本当に小さなゆくっりぷれいすではあるが
家族にとっては何物にも変えがたいゆっくりぷれいすだった。

「ゆふぁぁ・・・それでにぇ・・えっとにぇ」
「ゆふぅ・・ゆふぅ・・ありすとすっごいゆっくり・・じぇ・・」
「ゆふふ、おちびちゃんたち、きょうもいっぱいあそんだからおねむだね」

まだ時刻は夕方ではあったが、子供たちはお腹一杯になるとすぐに睡魔に襲われてしまった。
母れいむは静かに子守唄を歌いながら唯一の寝具である薄汚れたタオルを子供達に被せる。

(ゆふ~・・・・まりさ。きょうもおちびちゃんたちはとってもゆっくりしたよ)

慈しむ瞳でゆぴーゆぴー寝息を立てる子供達を眺めながら自分も食事を取る。
れいむの食事はトイレの裏に生えてるペンペン草やドクダミ草。
ゆっくりの味覚にしても不味いシロモノだ。
しかし、一日かけて集める食料全ては育ち盛りの我が子の為だ

(ゆゆぅ・・・にがいよぉぉ・・・・あまあまさんたべたいよぅ)

顔をしかめながらも、れいむは毎日それを食べている。

「ゆぴ~・・・・おきゃーさん・・だいすき・・ずっとゆきゅり・・・」
「・・・おきゃーさんをいじめるやつはゆるさないん・・だじぇ・・・かかってくるのじぇ・・こわいのか・・じぇ」

ふと子供達の寝言が漏れた。
母れいむの顔があっという間に柔らかくなる。

(まいにちごはんさんをあつめるのはたいへんだけど・・・・
 でも、おちびちゃんのえがおをみればそんなのふきとんじゃうよ!
 にがいくささんもとってもおいしくなるよ!)

一般的にれいむ種は狩猟(餌集め)が苦手だ。
基本の運動能力が低いのに加え、携帯貯蔵が可能な帽子も無い。
それでもこの母れいむは一生懸命に頑張っている。本当に珍しい個体だった。

「そろそろ・・・れいむも・・・ゆっくりやすむよ・・・」

公園内の街頭が灯き始める頃、食事を終えた母れいむも眼をつぶり体を休めた。

「あしたも・・・がんばる・・「ウィーン。ガガガガ。ブルドーザーが近づいています。」

メリメリメリ

音を立ててダンボールのおうちが軋み始める

「ゆわあわわわわわ!!!なになに!!なにがおきたの!!!」

寝入り端、突然の出来事に飛び起きる母れいむ、目を凝らすと真っ黒い何かが
おうちの入り口を塞ぐように迫ってきていた。

「ウィーン。ガガガガ。ブルドーザーが近づいています。」

それは言うまでも無く少年の声だった。
彼は公園に落ちていたベニヤ板を拾い、それを盾の様に持ち
屈んだ姿勢で全体重をかけて"ゆっくりぷれいす"に押し込んでいるのだ。
しかし、中の母れいむはそんな事分かる訳も無くパニック状態だ。

「ゆわわっ!!ゆっくりしないで!!おちびちゃんはゆっくりしないでおきてね!!!」
「ゆぴ?おきゃーさんなにかあったの?ゆっくりしてね」
「ゆう・・・あささんなのかじぇ?」
「いいからはやくおきてねぇぇぇぇ!!!」

少年が板を押し付けるダンボール中身がガタガタ騒ぎ始めた。

「進行方向にご注意ください。進行方向にご注意ください。」

少年は"進行方向"を曲げない

メリメリメリ

「ゆひぃぃ!!なんなのじぇ!!なんなのじぇ!!おうちがこわれちゃうのじぇぇぇぇ!!!」
「おぎゃぁぁさぁぁんん!!!つぶれぢゃうぅぅぅれいみゅだぢちゅぶれちゃうぅぅっぅ!!」
「おおおおおおちついてね!!おちびちゃんたちおちついてね!!」

ダンボール内の残り幅が15cmぐらいになった所で家族の悲鳴はピークに達した。

「停止します。停止します。」

と、そこで少年は動きを止め押し付けていたベニヤ板を取り外す。
グシャグシャになった"ゆっくりぷれいす"の中には恐怖による涙と涎まみれのゆっくり家族が居た。

「ゆゆゆ・・・た、たしゅかったのじぇ・・・?」
「きょわかったよぉぉぉぉ!!しにゅかとおもっちゃよぉぉ」
「・・・おちびちゃんもうだいじょうぶだからなかないで・・・・ゆゆっ!!にんげんさん!?」

母れいむの顔が安堵したのも束の間、暗がりでも分かる位に顔が青ざめている。
街燈に照らされる少年はそんな饅頭を冷たく見降ろして、ポツリと呟いた

「ピー。クレーン車が発進します。ご注意ください。」

母れいむは、少年の声に我にかえると大急ぎで避難を始める。

「ゆゆゆ!!おちびちゃん!まだあぶないよ!ゆっくりしないでおかあさんのくちに入ってね!」
「ゆっくりりかいしたのじぇ!!!ゆっくりいそいでおくちにはいるのじぇ!」
「おかーしゃんのおくちのなかならゆっくりぃぃぃぃぃ「ピー。赤ちゃんゆっくりを捕獲しました。捕獲しました。」

少年は子れいむが母の大口に隠れる前にもみあげをを掴み上げた。

「!?れいみゅおねーちゃんがきえたのじぇぇ!!??」
「ゆわわわぁぁああんん!!!!まりさぁぁぁ!!おぎゃぁぁぁさぁぁあんん!!!!」
「!?れいむおちびちゃぁぁぁぁんんん!!??」

母れいむと子まりさの頭上に、聞きなれた子れいむの叫び声が上がる。
地上の饅頭達から見上げると、はるか上方に片方のもみ上げで全体重を支える子れいむの姿があった。

「れいみゅ・・・おしょらをとんじぇ・・・ゆわぁぁぁ!!ぴこぴこがいぢゃいよぉぉぉ!!!」
「ウィィィィン。クレーンアームを旋回します。クレーンアームを旋回します」

地上に残された母子が驚愕の表情で固まっているのを尻目に
少年は腕を水平に伸ばし、つま先を軸にしてその場で回転を始めた。
遠心力が最大になるのは腕の先、の手の先、のもみあげの先、の子れいむだ。

ブン・・・・ブン・・・・ブン・・・・

「ゆひぃぃぃぃ!!!!!ぎょわいよぉぉぉぉぉ!!!だじゅげでぇぇぇぇ!!!」
「おちびちゃぁぁん!!おぢびじゃぁぁぁんん!!!」
「れいむおねぇぇぢゃぁぁぁんんん!!!」

子れいむの悲鳴が輪になって響き渡る。
回転する少年の足元にいる母と妹まりさは必死に叫ぶが何もできない。いや、何ができるだろう?

ブン・・・・ブン・・・・ブン・・・・

「ゆきひぃぃぃぃぃ・・・・・えれえれえれ~~~~」
「!?おぎゃぁぁさん!!れいむおねぇぢゃんがあんござんをはいでるよぉぉぉ!!」
「にんげんさん!!おねがいでず!!やめでぐだざい!!ゆっぐりどまっでぐだざい!!
 れいぶのおぢびぢゃんが、しんじゃいまず!!こもままじゃゆっぐりでぎなぐなっぢゃいますぅぅぅぅ!!!」

回転の輪から悲鳴では無く嘔吐餡が飛び散りだした
しかし、母れいむには何もできない。少年の傍で泣いて謝ってすがるだけだ。

ブン・・・・ブン・・・・ブヅン!!「ゆっぎゃっぁあ─────

もみあげが千切れた

────あぁぁぁ」ベシャンッ!!

子れいむトイレの壁に顔面から激突した。
まるで腐った柿が地面に落ちるような音を立てて。

ズ・・・ズ・・・ズルンズルンズズズズ・・・・ボドン

衝突後、地球の重力には逆らえず潰れた饅頭はトイレの壁を地面までずり落ちてくる
餡子の墨汁で縦線を描く様に
"潰れた顔"をさらに"削り降ろす"ようにして

思わず駆け寄る、母と妹

「おちびちゃぁん!!おちびちゃぁぁん!!」
「おねぇちゃぁぁん!!ゆっくりぃぃ!!ゆっくりぃぃ!!!」

トイレの壁をずり下がった子れいむは微動だにしない。
後姿はついさっきまでご飯食べて「ちあわちぇー」と言っていた時と変わらず
壁に向かってボーっと座っているようにも見える。
そんなわが子に意味不明な希望的観測を抱きながらを、母れいむが優しく振り向かせ顔を覗き込む。

「れいむおちびちゃん!!だいじょう・・・・!!!!!!??????」

しかし、トイレの壁に激突した"それ"の前面は
裂けたザクロのようであり、顔のパーツは一つも無かった。
眼が潰れ散っているから「うれちいよー」と二度と涙できない。
口が爆ぜ飛んでるから「ちあわちぇー!!」と二度と言えない。
何より子れいむは、もう死んでいる。

「────ああ・・・ああ・・・れいむ・・おちびちゃん・・・」
「れいみゅ・・おねぇ・・ちゃん・・・ゆっ!!ゆげぇぇ!!!えれぇえれぇーーーー!!」

子れいむの遺体を前に母れいむは顔色を失い、幼い妹まりさはショックで嘔吐餡してしまった。

「ゆげぇ!ゆげぇぇ!!・・・もういやだよぉっ!!もういやだよぉっ!!なんじぇまりだちをいじめるのぉぉぉ!!!」
「!?ゆっくり!ゆっくりりして!まりさおちびちゃん!!」

餡を吐き続けながら泣き叫ぶ子まりさ、狼狽する母れいむ
次にどうすればよいのか? 2匹は最早分からない。

しかし、周囲は容赦しない
手に太めの木の枝を持ち、ユラリと近づいてくる少年。

「パイルドライバーによる杭工事を開始します。ご注意ください」
「!?っまりさおちびちゃん!!れいむのおくちにはいってね!!ゆっくりしないではいってね!!」
「ゆぇーーんゆぇーーん、もういやだよぉぉ!!こんなゆっぐりできないのなんてどっかいってね!!だいっきらいだじぇ!」
「まりさおちびちゃん!!しっかりして!!れいむおこるよ!!」

幼児特有の愚図りを発症する子まりさ、母れいむもギリギリの精神状態だが
本当に瀬戸際のラインで理性と母性が勝っていた

「もうゆっくりできないよ!おちびちゃんちょっとがまんしてね!」
「ゆぁぁ!!おがぁぁさん!!なにずるのおぉぉお!!『バクンっ!』

迫ってくる少年に間に合わないと判断した母れいむは口を大きく開き
強引に、我が子を食べるように口の中に収容した。
しかし、その為中の子まりさのパニックは収まらない。

「ゆぎゃぁぁぁ!!ぐらいよぉぉぉ!!ごわいよぉぉぉ!!」
「いだい!!いだいよ!!やめてね!まりさおちびちゃん!!あばれないでね!ゆっくりしてね!
 でも、これでゆっくりしないでいそいでにげるよ!!」

と、頬を膨らませた母れいむが踵を返すと目の前には靴があった。
誰のか?少年のだ。

「ゆ・・ひ・・?・・・へ・・・」

グサッ!! 少年は手に持った木の枝を思いっきり足元の饅頭に突き刺す

「ゆぁぁぁ!!!いぢゃいぃぃぃぃ!!!でいぶのほっぺたざんがぁぁ!!!」
「おがぁしゃん!!おがぁーしゃん!!どおじたのぉぉ!!??」

ズボッ!! 木の枝を饅頭から引き抜く

子供の声がすると言う事は、まりさには突き刺さらなかったようだ

「ゆひっ・・ゆひっ・・・れいぶは・・こどもを・・・ばぼるんだよ・・・」

頬に大穴を空けられて、それでもなお子供を守り貫こうとする母の意志。
その決意が、ボロボロの体に鞭打って、少年からの遠ざかろうとする。

だから、少年は一歩間合いを詰めた。

「パイルドライバーによる杭工事を開始します。ご注意ください」
「でいぶだちは!!にげるんだよ!!ばりさとのこどもを!!ぜったいにぃぃっぁぁぁあぁあああ!!!」
「ゆひぃあっ!!いぢゃいいいいよぉぉぉ!!!!」

グサッ!! 少年は手に持った木の枝を思いっきり足元の饅頭に突き刺す

今度は先程とは逆の頬を貫く。中の子まりさにも当たったようだった。

「ゆーひぃ・・ゆーひぃ・どぉして・・・ごんなごど・・・するの・・・?」
「僕は・・・・」

虫の息の母れいむが涙を流す瞳には

「・・・・重機だ」

少年の薄い笑みが映り込んでいた。

「回転掘削工事を始めます。ドリルスピンスイッチオン。」
「「ゆっ────!!!!!!!!!!!!」」

"掻き回される母子"の悲鳴が、トイレの裏に響き渡った。



日が完全に暮れた時間帯。公園の駐輪場

「・・・悪いことしたなぁ。ゴミをゴミ箱に入れ忘れちゃった。次から気をつけなきゃ」

少年は自宅へと大急ぎで自転車を漕いで帰っていった。

明日の工事現場の事を思い浮かべながら







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最終更新:2024年04月15日 18:36