「ま、まりざああああああああ!」

森の中からありすの声が聞こえる。
ゆっくりまりさは懸命に逃げていました。
親まりさだけならば楽に逃げることができました。
しかし、今は子まりさが4匹親の速度に必死についてきています。
幸いにもこの先は湖でした。
2匹の親まりさは森の先の湖を見て安堵します。

「ゆううううぅ!これでたすかるよ!」
「みんなはやくぼうしをうかべてね!」

親まりさの発言で我先に帽子を浮かべる子まりさ達。
子まりさが全部帽子に乗ったのを確認すると親まりさも帽子を浮かべました。

「まりざあああああああいっしょにゆっぐりじようよおおおお!」
「にげなくでもだいじょうぶだよおおおおおおおお!」

ありすの群れが森から飛び出してきます。
間一髪、親まりさは帽子に飛び乗ることができました。
急いで陸地から離れる親まりさ。
何匹かのありすは水も気にせずに親まりさに飛び掛かりました。
それを二匹は口に咥えた棒ですべて叩き落します。

「ま、まりざあああああガボゴボ・・・」
「たずげでええええええええ・・・」
「まりさ、いまならもどってきたらゆるしてあげるよ!」

湖畔で生き残ったありすたちがまりさ達に呼びかけます。
しかし、まりさたちが戻るわけにはいきません。戻れば死ぬのだから。

「まりさ、どうしよう・・・」
「とにかくすすむよ!ありすたちがいないばしょにいこうね!」

そうやっておやまりさは湖に帽子を漕ぎ出しました。
子まりさ達も親まりさに挟まれてオールで必死に水を掻いて行きます。


やがて、まりさたちの前に岸が現れました。

「ありすたちがいないよ!」
「あそこでおりようね!」

しばらく岸を巡り、上陸できる場所を見つけるとまりさ達は見知らぬ土地に上陸しました。

「ゆゆっ、なにかへん!」
「ちょっとじめんがぶよぶよしてるかも!」
「はねてもあまりいたくないよ!」
「ぶよんぶよん~。」

新しい土地でそれぞれ感想を言っていく子まりさ達。
親ゆっくりも子ゆっくりのように地面に違和感を感じたようでした。
しかし、記憶を探しても引っかかるものはありません。

「もっとおくにいってみようね!」
「たべものがあるといいね!」

まりさ達は岸辺を離れ、食べ物を探すことにしました。
ふよふよとした地面には草が生えていたが、大きな木は見つかりませんでした。
草原を掻き分けて進むとまた岸に辿り着きました。

「ゆゆゆ?みちまちがえたのかな?」
「ゆ~、つぎはきしにそってうごこうね!」

草原の中で道に迷ったと感じたまりさ達は今度は岸に沿ってうごくことにしたようでした。

「なにしてるの?」
「めじるしをつくってるんだよ!つぎにきたときこれがあればきづくでしょ!」
「おとーさんすごい!」

父まりさは次にここに来た時気づくよう目印を作ったようです。
それに気づいた子まりさに説明し、子まりさを教育するのも忘れません。
目印を出発したゆっくりまりさはゆっくりと岸にそって進みます
途中動物が現れるかもと警戒していましたが、現れたのは魚を狙う鳥ぐらいで、陸の動物は一度も会いませんでした。
そうして岸に沿ってまりさたちは進み、しばらくすると目印を作ったところに来てしまいました。

「ゆゆゆ!これはしまだよ!」
「しま?」
「おとーさんのおとーさんまりさがいってたよ!みずのなかにじめんがあるばしょがあるって!」
「ゆゆっ!?」

ここは浮島でした。
陸から離れた水草などの植物が何年もの年月により泥炭化し土となり、それが何年も繰り返されて大きな島となっていたのでした。
父まりさは自分が言ったことを確認するために足元の地面をすこし掘ります。
しばらくすると水が湧き出し、さらに掘ると底が見えない水が見えました。

「ゆゆ!!このじめんはあぶないよ!」
「すぐにうめてね!」

あわてて土をかぶせて埋めようとするまりさ達。
しかしそのまま土をかけても沈んでいくばかり。

「ゆうううううう!どおじでええええええええ!」
「ごごじゃゆっぐりでぎないいいいいいいいい!」

まりさたちはとうとう泣き出してしまました。
6匹の泣き声が回りに響き渡ります。
そこへ、

「おいおい、どうしたんだぜ?」
「ゆぅ?」

いきなり聞こえてきた声に不思議がるまりさたち。
辺りをきょろきょろ見回すがまりさたち以外にうごくものはいません。

「ゆゆゆ・・・ゆうれいだああああああ!」
「い゙や゙あああああああ!」
「帽子が邪魔なんだぜ、上をみてみな。」
「ゆっ!」

言われて上を見上げるゆっくり。
そこには箒に乗ってまりさにそっくりな人が浮いていて・・・







「ま゙り゙ざあ゙あああああああああ!」
「ゆ゙っぐり゙じよ゙ゔね゙えええええええ!」
「そこでゆっくりしててね!」

向日葵畑の中でゆっくりまりさはゆっくりありす二匹から逃げていました。
ある人に会うためにいつも住んでいる場所から離れたここにやってきたのです。
不運にももう少しでその人のいる場所に着くというところでゆっくりありすに見つかってしまい、目的どころではなくなってしまったのでした。
向日葵畑に逃げ込んだは良かったのですが発情中のありすは驚異的な感覚でまりさを追いかけてきました。
長い間旅してきたまりさには逃げ切るだけの体力は残っておらず、まりさがすっきりさせられてしまうのも時間の問題でした。

「みんなとのやくそくがあああああああああ!」

ゆっくりまりさは旅立つ前、群れのみんなに絶対に帰ると約束していました。
その約束のために今までがんばってきたのだがもはやまりさに約束を守るための体力は残っていませんでした。
とうとう石にに躓き顔を地面に打ち付けるまりさ。
まりさはこれから怒ることに恐怖しながら必死に顔を起こし振り返ります。
しかし、あれほどまでにしつこく追いかけてきたゆっくりありすたちはいつまで経ってもやってくることはありませんでした。

「ゆゆ?にげきれたのかな?」

まりさは不思議に思っていると、ガサゴソと向日葵が揺り動く音が近づいてくるのに気づきます。

「ゆゆ!かくれなくちゃ!」

まりさは穴を掘って体を隠します。
穴にすっぽりと入ったまりさは帽子だけ地面から出た状態となりました。
こうすることで穴を掘るところを見なかったゆっくり以外の動物には人が落とした帽子に見えて襲われることはありません。
ゆっくりの場合は死んだゆっくりの装飾を持っていると他のゆっくりに嫌われるので何も見なかったように立ち去っていきます。
ありすが見ている間はできなかった隠れる行動ができて、まりさはこれで目的を果たすことができるだろうと安堵しました。
しかし、物音はまりさのほうに近づいてきます。
まりさは不安になり、よりいっそう穴に潜り込もうとしました。
とうとう物音はまりさの目の前までやってきます。
目を瞑り、じっと耐えるまりさ。


しばらくしても何も起こりません。
まりさはホッと胸をなでおろします。
同時に頭がスースーする感覚を覚えるゆっくりまりさ。

「ゆゆっ!まりさのぼうし!」

急にまりさの帽子がなくなりあわてて穴から飛び出したまりさは日傘をさした緑髪の女性が帽子を掴んでいるのを目にしました。

「ゆゆ、まりさのぼうしかえしてね!」
「言われなくても返すわよ。」

そういってその女性は帽子をまりさの頭に載せてくれます。

「おねーさんありがと!ゆっくりしていってね!」
「と、言われても元からここでゆっくりしてたんだけど。」
「ゆゆ・・・まりさもゆっくりさせてね!」
「その前にどうしてここに来たのか教えなさい。」

女性の質問にまりさは忘れていた目的を思い出しました。

「ゆ!ゆーかってひとにたねをもらいにきたんだよ!」
「種?」
「そうだよ!まりさたちがゆっくりするにはそのたねがひつようなの!」
「どこでそんなこと聞いたのかしら?」
「まりさにそっくりなかおのひとがほうきにのってあらわれたの!」
「あぁ名前も一緒だから分かりやすいわ。」
「それでゆーかってひとがたねをもってるっておしえてくれたの!」
「なるほど。」

まりさは緑髪のお姉さんの返答を待つ。群れの明日が掛かっているので断られたら土下座しても頼み込むつもりでした。
しかし、緑髪のお姉さんはあっさりと、

「いいわよ。」
「ゆっ!?おねーさんありがと!」
「ただし、貴方達の住処で渡す種をどうするか見させてもらうわ。」
「ゆゆゆ・・・わかったよ!ゆっくりあんないするね!」

群れの場所を知られるのはまずいとまりさは考えたが、恩人の教えてくれた人なのだからと自分を納得させます。

「それで、どんな種がほしいのかしら?」
「んーと、おみずにうかぶやつ!」
「水草?」
「よくわからないけどそれだよ!それならまりさたちもあんしんしてのれるってきいたよ!」
「よく分からないわね。ますます気になるわ。とにかく案内して頂戴。」

緑髪のお姉さんはまりさを持ち上げて飛び上がりました。

「ゆゆっ!おそらをとんでるみたい!」
「それで、貴方のお家はどこかしら?」
「ゆー、あそこだよ!」

そうやってまりさが顔を向けたのは大きな館が近くにある湖です。

「まさか湖の中で住んでいるの?」
「ゆっ!そうだよ!まりさたちのしまでくらしてるよ!」

そう言ってまりさは緑髪のお姉さんを案内します。
しばらくして、湖に浮かぶ浮島に到着しました。

「ここがそうなのかしら?」
「そうだよ!みんな、ゆっくりしていってね!」

「「「ゆっくりしていってね!」」」

緑髪のお姉さんの腕の中でまりさがゆっくりの挨拶をすると草むらの中から一匹二匹とゆっくりが現れました。
ゆっくりは全部ゆっくりまりさ種です。

「まりさしかいないのね。」
「そうだよ!ここはまりさたちのおうちだよ!」

まりさは自慢げに答えます。
このまりさ達は初めてここに辿り着いたまりさ達と、同じく危険な目にあって浮島に辿り着いたまりさたちです。
今では小規模の群れとなっていました。

「おねーさんおろしてね!」
「はいはい。」

まりさは緑髪のお姉さんの腕から降りると草むらから出てきたまりさ達の元へ向かいました。

「ゆっくりしないでかえってきたよ!」
「おかえり、まりさ!みんなしんぱいしてたよ!」
「あぶなかったけどなんとかもくてきをはたせたよ!」

そのまりさの答えにゆっくりまりさ達は緑髪のお姉さんに顔を向けます。

「おねーさんはゆっくりできるひと?」
「今はゆっくりしてるわよ。」

そう返事するとまりさ達は警戒を解き、

「まりさたちがんばってくささんやおはなさんそだててるんだけどうまくいかないの!」
「なかまはどんどんふえるからもっとくさがひつようなの!」
「ほうきのおねーさんがくさばなでこまったらひまわりのおねーさんにそうだんすればいいっていってたの!」
「だから、むれでいちばんのまりさにたのんでつれてきてもらったの!」
「おねーさんおねがいします!」

と、緑髪のお姉さんに事情を話します。
事情を聞いた緑髪のお姉さんは箒に乗ってきた人に文句を言いながらも、ゆっくりのために種と上手な育て方、さらにこの浮島でも育つ食べれる植物の種を用意しました。
今までまりさ達は湖畔近くで食べ物を取って戻ってくるという危険な生活をしていたので、それが減り、より長く島で暮らせるのはとても喜ばしいことでした。
浮島は木が育つことが可能な場所もありました。
そこにはりんごの木を植えました。
緑髪のお姉さんのおかげですぐに育った草をまりさ達は敷き詰めて新たな地面にしていきます。

「ゆ~、おねえさんありがと!」
「これでゆっくりくらせるよ!」
「おねーさんにもらったたねがんばってそだてるからね!」
「がんばって綺麗な花を咲かせなさい。枯らせてしまったら許さないわよ。」

そういって緑髪のおねーさんは去っていきました。
その後もたまにやってくる箒のお姉さんと緑髪のお姉さんにいろいろ教わりながら、ゆっくりまりさの浮島は湖の上のゆっくりプレイスとなりました。
ゆっくりプレイスの場所をどこで聞いたのか、時たままりさが浮島に流れ着き、群れの住人となりました。
そうやって数を少しずつ増やしながら、まりさたちは浮島でゆっくりとした生活を送っていました・・・






「ゆうぅぅぅ、まりさたちだけゆっくりしててずるいよ!」
「そうだよ!れいむたちもあそこでゆっくりしたいよ!」
「まりさたちはひきょうだよ!」

木の上で文句を言うのはゆっくりれいむ。
れいむはリボンをつけていますが特に能力もなく、帽子で湖を渡るまりさをとても羨ましく見ていました。

「れいむたちもあのぼうしがあればゆっくりできるのにね!」
「れいむもりぼんじゃなくてぼうしがよかったよ!」
「しろくろのくせにれいむよりすぐれてるなんてゆるせないね!」

このれいむたちはまりさがありすにおわれて湖に逃げるのを木の上で見ていたのでした。
そのまま戻れなくなっているまりさの家族を笑っていたらまりさたちが湖の上で歩いているの見て驚きます。
よく見れば地面があるのが分かり、それでも何も無さそうな場所だったのであのまままりさ達は死んでしまうだろうと思いました。
しかし、しばらくしてまりさ達がどうなったか見に行くと何もない場所ですごくゆっくりしているではありませんか。
本当なられいむたちのもそこに行ってゆっくりしたいのですが、帽子がない霊夢は浮島に行く方法がありません。
一度まりさに帽子にれいむも乗せてと頼んだことがありました。
その時はまりさが、

「まりさのぼうしはひとりようだよ!れいむはのせれないんだ!ごめんね!」

そういってまりさは一人で浮島に向かっていったのでした。
れいむはそれを悔しそうに見るしかありませんでした。
それからもれいむは気の合う仲間たちと浮島を眺めてはゆっくりしているまりさを見て文句を言っていました。
このれいむたちは湖付近ではかなり多きい群れでしたが、発情ありすや人間によって常にゆっくりしているわけではありませんでした。
それゆえ、ずっとゆっくりできている浮島のまりさたちが羨ましかったのです。
今日もまた一匹のゆっくりまりさが浮島に向かおうと湖畔にやってきていました。
木の上のれいむは木から下りてまりさに言います。

「れいむもあそこにつれていってね!」
「ゆゆっ!だめだよ!ぼうしはひとつしかないよ!」

またれいむはまりさに断られてしまいました。
しかし今日は引き下がりません。

「どーしてもだめ?」
「どーしてもだよ!これはまりさのたいせつなぼうしだもん!」

そういってまりさはれいむを無視して帽子を湖に浮かべました。
その時、

「じゃあゆっくりしね!!」
「ゆぐっ!」

れいむはまりさを突き飛ばしました。帽子ではなく湖に落ちたまりさは沈んでいきます。

「れいむ゙ううううう!どおおおじでえええええ!」
「まりさだけゆっくりするのはぜったいにゆるさないよ!」

残ったのは先ほどのまりさのぼうし、れいむはそこに飛び乗ります。

「ゆっゆっ、れいむものれるよ!まりさはうそつきだね!」

初めて水に浮かんだれいむは大はしゃぎです。
一緒にいたれいむも乗りたそうにれいむを眺めていました。
しばらく交代で帽子に乗って遊んでいるとまりさを突き落としたれいむが何かを決意したような顔で言いました。

「これからむれのみんなにいってあのうきしまをれいむたちのものにするよ!」
「ゆゆゆ!?」
「あそこなられいむたちだってずっとゆっくりできるよ!」
「そうだね!まりさたちにはもったいないね!」

れいむはそう言って群れのみんなに自分の意見を話しました。
最近ありすの襲撃で仲間を減らし、ゆっくりできていなかったれいむの群れはその提案に賛成しました。
それからしばらくして、帽子を奪われ餡子を飛び散らせたまりさの死体が森に散乱するようになりました・・・




「ここでゆっくりさせてね!」
「ゆっくりしていってね!」

浮島のまりさの群れは今日も数匹のまりさを仲間に加えました。

「ここでぼうしをかわかせてね!そうしないとゆっくりとけちゃうよ!」
「そうだね!ありがと!」

やってきたまりさは浮島の上に帽子を引き上げて帽子を乾かします。
いくら水に強い帽子でもずっと水の中だと溶けてしまうのでした。
帽子を乾かしている間になぜここに来たのかをやってきたまりさに聞きます。
浮島で生活するまりさたちには外から来る情報はとても貴重なものでした。

「ゆっ!もりのなかでぼうしをとられるまりさがふえたんだよ!」
「ゆゆっ!だいじなぼうしなのに!」
「そうだよ!だからまりさはとられるまえににげてきたの!」
「ここならあんぜんだよ!ゆっくりしていってね!」

群れの主要なまりさはやってきたまりさ達に事情を聞いた後集まって会議を始めました。

「ゆゆゆ・・・みんながいってるからもりのことはほんとうみたいだね!」
「これからもどんどんまりさたちがやってきそうだよ!」
「そのためにはここをもっとおおきくしないと!」

まりさ達は浮島に住めるゆっくりの場所が少なくなっているのに気づいていました。
とてもとても広い湖なので浮島を大きくしても問題はありません。
しかし、浮島を作るために必要な植物は育つまで時間が掛かります。
そして、まりさたちを悩ませていることがもう一つありました。

「でも、さいきんくささんたちへんだよ・・・」
「ゆっくりできてないよね・・・」
「いわれたとおりにそだててるのにね・・・」

まりさたちの使う植物のうち、一部の植物達が上手く育っていませんでした。
その草の部分で浮島に亀裂ができて島から離れてしまったり、浮島が沈んでしまうのです。
すぐに新しい草で補強して何とかしていますが所詮時間稼ぎでした。

「ゆゆゆ・・・こまったときはみどりがみのおねーさんにそうだんだよ!」
「ゆっ!そうだね!おねーさんならきっとなんとかしてくれるね!」

まりさたちは植物のことで困ったら緑髪のお姉さんと箒のお姉さんに助言を貰いに言っていました。
今回は植物についてなので緑髪のお姉さんを訪ねることにしたのです。

「ゆぅ・・・でももりはいまあぶないらしいよ!」
「でもでも、このままじゃゆっくりできないよ!」

森の危険はやってきたまりさたちによって浮島のまりさ達にも恐怖を植えつけていました。
緑髪のお姉さんを呼ぶには森を抜けねばなりません。
そんな危険な場所に誰を行かせるか・・・

まりさ達が悩んでいると一匹のまりさがやってきます。

「まりさがいくよ!まりさはまえにもいったことがあるよ!」
「ゆゆ!そうだね!むれでいちばんはやいまりさならあんしんだよ!」

そのまりさは初めて向日葵畑に向かったまりさでした。
あの後も何回か行っていたのでどうすれば森をすぐに抜けれるかも知っていました。
群れの主要なまりさ達はこのまりさに望みを託すことにしました。



出発の日。
朝早くに浮島を出発することになったまりさは群れのまりさに見送られながら帽子を漕ぎ出します。
何事もなく湖畔につき、森に入ろうとしたとき一匹のれいむが前に立ちはだかりました。

「ゆっくりしていってね!」
「ゆっ、ゆっくりしていってね!」

れいむの発言に条件反射で答えてしまうまりさ。
しかし、ゆっくりしているとそれだけ浮島の仲間がゆっくりできなくなります。

「れいむ、ごめんね!まりさはいそいでるんだ!」
「ゆっくりしつもんさせてね!」

まりさの断りも気にせずまりさに質問をするれいむ。
まりさは苛立ちながらもゆっくりと質問を待ちます。

「いままりさたちのむれはゆっくりしてる?」
「いまたいへんだからゆっくりしてないよ!だからさっさとどいてね!」

まりさは正直に答えて退いて貰おうとします。
しかし、れいむは顔をにやけさせて逆にまりさを捕まえようとしました。

「ゆゆ、ゆっくりやめてね!」
「うごかないでね!」

まりさはれいむの突進を避けます。そのまま自慢の足で森に逃げ込もうとすると、別のれいむが二匹現れました。
これで助けてもらえる。
まりさはそう思い、新たなれいむ達に声をかけます。

「よかった!まりさをたすけてね!」

そういってまりさは二匹のれいむに近づいていきます。
そして、二匹を横切ろうとしたとき、二匹によって左右から掴まれてしまいました。

「ゆゆっ!ゆっくりやめてね!」

まりさの発言を無視して、二匹のれいむはまりさを地面に押さえつけました。
そこに先ほど突進してきたれいむがやってきます。

「まりさ、むれのことおしえてくれてありがとね!これでこんばんれいむのさくせんをじっこうできるよ!」
「ゆゆゆゆ!なにいってるの!」

いきなり作戦がどうこういいだしたれいむをまりさは不思議がります。

「まりさのむれはゆっくりできてないんでしょ?」
「そうだよ!だからまりさをはなしてね!」
「それなら、こんばんれいむたちがせめたらかんたんにうばえるね!」
「なにいっでるのおおおおおお!」

まりさはれいむの言っている事が理解できません。
だってまりさと違いれいむは帽子がないのです。それでは湖を渡れません。

「れいむはうきしまにわたれないよ!」
「そんなことないよ!」

そういってゴソゴソと茂みから何かを取り出すれいむ。
それは、ゆっくりまりさの帽子でした。

「どおじでえええええええええええ!」

まりさはれいむの発言より驚きました。
まりさ種は帽子をとても大事にします。他のゆっくりに上げることはありません。
そこまで考えてまりさは森で起こっている事件を思い出しました。
あの事件は帽子を奪うためにれいむたちがやっていたのです。

「ぎざま゙ああああああああああああ!」
「ゆっゆっゆっ!」

まりさは声を振り絞り叫びます。
そんなまりさをれいむは見下した目で笑いました。

「きづいたようだけどもうおそいよ!」
「ぼうしはみんなのぶんそろったよ!」
「あとはあのうきしまをれいむのものにするだけだよ!」

ふんぞり返るれいむの答えにまりさを押さえつけているれいむも続けます。
まりさは何とか逃げ出そうともがきます。

「むだだよ!まりさたちはもういっぴきもにがさにからね!」
「ゆゆゆ・・・むれのなかまがおまえたちをゆるさないよ!」
「れいむたちはまりさたちのねたよなかにせめこむんだよ!」
「れいむのすごいさくせんはおばかなまりさたちにきづかれることはないよ!」
「まりさがばかでたすかったよ!」

悔し紛れの対応もれいむたちに流され、さらに馬鹿にされてしまったまりさは涙が止まりません。

「お゙ね゙がい゙や゙め゙でえ゙ええええええええええ!」
「うるさいよ!まりさはそこでしね!」
「ゆぎゅ!」

泣き叫ぶまりさをれいむ達三匹で踏みつけます。
まりさは踏まれるたびに悲鳴を上げて、餡子を飛び散らせて死んでしまいました。

「じゃあさくせんどおりよなかにせめこむよ!それまでゆっくりしようね!」

れいむ達はそう言ってもりのなかに消えていきました・・・




ゆっくりまりさを送り出した浮島のまりさ達はその日も数匹のまりさを仲間に加え、いつもどおりに暮らしました。
その夜、まりさ達は緑髪のお姉さんが来なかった事を残念がり明日には来るだろうと、いつもより早く寝ていました。
箒のお姉さんによって外敵から襲われにくくなったまりさ達は、ゆっくりと帽子を漕ぐれいむ達に気づきませんでした・・・


「ゆーおかあちゃんおにゃかしゅいたー。」

群れの一匹の赤ちゃんまりさが目を覚まします。
赤ちゃんはお腹が空いたので母親にご飯を貰おうと親まりさを探しました。
しかし、辺りを見回しても親まりさも姉妹のまりさも見つかりません。

「おかああああさあああああさぎゅ!」

母親を探そうと声を上げたまりさは誰かに圧し掛かられました。
まだ成長しきっていない赤ちゃんまりさはそれだけでぼろぼろです。

「ゆぐぅ!」

今度は後ろにか見つかれ持ち上げられました。
噛まれた部分から餡子を滲ませながらも赤ちゃんまりさは逃げようと体を振ります。

「はにゃじでえええええ!」

まりさが暴れていると急に噛まれていた所が痛くなくなります。

「ゆっ?」

それと同時にまりさは自分が落下していることが分かりました。
これで地面について逃げられる。
まりさはそう思い元気を取り戻しました。
しかし、

ボチャン!
「ゆぎゅごぼぼぼ・・・」

赤ちゃんまりさは地面につくことはありませんでした。
赤ちゃんまりさは空けられた穴から湖に吸い込まれ帽子ともども二度と浮き上がってきませんでした。

「ゆっ!こいつでさいごだね!」

危険を考えずにぐっすりと寝ていたまりさたちは各個撃破され、湖に沈んでいきました。
まりさを潰すごとに穴を開けていたので穴だらけでしたが、すこし気にすれば生活できないほどではありません。
れいむたちは勝手に地面が戻るものだと思っていました。
今まで住んでいた地面は何もしなくても穴が埋まったりしていたので今回もそう思ったのです。
まりさ達を沈めたれいむたちは島の中央に集まります。
そこには溜め込んだ食べ物や植物の種、そして実をつけたりんごの木がありました。

「ゆゆ!おいしそうなごはんだよ!」
「うめぇ!これめちゃうめぇ!」

れいむたちはまりさ達を潰して疲れていたので我先にと食べ物を漁ります。
何匹かはりんごの木に向かいました。

「りんごだ!」
「だめだよ!」

りんごに向かって飛び掛ったれいむをまりさが突き飛ばしました。

「これはおねーさんといっしょにたべるためのりんごだよ!」
「ゆゆゆ・・・まだいきのこってたんだね!」
「もうまりさはひとりだよ!ゆっくりしんでね!」

そうやってまりさとりんごを狙うれいむ達。
まりさはりんごと自分を守るために必死に飛び跳ねました。
しかし、多勢に無勢、とうとうまりさはれいむに捕まります。
まりさは潰されるのを覚悟しましたが、れいむ達はまりさを押さえつけ、りんごの木に向かいました。
そうして、泣き叫ぶまりさの前でりんごをゆっくりと食べきってしまったのです。

「どお゙じでごん゙な゙ごどずる゙の゙お゙おおおおおおおお!」
「まりさりんごおいしかったよ!」

まりさは足を噛み千切られて湖に捨てられました。
まりさは沈んでいきます。
まりさを見て笑い転げるれいむに何もできず死ぬことに涙しながら溶けてしまいました。

「まりさもいなくなったし、きょうからここはれいむのゆっくりぷれいすだよ!」
「ここでずっとゆっくりしようね!」
「あしたはまえのすみかからしょくりょうをはこぼうね!」
「まりさのぼうしはどうしよう?」
「みずうみにながされないようにうかべとけばいいよ!」
「そうだね!それならすぐつかえるね!」

明日の朝、元の住処から食料を運ぶことやどこで住むかなどをゆっくり決めてかられいむ達はぐっすりと眠りました・・・



次の朝、れいむは帽子がなくなっていることに気づきます。

「れいむのぼうしがなくなっちゃった!」
「どおじでえええええええええ!」
「これじゃゆっぐりでぎないいいい!」

れいむは口々に騒ぎ始めます。
そこにさくせんを発案したれいむがやってきました。

「だいじょうぶだよ!ここにはくさがいっぱいあるからしばらくたべものにはこまらないよ!」
「そうだよ!それにりんごのきもあるよ!」
「まりさたちはここでくらしてたんだからたべものもあるはずだよ!」

れいむの言葉に騒ぐものはいなくなりました。
そうして各々ゆっくりしだします。

「ここならにんげんもこれないね!」
「そうだね!あかちゃんたちもゆっくりできるよ!」
「ゆっくち!ゆっくち!」

といっても、付近で最大規模のれいむの群れが全部やってきたのですから浮島の上はゆっくりでいっぱいでした。
これでは飛び跳ねたりはできません。

「あかちゃんたちはみずうみにちかづかないでね!」
「あぶないからね!」
「わかっちゃよ!はなれてゆっくちちてるよ!」

昨日空けた穴のせいでもあったのでれいむ達は早く穴が埋まらないかなと思っていました。
そうして、昼頃になるとれいむ達は地面の草を食べ始めました。

「むーしゃ!むーしゃ!しあわせ~!」
「このくさおいしいね!」
「やわらかいからあかちゃんもたべやすいよ!」
「ちあわちぇ~!」
「いっぱいあるから、おなかいっぱいになるまでたべようね!」

浮島は草で覆われているのでれいむ全員でもしばらくは食べ切れないと思われました。

しかし、草は浮島を形成する上でとても重要な部分です。
その草を食べるとどうなるか。
まりさが残っていれば分かるのですが今ここにまりさはいません。
誰にもとがめられることなく、れいむ達は地面の草を貪り食いました。

異変が起こったのは昼ごはんを食べてゆっくりしていたときです。

「ゆゆっ!!なんだかしずんでるよ!」
「そこはあぶないよにげてね!」
「おなかいっぱいでうごけないいいいいい!」

一匹のれいむのいた地面が崩れ、湖に落ちたのです。

「ゆぎゅううううう!たすげでごぼぼぼぼぼ・・・」
「ゆぎゃああああああ!」
「おがあああぢゃああああああん!」
「はやくおかーちゃんたちゅけてね!」
「ゆゆゆゆ・・・」

帽子のないれいむ達には助けることができません。

「い゙や゙あ゙ああああああああ!」
「ゆううう、どおじでえええええええ!」
「れいむたちなにもしてないのにいいいいいい!」

一匹の死を悲しんでいると他の場所からも悲鳴が上がりました。

「ゆゆゆ・・・こんどはなに!?」
「またひとりおちたよ!」
「れいむのあがぢゃんがああああああああ!」

れいむ達はあわてます。
何かおかしなことが起こっていると。

「まりさたちがまだいるの!?」
「このしまにはれいむたちだけだよ!」
「じゃあなにがおこってるの!」
「れいむわからないよ!」
「とにかくゆっくりしないでね!」

しかし、れいむで埋められた浮島は表面上何が起こっているのか分かりません。

「ゆ!おかーしゃんどこいくのおおおおお!」
「れいむのあがぢゃああああああん!」
「まっててね!いまいくからね!」
「ゆっくち!・・・じっばいいいいいいい!」
「はやくもどってね!とけちゃうよ!」
「もどれに゙ゃい゙よ゙おおおおおおおお!」

れいむ達が島が崩れていると気づいたのは島に亀裂が入り、ばらばらになったときでした。
もちろん、そのときには手遅れです。

「く、くささんがんばってね!れいむがおちちゃうよ!」
「ごごじゃゆっぐりでぎないいいいいいいい!」

あるれいむはゆっくりの重さに耐えれなくなった草ごと沈み。

「ここはあぶないよ!むこうにとびうつろうね!」
「こどもたちはれいむのくちのなかにはいってね!」
「わかったよ!おかーさんがんばってね!」
「ひょひひふよ!」
「ゆー!」
「ゆがあああああああ!」
「おがーざんのばがあああああああ!」
「あががばぼごごおご・・・」

またあるれいむは他のくさに飛び乗ろうとして足を滑らし沈み。

「おなかすいたね・・・」
「だいじょうぶだよ!もうすこしでりくにつくよ!」
「そうだね・・・ゆっくりできるといいね・・・」
「れいむしっかりしてね!れいむ!」
「ゆっくりしたけっかがこれだよ・・・」

またまたあるれいむは別れた浮島の上で飢餓で苦しみながら死にました。


そんななか、一部のれいむ達は島の中心に向かって逃げていました。
れいむ達は群れのボスや作戦を発案したれいむ達でした。

「ゆゆっ!まんなかはまだくずれてないよ!」
「あそこにはきがはえてたよ!」
「あそこまでいけばゆっくりできるね!」

そう言いながられいむ達は中心に向かって必死に跳ねて行きました。
亀裂はれいむ達に容赦なく襲い掛かります。

「ゆぐゅ!」
「ゆっくりしないでね!はやくこっちにきてね!」
「ゆううううう!だずげでえ゙えええええええええ!」
「・・・ゆっくりしんでね!」
「ぞん゙な゙あ゙あああああああああ!」
「のろまなれいむはおいてのこったみんなでゆっくりするよ!」

そうやって仲間を見捨てながられいむたちはりんごの木に辿り着きました。
結局りんごの木まで辿り着けたのは10匹も満たしませんでした。



浮島の崩壊が終わると、りんごの木のれいむ達は辺りを見回します。
ばらばらになった浮島の残骸の上には何匹かれいむの姿が見えます。
しかし、食べ物が無いれいむたちは運よく湖畔に辿り着くでもしない限り餓死してしまうでしょう。

「ゆっ、ゆっ、ゆっくりたすけてね!」
「ゆぅ・・・」

何とかりんごの浮島に辿り着いたれいむが引き上げてもらおうと声を上げます。
しかし、そのれいむには下半分の体がありません。
これでは引き上げても助からないでしょう。
たとえ助かったとしても限りあるりんごです。
れいむは少ないことに越したことはありません。
浮島のれいむがしがみ付いてるれいむに向かいます。

「ゆっ、はやくたすけてね!」

助けてくれると思ったれいむははやく、はやくと浮島のれいむを急かします。
浮島のれいむはれいむがしがみついてる浮島の齧り、分離させました。

「どおじでえええええええ!」
「うるさいよ!そのからだじゃもうゆっくりできないんだよ!ゆっくりしね!」

しがみついていたれいむは浮力の減った浮島の残骸とともに湖に沈んでいきます。
その顔は驚きと憎しみでいっぱいでした。


浮島の崩壊からしばらくして、あたりは静けさを取り戻しました。
浮島の残骸は風によって様々な方向に流されて、りんごの木の周りには残っていませんでした。
りんごの木がある浮島では残った霊夢がりんごの木を巡って対立しています。

「れいむたちはおなかがすいたんだよ!そのきをたべさせてね!」
「いまたべたらりんごがならないよ!ゆっくりりかいしてね!」

空腹が限界を超えたれいむ達はりんごの木を食べようとじりじりと木に向かって進んでいきます。
それを、ある程度余裕があるれいむ達が押さえつけていました。
日が経つにつれて、空腹で我を忘れるれいむが増え始めたころ、とうとう共食いが始まりました。

「なにこれえええ!れいむってちょううめぇ!」
「ほんとだ~!」
「ムーしゃむーしゃしあわせええええええ!」
「あああああ、れいむのあがぢゃあああああん!」
「おねーさんたちゆっくちちてね!れいみゅおいしくないよ!」

最初は空腹で動けなくなっていた子ゆっくりを。
その後は、木を食べることに反対したれいむ達を。
そして誰が木を食べるか。

そんな争いを続けていくうち、

「これできまりだよ!」
「ゆっくりじだげっががごれだよ!」

最後まで残っていた二匹のうち、一匹がもう一匹を湖に突き落としました。
とうとうれいむは一匹になってしまいました。

「これでれいむをじゃまするものはいないね!」

れいむは安心してその場でゆっくりしだします。
それまでの戦いから疲れが溜まっていたれいむはぐっすりと眠ってしまいました。
れいむが寝ている間に浮島に強風が吹き荒れました。
その風はれいむのいる場所にも訪れ、戦いで取れやすくなっていたリボンを取っていきました。

「ゆっ・・・れいむのりぼおおおおおおん!」

れいむは風に流されるリボンに無我夢中で飛びつきました。
下は湖だと言うことも忘れて。

「あがががぼぼぼお・・・」

こうして、まりさの築いたゆっくりプレイスはゆっくり達のなかから消えていて行ったのでした・・・





大きな湖に浮かぶ小さな小島。
ここにはりんごの木がありました。
りんごの木の下には花束が二つ置いてありました。










花を操る能力だけど植物もなんとか操れるんじゃないかと思って無茶させてみた。
旧作の方は知らなくて花のだけじゃよくわかんね。
性格が丸すぎる気もするな・・・うーん。
れいむの所が少ないと言われたので加筆してみた。
これでいいのだろうか。
とりあえずスレの664などを参考にしました。
意見くれた方ありがとう。

今まで書いた作品
ゆっくり水攻め
ゆっくりの川流れ
天井のゆっくり
ゆっくりまりさの水上生活
ゆっくり訓練
ぶるぶる
とりもち
子ゆっくり
きめぇまる





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最終更新:2022年05月03日 15:23