「ゆっくりしね。」
「ゆっ?」
お母さん霊夢は憎しみの言葉を投げかけながらお姉さん魔理沙に体当たりをした。
体格差もあってか、お姉さん魔理沙は壁まで吹き飛ばされた。
持っていたナイフはお母さん霊夢の近くに落ちた。
ナイフを拾い、お母さん霊夢がお姉さん魔理沙にゆっくりと迫っていく。
お姉さん魔理沙は、今度は豚役になるのかと思っているのか、その迫力に怯えもせずに無邪気に笑っている。
「ゆっくりしていてね……。」
そう言うと、お母さん霊夢はナイフを突き立て始めた。
何度も、何度も繰り返しお姉さん魔理沙を突き刺した。
壁際で、退路をお母さん霊夢の巨体にふさがれたお姉さん魔理沙は逃げられなかった。
もちろん、お姉さん魔理沙は痛みや静止、父母を呼ぶ叫びもあげていたが、どれも母には届かなかった。
しばらくたって、お母さん霊夢は刺すのをやめた。
健康な皮と餡子のせいで、中身がほとんど漏れ出さず、お姉さん魔理沙をいつまでたっても殺せないからだ。
「ごめんね、もうしないからゆるして……ぶえっ。」
お母さん霊夢は泣いて許しを請うお姉さん魔理沙の上半分を噛み千切っていた。
残った下半分は、まだ恐怖してるかのごとくピクピクと痙攣を始めていた。
住処には、母が我が子を咀嚼する音だけが、響いていた。
そこで、お母さん霊夢は我に返った。
何をしていたかわからない。
口中に感じる甘味の元だけがわかる。
目の前の震える何かだ。
初めての甘美な味をさらに求めて、それが何であるかも忘れて喰らい始めた。
「うんめぇー、このあんこうんめぇぇぇーーー。」
そう言いながら、あっという間にお姉さん魔理沙を食べ終わると、食欲の対象は他のゆっくり達の残骸にも向けられる。
もちろん、それが何であったかわかるはずもない。
住処のそこら中に飛び散った我が子を、噛み付き、舐め取り貪った。
「うまい、うまいよこのあんこぉぉぉーーーー。」
半分くらいのゆっくりが、お母さんに食べられたところで
「ゆっくりしてごめんねー。今帰ったよ。」
お父さん魔理沙が帰ってきた。
いつもの、『ゆっくりしていってね!!!』が無い事を変に思いながら奥へと進むお父さん魔理沙。
「れいむ、ひとりであんこたべてずるいぜ。」
体中に餡子をつけている伴侶に、声をかけるものの、お母さん霊夢は黙々と餡子を食べ続けている。
そこに、消え入りそうな声で誰かが割り込んだ。
「おとー、さん……。」
お姉さん魔理沙にストンピングをされていたゆっくりがかろうじて生きていたのだ。
「だいじょうぶか、ゆっくりわけをはなしてね。」
餡子が大量に漏れ出し、今にも死にそうなゆっくりに、お父さん魔理沙が問う。
「おかーさんが、おねえちゃんをあれでなんどもさしてたべちゃった。ほかのゆっくりもおかーさんが……。」
そこで、お父さん魔理沙は住処の異変に気が付いた。
そこに幸せだった頃の面影は無く、代わりに広がる光景はまさに悪夢そのものだった。
我が子の返り餡子を受け、その残骸の中で凶器を持ちながら食べ続けるお母さん霊夢。
それが近づき語り掛ける。
「おかえりまりさ、あなたもゆっくりたべていってね!!!」
愕然として動かないお父さん魔理沙を尻目に、満面の笑みのお母さん霊夢は生きていたゆっくりを口に入れた。
「ゆっぐり、ゆッぐりざぜでぇぇぇーーーー、ぽぺっ……。」
ゆっくりと味わうかのように体全体を動かして、我が子を咀嚼した。
「れいむぅぅぅーーー!!!」
まるで、魔力を迸らせているかのような迫力の形相でお母さん霊夢をにらみつけるお父さん魔理沙。
そのまま全速力でお母さん霊夢に体当たりした。
体重差があるためそんなには吹き飛ばなかったが、ダメージは十分だ。
「どうじで、どうじでごんなごどになっただぁぁぁーーーー。」
誰にともなく叫びながら、何度も何度も体当たりを繰り返すお父さん魔理沙。
「どうして、どうしてわたしたちがこんなめにあうの?」
お母さん霊夢もそんなことをつぶやいていた。
どれくらいたっただろう、男がまたゆっくりたちの住処だった場所にやってきた。
男が、中に入ると、全身を上下させ呼吸を繰り返す大きめのゆっくり魔理沙と、餡子まみれで動かない大きめのゆっくり霊夢をみつけた。
男が問いかけた。
「やあ、ゆっくりさせてもらっていいかな。」
「……。」
答えないお父さん魔理沙に、男は何かを確信したようにうなずくと、何かを取り出した。
それは、シューという音をたてて、お父さん魔理沙に向けて白い霧状のものを吹き出した。
「ゆっ!!?」
振り向こうとするお父さん魔理沙だったが、動きが鈍くなっていき、何が起きたのか確認する前に動きを止めた。
男は、冷却スプレーでお父さん魔理沙を仮死状態にして生け捕ったのだ。
男はさらに、一部始終を録画した黒い箱、ビデオカメラを確認する。
ビデオで状況を確認すると、お母さん霊夢にも冷却スプレーをかける。
男は黙々と作業していた、全ての道具を回収し、二体のゆっくりを一体づつ家に運ぶのにそう時間はかからなかった。
いま男は加工場にいる。
家に二体のゆっくりを運んだあと、すぐにやってきたのだ。
もちろん、二体のゆっくりとともに。
「いやー、いつもありがとうございますー。」
工場にゆっくりを引き渡すと、工場長に話しかけられた。
「今回も天然物で、滑らかでこしのある皮を持ち、なお且つ大きさも申し分なし、餡子も最高級の大納言小豆と非の打ち所がありませんなー、それも二体も。」
そんな一方的な話しが続き交渉が終わると、男は多額の報酬を受け取っていた。
最後に、工場長が問いかける。
「どうやってあんなもの定期的に捕まえられるのですかな?天然物ではあの大きさにはなかなかなれないでしょうに。」
「まあ、企業秘密ですよ。しかし、霊夢種の方はまったくの偶然でしたが。」
「なるほど。」
「これからしばらくは、小型のゆっくりがメインになりますが、よろしくお願いします。」
「いえいえ、こちらこそ。できればアリス種がいいですな、不足しておりまして。」
「わかりました、それではまた。」
男は、加工場から出ると足早に帰路へとついた。
ここは、ゆっくりアリスとゆっくり魔理沙の一家がひっそりと暮らす森。
餌は豊富にあり、害獣もいない、おかしな程に平和な場所。
そこに、また男が1人やってきた。
「やあ、ゆっくりさせてもらっていいかな。」
「ゆっくりちていってね!!!」
ちびゆっくりアリスとちびゆっくり魔理沙の姉妹たちが元気にこたえた。
終わり。
作:怪僧トンポ
ゆっくりの大きさは、お母さんが全高1メートルで、お父さんはすこし小さいですが、帽子を含めるとお母さんよりでかいです。
お姉ちゃんは普通のゆっくりよりやや小さく、ほかの子供はちびからおねえちゃんとほぼ同じのまで様々です。
最後になりましたが、お読みいただきありがとうございました。
最終更新:2019年12月16日 16:54