~ゆっくり達の生涯『加工場の日常編 プロローグ(A)』~


 前書き(と言う名の注意書き)

 初期2作のリメイクも兼ねています。
 加工場の職員として人間が登場します。
 ぺに、まむ、うん、しー設定は使用しておりません。


 プロローグ

「ゆっくりちていっちぇね! 」
 とある施設の一室でそのプチゆっくりは産声を上げた。
 黒い髪に赤いリボンをつけたかわいらしいプチれいむである。
「ゆ~? おか~しゃんはどこにゃの? 」
 プチれいむは目をきょろきょろさせ辺りを見回す。
 自分と同じ赤いリボンをしたプチゆっくりや、金髪に黒いとんがり帽子をかぶったプチゆっくりが皆同じよう
 に目をきょろきょろさせていた。
「おか~しゃん、おか~しゃんどぉこ~? 」
「まりしゃおにゃかしゅいちゃよぉ。」
「ぴぎゃあぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ! おか~しゃあぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ん! 」
 親を探すゆっくり、ご飯をねだるゆっくり、泣き叫ぶゆっくり、皆共通して親であるゆっくりを探していた。
 そのプチれいむも同じように親ゆっくりを探したが周囲には自分と同じサイズのプチゆっくりしか居らず、あ
 とは近くに黒ずんで朽ちた物体があるだけであった。
「ゆぅ・・・・・、ゆっくりしちゃいよぉ。」
 親がいない不安に駆られ、溜め息交じりの声を発した時だった。

 ガチャ!

「ゆっくりしていってね! 」
「「「「「「「「「「ゆっくりちていっちぇね! 」」」」」」」」」」
 部屋にある唯一の扉が開き一人の男がプチ達のいる部屋の中へ入ってきた。
 プチ達は目の前に現れた者が“人間さん”ではないかと親から受け継いだ餡子の記憶から感じていた。
「・・・・・にんげんしゃん? 」
 1匹のプチれいむが恐る恐る口を開いた。
「やぁこんにちは、私は君達のお母さんからご飯をあげるよう頼まれた人間さんだよ。」
 男の口から発せられた“お母さん・ご飯”この二つの単語を聞いたプチ達は疑うことなく目の前の人間さんは
 ゆっくりできると信じ込んでしまった。
「れいみゅおか~しゃんにあいちゃいよぉ。」
「おにゃかしゅいちゃよぉ、まりしゃはごはんがほしいよぉ。」
 プチ達は各々自分の欲求を目の前の人間さんにぶつけていた。
「はいはい、静かにしてね今ご飯を上げるから。」
 男は手に持っていた袋の中から色とりどりなお菓子をプチ達の前に広げていった。
 プチ達は目の前のお菓子に目を輝かせ、皆一斉にお菓子に飛びつく。

「「「「「「「「「「む~ちゃ♪ む~ちゃ♪ ちあわちぇ~♪ 」」」」」」」」」」

 プチ達は満面の笑みでお菓子を頬張っていく。
 ものの10分程でプチ達はお菓子を平らげ満足そうにしている。
 男はお菓子が無くなったのを確認するとかがんで口を開く。
「おいしかったかい? 私はもうこの部屋から出て行くけど君達はこの部屋から出てはいけないよ。お外は君達に
 とってとっても危険なんだよ。いい子にしていれば近いうちにお母さんに合わせてあげるからね。」

「「「「「「「「「「ゆっくりりかいちたよ! 」」」」」」」」」」

(れいみゅはいいこにしてるよ! はやくおか~しゃんにあいちゃいな~♪ )
(まりしゃはとってもいいこだよ! すぐにおか~しゃんにあえるね! ゆゆ~ん♪ )
 目の前の人間さんを信用しきっているプチ達は素直に言う事を聞き返事をした。 
「それじゃバイバイ、またご飯を持ってくるからね。」
 男は入ってきた扉から部屋の外に出て行った。

 ガチャ! ・・・・・カチ!

 プチ達はしばらく人間さんを見送った方を見つめていたが、すぐに近くの仲間達とじゃれ始める。
「ゆゆ♪ れいみゅはれいみゅだよ! 」
「ゆゆ♪ まりしゃはまりしゃだよ! 」

「「ゆっくりちていっちぇね! 」」

 部屋の隅でプチれいむとプチまりさがお決まりの挨拶を交わしていた。
 2匹は気が合ったのかすぐに頬ずりをし合い、そして仲良く追いかけっこをして遊んでいる。
 あまり大きな部屋ではなかったが、それでも2匹はそんな事など気にも留めずに楽しんでいた。
「れいみゅ~こっちだよ~♪ 」
「まりしゃ、まりしゃまっちぇ~。」
 しばらく跳ね回っていた2匹であったが、遊び疲れたのかいつの間にか互いに寄り添う様にして休憩していた。
「ねぇまりしゃ、おか~しゃんってどんなゆっくりなのかにゃ?」
「きっととっちぇもゆっくりちてるおか~しゃんだよ♪ 」

「「はやくおか~しゃんにあいちゃいにゃぁ・・・・・z z z z z 。」」

 遊び疲れた2匹はそのままの姿勢で夢の中へゆっくりと旅立っていった。
 周囲のプチ達も1匹、また1匹と眠りにつき、こうしてプチ達の誕生1日目が終わったのであった。


 ~翌日~

「ゆっくりしていっちぇね! 」 
 元気のいい朝の挨拶と共に1匹のプチゆっくりが目を覚ます。
 その声につられて他のプチゆっくり達も続々と目を覚ます。

 ガチャ!

 プチ達が目を覚まして間も無くして昨日の人間さんが部屋の中へ入ってくる。
「さぁご飯だよたっぷり食べてゆっくりしていってね! 」
「「「「「「「「「「ゆっくりちていっちぇね! いっちゃじゃきま~しゅ♪ 」」」」」」」」」」
 昨日と同様にプチ達はこぞってご飯に飛びつき、頬張っていった。

「はい! ちゅうも~く! 今からこの部屋にいる半分の子は違う部屋にお引越ししてもらいます。
 そうすれば部屋が広くなってもっとゆっくりできるようになるよ。仲の良いお友達とは一緒にしてあげるから
 安心してね。」

 男の突然の発言にプチ達口をポカンと開け呆然としている。
 しかし、1匹のプチまりさが・・・・・・。

「ゆっくりりかいしちゃよ! 」

 プチまりさの発言に触発されてか続々と他のプチゆっくり達も返事をしてゆき、最終的には皆が納得した。
“部屋が広くなる・もっとゆっくりできる・お友達とは一緒にしてあげる”この3つの条件を掲示した人間さん
 に文句を言うプチゆっくりは1匹もいなかった。

「ねぇれいみゅはどうしゅるの?」
「ゆぅれいみゅは・・・・・。」

 ※物語の分岐です

 A:油っこい物が大好きな人はココ!

 B:時間がかかってもおいしい物が食べたい人はココ!

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 A:油っこい物が大好きな人はココ!
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「れいみゅはまりしゃといっちょにおひっこししちゃいな! 」
「ゆゆ! わかっちゃよれいみゅ、まりしゃもいっしょにおひっこししゅるよ! 」

「「しゅ~り♪ しゅ~り♪ 」」

 お友達としての絆を確かめ合った2匹は人間さんの前に進み出ていった。
 最終的には人間さんが言ったように部屋にいたほぼ半数のプチ達がお引越しをする事を選択した。
「それじゃこの箱の中に入ってね。暴れたりしたら危ないから静かにしているんだよ。」
「「「「「「「「「「ゆっくりりかいしちゃよ! 」」」」」」」」」」
 男はプチゆっくりを優しく掴むと次々に箱の中へ入れていった。

「おしょらをとんじぇるみちゃ~い♪ 」

 プチ達は初めて見る自分の身長よりも高い視線に興奮し、無邪気に楽しんでいた。

「ねぇまりしゃ、れいみゅたちはどこにおひっこしするのかにゃ?」
「ゆゆ~♪ きっととっちぇもゆっくりしたところにおひっこししゅるんだよ♪ 」
 揺れる箱の中、2匹はまだ見ぬお引越し先についてあれこれ思い浮かべながらはしゃいでいた。

「ゆゆ?」
 箱に伝わる揺れが治まるとプチ達は一斉に上を見上げた。
「ちょっといいかい?お引越し先の準備に時間がかかっていてね、良かったら違う場所で遊んでいかないかい?」
 好奇心旺盛なプチ達は人間さんの発言に目をキラキラと輝かせる。
「ゆゆ~♪ あしょびちゃい! あしょびちゃい! 」
「にんげんしゃん! まりしゃも! まりしゃもあしょぶよ! 」
 プチ達は少しでも人間さんの近くで自分の主張を伝えようと懸命に飛び跳ねていた。
「わかったわかった、暴れないで。それじゃ遊びに行こうね。」
 目的の場所に着くまでの間プチ達は何をして遊ぼうかと頭の中を巡らせ、その瞬間を今か今かとまちわびていた。
 程なくして再び箱の揺れが治まると、人間さんの声が聞こえてくる。
「今から外に出してあげるけど、皆が外に出るまで動いちゃダメだからね。」
「「「「「「「「「「ゆっくりりかいしちゃよ! 」」」」」」」」」」
 男は次々とプチ達を取り出し、近くの台の上に置いていく。
 プチ達は初めて見る外の世界に興味心身で辺りをキョロキョロと見回している。
 全てのプチゆっくりを箱から取り出すと、男は台と同じ高さにある小さな扉を開ける。
「さぁこの先が遊び場だよ。初めは滑り台、転がっていくと楽しいよ。」
 プチ達はポッカリと口をあけた薄暗い入り口に何の躊躇いも無く入ってく。
「れいみゅ、まりしゃがさきにいくよ! 」
「まっちぇまりしゃ! 」 
 あの仲良し2匹も含め全てのプチ達は入り口の中へ消えていった。

「・・・・・これでよしっと。」
 ガチャ!


「ゆゆ~♪ 」
「ゆゆ~ん♪ 」
 滑り台は程よい傾斜であったため、プチ達を丁度良い速度で回転しながら転がっていく。
 程なくして転がるプチ達の前方から光が差し込んでくる。
「ゆゆ~♪ ゆ~ん♪ あかりゅくなっちぇきちゃよ~♪ 」
 プチ達は光の差し込む滑り台の出口目掛けて転がりながら飛び込んでいく。
「ゆっくりちょまりゅよ~♪ 」

 コロコロコロコロコロリン♪

 滑り台を滑り終え、少しずつ回転を緩めながら平らな床に静止する。
 静止したプチ達は好奇心一杯の眼差しで部屋の中を見回していた。

 ガチャ!

「ゆ~?」
 プチ達が全員遊び場に入ると滑り台の出口の扉が閉まった。
 入ってきた扉がいきなり閉まったりすれば普通は不安なり警戒したりするものだが、警戒心ゼロにプチゆっく
 りの反応はと言うと・・・・・。
「まりしゃ~なにちてあしょぶ?」
 扉が閉まった事などほとんど気にする事無くプチ達は皆思い思いにじゃれあい始める。・・・・・その時。

 カチッ! ・・・・・・・・・・シャァァァァァァ

「ゆ! ちゅめたいよ! 」
 突如頭上に冷たいものが当たり、皆が一斉に上を見上げる。
「ゆゆゆ! にゃんなの!? にゃんなの!? 」
 何が起こったのかわからずプチ達が騒ぎ始めてしまった。・・・・・しかし。

「ゆっくりしていってね! 」

「「「「「「「「「「ゆっくりちていっちぇね! 」」」」」」」」」」
 どこからともなく聞こえたお決まりのセリフにプチ達は種の本能から元気よく返事をした。
「おちびちゃんたちよくきいてね! おかあさんだよ! 」
「ゆゆ?・・・・・おか~しゃん!?」
“おかあさん”この単語を聞いたプチ達は急に騒ぐのを止め落ち着きを取り戻す。
「おちびちゃん、こわがらなくてもいいんだよ。うえからふってくるものはとってもゆっくりできるおみずさんだよ!
 みんなでおみずさんのなかであそぶととってもたのしいよ! 」
 姿がまったく見えず自分が母親だと名乗る声を聞いたプチ達は・・・・・。
「「「「「「「「「「ゆっくりりかいちたよ! 」」」」」」」」」」
 まったく疑う事無くその声を自分達の母親であると信じ込んでしまった。
 程なくしてプチ達は先程の騒ぎが嘘であったかのようにシャワーの中を跳ね回っていた。
「まりしゃ! まりしゃ! おみずさんってとってもゆっくりできるね! 」
「しょうだねれいみゅ! おみずさんってとっちぇもきもちがよくちぇゆっくりできりゅね! 」
 仲良し2匹は初めて体験するシャワーの中、存分にはしゃいで楽しんだ。

 カチッ!

 ゆっくりとシャワーの勢いが弱まっていく。
 プチ達は名残惜しそうに頭上を見上げていると再び部屋に“おかあさん”の声が響き渡る。 
「ゆゆ! みんなよくきいてね! つぎのおへやにすすんでね!
 さいごのおへやでおかあさんはやさしいにんげんさんといっしょにまってるからね! 」

 ガチャ!

 声が止むと入ってきたのとは別の扉が音を立てて開いた。
「まりしゃ! おか~しゃんにあえるよ! 」
「ゆゆ~ん♪ はやくちゅぎのおへやにいこうれいみゅ! 」
 プチ達は満面の笑みで次の部屋へと進んでいった。
“おかあさんにあえる”この気持ちがプチ達を何の躊躇いも無く次の部屋へと誘導していった。
 プチ達の体は入ってきた時よりきれいになっていたが、そのことに気がつくゆっくりは一匹もいなかった。


 プチ達が次の部屋に入ると前の部屋と同じ様に扉が音を立てて閉まる。
「ゆ!? 」

 ビューーーーーン!

 それと同時にプチ達の下から風が吹き込み次々にプチ達は中に浮いていった。
「ゆゆ~♪ おしゃらをとんでりゅよ~♪ 」
 プチ達が何の恐怖も抱くことなく楽しんでいるとまた“おかあさん”の声が響き渡る。
「ゆゆ! おかあさんだよ! そのおへやではおそらをおんであそべるんだよ! ゆっくりしていってね! 」
「「「「「「「「「「ゆっくりちていっちぇね! 」」」」」」」」」」
 元気よく返事をしたプチ達は気持ち良さそうにお宙に浮かんで楽しんでいる。
「とっちぇもゆっくりできりゅねまりしゃ! 」
「みてみてれいみゅ! まりしゃおそらでくりゅくりゅまわっちぇるよ~♪ 」
 プチまりさは得意げになって空中で回転していた。
 プチれいむもプチまりさを真似てくるくると体を回転させて楽しんだ。

 ヒューーーーーン・・・・・。

 しばらくすると風は止み、プチ達はゆっくりと床に着地する。
「ゆぅ・・・・・まりしゃもっちょおそらをとびたいよ! 」
 何匹かのプチゆっくりがもっと遊びたいと駄々をこねていた。
「ゆゆ! おちびちゃん! つぎのおへやにすすんでね! はやくおちびちゃんたちにあいたいよ! 」
 駄々をこねていたプチ達も“おかあさん”の声を聞くと素直に次の部屋へと進んでいった。
 次の部屋へと進むプチ達の体はすっかりと乾いていた。


「おちびちゃん! このおへやはどろんこあそびでゆっくりしてね! きいろいべたべたさんにはいってあそぶと
 とってもたのしいよ! 」
 プチ達が次の部屋に入っての第一声は“おかあさん”の声であった。
 部屋の中央には緩やかな傾斜の大きな凹みがあり、その中には黄色い半液体状のものが入っていた。
「まりしゃがいっちば~ん♪ 」
「ゆゆ! じゅるいよ! れいみゅもれいみゅも! 」

 ベチャッ! ベチャベチャベチャ!

 プチ達は何の躊躇いも無く黄色い半液状の物体の中へ飛び込んでいく。
 少し粘り気のあるその物体の中を転がり、跳ねて飛ばしたりして遊んでいる。しかし・・・・・。
「ゆぅ、ゆぅ、うごきにきゅいよぉ。」 
「ゆぅぅぅぅぅ、かりゃだがおもいよぉ。」
 黄色い物体はプチ達の体にまとわりつき、重くなった体に四苦八苦していた。
「おちびちゃん! つぎのおへやでおかあさんがまってるよ! ぺーろぺーろしてそのきいろいべたべたさんをと
 ってあげるよ! 」

 ガチャ!

“おかあさん”の声が止むと最後の扉が音を立てて開いた。
「れいみゅがさいしょにぺーろぺーろしてもりゃうよ! 」
「じゅるいよ! まりしゃがさきだよ! まりしゃがさきにおか~しゃんにあうんだよ! 」
“おかあさんがぺーろぺーろしてくれる”それを聞いたプチ達はこぞって最後の部屋へと続く扉へ入っていった。


「ゆんしょ! ゆんしょ! おか~しゃんいまいくからね! 」
 プチ達は重い体に鞭打って一生懸命に前へ進んでいた。
 プチ達の頭の中は母親に会ったら何をしようかという考えで埋め尽くされていた。・・・・・その時

 カチッ!

「ゆ! くりゃいよ! 」
 突然通路の明かりが消え、プチ達その場で立ち尽くしてしまう。そして・・・・・。

 ガチャン!

「「「「「「「「「「ぴぎゃあぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ! ! ! 」」」」」」」」」」
 暗闇の中プチ達の悲鳴が木霊した。
 プチ達の体は坂道を転がっていた。
 ただ、滑り台の時とは違い傾斜が急で回転速度が増し、暗闇の中と言うこともありプチ達は自身に何が起こっ
 ているのか理解できていなかった。
 できることと言えばただ悲鳴を上げる事、それだけである。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ゆぅ?」
 暗い部屋の中、余りの回転に目を回して気絶してしまっていたプチ達がようやく意識を取り戻した。
「くりゃくてなんにもみえにゃいよ。」
「おか~しゃ~ん、どこにりゅの~?」
 プチ達は“おか~さん”を探して周囲をキョロキョロ見回していた。・・・・・その時!
「おちびちゃん、さいごのしあげだよ! ゆっくりしていってね! 」

「「「「「「「「「「ゆっくりちていっちぇね! 」」」」」」」」」」

 急に部屋が明るくなりプチ達は目をつぶった。
 そしてその目をゆっくりと開き見たものとは・・・・・。

「ぴぎゃあぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ! ! ! 」
「にゃにこりぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ! ! ! 」
「おか~しゃんたしゅけちぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ! ! ! 」

 プチ達は吊るされた金属の檻に入れられており、下には熱気を発する薄茶色の液で満たされた大きな鍋が設置
 されていた。
 その熱気は湯気となって立ち上り、プチ達を包み込んでいた。
「ぴぎゃあぁぁぁぁぁ! あちゅ!?・・・・・ゆ?」

 ガチャ!

 檻の隅で悲鳴を上げる1匹のプチれいむの足場が急に外れた。
 当然プチれいむはというと・・・・・。
「ぴぎゃあ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ! おちりゅよおぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ! 」
 プチれいむは鍋の中に向かって真っ逆さまになり落ちていく。そして・・・・・。

 ジュッ!

「! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! 」
 今までに感じた事のない暑さ、激痛がプチれいむを一気に包み込み声にはならない声を上げる。
 高温の液体の中、プチれいむはこの世の終わりが来たかのような苦痛の表情を浮かべ苦しんでいる。
「ゆぎゃあああああぁ ぁ ぁ ぁ あああぁ ぁ あああああぁ ぁ ぁ ! ! !
 だじゅげで! だじゅげでえぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ! おがあじゃあぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ん! 」
 最後の力を振り絞って出した悲鳴を最後にプチれいむは物言わぬ饅頭となりプカプカと浮いていた。
 上からその光景を見ていたプチ達はと言うと当然・・・・・。

「れいみゅまだじにだぐないよおぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ! ! ! 」
「まりじゃはもっどゆっぐりじだいよおぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ! ! ! 」

 檻の中はまさに阿鼻叫喚、正気を失ったプチ達は皆泣き、叫び、暴れまわっている。
「おちびちゃんよーくきいてね! さいごにのこったひとりだけおかーさんとゆっくりできるよ! 」
 突如流れた“おかーさん”の声を聞いたプチ達は・・・・・。

「ゆっくりちね! 」 
 ドスン! 
「ぴぎゃあぁ ぁ ぁ ぁ ぁ! 」

 1匹のプチれいむが悲鳴を上げながら下に落ちていった。
 プチれいむに体当たりをしたのはプチまりさであった。
「れいみゅはゆっくりちんでね! まりしゃがおか~しゃんとゆっくりしゅるよ! 」
 その光景を見ていた他のプチ達は自分が生き残ろうと周囲の姉妹達を次々下に落としていった。

 あの仲良し2匹はと言うと・・・・・。
「れいみゅうぅ ぅ ぅ ぅ ぅ ! まりしゃはれいみゅといっしょにゆっくりしちゃいよおぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ! 」
 プチまりさは目に涙を浮かべ仲良しのプチれいむに訴えかけていた。
「まりしゃ・・・・・れいみゅも、れいみゅもまりしゃといっしょにゆっくしちゃいよおぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ! 」

「ゆっくりしんでにぇ! 」
 ドスン!

 プチれいむの顔は信じられないものを見たかのような顔でプチまりさを見詰めながら下に落ちていく。
 そして・・・・・。

「どおじで! どおじで! まりじゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛! ! !
 うりゃぎりもにょおおぉ おぉ ぉ ぉ ぉ おおおおおぉ ぉ おおおおぉ おおお! ! !
 ゆぎゃあ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛! ! ! 」

 高温の液体の中、プチれいむは仲良しだったプチまりさに罵声を浴びせ、そして悲鳴を上げながらもがき苦し
 んでいる。
「おか~しゃんはまりしゃのものだよ! れいみゅはしょこでゆっくりしんでにぇ! ぴゃははははは♪ 」
 プチまりさは自分がゆっくりするために1番仲の良かったプチれいむを容赦なく裏切った。
 そしてプチれいむはプチまりさの笑い声を聞きながら涙を流し物言わぬ饅頭となっていった。

 しばらく経つと、檻の中はプチまりさ達だけになっていた。
 何匹かのプチまりさは下に落とされたが、この個体は優しく素直な性格のプチまりさであった。
 檻の中に残ったのは、まりさ種に多く見られるズル賢い性格、いわゆるゲスの素質を持つ個体であった。

 プチまりさ達はお互いに牽制し合い、なかなか動こうとはしなかった。・・・・・その時!

 ガチャ!
「どおぢでえぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ! 」

 突然足場が外れ1匹のプチまりさが目に涙を浮かべながら落ちていった。

 ガチャ!
「にゃんでえぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ! 」

 ガチャ!
「ちにたくにゃいよおぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ! 」

 次々と足場がはずれプチまりさ達は下に落ちていった。
 そして残ったプチまりさ達はあることに気が付く。それは・・・・・。
「ゆゆ! ここにいればまりしゃはあんじぇんだね! 」
 1匹のプチまりさが檻の中央に陣取った。
 そう、檻の床は端から順番に外れていたのだ。
 プチまりさ達は生き残るため、檻の中央の取り合いになる。

「しゃっしゃとどけ! 」

 ガチャ!

「しょこはまりしゃのゆっくりぷれいしゅだよ! 」

 ガチャ!

「まりしゃはちね! まりしゃがゆっくりしゅるよ! 」

 ガチャ!

 どんどん足場が外れていく中、プチまりさ達はかつて仲の良かった姉妹達に体当たりを仕掛け容赦なくを下に
 落としていく。
 檻から弾き出されたプチまりさ達は絶望の表情に涙を浮かべながら下へ落ちてゆき、そして悲鳴を上げる。

 激しい闘争の末、生き残った最後の1匹はあの仲良し2匹組のプチまりさであった。
「・・・・・ゆぅ・・・・・ゆぅ・・・・・これでおか~しゃんはまりしゃのものだよ。」
 息を荒らげながらプチまりさはようやく安堵する。 

「おちびちゃんゆっくりしていってね! 」
“あぁこれでゆっくりできる”心の底からプチまりさはそう思い“おか~さん”の声に返事をしようと口をゆっ
 くりと開く・・・・・。

「ゆっくり・・・・・。」 
 ガチャン! 

(なんで?)

 プチまりさは何が起きたのか理解できていなかった。

(どうちて?)

 プチまりさの体は鍋に向かって落下していた。

(なんでなんでなんで! ! ! )

 プチまりさにとってこの時間は短いゆん生の中で最も長く感じる時間であった。  

(まりしゃは! まりしゃはおか~しゃんとゆっく・・・・・)

 ジュッ!

「ゆぎゃあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あぁ゛ぁ゛゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛! ! ! 」
 だじゅげで!だじゅげでえ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛! おがーじゃん! でいみゅうぅ ぅ ぅ ぅ ぅ ! 」

 かつての親友に助けを求め高温の液体の中をもがき苦しむが、目に映るのは姉妹達の物言わぬ饅頭になった姿
 だけであった。
 その姿を見たプチまりさを更なる恐怖が包み込む。・・・・・自分ももうすぐこうなるのだと。
「ごべんなざいごべんなざい! ばりざをゆるじでえぇ ぇ ぇ ぇ ぇ !」
 必死に謝り続けるが、助けるものは誰もいない。
 もがき苦しむプチまりさにある一つの饅頭が近づいてくる。 
 そしてプチまりさが身をよじった時、その饅頭と至近距離で目が合う。
「ぴぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ・・・・・。」
 その悲鳴を最後にプチまりさも物言わぬ饅頭となった。
 プチまりさの目に最後に映ったもの、それはかつての仲良しだったプチれいむの苦痛に歪む顔であった。


「ふぅ、やっと揚げ上がったか。隣接の饅頭屋に出来立てがもうすぐいくと伝えてくれ。」
 ゆっくり達に“人間さん”と呼ばれていた男が指示を出すと、若い男が軽く会釈をして部屋から出て行った。
「それにしても、甘さを極限まで高めるために思い切り楽しませて一気にどん底まで叩き落とすとは良く考えた
 ものだな。まぁ多少面倒ではあるがそのおかげで通常の揚げ饅頭より高い値で売れるんだがな。おっと録音テ
 ープを巻き戻しておかないと。」

 ここはゆっくり加工場、ゆっくり達にとってもっともゆっくりできない場所である。
 プチ達のゆん生は加工場で産まれた時点で既に決まっていたのだ。
 こうしてプチ達は揚げ饅頭となり、その短いゆん生に終止符をうったのであった。


 プロローグ(A) END  



 ライン工程へ続く

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最終更新:2022年05月06日 23:27