虐待というより駆除?


「まりさ!ゆっくりがんばってね!!!」
「ゆっ!」
新婚のゆっくりれいむは、頬擦りをして番のゆっくりまりさを巣から送り出す。れいむの頭には蔓が伸びている。そこから5匹の木の実のようなものが伸びている。このまま順調に行けば、明日には出産だ。
妊娠中のれいむのためにも、赤ちゃんのためにも、いつもより多く餌を取らなければならない。まりさは張り切っていた。
虫や比較的美味しい草などを帽子に詰め、まりさは行進する。すると見慣れないものを見かけた。普段のルートから少しはずれた結果、美味しいものにありつけたのだ。
「ゆっ…これはりんごさんのきだよ!りんごさんはゆっくりできるくだものだよ!」
まりさはそういいながら、林檎の木の周りをうろつく。
まりさに違わず、ゆっくりは林檎が大好きな傾向にある。野生の林檎の木は人間からすればかなり不味いが、ゆっくりからすれば貴重な甘味なのだ。
林檎は残念だが2つしか落ちていなかった。しかし木には、いくつかの林檎がなっている。今日の分はこれで確保できそうだ。まりさはひとまず、落ちていた2つの林檎を帽子にいれた。
「れいむはよろこぶよ!…りんごのきさん、りんごをゆっくりおとしてね!」
まりさは跳ねながら頼むが、無論落ちてくるわけがない。無知なゆっくりでもそれくらいは知っている。
「ゆ…そうだ!」
まりさはあることを思いついた。
遠くにいるドスまりさという個体は、木に体当たりをすることでそこから木の実を落としていたというではないか。自分の体は小さいが、何度も繰り返せば落とせるかもしれない。
まりさは名案とばかりに木に体当たりを始めた。しかし饅頭の体では、体当たり一回が体に大きなダメージとしてのしかかる。
「ゆびっ…ゆびゃっ…まりさはがんばるよ…れいむのためだよ…!」
そのまりさのひたむきな思いが通じたのか、ドサッという音を立て、赤くなりかけたりんごが1つ落ちてきた。まりさはすかさずそれを舌で掬い取り、帽子の中に入れる。
「あと2つ…がんばるよ!まっててねれいむ!」
再び体当たりを始めるまりさ。そのひたむきさには、普通の人間ですら心打たれるものがある。このゆっくりは、自分ではなく伴侶のためにがんばっているのだ。
「ゆべっ…ゆべっ…」
虐待お兄さんでもない限り、この姿を見れば感動することだろう。ゆっくりんピースが見れば、これを撮影してドキュメンタリーでも作りそうな勢いである。
「ゆひぃ…!」
餡子を吐きそうになるが、それでも体当たりを続ける。そして、再びまりさの近くで何かが落ちたようなドサッという音が聞こえてきた。
「ゆっ!りんごさん!」
その音が聞こえた方向へぴょんぴょんと跳ねていくまりさ。しかしそこにあったものは、
「ブゥゥゥゥゥゥゥン…!」
「ゆぅ!?」
スズメバチの巣であった。実はこの林檎の木には、スズメバチが巣を作っていたのである。
「は、はちさんだよ!」
スズメバチはまりさを見るなり、猛烈な速度で襲い掛かってきた。巣の中のスズメバチが一斉攻撃する形である。これをされると、人間はもちろん妖怪ですら死にかねないのだ。
「ゆぎゃあああああああああ!!!いだいいいいいいいい!!!ごめんなざいいいいい!!!おぎゃあじゃあああああああんん!!れいぶうううううう!!!」
まりさはいそいで巣に帰る。巣に戻って急いで蓋をすれば、蜂は入ってこない。そう考えた。
痛みにのた打ち回りながらも、まりさは気力を振り絞ってなんとか巣にもどる。
「れいぶううう!!!ゆっぐりどびらをじめでねぇぇぇぇぇ!!!」
「ゆっ?おかえりまりさ!」
まりさは泣き叫びながられいむに懇願するが、ゆっくりの餡子脳の処理速度や、番が妊娠中であることから、その願いは通じることはなかった。
巣の中に、五十匹近くのスズメバチが入り、新たな獲物のれいむと、その頭から伸びたツルの先にいる赤ん坊を指し始める。
「ゆぴっ」
「ゆぴゃ」
赤ゆっくりは刺された瞬間、白目をむいて絶命した。
「れ、れいぶのごおおおおお!!!あがっ!!!じゃんがっ!!!まりざああああなんでごんなのづれでぎだのおおおおお!!!!」
「ごべんなざいいいいい!!!」
れいむとまりさも、蜂の襲撃にのた打ち回る。まりさは善良な個体であったが、れいむは…まぁ下衆の家庭だったのだろう。恨み言を叫んでまりさを罵倒していた。
最初の1個でやめておけば、このひたむきなまりさは蜂に襲われずに済んだのであろうに。
ちなみにその林檎は、蜂の襲撃後、傷だらけになってしまったれいむにすべて食べさせた。
まりさは痛む体を引きずり、なんとか餌も探した。自身も命が危ないほど傷だらけだったにも関わらず、まりさはれいむを看病したのである。ゆっくりんピースが見れば本当にドキュメンタリーを作りかねない。
しかしそんな罪滅ぼしが、自分勝手な下衆れいむに通じるはずもない。完全回復したれいむは、これまでの恨みとばかりに伴侶だったまりさを体当たりでつぶし、新たな伴侶を求めて旅立っていった。
もちろん、蜂のせいで顔がボコボコになったれいむなど、誰も相手にしない。自分を最も愛してくれるゆっくりをその手で殺したれいむは、その落とし前を自分でつける羽目になったのだった。よかったね、れいむ。

おまけ
「ゆっへっへ…このまりささまがりんごをたべてあげるんだぜ!かんしゃするんだぜ!」
1匹の尊大な態度のまりさが、蜂の巣の落ちていた林檎の木に体当たりをする。この手の態度を取るまりさは、100%下衆である。
林檎はあっさりと落ちてきた。下衆まりさの頭上に、ずっしりとした重みを伴って。
「ゆびべっ」
下衆まりさの頭に林檎が直撃する。普通のゆっくりなら即死だったが、まりさ種は帽子のおかげで、頭上からの敵に多少強い。下衆まりさは体当たりによる喧嘩やいじめを繰り返してきていたため、頭の皮が多少固くなっていた。
しかし、当たり所が悪かった。
「…ゆ?…め、めが!!!まりさのぷりちぃなおめめがみえないんだぜぇぇぇぇぇ!!?」
目の真上に落ちてきた林檎は、柔らかい皮を突き破り、まりさの目を器用に抉り出した。まぁようはビーダマンからビー玉が発射されるような感じで、目が発射されたのだ。
そして運の悪いことに、その目の先には、
「ゆぴょ」
ある家族が外に遊びに出していた、不幸な赤ちゃんまりさがいた。凄まじい速度で襲い掛かった謎の外敵になす術もなく、赤まりさは潰れてその命を全うした。
「ゆ?どうしたのあか…れいぶのあがじゃんがああああああ!!!」
「おねえじゃああああああんん!!!」
近くにいた家族が大騒ぎし始める。その赤まりさの母親であったれいむは、すぐに危害を加えた者を発見した。
「…あのまりざだああああ!!!ごのげすまりざめぇぇぇぇぇ!!!」
「おねえじゃんをがえぜぇぇぇぇぇえ!!!」
「ゆっぐりじねぇえぇぇ!!!」
「ゆびっ、ゆびゃっ…ま、まりざがなにをじだっでいうんだぜぇぇぇぇ!?」
「とぼけるなあぁぁぁぁぁ!!!よぐも、よぐもれいぶのあがじゃんをおおおおおお!!」
「ゆびゃあぁ!」
そして、その赤まりさの家族に袋叩きにあって死亡した。
「もっど…ゆっぐりじだがっだよ…」
下衆まりさが死んだことを確認し、母れいむは子供を止めて一息つく。するとれいむの目の前に、ゆっくりできるもの…林檎が落ちているのが目に入った。
「ゆ、りんごさんだ!あかちゃん、これはりんごさんっていってとってもゆっくりできるたべものだよ!おかあさんがたべさせてあげるから、ゆっくりくちをひらいてね!」
先ほど死んだ自分の愛しの我が子と、そして下衆まりさのことなど既に餡子脳の中にはない。この切り替えの早さと異常なまでの繁殖力が、ゆっくりを増やした原因ではないかと言われている。
「ゆーん!かわいいれいむからたべしゃせちぇにぇ!!」
「ゆっ!?ま、まりさのほうがかわいいよ!!」
「よくばるこにはあげないよ!」
「ま、まりさはやっぱりかわいくないよ!!」
そんなやり取りをしながら、母れいむは林檎を噛み砕こうとする。しかし…
「ゆぎぇ!?」
その林檎は予想外に堅かった。奥歯がベキン、という音を立てて折れてしまう。林檎というのは存外堅い。満足に熟していない林檎なら尚更だ。
「れ、れいぶのまいるどなはがあああああ!!!」
マイルドな歯、って何なんだろう。ともあれ母れいむはあまりの堅さに、奥歯を折ってしまった。その堅さを見越して前歯を使わなかったのが不幸中の幸いといったところか。
「お、おかーちゃぁーん!!」
赤れいむたちは、涙を流して痛がる母を心配して跳ね寄る。しかし1匹だけいた赤まりさは違った。
「おかーしゃんがひとりじめしようとしゅりゅかりゃじゃよ!!」
そう言って堅い林檎の方へと駆け寄っていく。さすがまりさ。なんという自分勝手短絡思考。おそらくこいつの片親は下衆まりさに違いない。
「まりしゃがたべりゅよ!」
「だべぇぇぇぇぇ!!!まりざあああああ!!!たべだらゆっぐりでぎなぐなっじゃうよおおおおお!!!」
「ひがんでるんだね!おおぶざまぶざま」
赤まりさはそう言いながら堅い林檎にかぶりつき、そして
「はひはほはははひひはははは!!!(まりざのぢゃあみぃなはがああああ!!!)」
歯をべきべきと折ってしまった。発達した母の歯で折れるのだから、子供の歯では折れて当然だ。
そしてゆっくりは、歯を咀嚼にしか使わない。肉食動物のように何度も生え変わることはないのである。しかも人間とも違い、生えた歯は既に永久歯なのである。その歯は飴細工のようなもので出来ており、お世辞にも堅いとはいえない。
「だがらいっだでじょおおおおお!!!」
「ほへははっはほはははふはひゅっひゅひひへへへ!!!(どめながっだおがあざんはゆっぐりじねえええ!!!)」
止めたにも関わらず、母に責任転嫁をして体当たりを始める下衆赤まりさ。…こりゃまともな親になれないな。
残された赤れいむたちはその様子を、震えながら見守ることしかできなかった。
ちなみにその赤まりさは二度と食べ物を「むーしゃむーしゃ」できないし、そもそも言葉を上手く発音できない。
母れいむが何とか成体になるまで育てたものの、自分で狩りすら出来ない成体と番になろうとするゆっくりなど誰もいなかった。めでたしめでたし。

おまけ2
数日後。残った1つの林檎の下で遊んでいた子れいむと子まりさがいた。このれいむとまりさは友人同士だった。そのまま成長すればやがて番となり、鬱陶しい子供を大量に増産することだろう。
唯一の利点とすれば、このまりさは育ちがよい、つまり下衆まりさではなかったということだろうが。
「ゆっくりおいかけきてね!」
「まりさ、ゆっくりまってね!」
まりさとれいむはぴょんぴょんと跳ねながら追いかけっこをしている。そのれいむの頭上に、
「まりじゃっ」
林檎が落ちてきた。
「…れいむ?かくれてないででてきてね…ゆっ!?」
林檎の下にあるのは、大好きだったれいむのりぼん。そしてその下に、餡子と皮が広がっている。
「ゆうううううううう!?
「どうぞくごろしだー!!!このまりさはどうぞくごろしだよー!!!」
しかもその様を、別のまりさに見られてしまった。まりさはすぐさま仲間に報告する。仲間は怒り心頭で、罪のないまりさに襲い掛かった。
「どうぞくごろしをするようなやつはゆっくりできないからしね!」
「ゆびっ!?ゆびゃっ…もっど…ゆっぐりじだがっだよぉ…」
「おおぶざまぶざま」
報告したまりさがニヤニヤとほくそえんでいる様を見ながら、まりさは死んでいった。
報告まりさは、善良なまりさが大嫌いだった。優等生面をいつか捻り潰してやりたかった。
報告まりさは「ゆっくりしたけっかがこれだよ!!!」と言って、そのまま巣に戻ろうとしたが…
「ゆっへっへ、あのまりさにてんばつがくぢゃっ」
ちょうど落ちてきた毬栗に当たって、その目を潰してしまったとさ。ざまぁ。
「ざまぁじゃないよおおおおおおお!!!」
まぁ目が潰れたゆっくりの末路など、知れたものですがね。

ゆっくりはよく体当たりをしかけるが、人間が痛くも痒くもない体当たりで何をするのだろうか。そう思って考えてみた結果、木の実を落とす際に使うのではないかと思った。そこから構想を練った。構想3分。
…しかし本当にこれ以外に何に使うんだろうね。
あと飴細工の歯(人によっては歯のない設定の人もいる)で木の実って…ホント贅沢だよな。死ねばいいのに。

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最終更新:2022年05月03日 15:30