おまけ
「ゆっへっへ…このまりささまがりんごをたべてあげるんだぜ!かんしゃするんだぜ!」
1匹の尊大な態度のまりさが、蜂の巣の落ちていた林檎の木に体当たりをする。この手の態度を取るまりさは、100%下衆である。
林檎はあっさりと落ちてきた。下衆まりさの頭上に、ずっしりとした重みを伴って。
「ゆびべっ」
下衆まりさの頭に林檎が直撃する。普通のゆっくりなら即死だったが、まりさ種は帽子のおかげで、頭上からの敵に多少強い。下衆まりさは体当たりによる喧嘩やいじめを繰り返してきていたため、頭の皮が多少固くなっていた。
しかし、当たり所が悪かった。
「…ゆ?…め、めが!!!まりさのぷりちぃなおめめがみえないんだぜぇぇぇぇぇ!!?」
目の真上に落ちてきた林檎は、柔らかい皮を突き破り、まりさの目を器用に抉り出した。まぁようはビーダマンからビー玉が発射されるような感じで、目が発射されたのだ。
そして運の悪いことに、その目の先には、
「ゆぴょ」
ある家族が外に遊びに出していた、不幸な赤ちゃんまりさがいた。凄まじい速度で襲い掛かった謎の外敵になす術もなく、赤まりさは潰れてその命を全うした。
「ゆ?どうしたのあか…れいぶのあがじゃんがああああああ!!!」
「おねえじゃああああああんん!!!」
近くにいた家族が大騒ぎし始める。その赤まりさの母親であったれいむは、すぐに危害を加えた者を発見した。
「…あのまりざだああああ!!!ごのげすまりざめぇぇぇぇぇ!!!」
「おねえじゃんをがえぜぇぇぇぇぇえ!!!」
「ゆっぐりじねぇえぇぇ!!!」
「ゆびっ、ゆびゃっ…ま、まりざがなにをじだっでいうんだぜぇぇぇぇ!?」
「とぼけるなあぁぁぁぁぁ!!!よぐも、よぐもれいぶのあがじゃんをおおおおおお!!」
「ゆびゃあぁ!」
そして、その赤まりさの家族に袋叩きにあって死亡した。
「もっど…ゆっぐりじだがっだよ…」
下衆まりさが死んだことを確認し、母れいむは子供を止めて一息つく。するとれいむの目の前に、ゆっくりできるもの…林檎が落ちているのが目に入った。
「ゆ、りんごさんだ!あかちゃん、これはりんごさんっていってとってもゆっくりできるたべものだよ!おかあさんがたべさせてあげるから、ゆっくりくちをひらいてね!」
先ほど死んだ自分の愛しの我が子と、そして下衆まりさのことなど既に餡子脳の中にはない。この切り替えの早さと異常なまでの繁殖力が、ゆっくりを増やした原因ではないかと言われている。
「ゆーん!かわいいれいむからたべしゃせちぇにぇ!!」
「ゆっ!?ま、まりさのほうがかわいいよ!!」
「よくばるこにはあげないよ!」
「ま、まりさはやっぱりかわいくないよ!!」
そんなやり取りをしながら、母れいむは林檎を噛み砕こうとする。しかし…
「ゆぎぇ!?」
その林檎は予想外に堅かった。奥歯がベキン、という音を立てて折れてしまう。林檎というのは存外堅い。満足に熟していない林檎なら尚更だ。
「れ、れいぶのまいるどなはがあああああ!!!」
マイルドな歯、って何なんだろう。ともあれ母れいむはあまりの堅さに、奥歯を折ってしまった。その堅さを見越して前歯を使わなかったのが不幸中の幸いといったところか。
「お、おかーちゃぁーん!!」
赤れいむたちは、涙を流して痛がる母を心配して跳ね寄る。しかし1匹だけいた赤まりさは違った。
「おかーしゃんがひとりじめしようとしゅりゅかりゃじゃよ!!」
そう言って堅い林檎の方へと駆け寄っていく。さすがまりさ。なんという自分勝手短絡思考。おそらくこいつの片親は下衆まりさに違いない。
「まりしゃがたべりゅよ!」
「だべぇぇぇぇぇ!!!まりざあああああ!!!たべだらゆっぐりでぎなぐなっじゃうよおおおおお!!!」
「ひがんでるんだね!おおぶざまぶざま」
赤まりさはそう言いながら堅い林檎にかぶりつき、そして
「はひはほはははひひはははは!!!(まりざのぢゃあみぃなはがああああ!!!)」
歯をべきべきと折ってしまった。発達した母の歯で折れるのだから、子供の歯では折れて当然だ。
そしてゆっくりは、歯を咀嚼にしか使わない。肉食動物のように何度も生え変わることはないのである。しかも人間とも違い、生えた歯は既に永久歯なのである。その歯は飴細工のようなもので出来ており、お世辞にも堅いとはいえない。
「だがらいっだでじょおおおおお!!!」
「ほへははっはほはははふはひゅっひゅひひへへへ!!!(どめながっだおがあざんはゆっぐりじねえええ!!!)」
止めたにも関わらず、母に責任転嫁をして体当たりを始める下衆赤まりさ。…こりゃまともな親になれないな。
残された赤れいむたちはその様子を、震えながら見守ることしかできなかった。
ちなみにその赤まりさは二度と食べ物を「むーしゃむーしゃ」できないし、そもそも言葉を上手く発音できない。
母れいむが何とか成体になるまで育てたものの、自分で狩りすら出来ない成体と番になろうとするゆっくりなど誰もいなかった。めでたしめでたし。
ゆっくりはよく体当たりをしかけるが、人間が痛くも痒くもない体当たりで何をするのだろうか。そう思って考えてみた結果、木の実を落とす際に使うのではないかと思った。そこから構想を練った。構想3分。
…しかし本当にこれ以外に何に使うんだろうね。
あと飴細工の歯(人によっては歯のない設定の人もいる)で木の実って…ホント贅沢だよな。死ねばいいのに。