幻想郷の辺境。様々なゆっくり達が住むそこはゆっくり達の楽園と呼ばれていた。
いくつかの群れが集落を築き、その集落同士が更に合併して、クニとなる。
ドスまりさ率いるゆっくり国最大の国、ドマリカ国は奴隷ゆっくりや一般ゆっくりを貴族ゆっくりなるものが支配するゆっくり王政。
数匹のゆっくりぱちゅりーが指導者となり、ゆっくり皆平等の理念の元、少数精鋭によって確固たる地位を築いている生クリーム共同体。
古来より生クリーム共同体と友好関係にあり、教祖けーねの一族によって治められる神聖けーね教国。
そして、日和見主義のえいえんてぃー国。これら4カ国が現在の有力なクニである。
各々のクニには各々の掟があり、時に友好的に、また、時に緊張感を帯びた関係を構築していたのだ。
しかし近年。ドマリカ国のトップに一匹のドスまりさが君臨した事によってクニの間に衝突が増えてしまう。
――ドマリカのトップに立ったのは、ドスはドスでもドゲスと呼ばれる邪悪な固体だったのだ!
〜〜第六回・よんかこくしゅのうゆっくりかいぎ〜〜
「むきゅー……まりさ。せつめいしてくれる? さいきんあなたのクニのゆっくりたちにごはんをとられるゆっくりがふえているの」
「おいどんのところもそうったい! こどもたちもあんしんしてゆっくりできんけーね!」
ドゲスまりさに詰め寄る二匹のゆっくり。生クリーム共同体のリーダーであるゆぱちゅりーと神聖けーね教国の教祖・けーねである。
二匹は自分のクニのゆっくりが謎のゆっくりによって虐められたり、或いは襲撃されたり、もしくは連れさらわれたりする事に頭を痛めていた。
そして、密偵を放ち賊を探ると、それらはドマリカからやって来ているのを突き止めたのだ。
「ゆっ。そんなことまりさは知らないんだぜ! じぶんのところのゆっくりもかんりできないおまえたちはボスしっかくなんだぜ!!」
にやにやと笑うドゲスに、遂にけーねの怒りが爆発する。
頭から突き出したとんがりホーンをもって、ドゲスへ体当たりを仕掛けた。
けーね種が本気になり、キモけーね種となった時に生えるそれこそ、いかなるゆっくりをも貫いてきた最強の武器、とんがりほーんなのだ。
しかし、それは並のゆっくり相手の話。ドゲスを捉えたはずのとんがりほーんは一撃で砕け散ってしまった。
「お、おいどんのキモくないとんがりほーんがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「キモくないとんがりほーんだってさ」
「おお、きもいきもい」
「むきゅ!? けーね、だいじょうぶ!?」
ショックから白目をむき、泡を噴いているけーねの元に、駆け寄る(ぱちゅりーなので遅いが)と、けーねの顔をぺろぺろと舐める。
とんがりほーんは他のゆっくり種を貫く必殺の武器であり、けーね種のプライドでもあるのだ。
それが粉々に砕けてしまったとなればその精神的なダメージは計り知れない。
「むきゅーっ!?」
そしてぱちゅりーは背後から襲い掛かってきたえいえんてぃのてるよによって弾き飛ばされる。
この会議は、初めから罠だったのだ。
「ゆっふっふ……おまえたちがいなくなれば、おまえたちのクニをうばうことぐらいわけないよ! それにおまえたちはいつもべたべたしてきもちわるいよ!!」
ぱちゅりーとけーねは親友だった。
同じくクニを背負って居たから気が合うとか、そういうのではない。けーねもぱちゅりーも、同じように知性的な相手を慕っていたのだ。
「け、けーね……む、むぎゅうう!?」
そんな友人の前で
「ゆっへっへ! おまえはきょうからまりさのどれいだぜ! まずはまりさをんぎもっぢよぐさぜるんだぜぇぇぇぇ!!」
ぱちゅりーは
「い゛ゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!! ずっぎりじたぐないぃぃぃぃ!! す、すっきりーーーーー!!」
強制的にすっきりさせられる。
悪夢のような時間の果てに――
「ゆっふっふ……すっきりもできたし、ついにらくえんとーいつにむけてうごきだすぜ!!」
「むきゅっ、けーね。けーねのあかちゃん、がんばってそだてるわ」
ぱちゅりーは現実から目を逸らす事を決めた。
〜〜侵攻〜〜
ドマリカによる侵略はゆっくりでは考えられないほどの恐るべき速さで行われた。
まず、手始めにドマリカの誇る奴隷決死隊の襲撃によって生クリーム共同体の集落の一つが侵攻された。
「おかーじゃーーーん!!」
連行されていく赤ゆっくり達は洗脳と言う名の教育を受けさせられて立派な労働力へ。
「むぎゅううううう!! だべだいでぇぇぇぇむぎっ!?」
抵抗したゆっくり達は慰み者兼食料へ――
本来ゆっくりは共食いを禁忌としているはずなのに、何故?
それはこの奴隷ゆっくりたちの生活にある。
ぎりぎりまで食料を与えられず、兵ゆっくりに楯突けば数匹にじわじわと嬲り殺され、その死骸が奴隷ゆっくりに配給される。
ごく稀に配られる仲間の死骸は甘美だった。しかし、共食いをすれば殺される。奴隷達のストレスはいつもギリギリだった。
だからこそ、合法的にゆっくりを食える戦争が奴隷達は大好きなのだ。
「むーしゃ、むーしゃ」
「うっめ! これむっちゃうっめ!!」
こうして、ドマリカは死を恐れない労働力兼兵隊を得る。
その上、働きぶりを認められれば平ゆっくりになれるかもしれない。
そんな期待もあり、奴隷達の士気は圧倒的に高かった。
「……むきゅ……」
集落の長である年老いたぱちゅりーは、集会所の外で起きている惨劇にただクリームを零すだけ。
「ゆっ! こうなったらぎょくさいかくごでたたかうしかないぜ!」
「だめだよ! まだなにかほうほうがあるはずだよ!!」
若いまりさが叫ぶ。侵攻の際に妻と子を失ったまりさは徹底抗戦を主張し、対するれいむは別の手を考えるべきだと主張する。
老ぱちゅりーは悩んでいた。ここで玉砕覚悟で戦い、クニへの侵攻を少しでも遅らせて散るべきか。
それとも、何か他の――起死回生の一手を考えるか。
そんな時、一匹のゆっくりがおもむろに立ち上がる。
「ちぇんがたすけをよびにいくんだねー。わかる、わかるよー」
震えながら立ち上がったちぇんは目から餡子を流し、言う。
自分が助けを呼びに行くと。強いゆっくりに助けを求めに行くと。
老ぱちゅりーはむしろ助けにいくのは死にに行くようなものだと説得をしたが――
「でも、このままだったらみんなゆっくりできないよー。だから、ちぇんはみんながゆっくりできるように、がんばるよー。わかってねー」
真夜中。
表のゆっくり達が静まり返ったのを確認して、集会所の入り口が開かれた。
ちぇんは帽子の中に保存食である干草を詰め、必ず仲間達のもとにもう一度帰ると心に誓い、跳ねる。
ひたすらに助けをもとめて。
「ゆっ!? おいしそうなのがにげたよ!」
「おいかけるんだぜ! あいつをどれーにしてやるんだぜ!!」
追いかけてくる無数の兵ゆっくり。
「つかまるわけにはいかないんだねー! わかるよー!!」
途中、小枝などで体を切りながらも、ちぇんは止まらない。
ひたすらドマリカの兵ゆっくりから逃げる。
水溜りを飛び越え、小山を乗り越え、竹林を踏み越えて。
ひたすらに、追っ手から逃げた。
体から餡子がこぼれ、自慢の尾は千切れかけ、意識も朦朧とした状態のちぇんを巡回中だったみょんが発見したのは不幸中の幸いだった。
「たいちょう! このこはたしかとなりのクニのしゅうらくのこだちーんぽ!」
斥候ゆっくりのみょんがちぇんの尻尾を咥えて前線基地という名の洞穴に戻ってくると、俄かに洞穴の中が騒がしくなる。
隣のクニ。生クリーム共同体のゆっくりが何故これほどボロボロになってここに流れ着いたのか?
疑問はすぐに解決される事になる。
「ゆっ!! たいちょー! ゆっくりできないこたちがうろうろしてたからゆっくりつかまえてきたよ!」
ひょいっと放り込まれる三匹の追っ手。
追っ手はまりさが二匹にれいむが一匹。れいむは餡子脳でありながら危機を察知しているのかガタガタと震え、まりさ達は何の自信かニヤニヤと笑っている。
「はやくまりさたちをかいほうしてね! それとおいしいごはんをよういしてね!!」
ごくごく標準的なゆっくりの反応に、前線基地のゆっくりたちは不快感を露にする。
神聖けーね教国において標準的な、いわゆる本能のままにゆっくりすることは悪徳とされているのだ。
「たいちょー! こいつらわるいゆっくりだちーんぽ! やっつけるぺにす!!」
ぷーっと膨らみ、怒りを露にするのはこの前線基地一番の古株である顎に傷のあるみょんだった。
傷みょんが憤るのも無理は無い。かつて、このみょんの家族は悪いゆっくり達に殺されてしまったのだから。
「おちつくんだぉ。こいつらをもっこもこにするのはかんたんだぉ。でも、すぐにもっこもこにしたらじょーほーがてにはいらないぉ? じょーほーはだいじだって、けーねもいってたぉ」
隊長とよばれた一匹のゆっくりが追っ手三匹にゆっくりと近づいていく。
それは追っ手のゆっくり達が見たことの無いゆっくりだった。
白っぽい髪に紅い目。ゆっくり達の中でもてるよやえーりんといった珍種に並ぶ珍種。
ゆっくりもこたんである。
「さ、おまえたちのしってることをさっさとはくぉ。そうすればけーねきょうてんにのっとっていのちのほしょうはしてやるぉ」
見たことの無いゆっくりに困惑し、更に警戒する追っ手れいむ。ところがあろう事か追っ手まりさ二匹はもこたんを畸形か何かだと思ったらしい。
ゆへへと下卑た笑いを浮かべ、周りのゆっくりを嘲笑う。
「こんなできそこないがりーだーなんて、ばかなの? まりさならこんなやつよゆうでかてちゃうよ!」
「ペニッ!? おまえ、たいちょーをぶじょくするちんぽ!?」
「かまわないぉ。あいてになってやるぉ」
口調は変わらないように振舞ってはいるのだが、その目から怒り浸透しているのが良くわかる。
こんなに恐ろしいもこたんを見たのはひさしぶりだった。
「ゆっへっへ! おまえなんかまりさのますたーあたっくでいっぱつだよ!!」
追っ手まりが飛び掛る。
もこたんはまりさに背を向けて目を瞑った。
コイツはやっぱり出来損ないのゆっくりだ。まりさはそう確信して大きく口を開ける。
が、その時もこたんの髪の中から綺麗な火が噴出したのを、不幸にもまりさは見てしまった。
ふじやまヴォルケイノ。
珍種であるもこたん種の持つ特殊な力。
髪の中にある噴出口から発射されるそれは人間たちから見れば花火のようなものだが、ゆっくりにしてみれば火柱も同然だ。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛づぃぃぃぃぃぃ!!」
顔面を焼かれ、もがき苦しむまりさに近づき、更に念入りに焼いていく。
凄まじい光景を見て二匹の追っ手ゆっくりは身動きが取れぬほどの恐怖を感じていた。
「おまえたち、こうはなりたくないぉ? だったらしってることをはくぉ」
ぼしゅっと噴出孔から火花を散らし、二匹を睨みつける。
排泄餡子を漏らしながら、二匹は知っている事をぽつぽつと漏らし始めた。
「……ち……んぽ……」
けーねが死んだ。そしてぱちゅりーは完全に敵の手に落ちてしまっている。
その事実を知ったみょんは言葉を失っていた。いや、他のゆっくり達も。
「……このことをとなりのクニのぱちゅりーたちにつたえるぉ。それと、けーねのこどもたちにも」
「たいちょう! そうしたらどうするちーんぽ!? みょんたちはどうすれば……」
「おちつくんだぉ! ――もこたんたちはわるいゆっくりたちをできるかぎりくいとめるぉ。このきちのみんなをすぐにあつめるぉ!!」
もこたんの号令を受け、伝令役のちぇんが弾かれたように走り出し、手当てを受けていたあのちぇんにもこたんが近寄っていく。
「……このからだで、よくがんばったぉ」
「……みんなが、ゆっくりできればいいよねー……わかる、よー……」
手当てはされているが、恐らくもうこのちぇんはもたないだろう。
まだ若いちぇんの命を無駄にする事はできない。
もこたんは手勢を引き連れ、ちぇんのいた集落の救援に向かう事にした。
「お、おねがいだよ! みんな、れいむもいっしょにゆっくりさせてね!!」
二匹の追っ手を前線基地に残った守備隊たちが囲む。
その目には皆激しい嫌悪感が浮かんでいる。そして、この二匹のゆっくりにもこたんの下したのは死刑宣告。
「おまえにはみずぜめ、そっちのまりさには――ふるこーすだよ!!」
「「「ゆっくりくるしんでしんでね!!」」」
「「い゛ゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」」
別々に洞穴の奥に連れて行かれる二匹。
けーね経典に則ると罪を告白したゆっくりには情状酌量の余地が与えられるはずなのだが。
そこはステキな餡子脳。仲間とも言えるようなゆっくりを殺された事によって経典なんかすっ飛んだのだろう。
もこたんの“好きにするがいいぉ”の言葉を拡大解釈した結果そうなった。
「れいむ、のどかわいてるでしょ? いっぱいみずをのませてあげるね!」
無理やり口を開けさせられ、強制的に口移しで水を飲ませられる追っ手れいむ。
初めのうちは固定されている恐怖から涙目になっていた追っ手れいむだが、飲み物を貰えるとわかると安心したらしい。
「ゆっ! もうおみずはいいよ! こんどはごはんをもってきてね!」
だが、拷問をするゆっくり達は代わる代わる水を強制的に飲ませるのを止めない。
これこそけーね経典にある“ゆっくり水責め”である。
「ゆ゛っぷっ! もう、おみずいらないいいいい!! んぶっ!?」
それでも尚、水を飲ませ続け、限界寸前まで膨らむれいむ。
頃合を見計らって、拷問ゆっくり達のリーダーであるらんしゃまは拷問ゆっくり達を止めた。
「もういい! みんないっかいおみずをとめろ!」
ようやく助かる。れいむの心に僅かに希望が浮かんだ。
これが終わったら、なんとかしてここから逃げてゆっくり暮らそう。
そう思っていたれいむの体を突如らんしゃまが押し始めた。
「ゆっ!? す、すっきりしたいの……? いいよ、れいむですっきりしても……」
が、らんしゃまは体を離すと傍にあった棒を咥え、それで思い切りれいむの体を押し込みんで揺すり始めた。
「ゆゆゆゆゆゆ! す、す、す――うぼぉげぇぇぇぇえぇえええ!!」
途端にれいむの口から噴出す大量の水と少量の餡子。
「よし。もういっかいみずをのませろ!」
また、拷問ゆっくり達が水を口移しでれいむに飲ませていく。
この責めは、れいむが死ぬまで終わらない。
戦いは始まったばかりだ。
つづくかも
最終更新:2022年05月03日 15:33