※ゆっくりいじめSSですが虐待成分極薄です、描写がほぼ無い;;
ゆっくりではなく人間がメインだったりします。それでもよろしければお読みください。
染物
数年前、ここ幻想郷にゆっくりなるしゃべる饅頭のようなものが現れた。
動物か植物か、あるいは生物かすら怪しいそんな奇妙な存在。
人間はそんな彼女達を最初は疑問に、あるいは恐怖に感じていたが今ではそんなこともなくなってしまった。
あるものは農業や日々の作業を手伝い、人間と友好的な関係を築いた。
あるものは人間の家や田畑を襲撃し、そのため人間に駆逐されるような敵対関係を築いた。
あるものは食料や労働力を目的とし捕獲され、一方的な搾取を行われる支配関係を築いた。
その形は様々であるがゆっくり達は人間社会に浸透してゆき、その結果人々の生活は概ね豊かになっていった。
これは、そんな彼らと正面から向き合うある真摯な1人の男の物語である・・・
「実録、ゆっくりにみる! ~ある伝統工芸者の挑戦~」
第2回 染物職人
染物職人の朝は早い。
日の出よりも早く床を発ち、黎明の空気を体全体で浴びる男が一人。
彼は「尾二山 猛」(ひじやま たける)さん、62歳。
彼の職業は染物職人、様々な繊維や生地に色を吹き込むことを生業にしている。
「まずは朝の空気を吸う、これが基本やな。これでその日の温度や湿度なんかを感じるんよ。」
温度計や湿度計、そんなもんよりワシの方が正確だ。
尾二山さんはそう言うと、いたずら小僧のようにニヤリと笑った。
染物と言うのは様々な素材から色素を抽出し、それで布や糸を染める技法である。
方法は様々で、単純に色を移すだけのものから、着物に一枚の名画を描きあげるまで用途は広い。
あらゆる染料、染色法を組み合わせることにより様々な効果を生み出すのだ。
そしてこの尾二山さん、ゆっくりを原料に使うという変わり染めを行っているのだ。
「ゆっくり染めは『二の三』て言うてな、染料を取る『部位』と染色の『目的』が3つずつあるんよ。」
二の三、どうやらそれがゆっくり染めの基礎らしい。
「まずは部位の三な。1つめはゆっくりの飾り、2つめが髪、3つめが餡。ここでの餡てのは餡子だけでなく中身全般を指すからな。
ほんで次が目的の三。1つめは装飾、2つめが忌避、3つめが誘引だわな。主にこれらの組み合わせで作るんよ。
まぁ聞くより見たほうが解りよいだろ。ほな作るん見に行こか。」
私達は工房へと向かった。
「まず染色液から見よか。これはまずゆっくりから飾りと髪を取るんや。」
そこでは多種多様なゆっくり達が次々とハゲ饅頭にされていた。次々と生み出されるハゲ饅頭の恨み言でなんとも賑やかだ。
「こん時、ハゲ散らかしたゆっくりを種別ごとに分けんと解らなくなるから注意な。ほんで饅頭は使う直前まで生かしとく。
これはストレスを溜めたほうがええ色が出るからな。必要だったら痛めつけることもある。」
なるほど、同じ材料でも扱い次第で出来上がりが違ってくるらしい。そこを見極めるのも職人の技と言ったところか。
「ほないっちょこ作りましょか。今回は紫色の染料をつくろうか。まずぱちゅりーの髪を5、ゆゆこの髪を2いれるな。
次にゆかりんの帽子を3、そして最後にまりさの餡を1いれると。少し黒を入れることで全体が引き締まるんな。
まりさ種は腹黒いから深みのあるええ色が出るんよ。」(※単位は匹です)
そして禿げたまりさをおもむろに掴むと、「今回は深みを出そうか」そういって両目を抉りはじめた。
「ゆっがあああぁぁぁぁぁぁぁああっぁぁぁぁあぁ!!!??」
一気に抉らずじっくりくり抜いていく、その間もまりさは声をあげ苦痛を訴えている。
「で、たっぷり時間をかけて絞っていくと。」
「おぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼ!!!!!」
目玉をくり抜き終えると、尾二山さんはまりさを揉みしごきはじめた。指先が食い込む度に空洞となった目から餡が飛び出す。
このようにほぐしながら取り出すのがコツなのだそうだ。その後まりさは30分ゆっくりし、ようやく死ぬことができた。
そしてそれらを煮込むこと十数分、釜の中には固形物は見えなくなっていた。
「元が饅頭やからね、溶けるのも早いんよ。で、これを濾して完成と。」
そうして出来上がった液体は赤黒く、まるで血の様な色をしていた。
あまりに想像していたものと掛離れていたことから呆気に取られていると
「まぁ見とれって・・・・・ほれ。」
尾二山さんが木綿切れをさっと通すと、それは透き通った美しい紫に染まっていた。
「染料は見た目が濃いになるからな、こうするとよう解るやろ。」
なるほど、実際に染めてみて初めてその美しさが見えてくるわけか。
そのように私たちが感心していると
「なぁ、ちっとこれの匂い嗅いでみ?」
そういって切れを渡してきた。どういうことかと嗅いでみると
「「!!!!!」」
「どや、なかなかええ香りするやろ。」
なんとも爽やかな紫蘇の香りが鼻腔をくすぐったのだ。よくよく嗅ぐとほんのりとした甘さも含まれており、それにより紫蘇本来の鋭さが
より生かされていることがわかる。尾二山さん曰く、まりぱちぇはジャスティスなのだそうだ。それくらい相性がいいのだろう。
「見た目だけでなく匂いを楽しめるんも染物のおもしろいとこやな。普通の草木染でも香りは残るんやけど、ことゆっくり染めに関しては
おもしろい香りが多い。匂い自身も長持ちするしな。これを利用してふらんやれみりゃを用いることによって、ゆっくりの嫌う匂いを作
り出し、無闇に寄せ付けんようにすることも出来るんや。これは畑を囲む縄や、玄関マットだっったか?何やあのハイカラなんに使うた
りするこが多いな。」
なるほど、これが目的の1の装飾と2の忌避であるわけか。すると残す3つめは?
「ああ、それは匂いが移らんように別のとこでやってます。」
そういって私達は次の部屋へと案内された。
「ゆがああああああぁぁぁぁあ!!! ごべんなざいいいいいぃぃぃ!!!」
「もう揺るじでえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「ひゃっはああぁぁぁぁぁ!! たまんねえええぇぇぇぇ!!! 毎日がお祭りじゃああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
そこには大量のゆっくりと数人の男がいた。
ゆっくり達は総じてボロボロで今にも力尽きんばかり、一方男達は文字通り有頂天、とろけんばかりのヘヴン状態である。
男達は肉体的、精神的にゆっくり達を己の手業や道具、あるいは暴言などあらゆる手練手管を用い虐め抜いていた。
「おー。皆ようやっとるのう。」
「「先生、おはようございます!!」」
尾二山さんを先生と呼ぶこの男達は一体? そう思いあぐねていると、ふと男の1人が語りはじめた。
「こんにちは、記者さんですね?私達はここで誘引用染料を仕込んでいます虐待お兄さんです。」
仕込み・・・?どうにもあの光景が染物へと繋がらない。そこで尾二山さんが口を開いた。
「今から誘引用の染物についての説明するんで、それ聞いてもらったらこの作業の意味がようわかると思います。
まず誘引やけど、これは虫なんかに見られるメスがオスを呼ぶためのホルモンやとか、あるいは光に集まる性質なんかが有名やね。
そんで、ゆっくりにおける最も強力な誘引作用を持つものは容姿の良い美ゆっくりでも、おいしい食べ物でもないんよ。
その正体ってのは死んだ仲間の飾りなんやね。それもうんと苦しんで死んだ、恨み辛みの詰まったものほど強力や。
そこで、ここでは虐待お兄さん達に極限までゆっくりを痛めつけてもろて、それから染料つくっとるんですよ。」
ここまで話してお兄さん
「私達は元々イタズラにゆっくりを虐待して回ってたんですが、ある時先生に出会いましてその才能を生かさないかと声をかけていただき
ましてね。それまでは虐待と言うと世間の認識も厳しいことがありまして、まともに見られたことなんてなかったんですよ。ですが先生
は私達をそんなの一切ぬきに正面から見つめて評価してくださったんですよ。」
なるほど、そんな理由があるとは露知らず何という失礼をしてしまったのか。私達は自身の行いに恥ずかしくなり精一杯詫びた。
「いえいえ、無理もないことですから。私も今は仕込みの虐待しかできませんが、いつかは先生のように一人で作品を仕上げるまでになっ
て、少しでも世間に我々虐待お兄さん達が理解されるようにがんばっていきますよ!!」
そういって笑うお兄さんの目は熱く輝いていた。私達は再度謝罪し、このことを記事で世の人々に伝えることを約束した。
「ほな纏まったところで実際に染めていきましょか。まず特製の釜を火にかけるんですが、この釜からもう違うんよ。」
そう言われて見た釜は先ほどの部屋のものとは全く違うものであった。
「ぅぅ・・・ぅぅ・・・」
何と釜の正体は特大サイズのゆっくりだったのだ!
「でかいゆっくりの中身を死なん程度に抜いて、外皮を特殊なこんにゃく液で固めたもんや。漆なんかも試してみたけど意外とこんにゃく
が一番しっくり来てな。この釜を使うことで込められる怨嗟がより強力なもんになるんよな。そんでここにさっき用意しといたゆっくり
達を入れて、なかなか死なんように加熱していくと。で、流石にそのうち力尽きるんで全部がそうなったらここで初めて水いれるんやな
。後はこいつを濾して完成や。これで染めた布を球状のもんに着けとくだけでおもろいようにゆっくりが集まるんや。罠なんかを使うて
一網打尽にする時や、ドスサイズのを討伐する時に矢にくくって打ち込んで混乱させたり、主に討伐に用いられるな。死んだゆっくりの
飾りをそのまま使うてもこの効果はある、けどここまで凝縮したこれの威力は半端でない。染めた物の強度に依存するから手荒く扱う
ても平気やし、雨なんかにも強いしな。」
そうしてしばらく、この部屋が隔離されているのは他の布に匂いが移らんためだ、卸先は主に加工場であるなどの講義が続いた。
そして夕刻
「これで今日の仕事は終いや、長いことおつかれさんな!」
笑いながら尾二山さんは労いの言葉をかけてくれた。
「染物ってのは不思議なもんでな、材料や方法もさることながら作り手が変わってもガラッとさまを変えてまう。
自慢やないけどな、ワシのつくる染物はワシにしか作れんのよ。もちろんさっきのお兄さん達も、あいつらだけの染物持っとる。
もっともワシのがまだまだ上やけどな。まぁそれはともかく、こんなワシの作るもんでも喜んでくれる人がおるわけよ。
その人達に応えるためにも、ワシはまだまだこの仕事を続けていくんよ。ゆっくりて言うおもろい素材も謎が多いしな。
つまり、何が言いたいかって言うと何か夢中になれるもんを見つけて欲しいんよ。もちろん染物で無くてもいい。
何かに夢中になれる、ひた向きになれるってのは幸せなことやからな。そんで、もし染物に興味がわいたなら内に来たらええ。
いつでも誰でも歓迎したるからな。それだけや、長々臭いこと言うてすまんのぉ。」
そう言葉を紡ぐ尾二山さん照れた様子ながらも、その瞳はどこまでも真っ直ぐであった。
最後に私達は握手を交わした。尾二山さんの手は燃えるように熱く、そして力強かった。
今日も一人、己とまっすぐに向き合う男が釜へと向かう。
自身の情熱のため、そしてそんな彼を慕うもの達のために尾二山さんは挑戦し続ける。
染物職人の朝は早い。
終われ
作者・ムクドリ( ゚д゚ )の人
今までに書いちゃったの
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- みかん修正版(温州蜜柑)
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- 水虫(治療編)
最終更新:2022年05月03日 16:03