ゆっくり水攻め

水が出ない。

幻想卿の外から来たというポンプを買って一週間。
勝手に水を汲んで水を運んでくれる便利なものを買って、とても満足していたがまさかこれほど早く壊れるとは。
決して安い買い物ではなかったそれをどうにかできないかとポンプのある場所にやってきた。
ポンプ置き場に着くと奇妙なことにポンプのスイッチが入ってなかった。
妖怪には見えないようにお札を貼っていたし、押さないようにと注意書きもあった。子供はここまで遊びに来ないはず・・・
そんなことを考えながら他に壊れていそうなところはないかと確認していくと、機械の裏側ですやすやと寝息をたてているゆっくりを見つけた。
こいつがスイッチを押したのだろうか?
起こさないことにはこの疑問は晴れないのでゆっくりにデコピンをかます。

「ゆぐっ!」

まだ子供なのかとても軽く、デコピン一発で機械にぶつかり、「ぶべっ!」とずるずる落ちてきた。
回復する前に両手で捕まえ、ここで何しているのか聞く。

「ゆっくりあそんでたよ!」
ここでどうやって遊んでたんだい?
「ここでとぶとね、ぴかぴかするんだよ!」
とポンプの電源スイッチの上で飛び跳ねていた。ぴかぴかとは電源が入ったことを伝えるランプのことだ。
納得がいった自分は片手でゆっくりを抑えながらデコピンをする。
ここはおじさんのものなんだ。勝手に遊んじゃだめだよ。これは消えると困るんだ。わかったかな?かな?
一文ごとに一発デコピンをかます。食らうごとに痛い痛いと叫ぶ子ゆっくり。
耐え切れなくなったのか。

「ゆっくりはなしてね!これじゃゆっくりできないよ!」
「もうやだ!おうちかえる!」

と、泣き始めた。
とりあえずポンプが故障したわけでは無さそうだが動くか確認がしたい。
さっきこいつは巣があると言っていたのでそこで試そうと、巣を教えてくれれば助けてあげるよと聞いてみる。
野生のゆっくりは警戒心が強いが子ゆっくりなら大丈夫だろう。
すぐに、

「ゆ!ゆっくりおしえるからたすけてね!」

と、笑顔になって案内してくれるのを笑いながらゆっくりにおしえてもらい、巣を見つける。
その巣は木の根元にある穴で草や枯葉で巧妙に隠していたので教えて貰わないと分からなかったかもしれない。
畑や人の家に上がりこむゆっくりは大抵昔飼われていたり、加工場から逃げた奴である。
本当の野生のゆっくりは人にめったに近づかず、このように巣を作って過ごす。

「おしえたからゆっくりはなしてね!」
「いえでゆっくりするからどっかいってね!」

いまだ腕に掴まれたゆっくりが急かすので約束どおりはなしてやる。
れいむはぴょんぴょんと飛び跳ね巣に近づいていく。巣に近づくと先ほどの声に気づいたのか中からもう一匹のれいむが顔を出す。

「「ゆっくりしていってね!!」」

仲良く頬をすり合わせ中に入っていく。どうやら自分のことはもう忘れたらしい。野生で知能があるといっても所詮はゆっくりである。

ゆっくりどもが中に完全に入ったのを確認した後穴に近づき聞き耳を立てる。

「ゆっくりしすぎだよ!おかあさんしんぱいしたんだからね!」
「みんなしんぱいしたんだよ!」「おねーちゃんゆっくりしすぎー!」
「ゆっ!ゆっ!」

どうやら母れいむ一匹と子ゆっくりが3匹、赤ちゃんゆっくりが一匹と普通のゆっくりれいむ一家のようだ。
帰ってこない子ゆっくりを心配していたのか聞き耳を立てるまでもなかった。
子ゆっくりは包み隠さず正直に話した。

「ゆゆ!ゆっくりしすぎてないよ!にんげんにつかまってゆっくりできなかったんだよ!」
「に、にんげん!」

子ゆっくりの発言に母ゆっくりの態度が変わる。

「ゆっくりにげれたんだね!こわかったね!」
「もうあんしんだからね!すはみつからないよ!」

母ゆっくりはにんげんの怖さを知っているのだろう。巣にいれば気づかれず安全と子ゆっくりに言い聞かせる。
しかし、子ゆっくりが言った次の言葉に自分がいままで人間の怖さを教えてなかったのを悔やんだ。

「すをおしえたらたすけてくれるっていったからいったらたすけてもらったよ!こわかったー!」
「「ナ、ナンダッtt-!」」「ゆー!」

この声は子れいむと赤ちゃんゆっくりだろう、人間を見たことない子供達は未知のものに興味をもったらしい。
しかし、怖さを知っている母ゆっくりはさぞかし子供の発言に驚いたのだろう、

「どお゜じでぞん゜な゜ごどずる゜の゜ー!」

と、外に丸聞こえな叫び声を上げた。

「ゆぐっ!」

この声からするに子れいむを突き飛ばしたのだろう。ゆっくりのすすり泣く声が聞こえる。
と、巣から這い出てくる気配がするので巣目の前に移動する。
母ゆっくりが人間が来てないか確認しにきたのだろう。もぞもぞと巣の入り口のものが取り除かれていく。
自分はわくわくしながらゆっくりが顔を出すのを待った。

「ゆ、ゆ、ゆっくりー!!」

まさか巣の目の前に人間がいるとは思ってなかったらしく、驚き叫ぶ母ゆっくり。決して怖い顔だったからではない。
そこで捕まえてもよかったが、今回は見逃してやる。

「そこでゆっくりしててね!」

急いで巣の中に戻る母ゆっくり。ここにいるとゆっくり出来ないのではないかという疑問を抱きながらまた聞き耳を立てる。

「おかーさんどうしたの!」
「そとににんげんがいたの?」
「おがーさんごめ゜ん゙な゜ざい゜~!」
「ゆゆー!」

母ゆっくりの叫び声を子供達は怯えながら戻ってきた母を心配しているのだろう。殴られたゆっくりと赤ちゃんゆっくりはどう思ってるか知らないが。

「そとはあぶないからいっちゃだめだよ!」
「にんげんがいるんでしょ?みたいみたい!」
「だめだよ!にんげんはとってもこわいんだよ!たべられちゃうよ!」
「ゆゆゆゆ!たべられちゃうのい゜や゜だー!」
「おねーちゃんどうしておしえたの゛ー!」
「ご、ごめ゙ん゙な゙ざい゙ー!」
「ゆー!ゆー!」
「だいじょうぶだよ!ここはあんぜんだからね!しずかにしてたらどこかにいくよ!」

よく聞こえる声だ。もっと聞いていたかったがあまり時間をかけるのも面倒なのでゆっくりと遊ぶための準備をしていく。
まずゆっくり共の巣の入り口に土で壁を作る。これからすることから逃げれないようしっかりと固めておく。
準備が終わるとポンプの場所に向かう。ゆっくりは水が苦手にもかかわらず、飲み水のために水場の近くに巣を作るのでホースが届かなくなることはなかった。
そしてポンプの電源を入れる。後はホースのスイッチを押せば水がすぐに出るだろう。
ポンプ掃除用に置いてあった桶にも水を汲み持っていくことにする。
途中で逃げないように声を出してゆっくりが逃げないようにするのも忘れない。声をかけるたび

「こわいよー!」
「ゆっくりどっかいってね!」という子ゆっくりの声と
「だいじょうぶだからね!だからしずかにしてね!」

という声が聞こえた。母ゆっくりの声が少し聞き取り難かったが、それでもいることは確認できた。

必要な分の水を準備し終わり、最後の締めをしようと巣に近づくと、母ゆっくりの声が聞き取り難い理由が分かった。
穴を掘っているのだ。
どうやら別の出口を作りそこから逃げ出そうというのだろう。畑で捕まえたゆっくりはただ震えていただけだったし、子ゆっくりが馬鹿だったので油断していた。
もう少しくるのが遅かったら逃げられていただろう、冷や汗をかきながら少し計画を変更、すぐさま新しい出口になるだろうポイントを探す。
母ゆっくりの姿が見えないので難しいと思っていたが、少し藪を掻き分けたらすぐに見つかった。
ある場所に生えている植物が倒れかけている。どうやら植物の根を食べているのだろう。
しばらくすると「ゆっ!」という声とともに小さな穴が開いた。すぐに穴が広がってゆっくりが通れるほどになるだろう。
自分は急いでホースと桶ををその穴の近くに移動させる。
先ほどのポイントに戻るともう母ゆっくりは穴から出ていた。子ゆっくりたちを外に出せばもう安全だと思ってるのか顔が笑顔だ。

「ここからでればたすかるからね!でてゆっくりしようね!」
「あのにんげんがばかでたすかったね!」
「れいむをだますわるいやつだったね!」
「あのままいりぐちでゆっくりしてるといいよ!」
「ゆっゆっゆー!」

完全に人間から逃げおおせたと思っている。そんなに大きい声をあげたら気づかれるとは思わないのだろうか。
とにかく気づかれないのは好都合なのでそろりそろり母ゆっくりの後ろに水を張った桶を持って回り込む。
母ゆっくりは子供達が出れるように蔦を口に咥えて穴を覗き込んでいて自分が後ろにいることに気づかない。
蔦を口に含み穴を覗き込んだ母ゆっくりの後ろで水を汲んだ桶を持って立つと言う他人が見たら奇妙に思う格好で待っていると

「まずはあかちゃんからだよ!」
「おねーちゃんたちはあとからでるからね!」
「さきにゆっくりしててね!」
「ゆっ!」

姉妹愛かまず赤ちゃんゆっくりが出てくるらしい。母ゆっくりが蔦を引っ張ると少しずつ赤ちゃんゆっくりのかわいらしい顔が見えてくる。
久しぶりの日差しに目が慣れていないのか目をパチパチさせながら、

「「ゆ~♪」」

と母子が言ったのと、自分が桶の水を流し込んだのは同時だった。

「ゆ゙ー!!」
「あ゙あ゙あ゙あ゙ー!!!」

赤ちゃんゆっくりが桶から勢いよく流れた水に流され穴に戻されていく。
すぐ下で次に蔦が降りてくるのを待っていた子ゆっくりたちも赤ちゃんゆっくりとともに流れてきた水に驚き急いで穴を戻っていく。

「「「い゙や゛ー!み゙ずごわ゙い゙ー!!」」」

心地よい悲鳴を上げながら水から逃げ切ったのだろう息を切らした音が聞こえる。
赤ちゃんゆっくりは直撃を受け、皮をぶよんぶよんにして地面にへばりついている。まだ餡子が流れず、息があるのか、

「ゆ゜っ!・・・ゆ゙っ!・・・」

とピクピク震えていた。
もう少しどうなったのか確認しようとすると足に軽い衝撃。どうやら母ゆっくりが体当たりしてきたようだ

「どお゙じでごん゙な゙ごどずる゙の゙ー!!」

おお怒りゲージMAXなのか顔が紅白饅頭の赤い方みたいだ。うるさいので穴をのぞけるように調整して踏みつける。
「ゆぎゅっ!」とか言うが気にしない。餡子が出ない程度に踏みつける。
時間をくったので穴の中では水でふやけた赤ちゃんゆっくりを子ゆっくりたちがゆっくりと乾いた地面へ運んでいるところだった。

「ゆっくりげんきだしてね!」
「すぐにかわくからじっとしててね!」
「ゆっ・・・」
「それまでおねえちゃんがまもってあげるね!」

ポンプのスイッチを押す。

「や゙、や゙め゙でー!!」
「「「ゆ?」」」

子ゆっくりが母ゆっくりの叫び声に気づき振り向く。
そこにはポンプから流れ出る水がゆっくりと迫ってきてるではないか。

「「「い゙や゛ー!!!」」」
「ゆぐゅ!」

先ほどまでの姉妹愛はどこへやら、赤ちゃんゆっくりを放り出し逃げ出す子ゆっくりたち。
赤ちゃんゆっくりは這いずることも出来ず、流れてくる水をみながら、初めて言葉を話した。

「ゆっくりしたけっかがこれだよ!」


子ゆっくりたちは巣の入り口を目指す。後ろからは水が迫ってるから逃げるには入り口しかない。
人間がいるかも、と言う考えは今の子ゆっくりたちには考えられなかった。先ほどの赤ちゃんゆっくりの悲鳴で子ゆっくりたちはパニックになっていた。

「おねーちゃんがさきだよ!」
「おねーちゃんはゆっくりしてね!れいむがさきにいくよ!」
「げん゙がじな゙い゙で~!!」

我先にと争いながら逃げるゆっくり二匹とそれをなだめる一匹は何とか巣の入り口に着いた。ここからなら出られるだろう。
急いで入り口を隠していたものを取り除こうとすると気づく、これまで隠していた枯葉や枝ではなく土が壁となって入り口を塞いでいることに。
三匹は絶望に苛まれながらも母ゆっくりがしていたように少しずつ穴を掘っていく。
しかし、母ゆっくりのように上手くいかず、水が迫る恐怖心から三匹が別々に穴を掘っていた。
もし三匹が協力して穴を掘ってたら助かったかもしれない。しかし子ゆっくりたちはそのようなことを考える余裕はなかった。

「れいむがほったあなにつちをもってこないでね!」
「そっちこそこっちにつちをとばさないでね!」
「ゆっくりいそいでね!けんかしないでね!」

喧嘩を止めようと声を出しているゆっくりも体は自分用の穴を掘るのに必死だ。
死にたくない。死にたくない。死にたくない。
三匹にはそれしか考えられず、懸命に自分用の穴を掘り続けた。
しかし、もう水はそこまで来ている。もう間に合わないのではないか。
一番小さな子ゆっくりはこの状態に耐えられなくなった。

「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙だずげでー!」
叫びながら飛び跳ねる。掘った穴が崩れるが気にしない。

「い゙や゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!」

どうやら一番小さい子ゆっくりのせいで真ん中のゆっくりが掘っていた穴も崩れたらしい。真ん中のゆっくりが悲鳴を上げる。

残ったのは一番大きい子ゆっくりが掘っていた穴だけ。
一番大きいゆっくりが後ろの悲鳴に振り向くと二匹が体当たりしてくるのは同時だった。

「「だずげでお゙ね゙え゙ーぢゃん゙!」」
「あ゙な゙がぼれ゙な゙い゙い゙い゙い゙!」

さっきまで喧嘩していたのに図々しく姉に頼ろうとするゆっくり。しかしそのせいで姉ゆっくりは穴が掘れず、最後の希望も潰えてしまった。
追いついた水に三匹仲良く流される。

「「「い゙や゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!」」」

三匹の悲鳴はそれが最後だった。後は少しばかりぼこぼこと空気の音がしたが、それも終わると後は静寂が残った。
ふと、踏みつけていたゆっくりの反応がないので足元を見ると、先ほどの事実に耐えられなかったのか紅白饅頭のように白くなっていた。
持ちあげると口を開け白目をむいたままだったので軽く打つ。
しかしまったく反応がないのでとりあえず木に吊るしてその場を離れる。夜になればれみりゃにでも食べられているだろう。
埋めた入り口まで戻り、逃げてないことを確認し、この場を離れる。
ポンプの故障ではなかったことに安堵し、畑までポンプを戻す。
次からこのようなことがないように罠を仕掛けたほうがいいかなと思った。





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最終更新:2022年05月03日 17:05