ゆっくりいじめ系685 ゆっくりのいる街7

※人物オリジナル注意

「ゆっくりやめてね!!!ゆっくりさせてね!!!」

「ゆっくりにげるよ!!!ゆっくりこないでね!!!」

「逃がすなー!」

「だいじょーぶだって!すぐ追いつけるよ!」

「ほーら追いつめた」

「ゆっくりやめてね!!!ゆっくりやめてね!!!」

「ゆっくりさせてね!!!ゆっくりさせてね!!!」

「「やーだよ!」」

「ゆぎゃあああぁぁぁぁぁあああぁぁあ!!!」

「もっどゆっぐりじだがっだよおおおぉぉおぉぉおお!!!」

ドスまりさが死んで数日が経った。 ドスの里全滅の知らせを受けたことにより今までドスを恐れてなりを潜めていた虐待派やゆっくりの存在自体を快く思ってなかった者達、 また「ドスまりさが人間を殺そうとしていた」事実を知りゆっくりの危険性を感じ取った者達は 毎日のようにゆっくりを狩り続けていた。 善いゆっくりも悪いゆっくりも関係なく。 いや、彼らはみなこう思っていた。 「ゆっくりの存在自体が悪なのだ」と。

人々がゆっくりを狩り続けた甲斐があり、この街にいるゆっくりの数は極端に減った。 「この街はゆっくりできない」そんな噂がゆっくり達の間に流れ始めたこともある。 今この街にいるゆっくりはその噂を知らぬ者、それを知りながらこの街で「ゆっくり」している己の力を過信した愚か者、食糧難でやむなく街に降りてきた者の 三通りしかいなかった。あまり変わらないような気がするが…

「あーあ。また獲物を逃しちまった…」

この少年もまた虐待派の一人。ドスまりさの里を滅ぼした張本人である。 彼は「ゆっくりがいない世界」を目指し日々ゆっくりを狩り続けていた。 しかし狩りを続けていくうちにサディスティックな感情に支配され、今では虐殺より虐待がメインとなっていた。 今日も虐待対象のゆっくりを見つけてすっきりしたいと思っていたのだが、ここ数日ゆっくりが問答無用で狩られているため、 なかなかフリーのゆっくりが見つからないのである。 例え見つけてもすぐ近くにいる人間と争奪戦に発展する。そうなってはケンカも弱く走るのも遅い少年には勝ち目がない。 子供と奪い合うのも非常に大人げない。 自分で蒔いた種とは言え、少年はすっきりできなかった。 そんな時。

「ゆっ!!!ここまでくればあんしんだね!!!ゆっくりおうちにかえるよ!!!」

一匹のまりさを見かけた。辺りをキョロキョロしている。人間から逃げていたのだろう。 帽子からは大根の葉っぱが覗いている。八百屋の野菜を盗んできたらしい。 少年は小さくガッツポーズをした。辺りには誰もいない。つまりこの「獲物」は自分が独り占めできる…そう思った。

「ゆっくりしていってね!!!」

「ゆ?ゆっくりしていってね!!!……あああぁぁぁぁあああぁあああぁあああ!!!にんげんだああぁぁぁあぁあああ!!!  どうじでごんなどごろにいるのおおぉおぉぉおおおお!!!」

「ここは人間の街だぞ。何処にでもいてもおかしくないだろ。ところでお前は何をしているんだ」

「ゆゆっ!!?ままままりさはなにもしてないよ!!!おやさいをぬすんでなんかないよ!!!」

あっさり口を滑らせた。 少年は野菜を隠しているであろう帽子を取り上げてやった。 案の定大根やトマト、ジャガイモや人参などが少量だが隠されており、全て地面に落ちた。

「か、かえしてっ!!!まりさのすてきなおぼうしかえしてね!!!」

「素敵なお帽子だぁ…?」

ぶち撒けられた野菜など気にもとめず、帽子を返せと懇願するまりさ。 少年はまりさの自慢の帽子を覗き込む。 ところどころ虫に食われていたり、リボンは若干黄ばんでいたり、少々黒ずんだ何かもついていたりでとても清潔と言えるものではなかった。

「これのどーこが「すてきなおぼうし」だよwwどうみてもただのボロ布じゃねーかww」

「ま、まりさのすてきなおぼうしばかにしないでね!!!いいからすてきなおぼうしかえしてね!!!」

ゴミを素敵素敵と連呼するまりさに対し苛立ちを募らせる少年。 すると、あることを思いついた。 ゆっくりがここまで自分の装飾に拘るのは、自分の仲間に認識されなくなってしまうからである。 ゆっくりは主に装飾でしか仲間の識別ができない馬鹿なナマモノなのである。 帽子や飾りを無くしたゆっくりは群れの仲間から見放され、制裁を受けることになるのだ。 もっとも、ちゃんと仲間を認識できるゆっくりもごくまれにいるのだが。

「オッス!オラまりさ!よろしく!」

少年はまりさの薄汚い帽子を被り、そう言い放った。その見た目はインチキ臭い魔法使いそのものだった。

「ゆっ!!!おにーさんはまりさじゃないよ!!!まりさはまりさだよ!!!ゆっくりりかいしてね!!!それからすてきなおぼうしかえしてね!!!」

「ハハハ何言ってるんだぜこの饅頭は!俺がまりさだぜ!この帽子は俺が見つけたから俺のものだぜ!その野菜だってどうせお前が「見つけた」から盗んできたんだぜ!?」

「どう゛でも゛い゛い゛よ゛お゛お゛お゛お゛ぉ゛ぉぉお゛おお゛お!!!ばり゛ざの゛お゛ぼう゛じい゛いい゛ぃぃぃぃい゛いい゛い!!!」

連中お得意のゆっくりずむ宣言にも耳を貸さずただ帽子を返せと叫び無駄な跳躍を続けるまりさ。 ここまで鬱陶しいと即殺してしまいそうなものだが、少年はあえてそうしなかった。 少年の考えは、このまままりさに成り済まし、連中の群れに混ざることにあった。 少年は残り少ない夏休みを、ゆっくり一家のホームステイに使うことに決めていた。 街にゆっくりがいないなら、連中の住処に行けばいい。 だからここで殺してしまえば巣の場所を聞き出すことができない。

「まりさ!!!こんなところにいたんだね!!!しんぱいしたんだよ!!!」

すると反対側の道から二回りほど大きいまりさが現れた。このまりさの母親なのだろう。

「にんげんのまちにちかづいたらゆっくりできないっておしえたでしょ!!!はやくゆっくりおうちにかえろうね!!!」 「ゆっ!!!おかあさんごめんなさい!!!にんげんのたべものはおいしいってれいむがおしえてくれたからいってみたくなっちゃったんだよ!!!  おかあさんのいうとおりだったよ!!!にんげんがまりさのすてきなおぼうしとっちゃったの!!!ゆっくりとりかえしてね!!!」

「ゆっ!!?ぼうしのないへんなこがいるよ!!!」 「ゆゆっ!!!まりさはまりさだよ!!!おかあさんのかわいいまりさだよ!!!」

「おかあさんなんてよばないでね!!!まりさはぼうしのないへんなゆっくりをうんだおぼえはないよ!!!」 「どう゛じでぞん゛な゛ごどい゛う゛の゛お゛お゛おお゛お゛ぉぉぉぉおぉおお゛おお゛!!!」

やはり認識できていない。これは当たりだ。少年はそう思った。

「まりさ!!!おうちにかえろうね!!!いつまでもここにいたらゆっくりできないよ!!!」

少年に対し帰るよう促す親まりさ。 しかし全く大きさも姿形も違うというのに全然気づかないとは。恐ろしや。

「わかったんだぜ!!!さっさとおうちに案内…じゃない連れて行ってくれだぜ!!!」 「ゆっ!!!じゃあゆっくりついてきてね!!!おかあさんについてくればあんしんだからね!!!」

来た道を戻る親まりさとそれについて行く少年。 このやりとりを見ていた本物のまりさはたまったものではない。

「ゆっくりまってね!!!まりさをおいていかないでね!!!すてきなおぼうしもかえしてね!!!」

「うるさいよ!!!ぼうしのないへんなことはゆっくりできないよ!!!こっちにこないでね!!!ひとりでゆっくりしてね!!!」

「びどい゛よ゛お゛があ゛ざあ゛あ゛ぁああ゛ぁぁあ゛ぁぁあ゛ぁぁあ゛ああ゛ん゛!!!  ま゛り゛ざがま゛り゛ざな゛の゛に゛い゛いぃい゛い゛いぃぃぃい゛いい゛!!!そっぢにい゛る゛の゛ばに゛ぜも゛の゛な゛の゛に゛いい゛い゛ぃいぃぃい゛ぃいい゛!!!」

必死なまりさ。心の底から信頼していたお母さんが、自分に成りすました人間を「まりさ」と呼んでいる。 どうして伝わらないの。どうしてまりさの言うことを信じてくれないの。 そう思って母に呼び掛けていると、まりさに成りすました人間がこちらの方に戻ってきた。

「ゆっ!!!まりさのすてきなおぼうしかえしにきてくれたんだね!!!ゆっくりかえしてね!!!そのあとおにいさんはゆっくりしんでね!!!」

まりさは少年を完全に敵と見なしていた。 これでやっとお母さんの元に戻れる…そんな思いとは裏腹にまりさの体は宙に浮いていた。 少年に髪を掴まれているのだ。

「ゆっ!!!ゆっくりはなしてね!!!きたないてでまりさのきれいなかみにさわらないでね!!!」

「ごちゃごちゃ五月蠅い奴だぜ!!!綺麗な髪だって!?笑わせるんだぜ!!!あちこち泥で汚れて汚いぜ!!!まだ俺様の方が綺麗だぜ!!!」

まりさの髪を罵倒する少年。少年は嘘を付いてはいない。ゆっくりは綺麗好きなナマモノだが、体型上手入れが行き届いていない部分も多い。 ゆっくりの間では綺麗でも人間基準では十分汚いと言えるのだ。 野生に生きるナマモノなのである程度は仕方がないのかもしれない。

「まりさのかみばかにしないでね!!!いいからゆっくりはなしてね!!!ゆっくりさせてね!!!おぼうしかえしてね!!!ゆっくりしんでね!!!」

「注文の多い野郎だぜ!!!どの道お前はもう用済みだぜ!!!苦しんで死ぬがいいぜ!!!」

少年はまりさをスイングして壁に叩き付けた。

「ゆびゅっ!!!?」

まりさの歯は何本か折れ、衝撃で体から餡子が噴き出した。 その様子を見ていた母まりさは

「なにやってるの!!!ぼうしのないへんなこでもひとりでゆっくりするけんりはあるよ!!!ゆっくりさせてあげてね!!!」

少年の行いを止めようとしている。 装飾無しは群れから排斥され、最悪殺されることもあるのだが。 いくら帽子が無い変な奴とはいえ同族のまりさだ。流石にやり過ぎだと思ったのだろうか。 実の子供だと思うと非常におかしな話である。

「お母さんは黙ってるんだぜ!!!帽子の無い奴はゆっくりできないんだぜ!!!この世でゆっくりできないんならあの世でゆっくりさせてあげるのが  「せめてもの慈悲」って奴なんだぜ!!!ゆっくり理解してね!!!」

少年は適当に理由を作って母まりさを諭した。 少年はまりさが死ぬまで叩き付けるのをやめるつもりはなかった。

「ゆびゅううぅ!!!」 「ゆびゃああぁああ!!!」 「ま゛り゛ざの゛あ゛んごお゛お゛おぉぉぉお゛ぉお!!!」 「じぬ゛っ!!!じんじゃう゛う゛うぅ゛うう゛ぅぅう゛う!!!」 「や゛べでっ!!!ゆ゛っぐりざぜでえ゛ええ゛ぇぇえ゛ぇえ゛え!!!」 「お゛があざあ゛ぁぁぁあ゛あん!!!だずげでえ゛え゛えぇぇえ゛ええ゛え!!!」

「ハハハ!!!地獄で永遠にゆっくりできない生活を送るがいいんだぜ!!!」

母まりさは何も言わなくなった。 ただその惨状を見るのが辛いのか、目を瞑り震えている。 そんな母まりさの耳にはまりさの悲痛な叫びも少年の先程と矛盾した言葉も届かなかった。

「ゅ…も…じ……た……」

まりさは皮だけとなり息絶えた。

「さぁゴミの始末は済んだんだぜ!!!さっさとおうちに帰るんだぜ!!!

「ゆ……そうだね!!!ゆっくりしてるとにんげんにみつかるから、ゆっくりしないでいこうね!!!」

母まりさは先程の少年の言葉を信じ、帽子無しまりさの死を忘れることにした。 (てんごくで、ゆっくりしていってね。こんどはぼうしのあるこにうまれるといいね) 心で祈りを捧げた後、再び巣を目指して跳ね始めた。

第八話「オッス!オラまりさ!一日目」

「みんな!!!ゆっくりかえってきたよ!!!おねえちゃんもいっしょだよ!!!」

「「「おかえりなさい!!!ゆっくりしていってね!!!」」」 「「「「「「「ゆっくいちていっちぇね!!!」」」」」」」

町はずれのそう遠くない森…ドスのテリトリーの一部だった場所に、まりさの巣の洞窟はあった。 ドスがいなくなったとはいえ、この場所に人間が立ち入ることは滅多に無い。 もう狩り尽くされたと思っているからだろう。

家族構成は母まりさ、子まりさ三匹、赤まりさ七匹。 全員の大きさから察すると、少年が殺し成りすましたまりさは長女だったようだ。

「お姉様のお帰りだぜ!!!邪魔だからさっさと道を開けるんだぜ!!!」

「「「ゆっ!!!おねーちゃん、ごめんなさい!!!」」」 「「「「「「「ゆっくいやちゅんでね!!!」」」」」」」

横柄な態度の少年に素直に従う妹達。 一家の中での長女のカリスマ性は絶大のようだ。 たった一匹で人間の街に乗り込んでくる程だ。相当な猛者だったのだろう。こいつらの中では。

「まりさ!!!おとうさんにゆっくりおかえりなさいのほうこくをしようね!!!」

「はい???」

母の案内で奥に進むと大きな帽子が置いてあり、傍らには花が供えてあった。 先程の言葉と照らし合わせると、これが父まりさの墓標であることはすぐにわかった。 しかし少年は、父まりさの死因も、家族の境遇も一切知らなかった。

「こいつはどういうことなんだぜ!!?ゆっくり説明してほしいんだぜ!!!頭打ってちょっと忘れちまったんだぜ!!!」

「ゆぅ…しょうがないね、ゆっくりせつめいするからちゃんときいてね!!!」

少年は適当な言い訳をして家族の境遇の説明を要求した。

今から数日前、この巣に胴つきのれみりゃが現れた。 その時父まりさが自分の身をを犠牲にして家族を守ったのだ。まりさのくせに。 ちなみにれみりゃは父まりさを食って腹一杯になったから帰ったようだ。 その後、夫の形見である子供達を守ろうと母まりさは奮闘しているらしい。まりさのくせに。 その証拠に子ゆっくり達はどれもぷりぷりしており、ツラのふてぶてしさに磨きがかかっているあたり余程大切に育てられていることが伺える。 少年からすれば反吐の出る身の上話だったが、それはそれで面白いシチュエーションだと思っていた。

「どうしたの!!?おとうさんにゆっくりあいさつしてね!!!」

話を聞き、墓標から立ち去ろうとする少年を呼び止める母まりさ。

「うるさいんだぜ!!!挨拶したってどうせ死んでるんだから関係ないんだぜ!!!ゆっくり理解してね!!!」 饅頭相手だから吐けるセリフである。

「どう゛じでぞん゛な゛ごどい゛う゛の゛お゛おお゛ぉお゛ぉぉぉ゛お゛おぉお゛お!!!」

母まりさは信じられなかった。 自分達を命懸けで守ってくれた父まりさに対し、なんてひどいことを言うんだ。 自分の育て方がいけなかったのか。それでは死んだ夫に対して申し訳が立たない。

「それよりも今日は疲れたんだぜ!!!とっとと飯の準備をしてほしいんだぜ!!!」

母まりさは思った。 そうだ、きっとこの子は疲れてるからあんなことを言ったんだ。きっと人間に酷い目にあわされそうになったから機嫌が悪かっただけなんだ。 それならお腹いっぱい食べてもらって、ゆっくりさせてあげよう。 ゆっくりできれば、元のいい子な長女に戻ってくれる。 そんな考えは最初から無駄だということをまりさは知らなかった。いや、気づかなかった。 気がつけばもう夕暮れ時。 人間の街でも夕飯を食べる時間だ。

「みんな!!!ごはんのじかんだよ!!!ゆっくりあつまってね!!!」 「「「ゆっくりいくよ!!!」」」 「「「「「「「ゆっくいできりゅね!!!」」」」」」」

巣の中央に集まるまりさ一家+α。 母まりさは大きな葉にくるんだ食料を土の上に広げる。 本日の献立は、木の実少量、花、雑草、ムカデやその他の虫、そしてどうやって捕獲したのか魚一匹だった。 虫は何匹か生きており、うねうね動き回っている。 言うまでもなく人間が食べられるものは魚しかなかった。

「みんな!!!ゆっくりたべてね!!!」 「ゆっくりたべるよ!!!」

子まりさの一匹が生きているムカデに舌を伸ばした瞬間。

「馬鹿野郎ー!!!まりさー!!!誰を喰ってるー!!!ふざけるなー!!!」 「ゆびゅうっ!!!」

少年の蹴りが子まりさの顔面にクリティカルヒットした。 吹っ飛ばされた子まりさは壁にたたきつけられ、餡子を漏らしながら痙攣している。 手加減したので死にはしないだろう。

「な゛に゛や゛っでるの゛お゛おぉお゛おぉお゛おお゛!!!」 「ま゛り゛ざの゛い゛も゛う゛どがあ゛あ゛あぁぁあ゛ぁぁあ゛ああ゛!!!」 「お゛ね゛ーじゃん゛!!!どう゛じでごん゛な゛ごどずるの゛お゛おお゛ぉお゛ぉお゛ぉお゛お!!!」

絶叫を上げる母まりさと残りの子まりさ。 赤まりさ七匹は状況が全く理解できず困惑していた。

「よく聞くんだぜ!!!虫さんだって一生懸命生きてるんだぜ!!!虫さんを食べるなんて何考えてるんだぜ!!!」

「ゆっ!!!だってむしさんはまりさたちのごばあ゛あ゛ぁあ゛ぁあ゛っ!!!」

抗議した子まりさに蹴りが入る。先程よりも弱めだ。

「一生懸命生きている命を食べるなんて最低だぜ!!!そんなひどいことする奴はクズだぜ!!!生きる価値無いぜ!!!」

こんな超偽善論を真に受ける人間はおそらくいないだろう。少年だって本気で言っているわけではない。 だがこいつらはゆっくり。頭が餡子で出来ているおめでたい連中だ。 少年はこいつらに対するイヤガラセの一心で心にも思っていないセリフを堂々と吐いた。

「ゆっ…まりさのいうとおりだね…みんな、むしさんはにがしてあげようね…しんだむしさんはうめてあげようね…」 「ゆぅ…むしさん、おねえちゃん、ごめんなさい…」 「ばりざがわるがっだんだね、ごべんねぇ…」 「「「「「「「むししゃん!!!ゆっくいちていっちぇね!!!」」」」」」」 「ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛」

生きている虫たちは巣の外に出され、死んでいた虫たちは父の墓標の側に埋められた。 ここまで簡単に釣られてくれるとは。長女まりさのカリスマ性は半端ではないようだ。

「みんな!!!ごはんはすくなくなっちゃったけどゆっくりできるよね!!!」 「「ゆっくりできるよ!!!」」 「「「「「「「できりゅよ!!!」」」」」」」 「ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛」

虫たちの見送りと弔いを済ませた一家は食事を再開する。

「おさかなさん!!!ゆっくりたべるよ!!!」 「ちょっと待つんだぜ!!!」 「ゆっ?」

子まりさが魚を口にしようとした瞬間少年がそれを止める。虫はダメでも魚はいいのかよとツッコむためではない。 魚を食われては少年の夕食が無くなってしまう。 いざとなればまりさ達を食べればいいが、すぐに数が減ってしまっては面白くない。

「天才のまりさ様はお魚を美味しく食べる方法を知っているんだぜ!!!」 「「ゆゆっ!!!ほんとうなの!!!」」 「「「「「「「ゆっきゅいおちえちぇね!!!」」」」」」」 「すごいよまりさ!!!おかあさんにもゆっくりおしえてね!!!」 「ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛」

うまく食いついてきた一家。 少年はいったん巣の外に出た。一家も痙攣している子まりさ以外着いてきた。 少年は近くの小川で魚を綺麗に洗った。食卓に置かれたときに付いた土を落としているのだ。 その後巣の入り口まで戻り同じく綺麗に洗った木の棒に魚を刺す。 そして残りの食料である植物とその辺にあった木の枝を集め、常時持ち歩いているマッチで火を付ける。 食料が燃やされていることにも気づかずまりさ達はワクワクしながらそれを見ている。

「ゆー♪とってもきれいだね!!!」 「あったかいし、ゆっくりしてるね!!!」 「「「「「「「ゆー♪ゆー♪ゆっくち♪」」」」」」」

小さな焚き火を見ながら思い思いの感想を挙げる子まりさ達。 少年は棒に刺した魚を火で焼く。 パチパチと音を立て魚に焦げ色が付いていく。

「ゆー♪いいにおいがするよ!!!」 「ゆっくりしたいいにおいだよ!!!」 「おさかなさん!!!ゆっくりしていってね!!!」 「「「「「「「ゆっきゅいちようね!!!」」」」」」」

匂いに釣られ踊り出すまりさ一家。 いい感じに全体が焼けてきた。そろそろ食べてもいいだろう。 少年は魚を火から離し、息を吹きかけ冷ました後、パクリと口にした。

「うん、なかなか」

少年は魚は好きではなかったが、空腹の中、未経験の方法で焼いた魚は格別に美味かったようだ。

「おねーちゃん!!!まりさたちにもちょうだいね!!!」 「まりさたちもゆっくりたべたいよ!!!」 「「「「「「「ゆっきゅいたべしゃしぇちぇね!!!」」」」」」」

「まりさ!!!ひとりじめはだめだよ!!!ちびちゃんたちにもわけてあげてね!!!」

魚を分けろと喚き出す一家。魚は今日一番のご馳走なのだ。 しかも今日は長女が美味しくなる方法で調理してくれている。 また、虫を逃がしたせいでまだ食事にありつけていないのだ。 当然、ゆっくりをじわじわ虐めに来た少年がそんなことをするはずもなく。

「五月蠅いんだぜ!!!この調理法は俺様が考えたものだぜ!!!お前らなんかにやるわけないんだぜ!!!」

「「どう゛じでぞん゛な゛ごどい゛う゛の゛お゛おお゛ぉお゛お゛ぉおぉお゛おお゛お!!!」」 「「「「「「「ゆ゛っぐじじだい゛よ゛おお゛おお゛おぉお゛ぉお゛お゛お゛お!!!」」」」」」」

「ばりざあ゛あ゛ぁあぁぁ゛あ゛あ゛!!!ぜっがぐの゛お゛ざがな゛ざん゛わ゛げっごじな゛ぎゃだめ゛でじょお゛お゛おぉお゛ぉお゛お゛お!!!」

空腹のため、母親共々不満が爆発したようだ。

「そんなに食べたかったら自分でやればいいんだぜ!!!明日また魚を捕ってくればいいんだぜ!!!  それに一食抜いたくらいで死にはしなんだぜ!!!むしろこれは一種の修行だぜ!!!これを耐えれば強いまりさになれるんだぜ!!?」

「ゆ…ゆっくりりかいしたよ…」 「まりさもおねーちゃんみたいに、つよいまりさになりたいよ。だからゆっくりがまんするね」 「「「でもおにゃかちゅいたよー!!!」」」 「「「「ゆっくちちたいよー!!!」」」」

長女カリスマで子まりさを嗜めることはできたものの、まだ耐えることを知らない赤まりさは変わらず騒ぎ続けた。

「だいじょうぶだよ!!!まだおはなさんやはっぱさんがあるよ!!!ちびちゃんもゆっくりできるよ!!!」

母まりさは巣に置きっぱなししてあるはずの残りの食料のことを思い出し、赤まりさを宥める。

「「「「「「「しょうだっだね!!!ゆっくちちゅるね!!!」」」」」」」

我先にと巣の中に戻っていく赤まりさ。それを微笑ましく思いにこやかな表情で追いかける母まりさ。同じく嬉しそうな妹達の姿を見てにこやかな子まりさもついて行く。 だが巣の中には、まだ痙攣している子まりさ以外、何も無かった。

「「「ゆっ!?ちゃべもにょがないよ!!!」」」 「「「「これじゃゆっくちできにゃいよおおおぉぉおおお!!!」」」」

「な゛ん゛でえ゛え゛ぇぇぇえ゛え゛!!!どう゛じでえ゛え゛えぇぇぇえ゛ええ゛え゛!!!」 「ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛」

先程残りの食料は少年が焚き付けに使ったのだ。無いのは当然である。 一家は魚に気をとられて気づかなかったため、少年を咎めることはなかった。

「「「しょうだ!!!きっちょおねーしゃんがちゃべちゃったんだよ!!!」」」 「「きっちょまいしゃちゃちがいにゃいあいだにちゃべちゃったんだよ!!!」」 「「おねーじゃんのじぇいじぇゆっくちできにゃいよおおおぉぉおぉおお!!!」」 「ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛」

ひたすら痙攣し続けているだけの子まりさにあらぬ疑いの目を向ける赤まりさ。 それが誤解だということに母まりさはちゃんと気づいていた。

「ちびちゃんちがうよ!!!おねーちゃんはたべてないよ!!!ゆっくりしんじてあげてね!!!」

「「「「「「じゃあ゛に゛ゃん゛でな゛くな゛っちぇるの゛おお゛おお゛ぉぉお゛お゛おお゛!!!」」」」」」」 「ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛」

「ゆ…それはわからないけど…とにかくおねーちゃんはたべてないよ!!!おかあさんにはわかるよ!!!ゆっくりしんじてあげてね!!!」

「「「ゆ…ゆっくいちんじるよ…」」」 「「「「でもおにゃかちゅいたよぉ……」」」」

「ゆ…じゃあきょうはもうおねむにしようね!!!ゆっくりねむればおなかがすくのもわすれられるよ!!!あしたになったら、いっぱいごちそうをとってきて、ゆっくりさせてあげるね!!!」

「そうだよ!!!だからきょうはがまんして、ゆっくりやすんでね!!!」 「がまんすれば、おねーちゃんみたいなつよいまりさになれるからね!!!」

「「「ゆー♪ごちちょう!!!」」」 「「「「ゆっくいたのちみにしちぇるにぇ♪」」」」 「「「「「「「ゆっくいおやしゅみなちゃい!!!」」」」」」」

言うが早いか即いびきをかき始める赤まりさ。 残念ながら姉まりさの言葉は届かなかったようだが。この赤まりさが忍耐を身につけるのはいつのことやら。

「じゃあまりさたちもゆっくりねむるね!!!」 「ゆっくりねむって、あしたのかりにそなえるね!!!」 「「ゆっくりおやすみなさい!!!」」

「ゆっ!!!ゆっくりやすんでね!!!ゆっくりしたいいゆめをみてね!!!」

姉二匹も眠りに就いた。 二匹が眠るのを見届けた母まりさは、痙攣していた子まりさに駆け寄る。 先程まで食欲のせいで忘れかけていたのだ。

「ごめんね、なにもしてあげられなくてごめんね。ゆっくりいいゆめをみてね…」

「ゆひゅー…ゆひゅー…ゆひゅー…ゆひゅー…」

子まりさの傷を舐めてやる母まりさ。気休めにもならないがそれでも母の気遣いが子まりさにはうれしかった。 痙攣も治まってきたようで、息は荒いが眠りについた。 その頃丁度、魚を食べ終えた少年も巣に戻ってきた。

「まりさ!!!ちょっとはやいけどきょうはもうねようね!!!つかれてるでしょ!!!ゆっくりやすんでね!!!」

「しょうがないんだぜ!!!それじゃそうさせてもらうとするんだぜ!!!」

まだ人間が眠るのはいささか早い時間だったが、今日はもうすることがない。 その後のプランを考えるのには丁度いい休憩時間だ。 少年は母まりさの言う通り今日はもう眠ることにした。

「それじゃあお母さん、まりさの枕になってくれだぜ!!!まりさは枕がないと眠れない体になっちまったんだぜ!!!」

「ゆっ!!?ま、まくら!!?」

母まりさは困惑した。 前に人里に降りたことがあったので枕については知っていたが。 まさか子供に枕になってくれと言われるとは思ってもみなかった。 当然枕になった体験などしたことはないが、いつも子供達は自分に寄り添って眠るため、それと大して変わらないだろうと思っていた。 母まりさは疲れ切ったであろう子供のために枕になってあげる決心をした。

「それじゃあ、まくらになってあげるね!!!ゆっくりねむっていいゆめをみてね!!!」

「へっ!!!それじゃあ使ってやるとするんだぜ!!!」

そう言って母まりさの後頭部分に頭を乗せる少年。 当然ゆっくりと人間の体重は文字通り桁が違う。

「ゆ゛っ゛!!!」

少年の頭の重みで潰れひしゃげる母まりさ。

(ああ。家の枕より柔らかいや。今度一匹捕まえて枕にしてやろうかな)

思った以上に心地よかったのか、少年はすぐに夢の世界へと落ちていった。

「ゆ゛っ゛!ゆ゛っ゛!ゆ゛っ゛!ゆ゛っ゛!ゆ゛っ゛!ゆ゛っ゛!ゆ゛っ゛!」

「だぁー!!!うっせぇええええ!!!」

少年は母まりさの呻き声で目を覚ました。 人間の重い頭を支え続けているのだ。苦しくて当然である。 母まりさは全身から体液を出し、苦悶の表情を浮かべている。

「さっきからゆーゆー五月蠅いんだぜ!!!眠れないから静かにするんだぜ!!!息するなだぜ!!!」

「ゆっ…!!!ご、ごめんね!!!しずかにするからおかあさんをゆるしてね!!!」

少年の文句に素直に謝罪する母まりさ。 少年は再び母まりさの上に頭を乗せ眠りについた。 それから、声は全くしなくなった。 母まりさは白目を剥き、歯を食いしばり、全身から粘液を滴らせながらじっと耐えていた。

眠っている間、少年は考えていた。 (そういえば、こいつどうやって魚を捕まえたんだろう) 先ほども「また捕ってくればいい」と言った時も「無理だ」とは言わなかった。 何か捕獲する方法を知っているのだろうか。 まぁ、明日になればわかるだろう…… 少年は再び、夢の世界に落ちていった。

一日目・おわり

作:TOSSY

「ゆっくりになった男」が面白かったので書いてみました。 一応「ゆっくりのいる街6」の続きの話なんですが未読でも楽しめると思います。 今回の話は焦らず慌てず書いていきたいと思います。

補足説明:殺された長女まりさのカリスマ性が強いのは胴無しれみりゃ一匹を返り討ちにしたことがあるためです。

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最終更新:2015年03月19日 23:57