※登場するゆっくりがやけに賢いと思う部分もあると思いますが、そういうものとしてご了承下さい
「ゆっ、なにしてるんだぜ! さっさとうーぱっくにのせるんだぜ!」
ゆっくりまりさに命じられ、ゆっくりれいむは未だ寝ているゆっくりをうーぱっくに乗せていく。
うーぱっくに乗せるゆっくりはゆっくりれいむとゆっくりまりさ。
自分と同種であるゆっくりに対しこのような事をしている事に、ゆっくれいむは罪悪感を覚えた。
結構手荒に扱っているのだが、寝ているれいむとまりさはまるで睡眠薬でも飲まされたかのように起きない。
やがて二匹ともそれぞれうーぱっくに乗せることができた。
「まったく、とろいんだぜ! はやくしないとくいーんありすがきちゃうんだぜ!」
偉そうにしている語尾が「だぜ」のゆっくりまりさ、だぜまりさは今ゆっくりれいむが属している群れの、先輩にあたるゆっくりだ。
今このだぜまりさとれいむの二匹は、クイーンありすの命のもとある仕事をしているところだ。
だぜまりさは自分はまるで手伝わなかったくせに文句ばかりれいむに言い捨てると、自分はさっさと残ったうーぱっくに乗り込んだ。
れいむもうーぱっくに乗ろうとしたが、よく見るとうーぱっくは寝ている二匹の分とだぜまりさが乗っている分の計三匹しかいない。
「ゆゆっ? れいむのぶんがないよ?」
「うーぱっくは忙しいんだぜ。おまえにまわすうーぱっくはないんだぜ。おまえはあるいてこいなんだぜ!」
だぜまりさはそれだけ言い残すとさっさとうーぱっくに移動を命じた。
パタパタと羽ばたき三匹のうーぱっくはれいむをその場に残し飛び立っていく。
飛び立っていく先はクイーンありすと落ち合う地点。れいむもそこへ向かわねばならない。
れいむは仕方なく跳ねていくことにした。
このゆっくりれいむや先のだぜまりさ、うーぱっくらが属している群れは、現在ゆっくりの中で最大の規模を誇る、ドスまりさとクイーンありすの群れだ。
だがれいむはこの群れのリーダーが『ドスまりさ』を騙っているだけの巨大ゲスまりさだということを知っている。
元々は本物の『ドスまりさ』が治めていた群れだった。
賢者と呼ぶに相応しい知能と平和を慈しむ心。頼れる巨体を誇るドスまりさによって率いられていた群れ。
だがある時、そんなドスまりさのやり方に反発を覚えたゆっくり達が反乱を起こした。
その反乱軍を扇動していたのが、現在のドゲスまりさとクイーンありすだった。
当時はそこまで巨体ではなかったドゲスまりさとクイーンありすであったが、数で勝る反乱軍はあっという間にドスまりさ達を殺した。
その時死体を解析した反乱軍のリーダーゲスまりさは、ドスまりさしか使えないとされるドスパークを習得した。
その後ドスまりさ並に体の大きくなったゲスまりさは、群れのゆっくり達にドスまりさとして崇められることとなった。
反乱軍の副リーダーであったありすも同様に体が大きくなり、クイーンありすとして崇められている。
ありす種特有の旺盛な性欲と、ドゲスまりさとクイーンありすの巨体を活かし、二匹は度重なる交尾をしたくさんの子を産んだ。
更にドゲスまりさとクイーンありすをゆっくりの英雄として崇める者達が集い、群れは先代ドスまりさが率いていた頃よりも遥かに大きくなった。
ゆっくりれいむは現在、そんな群れの下っ端として属しているのだ。
待ち合わせの時間に遅れたらまたお仕置きされる、と急いで待ち合わせの場所に急いでいたゆっくりれいむの前に、人間が現れた。
れいむは一瞬身構えたが、襲われることはないと思い出すと警戒を解いた。
現在ドゲスまりさの群れと人間との間には不可侵協定が結ばれている。
ゆっくり達は人間や人間の所有物に手は出さないが、人間達もゆっくりに手を出さないというものだ。
この協定を結んだのは先代ドスまりさであったが、特に不自由もないのでドゲスまりさにリーダーが変わった今でも協定は守られている。
不本意とはいえゆっくれいむは現在ドゲスまりさの群れに属している。
こちらから手を出さなければ人間も襲ってはこないだろうと判断し、れいむは話しかけた。
「れいむはどすまりさのむれのゆっくりだよ! だからおそわないでね!」
「あぁ、別に襲わないよ。ただ聞きたいことがあるんだ」
特にゆっくりに対する敵意を感じさせることのない青年に、れいむは安堵した。
人間の中には虐待お兄さんと呼ばれるゆっくりをゆっくりさせない者もいるからだ。
「ゆゆっ、なぁに?」
「このあたりでゆっくりれいむとゆっくりまりさを見なかったかい? あぁ、君のことじゃないよ」
その言葉を聞いた瞬間、れいむは青ざめた。
この辺りのゆっくれいむとゆっくりまりさと聞き、先ほど誘拐した二匹のゆっくりが頭に浮かんだからだ。
「俺は最近河童に用があってね、河童の所に行くときにその二匹も散歩に連れ出してあげるんだ。
それで俺が河童と話している間は、その二匹はこのあたりで遊ばせているんだ。よく昼寝しているみたいだけどね」
確定だ。
先ほど誘拐したゆっくりれいむとゆっくりまりさの誘拐計画は、最近いつも同じ場所で同じ時間に昼寝していることから計画されたものだからだ。
れいむは更に青ざめた。
だとしたらあの二匹のゆっくりはこの人間の飼いゆっくりだ。
つまりれいむ達は、人間の所有物に手を出したことになる。
不可侵協定を破ったことにある。
すると人間達はゆっくりを襲う理由を得る。
全ての人間がゆっくりを襲わないにしても、少なくとも目の前の青年は自分たちを襲うだろう。
取り戻すだけで済むか殺されるかは知らないが、人間一人でもゆっくりの群れにとっては大損害を被る恐れがある。
れいむはドゲスまりさの群れに属している。いや実行犯だ。
明かせば殺される。
「ゆゆっ、そんなこしらないよ? れいむはいそいでるからじゃあね!」
れいむは早口にそう捲くし立てるとすぐにその場を離れようとした。
青年は特に怪しむこともなく、「そうか、悪かったな引き留めて」と言うとれいむと反対方向に歩いていった。
「まったく、おそいんだぜ! もうすぐくいーんありすがくるんだぜ!」
れいむが待ち合わせ場所に着いた時、まだクイーンありすは来ていないようだった。
ようやく、ようやくだ。
ようやく、復讐の機会が来た。
ゆっくれいむがドゲスまりさの群れに属している理由。それは復讐のためだ。
かつてれいむはドゲスまりさとは違う別の小さな群れに属していた。
その群れを、クイーンありす達が襲ってきたのだ。
クイーンありす配下のゆっくり達がれいむ達が集めたエサを奪い、巣を荒らしていく。
歯向かった者は殺されて食われるか、〝すっきり〟の道具にされた。
れいむのパートナーであるゆっくりまりさも〝すっきり〟の道具にされてしまった。
それもクイーンありすのだ。
「ん゛ほぉぉぉぉぉ!!! まりざがわい゛い゛よ゛ぉぉぉぉぉぉ!! ずっぎりざぜであげるがらねぇぇぇぇぇ!!!」
「ゆ゛う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!! やべでぇぇぇぇぇ!! ずっぎりぢだぐない゛ぃぃぃぃl!!」
「つんでれのまりさもがあ゛い゛い゛い゛よお゛お゛お゛お゛!!!」
クイーンありすに歯向かい吹き飛ばされ、ボロボロになったゆっくりれいむはその光景をただ見ていることしか出来なかった。
ニメートルを越すクイーンありすの交尾に、並みのゆっくり程の大きさしかないまりさが耐えられる訳が無い。
「んほおおおおおおおおお♪ イっく゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛!!
…………すっきりー!!!」
クイーンありすが絶頂に達した瞬間、まりさは黒ずんで朽ちていった。
後に残されたのはゆっくりの原型すら留めていない真っ黒の子ゆっくりの実を宿した蔓と、それを頭から生やした真っ黒いまりさの死骸だけだった。
まりさはクイーンありすに殺された。
奴らは気まぐれで襲い、気まぐれで帰っていった。
皆殺しが目的では無かったようで、れいむは奇跡的にも生き延びた。
その時から、れいむは復讐を誓った。
れいむは傷を癒すと、ドゲスまりさの群れを訪れ、自分も群れに入れてもらえるよう頼み込んだ。
向こうはれいむの顔を覚えていなかったようで、適当にドゲスまりさやクイーンありすを褒め称える言葉を並べたら群れに入ることが出来た。
群れに入った理由はもちろん、内側にもぐりこんでクイーンありすを殺すためだ。
だが群れに入ったはいいが、下っ端であるれいむがクイーンありすに会える機会は殆ど無かった。
あったとしても他の取り巻きのゆっくりが大量にいる状態で手出しが出来なかった。
れいむとしては死ぬ覚悟は出来ている。だが死んでもクイーンありすを殺せなければ意味がない。
クイーンありすを殺す機会がないまま、今日まで来た。
だが、遂に今日その機会が訪れた。
だぜまりさがクイーンありす直々に命を下され、その手伝いとしてれいむが駆り出されたのだ。
仕事の内容は、ゆっくりれいむとゆっくりまりさの誘拐。
ハッキリとそう言われたわけではない。クイーンありすが命じたのは『すっきりできるゆっくりをつれてこい』だからだ。
つまりは性欲解消の道具を持ってこいというわけだ。
自分のパートナーのまりさを犯したくせにまだ……、とれいむは吐き気を覚えた。
いざ誘拐という段取りになっても、このゆっくり達をパートナーのまりさと同じ目にあわせてよいものかと悩んだ。
しかし逆らえば下っ端である自分は殺されてしまうかもしれない。
クイーンありすを討つためと、心を鬼にした。
そして待ち合わせ。
あらかじめ指定の場所と時間に誘拐したゆっくりを連れてくる。
そこにクイーンありすがやってきてそのゆっくりの選定をする。
クイーンありすのお眼鏡に適えば見事そのゆっくりは『すっきり』の道具となる。
この時、クイーンありすは単独で来る。
いくら厚顔無恥なクイーンありすといえど、最低限の恥じらいはあるのか、性欲解消の相手を選ぶところをあまり多くのゆっくりに見られたくないようだ。
そこでクイーンありすの腹心の部下たるだぜまりさと、どうでもいい下っ端のれいむが実行犯に選ばれたのだ。
つまり、クイーンありすが単独でやってくるこの時こそ復讐のまたとない機会。
だぜまりさがいるが一匹だけ。うーぱっくは好戦的ではない。
これまでと比べて破格の条件だ。
「ゆゆっ、くいーんがきたぜ! くいーん、こっちなんだぜ!」
やがてクイーンありすがやってきた。
だぜまりさがその場で跳ねて呼びかける。
ニメートルを越す巨体は相も変わらず圧巻だ。
たるんだ下顎は不快感と吐き気を催させる。
だらしなく緩んだ顔は殺意を抱かせる。
さぁ、どうやって殺そうか。
圧倒的な体格差はある。だがれいむは決死の覚悟で挑む。
口の中に入って中を喰らい尽くそうか。
頭に噛り付いて頭部を抉ってやろうか。
刺し違えてでもれいむはクイーンありすを殺すつもりだ。
殺意が顔に表れぬよう気をつけながら、れいむはクイーンありすの到着を待つ。
ボスボスと跳ねてこちらにやってくるクイーンありすを睨みながら、頭の中ではだぜまりさを出し抜きクイーンありすを殺す算段を立てる。
あれ、と声をあげたのはれいむだったのかだぜまりさだったのか。
クイーンありすの遥か後方から謎の影がやってくる。
とてつもないスピードだった。
れいむは途中で気づいた。あれは胴付きのゆっくりふらんだと。
そして、貫かれた。ゆっくりふらんがクイーンありすの体を貫いたのだ。
れいむはその瞬間を見逃さぬように目を凝らす。世界から音が消えた。
クイーンありすの後方から飛んできたゆっくりふらんが、後頭部から顔にかけて一気に体を突っ込ませ、突き破る。
クイーンありすの顔からゆっくりふらんが出てくるのが、見えた。
ふらんはそのまま空中で体をひねると、クイーンありすの頭部に着地する。
着地し、そのままでは終わらない。
両腕のクイーンありすの頭部にあてたかと思うと、ビリビリとその頭部を裂いた。
クイーンありすの顔が痛みで歪むのが見えた。
ふらんは裂いた頭部から腕と顔を突っ込むと、クイーンありすの中身を食べ始めた。
クイーンありすは絶叫する。中身を食べないでと懇願している。
ふらんは聞く耳もたず、クイーンありすを食していく。
中身が減り、余った皮がたるむ。
皮もちぎられクリームが漏れる
クイーンありすの目から生気が失われていく。
やがてクイーンありすの側頭部の皮を突き破って、全身クリームまみれの胴付きゆっくりふらんが現れた。
その顔は満足そうな表情で満たされている。
満足そうな表情をしたゆっくりふらんは、その後クイーンありすにもこちらにも目もくれず、その場を飛び去っていった。
その間ゆっくれいむもだぜまりさもうーぱっくも、声を発することができなかった。
世界に音が戻った。
しばらくクイーンありすは呻き声をあげていたが、すぐに絶命した。
「…………ゆ?」
嘘だ。嘘だ。嘘だ。
復讐を、横取りされた?
最終更新:2022年05月03日 20:21