• 「 」はゆっくり、『 』は人間のセリフです。
  • 独自設定があります。
  • ゆっくりは死にません。


「きょうは、おちびのひとゆんだちの日なのぜ」
初秋の朝、親子最後の狩りを終え、ついに子のひとゆんだちの時がやってきた。
野良ゆっくりは、春先にたくさんの子を産むが、弱肉強食の自然界の中で最弱である彼女らが無事成体まで成長できる可能性は低い。
栄養不足、野生動物や人間の襲撃、急な雨やカビ、はたまた自滅。
そんななかででも、まりさは妻のれいむと共に子を無事亜成体まで育て上げたので、それなりに優秀だったのだろうか、単なる偶然だったのか。
「おとうさん、おかあさん、いままでおせわになったのぜ。もうそろそろいくのぜ。」と子まりさ。

ついこの間で小さなピンポン玉のようであった子も、ついにひとゆんだち。そのうち、美ゆんな番を見つけて、沢山の子を作るのであろう。
そんな子の輝かしい未来を思いつつ、寂しさも少し感じながら感慨に更けていたまりさであった。
「おちび、これからたいっへん!なことがいろいろあるのぜ。でもおちびはゆっくりすることをわすれないようにするのぜ。そうすればしあわせーになれるのzぇえええ!」

急に背後から蹴り飛ばされたまりさ。
「いだいいいいい!おぼにこうとうぶがいだいいいい!!」
まりさは後頭部(?)の痛みに悶絶しながら背後を振り向く。そこには人間の男がおり、まりさをじっと見ていた。

「どおしてそんなことするのおおおお!!」
『いや、何かちょうどいいケツがあってな。つい蹴っちまった。』
「ひどいよおお!!なんでこんなことするのおおお!!」
『まぁ気にすんなって、俺はただの人間だ。お前らに害を加える気はない。ところでお前、何やってたんだ?』
まりさは不服そうであったが、人間に歯向かってもロクなことがないことを知っていたので、会話を続ける。
「きょうはまりさにのおちびのひとゆんだちのひなのぜ。ちょうとおちびがしゅっぱつするところだったのぜ」
『そうだったのか。そりゃ済まなかったな、邪魔して』
「ほんとなのぜ!あやまるのぜ!」
『じゃあ詫びとしてコレやるよ。』
男はまりさに向かって、何かを投げた。それはお菓子であった。
「あまあま!?あまあまだああ!!!」

まりさは、お菓子に一目散に飛びつこうとしたが、ふと我に返る。
「ゆ!?これはもしかしてわななのぜ?たぶんこれはどくなのぜ」
『ん?いや、これ普通にお菓子だけど』
「ぜったいちがうのぜ!まりさをだましてころすつもりなのぜ!てんぷれなのぜ!」
『天ぷらだか何だか知らないけど、別におまえを殺すつもりはないぞ。あーでも、お前らお菓子食うと味覚ダメになるんだったか。すまんな』
男はお菓子を回収して、ごみ箱に捨てた。
『じゃあ、俺は帰るから。まあゆっくりしてけ。じゃーな』

男が立ち去った後、まりさはしばらくポカーンとしていたが、気を取り直して子の方を向くが…
「あれ、もういないのぜ?」
近くにいた妻れいむが近寄ってきた。
「まりさがにんげんさんとあそんでるあいだに、おちびちゃんいなくなったよ!」
「どうしてさきにいっちゃうのおお!」

「まりさはおちびちゃんより、あのにんげんさんのほうをとったんだよ!ばかなの?しぬの?」
「そんなのないのぜえええええ!!!」
こうして、親子の別れは終わったのであった。
その後、まりさは事あるごとに男に水を差されることになるが、まあまあ長生きしたので結果オーライ

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最終更新:2022年05月04日 23:48