※前に書いた『
衣玖さんとゆっくり』の続き。と言っても前作を見るほどのものでもないです。
※東方キャラがゆっくりを虐めてます。例えば衣玖さんとか天子とか。
※虐殺メイン…かな。
永江衣玖は急いでいた。
数刻前、龍の言葉から衣玖は天界、いや幻想郷全体に危機が迫っていることを知った。
これはゆっくりてんこを虐めて楽しんでる場合ではない。
「総領娘様は無事でしょうか」
口には出したけど大丈夫だろう。
自分勝手で世間知らずでもその強さは本物だ。大抵の危機は自力で解決もできる。
しかし龍が伝えるほどの危機が迫っているのは確かだった。
「危機とはいったいどんな物なのでしょうか」
とにかく天界に行ってみないことには判断がつかない。
そんな訳で衣玖は急いでいた。
天界に着くとそこにはゆっくりがいた。
右を向いても左を向いてもゆっくりの群れ。
しかもそのゆっくりは全て希少種であるはずのゆっくりてんこだった。
つい癖で虐めたくなる衣玖だったが、今は別の使命がある。
てんこが大量発生した原因を探らねば。
自由に跳ねまわるてんこを空中から眺めながら飛んでいると
呆然と宙に浮いている比那名居一族のお嬢様である比那名居 天子を発見した。
「総領娘様! 一体何が起きているのです?」
衣玖が話しかけると天子はあからさまに不機嫌そうな顔をしながら答える。
「私も知りたいぐらいだわ。 何なのこいつら」
「ゆっくりですね。それも総領娘様タイプの」
「それは分かる。でもなんで増えるのか分からないのよ」
「増える…? 増える瞬間を見たのですか?」
てんこの生殖方法というか子てんこを産み出す方法は衣玖も知っていた。
てんこは虐められるのが好きなゆっくりで傷めつけられると快感を覚える性質を持っている。
虐めてくれそうな相手を見つけると「ゆっくりいじめてね!」と迫り、無視すれば相手がいらつく行為をして気を引こうとする。
そして虐め抜かれて命を失ったてんこは茎を生やし、赤ちゃんてんこを実らすのだ。
「ちなみにどんな時に増えましたか?」
衣玖は原因が身近に居そうな空気を感じながらも天子に訪ねた。
「信じられないかもしれないけど…」
天子の話をまとめるとこういうことだ。
数十匹のてんこが天界の花畑を食い荒かしていたのを見た天子が得意の地震攻撃で追い払おうとしたところ、
地震の揺れで発情したてんこが子作りを始めたとのこと。
天子は突然の性行為にあっけにとられ、その間にてんこは増えてしまったという訳だ。
「それにしては多すぎません?」
天界の花畑には至る所にてんこがいる。見える範囲だけで数えても千は下るまい。
数十匹のてんこが繁殖したにしても多すぎる。
「まだ話は終わりじゃないの」
天子はその増えたてんこ達を地符「不譲土壌の剣」により潰そうとしたらしい。
地形を隆起させて周囲を攻撃するスペルカードでれいむ種やまりさ種などの通常のゆっくりが受ければ皮がちぎれて死ぬだろう。
だがてんこは打撃に強かったらしく数匹が隆起した岩に体を貫かれて死んだぐらいで他多数はほぼノーダメージだったらしい。
そして痛がりも苦しみもせず、
「きもぢぃぃぃぃ!!もっどいじめでぇぇぇ」
と叫んでさらなる攻めをおねだりしてくる。
イラついた天子は何度かスペルを発動しててんこを殺したのだが、その頭には大量の茎と赤ちゃんてんこが実っていた。
「それでこの惨状ですか」
「それだけじゃないのよ。どこから現れたのか「ゆっくりいじめてね!」なんて言いながらこいつらが集まってきたの」
「はぁ…結局この異変の原因は総領娘様でしたか」
「む…何よ結局って! ただの龍宮の使いのくせに生意気ね」
「とにかくここで見ていても仕方ありませんね。一気に殲滅しましょう」
「そうね。あんな変な生き物にこれ以上天界の土は踏ませるわけにはいかないね」
天子と衣玖はその体に霊力を漲らせる。
「さぁ、行くわよ衣玖。あんな下等生物など根絶やしにするわよ!」
一方その頃――
大量発生し、天界から溢れたてんこは各地で暴れていた。
ある森の中では、ゆっくり魔理沙の家にてんこが侵入していた。
まりさの家には体の大きい母まりさと子まりさ数匹が住んでいて、
ちょうど食事を終えてゆっくりしていたところだった。
「ここはまりさの家だよ! ゆっくりでていってね!!」
「これからゆっくりおひるねたいむなんだよ! くうきよんでね!!」
「しょうだよ! ゆっくちできにゃいならでていっちぇね!!」
しかしてんこは追い出そうとするまりさの敵意を別のものとして受け取っていた。
「いじめてくれるの!? ゆっくりいじめてね!!」
「ゆ"っ!? な、なんなのぜ!?」
戸惑う母まりさにてんこは擦り寄っていく。
「ゆっくりいじめてね!!」
「ならゆっくりいじめるよ!!」
相手が虐めてと言うなら虐めてやろう。
何せ自分たちのおうちに侵入してきた敵なのだから躊躇する理由もない。
母まりさはその大きな体をてんこにぶちかます。
母体のゆっくりの体当たりとなると子ゆっくり程度なら一撃で潰れて死ぬ。
成体ゆっくりでも数回受ければ餡子を吐き出し息絶えるだろう。
しかしてんこは異様に打たれ強いことを母まりさは知らなかった。
「いだいぃぃぃぃ!! もっどじでぇぇー!!」
「ゆゆっ!?」
「おかーしゃんのたいあたりがきかないよ!?」
「きっとうんがよかっただけだよ!」
「おかーさんやっちゃえ!!」
「そうだよね! こんどこそゆっくりしね!!」
再び母まりさは体当たりで攻撃を仕掛ける。今度は吹き飛んだてんこを壁に押し付けてプレスする。
「ゅ"…ゅ"ぅぅ…」
母まりさの巨体と木の壁に挟まれて圧迫されて苦しそうな声をあげるてんこ。
(勝った…!)
だが次の瞬間、母まりさはてんこのタフさを知る。
「ゅ"…ゅ"…ぎもぢ…い"ぃ"ぃ"! もっど…じでぇ…!」
「ゆ"っ!?」
母まりさの押し潰しは効いてないどころか先ほどよりもずっと気持ちよさそうにしていたのである。
バッとてんこから離れて思わぬ強敵に警戒する母まりさ。
その様子を見たてんこはどうしたのだろうと不思議に思う。
「どうしたの? もっといじめてぇ!!」
「ゅぐっ! おかーしゃんこわいよ!!」
「なんなのこいつ! ゆっくりできないよ!!」
子ゆっくり達はお母さんの体当たりで死なないゆっくりに恐れを抱き始めた。
母まりさもまた、最大の必殺技である押し潰しの効かない相手に手を出せずにいた。
「ゆっくりいじめてね! いじめてね!!」
期待に満ちた目で母まりさを見つめながらぴょんぴょん跳ねる。
しかし虐めてくれないことが分かるとてんこは次の行動に移った。
「ゆ! それはまりさたちのしょくりょうだよ!! かってにたべないでね!!」
「むーしゃ、むーしゃ、ひそうてん~♪」
次々とまりさ家族の集めた食糧を食べていくてんこだが、これはお腹が減ったからではない。
まりさを怒らせて虐めてもらうために食べていた。
「もうゆるさないよ!! ゆっくりしないですぐしね!!!」
自分が頑張って集めた食糧を目の前で奪われるのをこれ以上許せるわけがない。
母まりさはてんこへの攻撃を再開する。
「しね! しね! しねしねしねぇぇ!!!」
てんこを吹き飛ばした母まりさはてんこに圧し掛かると、ズンズンと跳ねててんこを潰そうとする。
しかしてんこは潰される痛み、苦しみに身悶えしていた。もちろん快感で。
「ああああああっ! もっといじめてぇぇぇぇ!!!」
「ゆゆゆゆゆ!! なんで!? なんでしなないのぉぉぉぉ!!!」
気味が悪くなって母まりさは再び離れた。
「どうしたの? もっといじめてくれないの??」
「ゆ! こっちにこないでね!!」
ジリジリとにじり寄るてんこに後ずさりして離れる母まりさ。
母まりさの背中には子まりさ達が隠れていた。
「なんでにげるの? もっといじめてね!!」
「こないでぇ!! しょくりょうはぜんぶあげるからぁぁ!!」
「ゆぶぇぇぇ!!」
「おかーしゃんぐるじぃぃぃ!!!」
母まりさは近寄るてんこから離れようとさらに下がる。
しかし背中に隠れていた子供たちは母まりさによって潰されようとしていた。
「ハァハァ、ゆっくりいじめてぇぇぇ…!!」
「いやぁぁあぁぁぁぁぁぁ!!! ゆっぐりざぜでぇぇぇぇ!!!」
森に母まりさの悲鳴と子まりさの潰れた音が響いた。
そしてまた一方ではれみりゃがてんこを食していた。
鋭い牙はてんこの弾力溢れる肌を突き破り、れみりゃはそこから桃風味の餡子を吸いだしていく。
「うー、うー、うまうま♪」
「あああああっ!! すわれるぅぅぅ♪」
てんこはれみりゃに中身を吸われてるというのにヘブン状態だった。
れみりゃもまた、初めて食べる桃の香りのする餡子の味を楽しんでいた。
しばらくするとてんこは皮だけの存在となってしまった。
さすがに中身が無いので子供は実らないようだ。
「うー、もっとほしいどぉ~。しゃくや~もってきでぇ~♪」
れみりゃは奇妙なダンスでおかわりを希望する。
「ゆっくりいじめてね!」
「うー♪」
れみりゃの願いが通じたのか、てんこが姿を現した。
「がおー、たべちゃうぞ~♪」
よちよち歩きでてんこに近づいていく。
その時他のてんこが姿を現した。今度は1匹ではなく10匹ほどいる。
「「「「いじめてくれるよかんがするよ!! ゆっくりいじめてね!!」」」」
「うー♪ いっぱいいるどぉ~♪ ぜんぶれみりゃのものだどぉ~♪」
てんこの言ってることは理解していない。れみりゃにとっては美味しい獲物が増えただけ。そう思っていた。
「いじめてね!」
「だめだよ! わたしをいじめてね!!」
「ちがうわ! わたしこそいじめられるのにふさわしいわ!!」
れみりゃに10匹のてんこが殺到した。
「う、うー? うあ"ー!!?」
瞬く間に押し倒されるれみりゃ。
「はなぜーうぶっ!!」
大口を開けて叫ぼうとしたれみりゃの口に1匹のてんこが体を突っ込んだ。
「わたしにかみついてね!!」
「ずるい! つぎはわたしがかみつかれるからね!!」
「だめよ! つぎはわたしがいじめられるの!!」
「んがー、んがー!!」
獲物のまさかの反撃に涙を流して恐怖するれみりゃ。
てんこに押し倒されるれみりゃの周りにはさらに複数のてんこが順番待ちしていた。
話は戻って天界。
「さぁ、行くわよ衣玖。あんな下等生物など根絶やしにするわよ!」
「はい総領娘様」
天子と衣玖は天界の花畑の中心へ降り立つと、
その二人の姿に気づいたてんこ集団は一斉に叫ぶ。
「「「「「「「「おねえさんいじめてくれるひと? ゆっくりいじめてね!!!」」」」」」」」
「っ…! うるさいわね」
イラついた天子は緋想の剣を地面に突き刺して地殻変動を起こそうとする。
「総領娘様お待ちを。まずは私が辺りを一掃します」
「…そうね。まずはまかせるわ」
衣玖雷で焼き尽くせば子を実らせずに死ぬだろうし効率も良さそうだ。
天子はそう考えて緋想の剣を収めた。
衣玖は宙に浮かんで辺りを見渡すとお気に入りのポーズで構える。
通称サタデーナイトフィーバーだ。
天を指した指の先に大きな雷球が生成されていく。
(なるべく花畑には被害がないようにしないと。標的はゆっくりてんこ)
衣玖は目に見えるてんこ全てをターゲットに定める。
「さぁ、いきますよ!」
衣玖がそう宣言した次の瞬間、指の先に出来た半径10mはあるだろう大きな雷球から無数の線が地表へと走っていく。
「ゆ"ぐっ!」「ぶへっ」「げぇっ!」「ゆっ!?」「ぉひっ」「ぶばっ」
「ゅふぇ!」「げしょっ!」「ゅ"っ」「ひぎぃ」「あぁん!」「ぎゃぶ!」
「ちょっと衣玖!? きゃっ!」
「ぎゃぼっ!」「よぎゅっ!」「ぶげっ!」「ゅぐぉっ!!」「ひでぶっ!!」
妖気のこもった高圧電流が周囲のてんこ達に到達すると、
様々な断末魔と共にてんこ達が黒焦げになって朽ち果てた。
「総領娘様。まだ生き残ってるゆっくりがいるはずです。止めを刺しに行きましょう…って何で焼けてるんです?」
「あんたのせいでしょ! 私も狙うなんていい度胸ね」
「あぁ~、すみません。似てるのでつい…」
「まったく。後でお仕置きだから覚えておきなさいよ!」
天子はそれだけ言い残すと生き残ってるてんこを排除するために飛んでいく。
「お仕置きですか。それは楽しみですね、ふふ」
衣玖は小さく呟き軽く微笑むと天子とは逆方向へ飛んでいき、残るてんこを潰しに行く。
「要石ドリル! 天地開闢プレス!!!」
様々な技で天子はてんこを潰していく。
瞬殺すれば子は実らない。地震や半端な攻撃はしないようにだけ気をつける。
仲間を瞬殺されるとてんこ達は不満をあらわにした。
「なんでゆっくりいじめてくれないの!」
「そうよ! ゆっくりいじめてね!!」
「はやくちゃんといじめてね!!」
「おばさんゆっくりできないのね!!」
「わたしたちのまねしたぼうししてるくせにね!!」
「真似はお前たちだ! もう怒った。本気で行くわ!」
「全人類の緋想天」(Lunatic)
周囲の気質を緋想の剣に凝縮して一気に解き放つ超大技。
知らない人はかめはめ波を思い浮かべればいいだろう。
天界の地形が変わることも厭わず全人類の緋想天で周囲を吹き飛ばしていく。
てんこは緋想の剣から解き放たれる波動に飲み込まれると次の瞬間には灰と化した。
それを見た仲間のてんこは死なない程度に味わってみたいと全人類の緋想天に自ら飛び込んでくるので天子としては楽だった。
だがてんこがタフとは言っても所詮はゆっくり。天子最強のスペルに瞬間でも耐えきれる訳がなく瞬殺されていく。
一分後には辺りは焼け野原と化していた。
動くものなど何一つない。
「ふっふっふ、饅頭ごときが調子に乗るからこうなるのよ」
勝ち誇った天子には輝く笑顔が浮かんでいたが、すぐに笑えなくなった。
「「「「「「「いじめられるときいてやってきたよ!!!」」」」」」」
虐めてくれる人がいると聞いてきたのか、はたまた感じ取ったのか大量のてんこが天子の周りに集まってきていた。
「あーもう! なんなのよ! こうなったらとことん殺してやるわ!!!」
ある森の中、まりさに「いじめてぇぇぇ」と迫っていたてんこは近くの山の上から何かを感じ取っていた。
「いじめてくれるにおいがするよ! ごめんねまりさ! こんどまたいじめてね!!」
「ゅ…ゆ…」
母まりさは精神的に消耗していたが自分が助かったことに安堵した。
でも何か背中がヌルヌルする。そういえば自分の子供はどこいったのだろう…?
また、れみりゃに圧し掛かっていたてんこ達も虐めてくれる気配を山の上に感じ取っていた。
「またこんどいじめてねれみりゃ! てんこ達はやまのうえにいくよ!」
「ぅ、うー?」
てんこ達が突如立ち去っていったことを不思議に思ったけどようやく助かった。
早く屋敷に戻ってぷっでぃんを貰おう。
そう思って動こうとしたれみりゃだったが、手足は潰れてしばらく動けそうになかった。
「うあ"ー! いだいいだいぃぃ!!! しゃくやだっすげでぇぇ!!!」
手足が潰れていることに気づいたれみりゃは痛みに泣き叫び、助けを求めた。
しかしその場に現れたのはしゃくやではなく、甘い匂いに誘われてきた野犬だった。
さて、天界でてんこ殲滅を図る衣玖はというと…
「いきますよ。天突「ギガドリルブレイク」!!」
衣玖の纏う緋色の羽衣を螺旋状に腕に巻きつけ、さらに放電させつつ相手を貫く龍魚ドリルのでっかいバージョンだ。
巨大ドリルを右手に装備し、てんこの群れに突撃していく。
「ゆぅぉぉぉぉ!! いじめられるよかん!!!」
「きてえぇぇぇぇ!! ゆっくりいじめてねぇぇぇ!!!」
しかし衣玖が通り過ぎた跡に残るのは炭と化したてんこ。
最後にドリルに貫かれたてんこはドーナツのように顔の中心に巨大な穴を開けて生涯を終えた。
「ああああ! なんでゆっくりいじめないのぉぉぉぉぉ!!」
「ゆっくりいじめてよぉぉ!!!」
やはり瞬殺されるのは嫌らしい。じわじわと痛めつけられるのは好きだというのに。
「ふふ、最後に残った一匹はゆっくりと苛めてあげますよ」
「ゆ! わたしをさいごにのこしてね!!」
「わたしだよ! ゆっくりいじめられるのはわたしをおいてほかにはないわ!!」
「いじめられるのはわたし! ほかのてんこはしゅんさつされてね!!」
自分が最後に生き残ろうと他の仲間を盾にしようとするてんこ。
その構図はまりさ種に多くみられるものだが、てんこの場合はその理由が虐められるためなのだから不思議だ。
「最後に残りたいなら必死に逃げることですね。次は鬼ごっこで遊びましょう」
そう言うと衣玖はいつものポーズでスペルカードを発動する。
棘符「雷雲棘魚」
大電流を自分の体に纏う攻防一体の必殺スペルだ。
触れれば間違いなく黒焦げになって死ぬ。
「さぁ必死に逃げ回ってくださいね」
どこまでも穏やかで黒い笑みを浮かべながら衣玖はてんこの群れへと寄っていく。
「こ、こっちにこないでね!!」
「あっちのてんこをしゅんさつしてね!!!」
必死で逃げるてんこだったがその動きは遅く、衣玖にすぐ追いつかれてしまう。
「こ、こないで! こな…ああああああああっ♪」
追いつかれたてんこは恐怖と歓喜の混じった悲鳴をあげて炭になった。
その悲鳴を聞いたてんこは逃げる足をピタリと止めた。
なんて気持ちよさそうな声だろう。
あのおねーさんに触れたら死ぬけど気持ちよさそうだ。
ゆっくり虐められるためには最後まで生き延びなきゃ、でも味わってみたい。
てんこ達に何とも不思議な葛藤が生まれ、一匹…そしてまた一匹と雷雲棘魚を発動中の衣玖へ飛び込んでいく。
「あああああっ♪」
「し、しあわせえぇぇぇぇぇ!!」
「すっきりぃぃぃぃぃ」
「さいこぉ~♪」
その断末魔はどれも甘美なもので、それが呼び水となって周りにいたてんこが次々と衣玖へ飛びついて行く。
「ふふふっ、なんてバカなんでしょう。一瞬の快楽のために死を選ぶなんて…!」
「あぁぁぁぁっ! もっとバカっていってぇぇ!!」
「いっぱいいじめてえぇぇぇぇ!!!」
こうなると確変フィーバー入れ食い状態だ。
数百のてんこが衣玖の周りで二通りの昇天を味わっていく。
「いいんですか? 今死んでしまうとゆっくり虐めてあげませんよ?」
「!! で、でもぉぉぉ!」
「おねえさんにいまの責めもあじわいたいよぉぉぉぉお!!!」
涙を流して目の前の快感と未来の快楽に揺れ動くてんこの心だが、てんこはゆっくり種。目の前の誘惑には勝てなかった。
「でもやっぱりいまいじめてほしいぃぃぃぃ!!!」
「くろこげにさせてえぇぇぇぇ!!!」
それから何分経っただろうか。
すでに衣玖の周りにはてんこが数えるほどしかいなくなっていた。
衣玖は雷雲棘魚を解除すると衣のドリルで残ったてんこを次々と貫いていく。
「つ、つぎはわたしをつらぬいてぇぇぇ!!」
「わたしもつきさしてぇぇぇ!!!」
残ったてんこは衣玖の持ち出した約束、残った一匹をゆっくり虐めるということを知らない。
約束を聞いたてんこはすでに炭になっている。
「貴方で最後ですね」
「ゆっくりいじめてね!!」
「はい♪」
グシャ
最後のてんこは脳天から衣玖の衣で貫かれ、悦の表情で絶命した。
「あら、あんたも終わったみたいね」
「総領娘様。確かに全滅させましたよ」
そしてこれで天界の危機は去っただろう。あとは龍に報告だけすれば終わりだ。
「では、私はこれで」
「ええ、今日は助かったわ。またね衣玖」
「はい。また来ます総領娘様。…掃除の終わるころに」
「…え"?」
「それではっ」
衣玖は空気を読んで足早に龍の世界に帰って行った。
残されたのは天子と大量のてんこの死骸。
天界の美しかった花畑はてんこ集団に荒らされたこと、天子と衣玖が暴れたことでひどい有様になっていた。
桃の香りもてんこの死体から発せられるムワッとした不快な匂いが漂っている。
てんこの数が多かっただけに掃除は大変だろう。
「あーもう! 衣玖のばかー!!」
数日後
衣玖が天子に会いに行った時に問答無用で勝負を挑まれたのは言うまでもない。
終
by ゆっくりしたい人
なんだかカオス。酒飲んだノリで書いた結果がこれだよ!
最終更新:2022年05月21日 21:56