翌日
「いってきまーす」
「・・・・・・・・・」
家族は男を見送る、が無言である。
どこか気まずい。しかし男はれいむが昨日の件をしっかり皆に話してくれたのだな、と安堵し、仕事へと向かった。
「れいむ!どうしてゆっくりしていってね!っていっちゃいけないのぉ!?」
「いけにゃいのぉ!」
「むきゅーん、ちょっときまずいわ」
「ごめんね!けど、おにいさんがかえってきたら、ゆっくりいってあげようね!」
「かえりはいってもいいの?」
「うん!
あと、きょうはみんなでゆうかのところにいこうよ!」
「むきゅ?なんで?」
「いつもおせわになってるおにいさんに、おはなのかんむりさんをぷれぜんとするんだよ!」
「れいむ、けど・・・ゆうかがおはなわたしてくれるとはおもわないよ!
それどころか、ゆっくりころされちゃうよ!」
「じじょーをはなせばだいじょうぶだよ!」
「むきゅーこわいけど・・・おにいさんにはゆっくりさせてもらってるから・・・」
「そうだね!ゆっくりてつだうよれいむ!」
れいむは野生の頃では考えられなかった、感謝の意というものを覚えていた。
昨日の男の寂しそうな表情を忘れられなかったのだ。
お兄さんにはゆっくりしてもらいたい、そう思っていただけだというのに―――
「ただいまー」
「「「「「ゆっくりしていってね!」」」」」
「なっ・・・!!」
言ってしまった、男はお終いだと思うと同時に、自分の奥底から湧き出てくる『何か』を抑え付けられなかった。
「おにいさん!やっぱりれいむたちはおにいさんにゆっくりしてもらわなくちゃやだよ!
おにいさんのために、おはなのかんむりつくったよ!」
「まりさたちもがんばったんだぜ!」
「むきゅーん、みんなでつくったのよ!」
「つくっちゃにょー!!」
「れ・・・れいむ・・・みんな・・・・!」
男は嬉しかった、自分のためにれいむたちが、こんなに綺麗な花で、冠を作ってくれるとは。
今までで最高に嬉しいプレゼントだ。
このままこいつらを抱きしめてやりたい、今日はご馳走にしてやりたい。
色々思ったが、それは叶わないであろう。
「くっ・・・っは!・・・・静まれ・・・俺の腕よ怒りを静めろ!!」
「なにいってるのおにいさん?」
「むきゅ〜ん・・・ようすがおかしいわ」
「みんな・・・はな・・・・れ・・・・・」
言い終わる前に、男一瞬気を失った。
しかし、次に目が覚めた時には、別の感情に目覚めていたのだ。
「はは・・・はははははははは!!ひゃっほーーう!!!」
「お、おにいさん、うれしすぎてきがくるっちゃったの!?」
「あぁ・・・あぁうれしすぎるよ!!
おいで、赤ちゃんまりさ!!」
「ゆっくちー♪」
男のおかしな様子に、赤ゆっくりが気付くわけもなく
無邪気に赤まりさが男の手の平にぴょんぴょんと跳ね、乗っかる。
時々この男がしてくれる「たかいたかい」が赤ゆっくりたちは大好きなのだ。
「はぁーい、皆さん注目ー、この赤ちゃんまりさはとてもしあわせでーす」
「ゆゆ〜おそりゃをとんでるみちゃーい♪」
「まりちゃいいにゃ〜れいみゅも〜」
「何故なら!!」
「ゆべっ!!」
ベチャ、と音がした。れいむたちには一瞬何が起こったのか分からなかった。
男の手が振り下げられた。そう思った次の瞬間、赤まりさは帽子だけを残して床に放射状に撒き散らされた餡子を残しただけになった。
家族達に点々と餡子が飛び散る、男の足にも餡子が付着していた。
「はい、皆さんにもこんな目に会ってもらいまーす。
ただし、じっくりと、ゆっくりとね」
数瞬置いた、次の瞬間
「ばりざのあがぢゃんがああああ!!」
「おにいざあああんどぼじでごんなごどずるのおおおお!!」
「む、むぎゅううう!!」
「おにぇえちゃあああん!!」
「ひゃはははは!れいむが悪いんだぞぉ!れいむがねぇええ!!」
この男、二重人格なのである。
普段は何者にも心優しい青年であるが、なぜか「ゆっくりしていってね!」という言葉を一定回数以上聞くと、心のストッパが外れ
ゆっくりに対して何よりも残虐な虐待お兄さんへと変貌する。
れいむが一匹の頃は良かったが、まりさとぱちゅりーが増え、子供が増えた時、その言葉を聞く回数は十数倍へと増えてしまった。
そしてそろそろストッパが外れそうでヤバいな、と思ったから、れいむに伝えたのに、れいむはその事を守らなかった。
だから男は虐待お兄さんになってしまった、その事を男はゆっくりにも分かるように、懇切丁寧に説明した。
「でいぶのばがああああ!!」
「むきゅう!!れいむうう!!」
「ぞんなああああ!じらながっだのおおお!!」
「黙れド饅頭どもが!!」
「「「「ゆっ!!」」」」
「貴様ら害獣どもをここまで幸福にしてやったんだ!
なら、今後は多少不幸でもかまわんよなぁ?」
そういうや否や、男は二匹の赤ゆっくりを無造作に掴んだ
「おかあしゃああああん!!たちゅけでええええ!!」
「みゅ・・・みゅきゅぅううう!!」
「ばりざのあがじゃんがあああ!!やめでええええ!!」
「むきゅー!!やめてえ!おにいさぁああん!!」
「あ、うるせーなお前ら、お前らもちゃんとこいつらと同じところに送ってやるから安心しろよ」
そして男はどこから取り出したのか、透明な箱にれいむ、まりさ、ぱちゅりーと子供たちを詰め
手に掴んだ赤れいむと赤ぱちゅりーを虐待する作業に取り掛かる。
「ここからだじでえええ!おにいざあああん!!」
「もうやだああ!おうちかえる!!」
「みゃみゃこわいよおお!!」
「箱の中でも騒がしいやつらだな。まぁまぁ面白いから見てろって。
はい、ここに針金2本とライターと剣山があります」
そういって男は針金二本を高さ50cmほどの所に橋のようにして固定し、針金の端の部分をライターで炙り続ける。
ライターが倒れると火事になりかねないので、ライターの周りには水を張り、消火用の水も用意する。
そして針金の橋の下に剣山を置き、準備は完了だ。
「頑張って死ぬまで生き残ってね♪レディごー」
「ゆ?」
「みゅきゅ?」
赤れいむと赤ぱちゅりーを橋の上に置いた。
二匹はてっきりさっきの赤まりさのように、床に叩きつけられるものだと思っていたのだから、これは意外であるようだった。
むしろ高い所に立っているようで楽しい。
しかし、そう思うのも束の間、ライターの火の熱を、針金はあっという間に二匹に伝えた。
「ゆうううう!あしがあちゅいよおおお!!」
「みゅきゅうううう!!」
「おきゃああしゃあああん!たしゅけてええええ!」
「おにいさんやめて!やめてよおおおおお!!あかちゃんにひどいことしないでええええ!!」
「はっはっは!踊れ踊れー!!」
れいむとぱちゅりーは底部がじりじりと焼けるのを感じ、すぐさまその場を離れたかったが、何しろ針金二本しか足場が無い。
底部ほぼ全てを上手く使い、跳ねるゆっくりにとって、床面積が狭すぎる、二匹は身を捩るくらいしか出来なかった。
「みゅぎゅぎゅぎゅぎゅ〜!!あじゅいいい!あじゅ・・・みゅきゅー!!」
「あーあ、おーちちゃった」
体力の少ない赤ぱちゅりーが針金二本の間から落ちた。
赤ぱちゅりーはこれで助かったと思ったが、下には剣山がある事を失念していた。
助かったと思った矢先、無数の針が赤ぱちゅりーを突き刺していた。
「みゅぎゅ・・・もっどゆっ・・・ぐ・・・・ぢ・・・・・・」
「でいぶのあがじゃんがああああ!!」
「ぱちゅりーのごどもがあああああ!!」
「おにいざああああん!どぼじでぞんなごどずるのおおお!!」
赤れいむも赤ぱちゅりーの心配をしたが、次は我が身だ、針金の間から落ちまいと必至に自分の身体を針金に固定する、が。
「あちゅいよおおお!!おかあちゃあああん!!たちゅけてええええ!!」
「おお、頑張れ頑張れ」
「もうやだあああ!おうちかえりゅうううう!!」
熱さに耐えかね、針金から落ちようと思った。
ぱちゅりーの死体の上に乗っかれば、もしかしたら生き延びる事が出来るかもしれない。
そんな事したくないけど、生きるためには仕方ない、きっと親も許してくれる、だが。
「どうぢでれいみゅのからだがうごかにゃいのおおお!!」
「計画通り・・・!!」
焼けた針金が、赤れいむの身体に食い込んでいたのだ。
針金はゆっくりと赤れいむの身体を斬り、最終的には三枚に下ろしてくれるだろう。
上も地獄、下も地獄である。
「あちゅいよおお!いちゃいよおお!!たちゅけてえええ!!」
「おにいさああん!もういいでしょおお!あかちゃんをたすけてあげてえええ!」
「聞く耳もたんな」
針金が赤れいむにの半分ほどに食い込んできた。
切り口からは餡子がぽたぽたと滴り落ちてきている、熱により溶け出しているのだろう。
赤れいむは意識が朦朧とし、既に何も喋られない状態となっていた。
時折ピクッ、ピクッと痙攣をするだけである。
「もっちょゆっくちしちゃかった・・・」
赤れいむがその断末魔を上げると、見事に三枚に降ろされ、剣山の上に汚く飛び散った。
「ぱちゅりーのごどもがああああ!」
「おにいさん!れいむがわるいんでしょ!!
おねがいだかられいむだけにしてみんなはたすけてね!」
「馬耳東風」
「さてさて・・・まだ親含めて11匹もいるな!!最高だな!!
ちょっとこの赤ちゃんまりさを借りますよっと!永遠にな!返却ポストは地獄あたりで!!
延滞は心配すんな!俺は仕事が早い!!」
「おきゃあしゃあああん!たしゅけてええええ!」
「おにいさん!いいかげんにしないとまりさおこるよおお!!」
「怒れ喚け叫べ、何も出来ずに死んでいけ」
男は手を振り上げた、赤まりさや家族全員がもうだめだ、と思った瞬間、赤まりさは潰れて・・・はいなかった。
しかし、代わりに命の次に大切な帽子を奪われていたのだ。
「おにいしゃああん!まりちゃのしゅてきなぼうちかえちてえええ!!」
「いいよ」
「ゆっ!?」
意外と素直に応じてくれて、流石の赤まりさも驚いた、しかし、次の言葉を聞くまでは・・・
「ただし条件がある
帽子を返す代わりに、お前の兄弟二人殺す、殺してほしくないならお前の帽子とついでに髪を焼く。
そして森の奥に放ってやる、れみりゃにでも食われろ、さあ選べ」
「そんにゃのえらぶこどでぎるわげないでしょおおお!?」
「あら残念」
男がライターの火を帽子に近づけた、小さな帽子は数十秒で完全に消し炭になってしまうだろう
「やめちぇええええ!!」
「じゃあ殺して欲しい奴を選べ」
「ゆっ・・・わかっちゃ・・・よ・・・」
「あかちゃああああん!?」
赤まりさは思いの外早く応じた、実はゲスの素質もあるのだろうか、と男は思った。
てっきり帽子を焼くことを選ぶのかと思っていたくらいだ。
「まえからぱちゅりーとすえっこのれいみゅはとろくちぇいらいらしちぇちゃんだよ!
あいつらならころちていいよ!」
「あがじゃああああん!?どぼじでええええ!!」
「むきゅううう!!ひどいわあああ!!」
「かんがえなおすんだぜえええ!!」
「みゅきゅうううう!」
「うええええん!まりちゃのばきゃあああああ!!」
親まりさはあまりの事態に、ついにだぜとか言い出してしまった。これでれいむとの判別をつけやすくなっていいな。
と誰かが思った。
「ごちゃごちゃうるちゃいよ!まりちゃがゆっくちするために、ぱちゅりーとすえっこれいみゅはゆっくちしんでね!!」
「みゅきゅううう!ひぢょいよおおおお!」
「もうまりしゃなんてかじょくじゃないよおおおお!」
「はいはい声を荒げて抗議だけなら誰でも出来ますね、っと」
そして男は透明な箱から、適当な赤ぱちゅりー一匹と一番小さい赤れいむを取り出した。
ついでに赤まりさも透明な箱に戻してやった。
「じゃーん!まりちゃはいきのこっちゃよ!みんにゃでゆっくちちようね!」
「どうしてかえってきたの・・・」
「むきゅううう!」
「まりしゃのうらぎりもにょおおお!」
「ゆっ!どうしちゃのみんにゃ!こわいよ!!」
「うらぎりまりさはゆっくりしね!」
「ゆぺぇ!!」
「むきゅ!むきゅ!!しになさい!!」
「ゆきゅうう!!」
「しにぇしにぇえ!」「まりちゃなんてしんじゃええ!」
「いちゃいよおお!おかあしゃんたちゅけてえええ!!」
「・・・・・・・」
透明な箱に戻るや否や、家族に手荒い洗礼を受ける。
親まりさ以外からの総攻撃だ。特に親れいむの体当たりがキツイ。一撃で多量の餡子を吐き出してしまう。
親まりさに助けを求めるが、親まりさは無表情で赤まりさを見つめるだけであった。
「もっちょ・・・ゆっくち・・・し・・・」
「ゆっくりしないではやくしんでね!」
「ゆべっ!!」
一方男は二匹を手のひらの上で撫でながら、その様子を鑑賞していた。
二匹は撫でてもらうのが気持ち良いらしく、自分たちがこの後虐待を受けるんだ、という気分は全く無くなっていた。
裏切り者の赤まりさが家族に制裁されるさまを見て満足もしていた。
「さてと・・・」
「ゆっ!おにいしゃん、もうしゅりしゅりおわり?」
「みゅきゅ〜もっちょしちぇほしいわぁ」
「おう、もっとしてやるよ」
赤れいむと赤ぱちゅりーを床に置き、ひとさし指で再び撫ではじめた。
気持ちよさにご満悦の様子である。
「最後に言いたいことは?」
「ゆぅ〜ん、もっちょしちぇ〜」
「みゅきゅ〜きもちいいわぁ〜」
「きめぇ遺言」
男は人差し指に力を込め、二匹を押さえつけ始めた。
少ししてからおかしいことに二匹は気がつきはじめたが、時既に遅し
「ゆぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅ!おにいじゃん・・・やべで・・・づよずぎりゅよ・・・!!」
「みゅぎゅ!ゆぎゅううう!ぶほっ」
指の力はどんどん強くなってくる。
赤ぱちゅりーは既に生クリームを吐き始め、吐いて死ぬか、潰れて死ぬかの瀬戸際であった。
「おにいざん・・・ぐるじいよ・・・いだいよ・・・・」
「みゅぎゅううう・・・ごほっ、ごぼ」
「裏切りまりさあたりと、ゆっくり仲良くやっていってね!」
「ゆぎゅ!」
「みゅぎゅ!!」
短い断末魔と、プチッ、と言う音で二匹の命が終わりを迎えた。
これで残るは親3匹に子5匹である。
「はてさて・・・選り取りみどり、さつきみどり」
「おにいさん!めをさまして!!」
「あん・・・?」
「こんなのおにいさんじゃないよ!!」
いきなり男の説得を始めたのはれいむであった。
きっとこの男は悪い夢を見たか、悪い妖怪にでも取り付かれているのだろう。
あのやさしかったお兄さんが、こんな事をするわけがない、呼びかければきっといつものお兄さんが帰ってきてくれる。
「うっ・・・れ、れいむ・・・」
「おにいさん!がんばって!わるいこころにまけないで!」
「れいむ・・・」
「おにいさん・・・!!」
「まりさもおうえんするよ!おにいさんがんばるんだぜ!」
「むきゅー!がんばって!」
「うっ・・・俺は・・・いや・・・僕は・・・!!」
「おにいさん!」
「なぁ〜んちゃって!」
男は無造作に赤ゆっくりを掴み、れいむの真上で握りつぶした。
餡子がれいむの顔にボタボタと落ちてくる。
れいむの表情は、餡子が降りかかった瞬間、希望から絶望へと変わりはてた。
「あ・・・あ・・・・おにい・・・さん・・・・・・?」
「ひゃははは!たまんねぇ!やっぱり希望は絶望を二乗するってやつぅ?
お前らって藁どころか、浮いてるストローにもしがみ付きそうなほどバカだよな!
バカは死んでも治らないなら、俺が殺してやるぜーっと!!」
「おにい・・・さん・・・・どうして・・・・」
「ゆぎぎぎぎ・・・おにいさん・・・もうゆるさないんだぜ・・・・」
「あ?」
「おにいさんはゆっくりしねええええ!!」
まりさは勇敢にも男に向かって突進してきた、男が完全にれいむに気を取られ、油断しているだろうと見越しての攻撃だ。
しかし、それを見通されたかのように、跳ねてきたところをしっかりとつかまれた。
「へへへ、まりささんげぇ〜っと」
「ゆうう!ゆぐぐぐぐ!!」
「お前うるせーから順番早めてやるわ、この帽子少し借りるぞ、お前が死ぬまでくらい」
「ゆっ!かえせえええ!まりさのすてきなぼうしかえせええええ!!」
男はまりさから奪った帽子をあろうことか被り始めた。
確かにこの帽子はこの奇妙な生き物が生成するものとしては、なかなかセンスがある。
しかし、女物のこの帽子、男が被った所で、ただの変態である。
「どう?似合う?」
「きもいぜえええ!まりさのすてきなぼうしをかえしてゆっくりしないでさっさとしねえええ!!」
「いちいち素敵な、とか形容詞つけんなよ」
「ごちゃごちゃいってないでかえすんだぜえええ!!」
「じゃあ、帽子返してやるから、お前の家族皆殺しでいいな?」
「ゆっ!?」
さきほど赤まりさに投げかけた質問と同じ質問をする。
しかし、仮にも「良いゆっくり」だ、返答は分かっている。
「みんなのためなら、ぼうしいらないぜ!」
「ほぉ、君は良いゆっくりだ」
「れいむとぱちゅりーなら・・・まりさのぼうしがなくても・・・ゆっくりできるぜ・・・」
「むきゅう!とうぜんよまりさ!」
「まけないで、まりさ!」
「どうだじじい!おまえのまけなんだぜ!」
「あぁそうだな」
「ゆっ!?」
まりさは別の透明な箱に入れられた、しかし、どこかでこれで終わりだと安堵した。
これからはどんな人間にも一切関わらず生きていこう、三人の力をあわせればどんな苦難も乗り越えられる。
既にまりさの頭の中にはこれから先、幸せに生きていく自分たちの姿を想像しているのだった。
「実はー、透明な箱ってー、絶縁体だったんでーす」
「ゆっ!?いみわからないぜ!ぜつえんするのはおにいさんとだぜ!」
「まぁ、確かにぃ、俺はぁ、死後天国なのは間違いないチョベリグッ」
「おにいさんはまちがいなくじgゆぎゃああああああ!!」
まりさに当てられた物は河童印の護身用スタンガンであった。
ただし、ちょっと改造すれば、ゆっくり程度には致死量の電流が流せるようになる。
ただ、ゆっくり自身がどの程度電気を流せるのか分からず、何かに通電されては洒落にならないので、透明な箱の中でやる。
「ぎゃあああああああ!!」
「あっはっはっはっは!!まりさのボルテッカーだー!」
「あああああ・・・ぷしゅぅうう」
「おお、煙ってマジで出るんだなー、けど、ぷしゅうううって自分で言うもんじゃねえだろ」
あたりに餡子が焦げた臭いが充満する。
さっきの威勢はどこへいったのか、まりさはスタンガンを見て怯えるばかり。
「ほーれほーれ」
「やめてね、びりびりやめてね、ゆっくりできないよ」
「びりびりー!!」
「ゆぎゃあああああああああ!!」
「やーめた」
「ゆ・・・?」
「やっぱりやめない!」
「ゆううううげええええええ!!」
「おねがいだから・・・・・びりびりは・・・」
「言われなくともやってあげます!!」
「ぎゃあああああああ!!」
「びりびりやだよ・・・こわいよ・・・・おにいさん・・・まりさが・・・わるかったよ・・・」
「まりさは悪くないよ、お兄さんが悪いんだよ」
「ならどうして・・・こんなこと・・・するの・・・・?」
「楽しいから!」
「ゆぎゃああああああああああ・・・・あああ・・・あ・・・・・あ・・・ゆべぇ!」
何度もスタンガンを当てているうちに、餡子を吐き出してまりさは絶命した。
「まりさ・・・お前の形見の帽子は大事に使っていくぜ!!」
いまだに帽子を被っているこの男、ある意味変態お兄さんである。
「しかし、まりさがこんな酷い目にあってるのに、お前ら妙に静かだな・・・うん?」
透明な箱にはぱちゅりーとれいむしかいなかった。
ただし、れいむの頬は大きく膨れており、明らかに不自然だ。
「ぷくー!!」
「ほんやくすると、れいむはぜったいいきのこったこどもたちをわたさないわ!
わたしとれいむはどうなってもいいから、このこたちだけでもゆっくりさせてあげてね!」
「なるほど」
男は妙に素直に引き下がり、どこかへ去っていった。
「れいむ!やったわ!おにいさんがどこかにいったわ!」
「ぷくぅううう!」
「むきゅん、おにいさんがもどってくるかもしれないから、こどもたちはまだそこね!
わかったわ!すこしようすみね!」
ぬか喜びも束の間、お兄さんはヤカンを持って戻ってきた。
「むきゅ!?それでなにをするの!?」
「まぁ、熱湯とか入ってねぇから安心しろ」
言うや否や、れいむの口にやかんの口を押し当てる。
中には多量の水、大きめのヤカンなので、れいむに匹敵する体積があるだろう。
「警告するぞ、赤ん坊を吐き出したら、吐き出された赤ん坊をぶっ潰して殺す、以上だ、じゃあ頑張れ」
「ぷくぅう!?・・・ぐ、がぼがぼぼぼぼ!」
「れいむー!!」
ヤカンの中の水がどんどんれいむの口に入って行く。
れいむの体積並にある水を全て飲み切るのは不可能だろう
しかし、赤ん坊を吐き出せば、即座に殺される、つまり、無理をしてでも水を飲み切るしかない。
「ぷくうう!がぼぼぼ!」
「も、もうこれいじょうのむのはむりといってるわ!
おにいさんやめて!!」
「こっからが本番よ!」
ヤカンの水はまだ尽きない、徐々に口の中に水が満たされていく。
つまり、赤ん坊がこのままではおぼれるという事である。
「どうするれいむ!赤ん坊を溺死させるか、俺に殺してもらうか!」
「むきゅうううれいむうううう!!」
「ごぼぼぼ・・・・!」
「ごぼ・・・ぷくー?」
「むきゅう?くちのなかにほのかなあまみが・・・?
だめー!!れいむだめー!!」
「ごーく♪ごーく♪しあわせー!!」
「こいつ水全部飲み切りやがった・・・」
れいむは自分の体積以上の水を飲んだため、身体が少し大きくなっている。
しかし、頬のふくらみは無くなっている、つまり・・・
「あがじゃあああん!?あがじゃんはどごおおおお!」
「れいむ・・・おちついて!ざんねんだけど・・・あなたがのんじゃったのよ!!」
「ぞんなあああ!」
「そうだね、プロテインだね」
「むきゅう・・・しかたないわ!こどもはこれからもつくれるけど
わたしたちがしんでしまったらおかあさんも・・・こどもたちもむくわれないわ!
これからゆっくりいきましょう!!」
「ぱちゅりー・・・」
「あー、ごほん、自分たちの世界に浸っている所申し訳ありませんが」
「おにいさん!?」
「むきゅ!!」
視野が狭すぎるのか、男の存在を完全に忘れていたようである。
そして、男は帰宅時にプレゼントされた、花の冠を手に取った。
「おにいさん・・・?」
「これを皆で作ってくれたんだな・・・俺はぁ、嬉しくて涙ちょちょぎれだよ」
「おにいさん、めをさましてくれたの!?」
「おう!!ゆっくりしていってね!!」
「ゆっ!?」
喜ぶのも束の間、れいむが見たものは、男によってバラバラに引き裂かれる花の冠であった。
一匹につき一本の花を探して、協力して作った冠。
お兄さんのために、頑張ってゆうかを説得したのに。
この人は、何の躊躇もなく、簡単にそれを引き裂いた、むしろ楽しむかのように・・・
満面の笑顔なのだ、ゆっくりの家族達の食事を見守るような、遊んでいる時のような
その時の愛でお兄さんの時の『やさしい笑顔』を、今、浮かべているのだ。
「ゆがああああああ!!おにいざんはもうじねええええ!!!」
「れ、れいむ!!」
「そうでなくっちゃおもしろくねぇ!ヒャア!虐待だぁー!!」
30分後、底部を焼かれ、片目は抉られ、身体中の傷から餡子がだだ漏れ、リボンや髪をボロボロにされ、れいむは再び透明な箱に入れられた。
「さぁて、これで最後だ」
「むきゅううう!れいむうううう!」
「ゆぅ・・・ゆぅ・・・・・」
「れいむでも、ぱちゅりーでもいい、好きな方を選べ」
「むきゅー、なにをよ!」
「ぱちゅりーがこのれいむを殺せ、大丈夫だ、のしかかれば餡子が飛び散って死ぬ。
そしたらぱちゅりーだけは生き残らせてやろう
殺さないのならば、俺が二人とも殺す」
「むきゅううう!????」
この男は何を言い出すのか、自分がれいむを殺すわけないだろう。
ぱちゅりーはそう思っていた、しかし、れいむは違った。
「そんなことできるわけないでしょ!
おにいさんばかなの?しぬの!?」
「ぱちゅりー・・・れいむを・・・やっていいよ・・・」
「れいむ!?」
「このままだと、ふたりとも・・・しんじゃうよ・・・・それに・・・れいむはながくないよ・・・
だから・・・ぱちゅりーだけでも・・・」
「むきゅう!むりにきまってるでしょ!」
「ぱちゅりーにさいごをみとどけられるなら・・・れいむはとてもゆっくりできるよ・・・」
「む、むきゅう・・・」
「それと・・・わがままかもしれないけど・・・おにいさんを・・・たすけてね・・・」
「この期に及んでまだいうか」
「むきゅう!・・・このおには・・・あくまは・・・」
「おい、パチュリー、お前も死にたいのか」
「おにいさん・・・やめてね・・・
ぱちゅりー・・・いいよ・・・やって・・・れいむたちのぶんも・・・ゆっくり・・・いきてね・・・」
「むきゅうううう!!」
意を決したかのように、ぱちゅりーは夢中でれいむを潰した。
自分の身体が弱い事も忘れたかのように、れいむの上を何度も飛び跳ねる。
その度にれいむが「ぷぎゅ」とか言いながら、餡子を吐き出すさまは、男にとってなかなか滑稽なものであった。
「むきゅ!むきゅ!!」
「ぷぎゅ!ぷぎゅ!!」
「むきゅうう!むきゅうううう!」
「ぶべぇ!!・・・・ぱちゅりー・・・ゆっくり・・・し・・・・・ね・・・・・」
「むきゅううううう!!?」
「え?なにこのれいむ、ひどくね?」
実際は「ゆっくりしていってね」の「ていって」の部分が掠れて声にならなかっただけなのだが
ぱちゅりーどころか男にも「ゆっくりしね」にしか聞こえなかった。
「さて・・・なんかお前カワイソウだから、すぐに楽にしてやるよ」
「むきゅきゅ・・・」
「ん・・・?」
「むーっきゅっきゅっきゅっきゅ!あはははは!!」
「ヤンデレ!?」
ぱちゅりーは完全に壊れてしまった。
目の前で家族を惨殺され、最愛のれいむにも最後の最後で裏切られてしまったのだ。
もうこうなっては虐待しても反応が似たり寄ったりなので面白いものではない。
「むきゅーん!!
ゆっくりをころすのってさいこうね!!おにいさんのきもちがわかったわあああ!!」
「ハ?」
「もっともっともっともっところしたいわ!!
わたしのてをあんこでそめさせてえええええ!!」
「お前の手ってどこだよ・・・
うーむ、しかしこれは珍しいな、使えるかもしれない」
「むきゅきゅ!あははは!!」
男は叩き潰そうと考えていたが、それを止め、このぱちゅりーを飼うことにした。
目には目を、ゆっくりにはゆっくりを、である。
ゆっくり虐待、および虐殺に使えると思ったのだ。
その後、ぱちゅりーはゆっくりを殺すためなら何でもした。
訓練を積んで、ふらん一匹は撃退できるほど、とてもぱちゅりーとは思えない身体能力を得た。
ゆっくりの知識は男の比にならないほど詰め込んである。
そして何より「ゆっくりしていってね!」の一声だけで、ゆっくりを家族ごと、あるいは群れごとおびき出すことができる。
この最悪のぱちゅりーと、男が組む事によって、この一人と一匹はゆっくりハンターとして
幻想郷10本の指に入るほどの実力者となった。
まりさ帽子の二重人格お兄さんと腹黒ぱちゅりーという個性的なコンビは中々に有名となった。
ただ、その二重人格が災いして、愛でお兄さんという名の休息期間が長い。
もし、生粋の虐待お兄さんだったら、頂点を目指す事ができたかもしれない。
「ちんぽー!!ぺにぺにー!!」
「わがらないよおおお!ぱちゅりーどうしてそんなことずるのおおお!!」
「むきゅーん、いいかおね・・・ないて、わめいて、さけんで、ぜつぼうしながらしんでいくのよ」
「ちんちんまらまらきょこんきとおおう!!」
「わがらないよおおお!!」
今日もゆっくりの悲鳴が響く―――
どうも、初ゆっくり虐待SSでした。
お察しの方もいるかと思いますが、作者は両刀です、愛でるのも虐めるのも大好きです。
矛盾や誤字脱字に変な文法が多いかもしれませんが、多めにみてやってください。
最後の方は力尽きて賢者モードになった感があります、ごめんなさい。
それではまた。
最終更新:2022年05月21日 23:14