竹取り男とゆっくり 8
*登場人物
男・・・主人公。竹切って売って生活してる人。餡子好き。
甘味屋の店主・・・ゆっくり饅頭を売ってる人。虐待好き。
ゆっくり・・・ヒロイン(笑)
*あらすじ
無類の餡子好きの竹取り男は、ゆっくり饅頭を食べた瞬間にすっかりハマってしまう。
甘味屋でぱちゅりーとれいむの入った「繁殖セット」を買って赤ぱちぇと赤れいむの繁殖に成功したのだが、
なりゆきで「子供は食べない」と約束してしまったことから、男は饅頭が食べられずに悶々とした毎日を送っていた。
そんな秋の終わり、たくさんの野良ゆっくりが竹取り山に引っ越してきて冬籠りをはじめる。
やつらの狙いは春先のタケノコ。
男は副収入源であるタケノコを守るため頻繁にゆっくり狩りに行くことになったが、素敵な饅頭ライフも手に入れてそれなりに幸福だった。
空も澄みわたり、季節は早春。
野山にはわずかに雪が残っているものの、ここ幻想郷の竹取り山にも、ひとしく春の風が舞いきたる。
つまり、やつらが目覚めるのだ…。
ボコッ
竹に覆われた地面に、小さな丸い穴が開く。
その中からヒョッコリと顔を出したのは、ゆっくりまりさ。
まりさはキョロキョロとあたりを見回すと、元気よく巣を飛び出した。
「ゆっくりー!!」
続いて、つがいのれいむも「ゆっくりー!!」と飛び出した。
「ゆっくりー! ゆっくりしていってね!」
「ゆーっ! ゆっくりしていってね!」
2匹は、餡子がたっぷりと詰まった体を伸ばしたり縮めたりしながら、あったかい目で景色を見ている。
冬の終わりがよほど嬉しいらしく、しばらく野山の竹にまで「ゆっくりしていってね!」と声をかけていた。
それから頬を擦りあわせたり髪をぺろぺろして仲良く過ごしていたところ、だんだんおなかが空いてきた。
「れいむ! たけのこさんをさがしにいこうね!」
「ゆゆっ! そうだね!」
まりさとれいむは「ゆっゆっ!」と鳴きながら山道を跳ねていった。
「ゆっゆっ」
「ゆっ! ゆゆ!」
「まりさ、たけのこさんってどんなの?」
「ながくてまるくてとんがってるんだよ!」
「ゆ? へんなかたちだね!」
「でも、おいしくてゆっくりできるんだって!」
「ゆゆ! ぐるめなれいむにおいしいたけのこさんをたべさせてね!」
「ゆっ! ゆっくりまかせてね!」
2匹は楽しく会話をしながら、ゆっくりとタケノコを探した。
あまりにゆっくりしすぎて夕方になった。
「ゆぅ……れいむ、さむくてゆっくりできないね」
「そんなことよりたけのこさんだよ!」
午後から急に寒さが戻り、太陽は厚い雲にさえぎられて薄暗い。
今までの暖かさは春の訪れなどではなく、単なる小春日和だったようである。
ふつうの動物ならあわてて巣に帰るところだが、2匹はタケノコ探しをやめなかった。
食い意地ばかり優先して、寒さが戻ったらどうなるかなど考えもしなかった。
「どおしてみつからないのおおおおおおおおおっ!!!??」
数時間後、まりさは森の中で絶叫した。
この季節、ほとんどのタケノコは土の中だということを、まりさは知らなかった。
「まりさはつかれたよ! ここでゆっくりしようね!」
「ゆっゆっ! そうだね! ゆっくりしていこうね!」
そうしてゆっくりと休憩するあいだに、全裸にひとしい体には寒風が突き刺さる。
こうなってはタケノコ探しどころではなく、2匹のゆっくりは「ぷるぷる~!」と震えながら密着して暖め合っていた。
そして、ついに夜がきた。
「ゆ゙ゔゔゔゔっ!! さむいいいいいいっ!! ゆっぐりできないいいいいいいいっ!!」
「ばじざああああ!! さむいよおおおおおおおおお!!」
いい加減に諦めておうちに帰ればよいものを、2匹はいつまでもその場で震えていた。
この期におよんでもタケノコへの欲求が止められず、この寒さがやわらいだらまた探しに行こうなどと考えていた。
「かぜさんもっどゆっぐりじでねえええええ!!」
「でいぶをゆっぐじざぜでねえええええ!!」
ビュゴオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!
「「ゆ゙っゆ゙っゆ゙っゆ゙っゆ゙っゆ゙っ!!」」
そうして暗い森の真ん中で、まりさとれいむはいつまでも暖かくなるのを待っていた。
翌日…。
小雪のチラつく朝、2匹は両目を限界までヒン剥いて、凄まじい表情でカチンコチンに凍っていた。
意識を失う直前まで痙攣していたのだろう……その表情はあまりにも壮絶だった。
…まりさは口をあんぐりと開けて。
…れいむは歯を食いしばって。
まるで阿形と吽形のように、2匹のゆっくりはあたりに威風をはらいながら仲良く凍っていた。
* * *
その日、竹取り山の竹取り男は、大きな籠を背負って家を出た。
「う~、寒い!」
今日は、この山に移住してきたタケノコ狙いのゆっくりを駆除しに行く日だ。
朝霧のたゆたう中、深い竹の森に入ってゆくと、ほどなくしてお目当てのものが見つかった。
「あったあった。おい、ゆっくりしてるか?」
……返事はない。
それは、例の阿形まりさと吽形れいむだった。
カチコチの冷凍饅頭となった2匹を手にとった男は、その顔があまりにも凄惨すぎて噴き出してしまった。
食べ物というより、屋根に乗せて鬼瓦にできそうだ。
まぁ顔はマズいが、中の餡子はすっかり甘くなってるだろう。
2匹を背中の籠に放り投げると、中でぶつかって「カッチーン!」と良い音がした。
「おぅ、今日は大量だな」
昨日が春だと勘違いしたゆっくりは2匹だけではなかった。
竹取り山のあちらこちらに、醜く顔のゆがんだ冷凍ゆっくりが転がっていた。
…冬の間は、ごく稀に暖かい日がある。
すると、ゆっくりの中には春が来たと勘違いするものがいる。
一度春だと信じて巣を飛び出したゆっくりは、たとえ寒さがぶり返そうとも、なかなか冬籠りに戻ろうとしない。
長いあいだ我慢してやっと解放されたと思ったのに、またゆっくりできない冬籠りに戻るのは嫌なのだろうか…。
それとも、春のちょっと寒い日という程度に考えているのだろうか…。
とにかく、小春日和の翌朝は、こうして凍りついたゆっくりが苦悶の表情で転がっているのが常だった。
「赤ゆ見っけ」
つがいのありすとまりさの間に、6匹のプチトマトサイズの赤ゆっくりを見つけた。
男はその中から1匹の赤まりさをつまんで口に入れると、コロコロと転がして溶かしていった。
「ゅ……ゅ……ゆっくち?」
シャリッ!
「ゆぴぃっ」
解凍されて意識を取りもどした赤れいむを歯ですり潰すと、口に広がるのはシャーベットの食感。
水気の多い赤ゆっくりならではの食感だ。
そして、一晩中寒さに苦しんだことで増した芳醇な甘み。
う~ん、うまい…!
男は残り5匹の赤ゆっくりを順番に堪能しながら、冷凍ゆっくりを次々に捕獲してゆく。
すると、瓢箪のような体型をしたれいむに出くわした。
おなかのあたりを撫でてみると、案の定、胎生にんっしんっしている様子。
このれいむで、ちょうど籠がいっぱいになった。
帰宅すると、子ぱちぇと子れいむを寝かしつけていた母ぱちゅりーが、神妙な面持ちで居間から出てきた。
男は籠をサッと背後に隠すと、「ただいま」と言った。
ぱちゅりーはいつもどおり、「むきゅ、おかえりなさい」と言う。
男がそそくさと台所に向かおうとすると、ぱちゅりーが声をかけてきた。
「おにいさん…また"あれ"をたべるのね?」
ウチの子ゆっくりの情操教育によくないということで、ぱちゅりーの提案で、男が食べるゆっくりは"あれ"という言葉に置き換えている。
「…なんだよ。俺の趣味を邪魔するのかよ」
「むきゅ、ちがうわ。でもおにいさんが"あれ"をたべているところを、もしもこどもたちがみたら…」
「なんだようるせぇな! だからこうやって、台所でコソコソ寂しく食ってるんじゃねぇか! ここは俺のおうちですよ!?」
…て言うかなんなんだ、この難しい年頃の子供を持った夫婦がするような会話は!
「くそっ、なんだってこんな苦労しなきゃいけねぇんだよ! 俺はただ饅頭が食いたいだけだっつーの!」
男がブツクサ言いながら台所の戸を閉めると、ぱちゅりーは悲しそうな顔でむきゅむきゅと居間に戻っていった。
「さぁて、おやつの時間だぜ」
街で買ったカキ氷製造機を用意して、どのゆっくりから食べようか見定めていた時である。
ぱちゅりーがれいむを連れて、戸を開けてむきゅむきゅと入ってきた。
…器用になったもんだ。
「むきゅ! おにいさん、おなかがすいてるならおやさいをたべるといいわ!」
「ゆゆ! いっしょにたべようね!」
そう言って白菜を引きずってきた。
この2匹は、前々から男のゆっくり饅頭食いをやめさせようと画策していた。
子ゆっくりの教育によくないし、なにより同族を食べられているのだから…。
「あのなぁ…俺は今、饅頭が食べたいんだよ」
「むぎゅ? おやさいのほうがゆっくりできるわよ!」
「ほら、とってもおいしいよ! むーしゃむーしゃ!」
2匹はさも美味しそうに、白菜の葉っぱを千切ってむしゃむしゃと食べて見せた。
「あぁそーかい。じゃあ俺は忙しいから、ゆっくりさよーなら!」
「む、むきゅ!? おにいさん、おやさいを…!」
「もっとゆっくりしていってよー!」
2匹を白菜ごと家の外に放り投げると、男は台所に戻った。
時間が経ったせいで、籠の上のほうのゆっくりがほんの少し解凍されていた。
「ゆ…ゆ…おじさんだれ…? ゆっくりできるひと…?」
皮のふやけた成体のゆっくりれいむが、うっすらと目を開けて尋ねてきた。
男は無言でれいむを持ちあげると、カキ氷製造機の台に乗せて、上からプレスしてれいむを固定した。
「ゆっ……いたいよ……ゆっくりやめてね……」
キュルキュルキュルキュルキュルキュル!!
「ゆぐゔゔゔゔゔゔゔゔっ!!!??」
ハンドルを回すと、固定されたれいむがクルクルと回転する。
すると、台に備えつけられた鋭いカッターが回転するれいむの底部を薄く薄く削りはじめた。
やわらかい音とともに、台の下かられいむのあんよの皮が出てくる。
そして…
ガリガリガリガリガリガリッ!!
「ゆぎえあぁ!? ゆぎゃあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ!!!」
まだ凍っているれいむの餡子が削られて、お待ちかねのカキ氷が出てきた。
「だっ…だずげでぇ!!! いだいよぉ!!! おめめがまわるよぉ!!! ゆっぐりでぎないいいいいい!!!」
コミカルに回るれいむが必死に命乞いをしているうちに、皿の上には黒真珠のような光沢を放つフワフワのカキ氷がこんもりと盛られた。
「ゆ゙っ……ゆ゙っ……もっとゆっくりしたかった……」
そう言って白目を剥いているれいむをよそに、男はカキ氷をひと口食べてみた。
「おふう……っ!!」
…美味しいものは、最初のひと口がもっともヤバい。
やわらかな口溶けの後、しっとりとした上品な甘みが広がってゆく。
身も心もとろけるようなまろやかさに、クラッ…と眩暈をもよおした男は壁にもたれかかった。
一瞬、死んだはずの両親が遠くで手を振っているのを見たような気がした。
「あ、危なかった…もう少しでトリップするところだったぜ…」
この一品、ただのカキ氷に餡子をかけたような手抜き品ではない。
一晩中寒波に苦しみつづけ、あげく冷凍状態となったゆっくりそのものを直に削った絶品だ。
時として大自然の加工の力は、人間の調理技術など軽く凌駕するのである。
…それはさておき、男はカキ氷を平らげては削り平らげては削って、れいむはとうとう髪だけになって機械のまわりに散った。
「ごちそうさまでした」
丁寧に両手を合わせると、男は次の冷凍ゆっくりを籠から取り出した。
今度は、金髪に黒いとんがり帽子のコントラストが印象的な、成体のゆっくりまりさ。
男は帽子だけ奪って捨てると、まりさを台に乗せてプレスで固定した。
「ゆふん……まりさ……もぅたべられないよ……ゅ……」
キュルキュルキュルガリガリガリガリガリッ!!
「ゆんぎゃばあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ!!!!???」
古典的な寝言をほざいて眠りこけていたまりさは、あんよを削りとられ、中身の餡子を粉砕される激痛にカッと両目を開いた。
「ゆっ! ばでぃざのごばんばどごっ!? ゆぐゔゔゔ!!! どぼぢでごんなごどになっでるのおおお!!!?? …ゆ゙っゆ゙っゆ゙っゆ゙っ!!」
目覚めた瞬間、夢の世界で食べていた美味しいご飯を探しだすまりさ。
だが、想像を絶するような痛みで現実に引き戻され、おかれた境遇に疑問を投げかけた次の瞬間、すでにまりさは目の下まで失って痙攣していた。
なんとも目まぐるしい最期だった。
まりさの短かったゆん生と引きかえに、皿の上には、一見すると先ほどのれいむと同じような黒く輝くカキ氷。
だが……
「いただくぜ」
パクッ
「んぐゔゔゔ……っ!!」
違う、違うのだ。
まりさの粒餡カキ氷……それはれいむの上品なこし餡カキ氷にくらべて、より荒々しく、素材の持つ独特の風味をそのままお伝えしてくる。
どっちも甲乙つけがたい味だ。
「ごちそうさまでした…」
男はペラペラになったまりさの皮に両手を合わせると、3匹目の冷凍ゆっくりを機械にセットした。
……まだ食うんか! とツッコミが入りそうだが、この男の餡子好きは天井知らずなのだ。
そうしてしばらく「ゆっくりカキ氷」を堪能していた男は、今度は違うメニューを楽しむことにした。
次に手に取った冷凍ゆっくり…それは最後に見つけた瓢箪のような形の胎生にんっしんっれいむだった。
まだ意識を取りもどしていないそのれいむを、水をはった大きな鍋に入れて火にかける。
やがて水は湯となり、解凍されたれいむが目を覚ました。
「……ゆっ? ここはどこ?」
「俺の家だ」
「おじさんだれ?」
「山でくたばってたお前を助けた優しいお兄さんだよ」
「ゆゆ! やさしいおにいさんはれいむのおうちでゆっくりしていってね!」
…だから俺の家だってのに!
おうち宣言をするまでもなく、すでに自分のおうちと決めているれいむだった。
「ゆ? ゆ? ゆ?」
れいむは周囲をキョロキョロと見回すと、自分がお湯に入っていることに気づいた。
「ゆっ! あったかいね!」
「湯ッ! お風呂っていうんだぜ、気持ちいいだろ」
「ゆゆ~ん♪ ここをれいむのゆっくりぽいんとにするよ!」
「そうだな、そこはお前専用だ」
「ゆゆ! ものわかりのいいおにいさんだね! れいむはかんしんしたよ!」
「そいつはどぅも。背中流してやるよ。 …頭しかないがな!」
すでに上から目線のれいむだが、男はさして気にもせず、おタマでれいむの後頭部に湯をかけてやった。
「ゆふーっ! ゆっくりぃ…………ゆ~ゆゆゆ~ゆゆ~~♪」
生まれて初めてのお風呂の気持ちよさに、れいむは音痴な歌まで歌いはじめた。
「ところでお前、腹の子供はどうだ?」
「ゆゆ~…ゆ? もうすぐうまれそうだよ! おにいさんにはとくべつにれいむのかわいいあかちゃんをみせてあげてもいいよ!」
「そうか…楽しみだな」
鍋風呂でふんぞり返って、すこぶるご機嫌なれいむ。
「このおみずさんをあかちゃんの"うぶゆ"にするよ!」とか言いながら、喉の奥をこれでもかと見せつけながら歌っている。
「ゆ…おにいさん、おみずさんがあつくてゆっくりできなくなったよ! なんとかしてね!」
「そろそろかな?」
「ゆゆ? なにいってるの? れいむのいうことがきこえないの? ゆっくりしないでさっさとおみずさんを……ゆ゙ん゙っ!?」
すると、長いあいだ湯につかって完全解凍されたれいむの中の赤ゆっくりが、水圧で窮屈になった母体から抜け出そうと暴れはじめた。
「ゆ゙!? ゆ゙っぎい!! いだいっ!! いだいよおぉぉぉ!!」
中身の餡子を引っ掻き回すような赤ゆっくりの動きで、強制的に産気づくことになったれいむ。
「おい、あんまり暴れると子供が潰れるぞ?」
「ゆぐっ!? やべでね!! きたないてでれいむにさわらないでね!!」
「…あぁそうかい」
れいむは歯を食いしばりながら、全身ヌメヌメした餡子汗にまみれて息ばっていた。
次の瞬間、ボッ…と音が聞こえそうな勢いで産道が開いて、透明な湯に茶色い餡子汁が噴き出した。
「でいぶのあがぢゃん!!! もっどっゆっぐじうばれでねええええええ!!!!」
そんなれいむの言葉に反してますます暴れる赤ゆっくり。
赤ゆっくりがいつまでも飛び出してこないのは、産道から流れこんできた熱い湯に驚いて反対側に逃げようとしているためだ。
だが、狭いおなかの中に逃げる場所などあるはずもない。
熱い湯に襲われた赤ゆっくりは、半狂乱になってれいむの餡子をこねくりまわした。
「おにいざんはなにじでるのおおお!!? でいぶがくるじんでるんだがら、ざっざどだずげなぎゃだめでじょおおおおお!!!!???」
「お前さっき汚い手で触るなって言ったろ。俺はゆっくり見てるから早く産めよ」
「ごのぐぞじじいいい!!! でいぶをだずげろおおおおおおお!!!! ぞれがらゆっぐりじねえ゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙!!!!!」
男がそっぽを向くと、無視されたことに怒り狂ったれいむは真っ赤な茹で饅頭のようになって湯気を噴いた。
だが、すぐにまた苦しみ出した。
「ゆ゙ごお゙お゙お゙っ!!!! ぐぐぐぐっ…ゆがっぐっ…ぐ…………ゆっ!?」
すると、あれほど暴れていた赤ゆっくりがピタリと静かになり、れいむのおなかの痛みも引き潮のように去っていった。
「ゆふぅぅ…」
れいむは安堵して笑顔を見せる。
「れいむのあかちゃん、やっとゆっくりしてくれたんだね? ききわけのいいあかちゃんだね!」
そう言うと、赤ちゃんを産むためにゆっくりとおなかに力を入れた。
「ゆんっ」
トロリ……
……れいむの産道からなんの抵抗もなく流れてきたもの。
それは、こげ茶色の餡子汁と、小さなデスマスク、そしてミニサイズの赤いリボンだった。
「ゆわ…ぁ………ゆわあああ………ゆわああ…………」
外の世界を見ることもなく、お母さんれいむにごあいさつすることもなく、赤れいむは産道を出る前にそのゆん生を終えていた。
グツグツグツ…
いよいよ鍋の湯が煮立ってきたが、死産のショックから立ち直れないれいむは、赤ちゃんの餡子で茶色く染まった湯を呆然と見下ろしていた。
「どぼじて……? れいむのあがぢゃんどぼじて……? うぶゆまでよういしてあげたのに……どぼぢで…………?」
…用意したのはお前じゃないだろ、というツッコミはさておき。
絶望して餡子脳が停止している間に、閉じる意思を失ったれいむの産道へ熱湯が流れこんでゆく。
そうして内から外から溶かされていったれいむは、まもなく致死量の餡子を流し尽くして赤ちゃんの後を追った。
れいむがあの世で赤ちゃんとゆっくりできたかは永遠の謎である。
…さて、れいむ親子の最初で最後のお風呂となった鍋の中では、立派なお汁粉がホコホコと湯気を立てていた。
「カキ氷ばっかだと腹壊すからな…」
おタマで鍋をかき混ぜながら、男はカキ氷に使った数匹のゆっくりの目玉をまとめて入れた。
寒天質でできたゆっくりの目玉は、単体で口に入れてもただの寒天。
だがお汁粉に入れれば具材となって味も引き立つ。
…あんみつに入った寒天を想像すれば分かってもらえると思う。
美味を約束する香りが、男の鼻腔に吸いこまれてゆく。
男はおタマでお汁粉をすくうと、「いただきます」も忘れて口に入れた。
「あっはぁ……!!」
津波のように押しよせる、甘美な誘惑…。
男の脳細胞が一斉に活性化して、これまで食べてきたゆっくり饅頭たちが虹の向こうで微笑んでいるのが見えた。
「あ゙…?」
夢の世界から帰ってきた男は、涎をぬぐって頭を振った。
「あぶねぇ…また妙なものを見た気がするぜ…」
男はふたたびお汁粉を口に運び、まもなく鍋はカラになった。
最近はこうして冷凍饅頭を拾いに行っては、カキ氷やお汁粉、また羊羹などに加工して楽しんでいた。
そのまま食べてもいいが、ちょっと手を加えるだけでまた違った味わいを楽しめる。
ゆっくり饅頭は奥が深い…。
そうしておよそ10匹前後のゆっくりを完食した男は、腹をパンパンに膨らませて、余りの入った籠を持って地下室に下りた。
吐息も白くにごる地下室には、大きな麻袋が3つ壁にかけてあり、それぞれ『れいむ』『まりさ』『ありす』と記されていた。
こうして種類ごとに分別しておいて、その日の気分で食べ分けるのだ。
れいむとまりさは個体数が多いだけにすぐ補充できるが、男の餡子好きのせいで消費もまた早い。
膨らんだありすの袋を見て、そろそろ甘味屋に売りに行くことにした。
~あとがき~
道端でゆっくりが凍ってたら、
私ならきっと拾っちゃいます!(笑)
読んでくれてホントにありがとう!
また次回でね♪
~書いたもの~
竹取り男とゆっくり1~8(執筆中)
暇なお姉さんとゆっくり
せつゆんとぺにこぷたー
悲劇がとまらない!
あるゆっくり一家のひな祭り
最終更新:2022年05月21日 23:41