『Y・K達はなぜ加工所が嫌いなのか?』


「ゆっゆっゆ~♪」
奇妙な声を上げながら
私の家の近くまで来た人の頭だけの妖怪、通称「ゆっくり」
種類によってゆっくりれいむやゆっくりまりさなど
呼び方はさまざまだが、とりあえずゆっくりと頭につくらしい

さてそんなゆっくりなわけだが、最近人里に下りてきて
畑を荒らす被害が続出している。
かく言う私も被害にあった一人だ
大事に育てていたとうもろこしをほとんどだめにされてしまった
やつらは一口二口しか野菜を齧っていかないので
その分被害が大きくなるのだ。

というわけで畑の害虫と認識されたゆっくりたちは
そうとはしらず今日も私の畑へとやってきたと言うわけだ

「ゆ~おいしそうなおやさいさんだね~」
「ここをまりさたちのゆっくりプレイスにするよ~」
「「ゆっくちちちぇいっちぇにぇ」」

どうやら家族のようだ、声だけ聞くと4匹いるようだ
早速虫取り網と麻袋を持ってつかまえに行く

『やあ!ゆっくりしていってね!』
「「「「ゆっくりしていってね」」」」
元気な返事が返ってきたそこですかさず!

「ゆっ!なにするんだぜくそじじい!さっさとはなすんだぜ!」
ゆっくりまりさというやつを真っ先に捕まえる
こいつはほかのゆっくりを見捨てていく性根の腐ったようなゆっくりだ
しかもつぎの日にはもっとたくさんの仲間を連れてやってくるから恐ろしい。

「ゆっ!まりさをはなしてね!このじじい!」
こっちはゆっくりれいむというやつだ
まりさほどではないが、こいつも厄介な存在だ
まりさを手早く麻袋に詰め込んだ後
れいむも虫取り網で捕まえる

あとはとうもろこしの陰で震えている赤ゆっくりを捕まえるだけだ
これは逃げないので手づかみで簡単に取れる。

「ゆっくちはなちちぇ~!」

さてこのゆっくりたちだが、なんと中身は餡子でできているらしい
自然界で餡子ができるというのはおかしな話だが
実際に食べてみると確かに餡子なのだ
しかもストレスを与えるとあまくなるらしい
どこまでもわからない生き物だ、そもそも生き物なのか?
などと考えていると、あっという間に加工所についた
加工所とはその名のとおり、ゆっくりを加工して饅頭などにするところである
ここでは捕まえたゆっくりを高値で買い取ってくれているので
農作物に被害が出たときには大変助かるところだ

『おーい、もうすぐ加工所だぞー』
「「「「ゆぎゃああああ!!!かごうじょいやああ!!!」」」」
たまにこのようにストレスを与えてやるとぐっと甘みが増して高く買い取ってくれる。
しかし、こいつらは少なくとも加工所には行ったことがないはずだ
なのになぜ加工所という言葉をこんなにも嫌がるのだろうか?
もしかしたら世の中には加工所という言葉に反応しないゆっくりもいるのではないかと私は思った

『ありがとうございましたー』
加工所職員の機械的な挨拶を聞きながら私は先ほどの考えをまとめていた
ゆっくりが加工所という言葉を怖がるにはなにかわけがあるはずだ
加工所に入って生きて帰ってきたゆっくりが広めた?
加工所職員がゆっくりを捕獲する際にネームプレートを見た?
加工所というものそのものがゆっくりが生まれたときからあった?
などなどくだらないことを考えながら岐路に着いた

その後私はわざと畑を野菜だらけにしゆっくりを捕獲しては加工所に売るという仕事をすることにした
これはゆっくりハンターと呼ばれるものに近いらしいが
私のやっていることはただの小遣い稼ぎだ。本業じゃない。
そして捕まえたゆっくりには必ず聞くのだ

『これからお前達を加工所に持っていくからな』と
するとどうだろう、どんなゆっくり、今生まれたばかりの赤ゆっくりでも
「かこうじょいやー!」と叫ぶのである。
なぜだ?私の目の前で生まれたゆっくりでさえ
第一声が「かこうじょいやー!」であった
どう考えても遺伝的要素しかない
しかし加工所が嫌な所だと思った始祖ゆっくりがいて
そいつらの餡が延々と加工所は嫌な所だと告げているのだろうか?
だが加工所はゆっくりが逃げだせるようなつくりではない
では誰かが故意に逃がした?何のために?わからない
わたしは眠りにつくまでずっとそのことを考えていた。


季節は巡り冬となった                                        ⑨<さいきょーね

私は雪山の中を歩いていた
遭難したわけではない、ゆっくりの巣を探していたのだ
なぜこの時期に?この時期ならばすっきりーしていない番のゆっくりがいるだろうと思ったからである
そしてそれはすぐ見つかった
「ゆー…ゆー…」よく眠っているようだ
私はまりさとれいむの番を麻袋に入れると私の家まで連れて行った

「ゆっ!おいじじい!ここからだすんだぜ!」
「出したらいのちだけはかんべんしてあげるわ!」
透明な箱に2匹を入れてしばし待つ

「きこえないのかくそじじい!早くあまあまをもってくるんだぜ!」
『いいよ』「ゆ!?」

『それじゃあ加工所へ行こうね』
「「がごうじょいや”ぁぁぁぁぁぁ!!!」」

そして連れてきたのは立派なお布団、やまもりのあまあま、おもしろそうなおもちゃなどなど
ゆっくりにとってはまさに天国としか言いようのないところだった。

『さあ加工所だ、ゆっくりしていってね!』

そういう前に2匹はあまあまの山へもじどおり突っ込んでいった

「うっめ!!これめっっちゃうっめ!!!」
「がーつがつがつ!うっめ!!うっめ!」
そして私は部屋を後にした

2日後

『やあ、加工所でゆっくりしているかい?おや?』

れいむとまりさの頭に茎が生えていた
おそらくすっきりーしたんだろう

「ゆ!おいじじい!昨日のケーキは安物だな!あまりおいしくなかったぜ!」
『ああ、ごめんよあまりお金がないから、こんどからおいしいのにします』
「ゆっへっへ、わかればいいんだぜ、まりさ様をだまそうたってそうはいかないんだぜ」
「れいむこのおもちゃあきたよ、あたらしいのにしてね!」
『わかりました、すぐ買ってきます』
「ゆっへっへ!わかればいいのよ」

「ほんとにんげんはくずだね!まりささまがおどかしてやったら、こしをぬかしてやがったんだぜ!」
「ゆゆっ!れいむもおどかしたらしーしーまきながらなみだ目ではしって行ったわ!」
「「ゲラゲラゲラ!!!」」

そのころ

『ケーキください、一番高いやつ』
『お兄さんケーキ好きだねえ、いつも買いに来るけど』
『いえ、私は食べないですけど、ケーキが大好きな子たちがいるんです』

『最近の若いのは子供にぱしりにでもされているのかねぇ』

5日後

『やあ!加工所でゆっくりしてるかい?おや?出産かな』

「ゆ!ゆっくり産まれるよ!ゆっくり落ちてきてね!」
「れいむも産まれそうだよ!ゆっくり落ちてきてね!」

ポトッ ポトッ

『『『ゆっくりしちぇいっちぇにぇ!!!』』』

「「ゆっくりしていってね!!!」」
2匹は無事出産を終えたようだ

「おいじじい!早く子供達にケーキをよこすんだぜ!」
「れいむの子供達にもよ!」
『わかりました、すぐお持ちします』

「「ゲラゲラゲラ!!!」」

さてそろそろ準備はできたはずだ
そう思いケーキを持って部屋に入る

「ゆっ!おそいんだぜくそじじい!早くケーキをよこすんだぜ!」
『その前に…ちびちゃんたち…『『加工所につれてっちゃうぞぉ!!!』』

「…ゆ?」

やった…のか?

「げらげらげら、かこうじょはここでちょ?なにいっちぇるのこのじじいは」
「にんげんはばきゃだね、ここがかこうじょでちょゲラゲラ」

やった!ついに加工所を怖がらないゆっくりができた!
私は喚起のあまり震え上がった

「ゆ!ばきゃなにんげんしゃんがふるえてりゅよ!」
「あたまでもおかしくなったんだね!ゲラゲラ!」

さて喜んでばかりはいられない
仕事はこれからまだまだあるのだ


半年後

「ゆ!ばかなじじいははやくおかしをもってきてね!」
『はいはい』
「ゆ!さいきん態度が生意気だよ!お仕置きだね!』
「「「「「「「ゆゆゆゆゆゆゆゆ!」」」」」」」

この1ヶ月でゆっくりの数は1000匹を超えていると思う
そろそろ頃合いかもしれない

『あ、加工所ですか、実は例の件で…』

『ゆっくりたちーこれから重大なお話があります』
「ゆっくりさまをつけろ!このクズやろう!ゲラゲラゲラ!!!」
『えー…コホン ゆっくり様たち、これから重大な話があります』
『君達にはもっと広くて楽しい加工所に移動してもらいます』

ゆっくり達の間で歓声が起こる
それもそのはずだ、もうすでにへやは満員電車のようになっているからだ

『えーそれでは移動します、ついてきてください』
以外にも移動の際には苦情があまり出ずスムーズに移動ができた
途中で腹がつっかえて動けなくなったゆっくり10匹ほどを押し出した以外は

『えーここが君たちの新しい加工所でーす』

そこには何もない金属製の部屋が広がっていた

「ゆ?どういうことなのぜ?」
「あまあまはどこ?」
「ここはさむいよー」

『ここも加工所でーす みんな加工所でゆっくりしていってね!!!』

いっせいにブーイングが起こる、当たり前だ。
『ちなみに出口はそこでーす、帰りたいゆっくりだけでていってねー』

そういうが早いや、ゆっくりが出口に殺到した
「押さないでね!押さないでっていっでるでじょぉぉ!!!」
「早く加工所に戻るのよ!こんなところじゃゆっくりできないわ!」

出口から出てみるとそこは
何もない森が広がっていた

「ゆ!加工所はどこなんだぜ!」
「じじい!だましたなぁぁぁ!!」など
汚らしい罵声が飛んでくるが
もはや出口も閉めてしまった以上、あの楽園はおろか鉄の箱にすら入ることができなくなったのだ。

その後ゆっくりたちは出口の扉の前でで朽ち果てているものもいたが
おおむねあきらめて楽園のほうの加工所を探しに行ったようであった。


数ヵ月後

「おいじじい!まりさを加工所へ連れて行くんだぜ!」
『加工所?加工所でいいのか?』
「いいんだぜ!早く連れて行くんだぜ!」

森の中

『おーい、加工所へ行くよー』

「加工所よ!急がなくちゃ!」
「まりさが先に加工所に行くんだぜええ!!!」など
加工所行きのトラックはいつも満杯になっていた

あの後森に放たれたゆっくりたちは多かれ少なかれ森で生活をしていた
そしてつらいことがあるたび「加工所へ戻りたい」と口々に言うのであった
そのうち森にはじめから住んでいたゆっくりたちも加工所へ行きたいというようになった

代替わりしても遺伝子餡には加工所はゆっくりできるところだということがインプットされたらしい
赤ゆっくりに『加工所へいくよー』と声をかけると「ゆ!ゆ!」と喜びをあらわにするのだった

もちろん待っているのはあまあまにまみれた生活などではなく、お菓子の原料としての厳しい生活なのだが
それをゆっくりたちが知るのはお菓子の原料に加工される寸前である。

わたしはこの仕事で手に余るほどのお金を手に入れ、地元でも有名なゆっくり成金になった
豪華な庭でティータイムを楽しんでいるとがさがさと茂みが揺れだした
そしてその足元に転がってきたものは
「おじさん、ゆっくり加工所へつれていってね!」
私は執事に売却の手配をするように頼んだ

しばらくして執事から急な電話が入った

私は愕然とした

『ゆっくりの値段が今までの1000分の1だと…」

そう私達はゆっくりを捕りすぎたのだ
もはや誰もが『加工所へ行くよ』と声をかければすぐに数十匹のゆっくりが集まるのだ
トラックでわざわざ集める必要もない
市場で売る必要もない
呼べば向こうから来るのだから

私はひざを落としがっくりとうなだれた、そして気がついたのだ
『やはりゆっくりは…』

私はまた小作農に戻った
お金は新たな加工所を作る予定にほぼ使い込んでしまっていた
その当時お金は呼べば来たのだ、深く考えていなかった。
今になってお金のありがたみが身にしみた
(ふふ…これじゃまるであのときのゆっくりたちと同じじゃないか…)
おもわず路上でふきだしてしまった

そして畑へ来るととうもろこしが齧られていた
原因はわかっている
『ゆっくりしていってね!!!』
「ゆっくり加工所につれていってね!!!」

私は迷わずゆっくりを鍬で叩き潰した      終わり

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最終更新:2022年03月13日 23:16