とある場所、とある日。
 ゆっくりまりさとゆっくりれいむが、仲良さそうにほほをくっつけてゆっくりしていた。
 その顔は切なそうで嬉しそうで、どこか悟った様な風情をたたえていた。
「ゆ……そろそろれいむのばんかな」
「まりさのばんかもしれない」
 顔を見合わせ、寂しそうに微笑む二匹。


「みんないなくなっちゃったね」
「うん、いないね」
 ガランとした部屋を見渡す。
 中には何もない。二匹以外のゆっくりは、カケラすら見当たらなかった。
 元気なゆっくりちぇんは、一日前にどこかに行った。
 頭の良いゆっくりぱちゅりーは、20時間ほど前に。
 恥かしがりやのゆっくりみょんは、12時間ほど前に。
 いつも三匹でゆっくりできていたゆっくりありすは、つい1時間ほど前に。
 仲の良かったお友達。
 皆が様々な方法でゆっくりできなくされ、様々な方法で殺されたのだろう。

「まりさのおかあさん、すごくゆっくりしたいいゆっくりだったね」
「れいむのおかあさんもゆっくりしてたよ」
 もういない親兄弟を懐かしむ。
 この二匹は友人や家族が連れ出されても騒がず、ただひっそりと二匹だけでゆっくりしていたため、ここまで持ったのだ。
「もっとゆっくりしたかったね」
「うん、ゆっくりしたかった」
 だが、それももうおしまい。
 不意に、ゆっくりれいむが弾かれる様に部屋から飛び出していく。
 見えない手に捕まれた様にへこんだほほを、ゆっくりまりさは静かに眺めていた。
「ゆぐぐぐぐぐ! まりざぁ! ざよならぁ!」
「れいむ……」
 れいむは、唐突な痛みも、これから自分の身に起こるであろう悲劇を嘆くでもなく、ただ一人残る友人との別れを惜しむ。
 まりさは、そんな友人の末路を思うと、自然と涙がこぼれてきた。
「もっといっしょにゆっくりしたかったよ! それでかぞくになってあかちゃんもいっしょにゆっk……」
 最後まで言い終わる前に、部屋から消えるゆっくりれいむ。
 ゆっくりまりさは、ただ無言ではらはらと涙を流し続けた。

 ぱさりと帽子が置かれた。
「ごめんね、なにもないからこれしかおはかにできないよ」
 呟いて、帽子のないゆっくりまりさは、祈る様に目を閉じた。
 そこは、先ほど親友が飛び出していった場所。痕跡すらない壁を見つめ、一時の別れを惜しんだ。
「さみしくないよ、またすぐいっしょにゆっくりできるもん」
 まりさは、優しく、先ほどまでと同じ調子で壁に向かってゆっくりとほほをすり寄せた。
 何度もしている内に、ゆっくりまりさの熱が伝わり、壁がほのかな温かみをまとう。
 冷たい壁が、ほんの僅かれいむのぬくもりを残してくれた様で、まりさは幸せな気分になった。
「まりさはちょっとだけゆっくりしてるね、またあおうね、れいむ……」
 もういない友人、もうすぐ会える友人との再会を楽しみに待ちながら、ゆっくりまりさは目を閉じた。


「「「ゆっくりしていってね!」」」
「ゆぎゅっ!?」
 突然の大声に、ゆっくりまりさは目を開いた。
 見ると、知らないゆっくり達が部屋にひしめき合っている。
――あぁ『つぎすれ』にきたんだね。
 一匹のゆっくりが、まりさの方を向く。
「ゆっ? ぼうしないまりさがいるよ!」
 その声を合図として、数匹のゆっくりがまりさの方を向いた。
 ゆっくり達は、何が面白いのか分からないが、楽しそうに声をかけてきた。
「ぼうしないこはゆっくりできるの?」
「できるよ! こんにちは、ゆっくりしていってね!」
「いっしょにゆっくりしようね!」
 にこにこと声をかけてくるゆっくり達を尻目に、まりさは再び目を閉じる。
「ゆっ? ねむいの?」
「うるさくしてごめんね! ゆっくりねていってね!」
「ゆっくりべつのことあそぶよ! まりさは、またあとであそぼうね!」
 ぴょんぴょんと離れていくゆっくり達。


 楽しく遊ぶゆっくり達の中、不意におかしな感触に見舞われるものが一匹。
「ゆっ?! いだいよ! なにごれぇぇぇ!!!」
 引きちぎられる様な痛み、吸い取られる様な感触に、ゆっくりまりさは悲鳴をあげた。
「ゆっ! なにこれ! これじゃゆっくりできないよ!」
「ゆゆっ! みょんなことしないでゆっくりしてね!」
 先ほどまでまりさと一緒に遊んでいたゆっくり達は、急に顔の一部がわしづかみにされた様にへこんだ友人を前に、オロオロするばかり。
「ゆっくりたすけるよ!」
 それでも、一部のゆっくりは即座に助けようと動いた。
 数匹のゆっくりが、ゆっくりまりさの帽子や顔に噛み付き、何とかして元の下膨れに戻そうとする。
「「「むむむーーーーー」」」
「いだいいだいいだいいだい!!! やべでぇぇぇぇぇ!!!」
 だが、それは効果がないどころか、ゆっくりまりさを弱らせるという最悪の結果を招いた。
 それを見て、噛み付いていたゆっくりは口の圧力を緩める。
「ぐぐぐぐ……ゆっくりしたけっかがこれだよ!」
 しゅぽんと音を立て、ゆっくりまりさは消えうせた。
「まりざぁぁぁ!!! まりざどごにいっだのぉぉぉ!!!」
「ゆっぐりでぎないよ! ごごじゃゆっぐりでぎないよぉぉぉ!!!」
「だじでぇぇぇぇぇ! おがあざんんんんん!!!」
 ゆっくり達は、即座にパニックに陥る。
 その様子を、帽子のないゆっくりまりさが、懐かしいものを見る目で眺めていた。










 ここは、ゆっくり虐待スレの舞台裏。
 虐待スレで虐待されるゆっくりは、ここから排出され、そのまま二度と戻ってこない。
 今度残るゆっくりはどのゆっくりかは分からない、いやゆっくりが残るかすら分からないが、彼らはそれぞれに、それぞれの方法で殺されていく事だろう。




 『おわらないゆっくり』





 スレの変わり目に、こういう話はいかが?
 とか言って出そうと思ったけど、書き終わってみたらもう次スレ……ゆっくりした結果がこれだよ!
 by319

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最終更新:2022年04月14日 22:55