【まえがき】
レイパー氏からのお題『立てこもり』です。
●
ゆっくりいじめ系2033 ゆっくり学部虐待科の設定をお借りしてます。 その上さらに弄ってます。
●部分部分で作者弄りとか色々あります。作者の方々、本当にごめんなさい。でも反省は(ry
●それらが苦手な方は右上の×を押して、何でもいいので東方を機動してスペルカード集めにチャレンジしてください
●東方を持ってない方は北斗の拳でもプレイしててください。
●ゆっくりはきちんと出てきますので安心してください。
●今回は注意書きを書きました。
●この手のヤツを前々からやりたいと思ってました。
●モスマン可愛いよモスマン
●ぼくの あそびに こんなに さいごまで つきあってくれて ありがとう。
とある大学のサークル棟の一角
通常の部屋2つ分の空間がある部屋がある。
愛ゆえにゆっくりを虐める修羅達の集まるゆ虐サークルの部屋である。
何時もならマグマよりも濃い面々により部屋が騒がしいのだが、昼も終わり三限目が始まってる為か
今はたった一人の男がポツンと椅子に腰を掛けていた。
彼の前のテーブルには白い紙が一枚。そこに書かれていたのは
『お題:立てこもり byゆっくりレイパー』
この紙自体は別に珍しくもなんともない。最近このサークルではゲームに負けた人間に勝者がお題を出すのが流行っている。
そして出されたお題にそった虐待をしてレポートに書く。
ゲームと言っても大抵は麻雀か大富豪かの二択であり、この男も意気揚揚と麻雀にチャレンジし、身ぐるみをはがされたクチである。
それ自体は問題ではない。お題が問題なのだ。
(立てこもり……ゆっくりの場合どこに立てこもればいいんだ?巣?あんな狭いところ無理だろ?
ていうか立てこもりって何すんの?別に警察とかこないじゃん。)
出されたお題(正確に言えば四択から選んだのだが)が思いのほか難しい事に気づき、早くも頭を抱えていた。
下手にお題を伸ばすとサークルの活動に影響が出るかもしれない。ていうかお題の期限は一か月って言われた。
しかし立てこもるってねえ。コモルー?
煮詰まらない思考に嫌気がさし、部屋に置いてある自分専用のまりさの器にお茶を注ぐ。
「ゆぐぅ! ちゅべちゃいよ! ゆっぐじでぎないよ!」
赤まりさの頭を丸ごと取って器にしたそれは、冷たいお茶を注ぐとビクンと体を震わせた。
なんでも中の餡子を特殊な方法で各部分に散らばらせて、生きながらコップになるようにしたものらしい。
その手の発明や実験関係は伊井矢先輩(通称118先輩)の十八番である。このコップも入りたての頃に
わざわざ作って頂いた大切なコップである。
椅子に座りお茶に口をつける。ちょっとだけ心が落ち着いた気がした。
「ゆぐぅ・・・きゃらだのなぎゃがひんやりだよ・・・」
本当はホットの方が良い反応が見れるのだが、今は冷たい物が飲みたかったので止めておいた。
しかしこれは本当にいい。大声も出せず小さな声で、そして目に涙を浮かべながらブルブルと震えるまりさは本当に可愛い
唯一の欠点と言えば、コップと言うよりはおちょこなので、容量が小さいことぐらいか。
まりさの顔を肴に飲める事に比べればデメリットと言うほどでもないが。
「にしてもねー。どうしたもんかー。」
テーブルに肘をついて考えること三分。お茶も飲み終えもう今日は帰ろうかと思ったその時
「おいーっす。みんないるー?」
後ろからみょんな気配と声を感じた。この空気は……
「あねきィィィィィィィィィ!!!!!!!」
「どぼじでぞんなおどろい゛でるのぉぉぉ?!」
【5分後】
「うーん。立てこもりかぁ……」
「そうなんすよ。なんかいい案ないっすかねえ?」
目の前に座って前髪を弄ってるのはあねきィィ先輩。あだ名であるが、テストの名前の欄もあねきィィで通じるので
こっちが本名と化してるらしい。
前髪を弄り終わると、目の前の生きたまま縦に三つに裂かれたれいむの右側の部分を摘んで
ポイっと口の中に放り込んだ。
「ゆぐぅ・・・ゆっぐじだべないでね! ぶえ゛じゃう゛よぐぅ!」
何かしようとしたれいむの頭に容赦なく爪楊枝を刺すと、そのまま口へパクリ。
むーしゃ!むーしゃ!。うん、いい感じに甘い。
あねきぃの方を見直すと、あねきぃは『参加確認ゆ!』と書かれた張り紙と
動けないように底を焼いた子ゆっくり達が置かれている場所に立っていた。
そうして適当な紙に日付を書いて、傍にある爪楊枝に貼り付け、あねきィ専用と
書かれているふらんに刺していた。
「う゛う゛う゛う゛う゛!!!」
前はまりさだった気がする。あねきィィ消費早いよ。
あねきぃは俺の前の席にもう一度座った。
「て、言われてもねえ……私も玉男からお題貰ってるしな。」
「ん? 先輩からお題っすか? 今日は何プレイにするかですね。わかります。」
「ぜんぜんち゛がうよぉぉぉ?!」
そんな事を言ってるとあねきぃの頭の上に急にランプが点灯した。
「あ、そうだ。そうえば親戚のおじさんが確か、」
「ちょっと詳しく!」
思わぬ助け舟の予感に思わず身を乗り出す俺。しかしあねきぃはそんな俺を見て笑っていた。
「るーみあの人形が欲しいです。」
「大貫さんにでも買ってもらえばいいじゃないですか。あの人その昔えらく稼いだって噂ですし。」
「いやサークル全員から一個ずつ買って貰おうかと。」
「汚いなさすがあねきぃきたない。今更そんな、『こぁくま』な女を演出しても無駄ですよ。そんなキャラじゃないでしょ。」
「んじゃるーみあの置物でいいよ。」
「妥協点が何一つ見えないので玉男先輩呼びますね。後ムクさんも。電話で。」
「……ちょっとおじさんに電話してみる。」
なんか覇気が無くなってどよーんとしているあねきぃ。
ちょっと悪い気がしたので、るーみあのキーホルダーぐらいなら買って・・・いや止めた。
ぱちゅりーのアイスにしておこう。安いし。
「でだ。ここでいいんだよな?」
まだ雪の残る山道を上り、着いた先は一軒のコテージだった。
森の中を切り開いたそのコテージは、ぱっと見は高そうなコテージである。
しかしよくよく見てみると、かなり長い期間手入れされてないのか、老朽化が激しい。
話によれば電気・ガス・水道などは今も通ってるらしいが、山という地理的要因を無視しても
あまり住みたくはない。
そおっと近づいてみると、家の中から呑気な歌声が聞こえた。どうやらここで間違いないようだ。
玄関を横切り、そのまま適当な窓から中を覗いて見る。
「ゆっくり~♪」
「ゆ~ゆ~ゆゆー!」
「ゆったりー!」
「とってもゆっくりできるね!」
結構いるなあ……やはり話は本当だったようだ。
遡ること7日前。このコテージの持ち主であねきィィの叔父である承背符氏は語る。
「いやー最近なんかゆっくりの群れが住み着いてるようでな。使いたいなら自由にやってかまわんよ?
どうせ取り壊す場所だ。貴重品など何もないしな。」
流石金持ちは格が違った。
さてさて、コテージに入らずに草葉に隠れていること40分。
そろそろ寒さで手が動かなくなり始めた頃、またあの呑気な声が聞こえてきた。
「ゆっくりかりにいってくるよ!」
「ここでゆっくりまっててね!」
「ゆっきゅりりかいちたよ!」
おお出てくる出てくる。玄関のドアに空いている少し大きめの穴からぞろぞろとゆっくりが。
あの様子だとかなりの数が居るようだ。
全員が出ていくのを確認すると、玄関に近づき貰った鍵でドアを開けた。
玄関の時点で野草や泥やキノコやらが散乱していた。しかしそれを気にしている暇はない。
さっそく馬鹿みたく重たい荷物を下ろすと、そこから木の板と金槌と釘を取り出す。
無論、玄関の穴を埋める為だ。
適当に板を付けてカンカンと金槌で釘を叩く。
すると家の中のあちこちから声が聞こえ始めた。
「ゆゆー! ゆっくりできないよ! やめてね!」
「おおきなおとはゆっくりねむれないよ!」
「とかいはなしえすたができないわ!」
「じゃおおおおおおおおおおん!!!」
そんな声を聞きつつ、順調に作業完了。
もしかしたら他に抜け道があるかもしれないが、それを探す前にまずやるべきことがある。
リビングルームに入ると、予想通りたくさんの子や赤ゆっくりが遊んでいた。
親はいない。これほどのゆっくりぷれいすなら、襲われる危険性はないと踏んでいるのだろう。
この辺りはクマーも出ないしね。
さて、懐から取り出したるアイテムは・・・砂糖の袋である。
台所にあった皿にドサッと入れる。
そうして
「ゆっくりしていってね!!!」
大声で叫ぶと一斉に俺の方を向くゆっくり達。
「ゆっくりしていってね!!!」
「おにーさんはゆっくりできるひと?」
「ぱちゅりーたちはとってもゆっくりしてるわ!」
「いっちょにゆっきゅりちようね!」
「ゆっきゅちー♪」
ああ、悪意も何もない純粋無垢な笑顔。
あれだ。癒される。あのふてぶてしい顔とかも大好きだがこういうのも大好きだ。
「はいはい。この砂糖をあげるから家に居るみんなを全員呼んできてね?」
「ゆっくりわかったよ!!! みんなゆっくりあつまってね!!!」
出るわ出るわぞろぞろと。あちこちからゆっくりがピョンピョンやってくる。
全員集まったのを確認して、数を数えてみればその数なんと21匹。
「ぺーろ!ぺーろ! ちあわせー!」
「すっごくあまいよ!」
「むきゅん!」
好評なようで。俺が透明ケースを荷物から取り出した事にも気付かないようだ。
しかしこれ足りるかな?いくらちっちゃくてもギリギリかもしれない。
無理してでも複数個持ってくればよかったかな?
面倒だが一匹一匹づつ入れていく。
「ゆ? おそらをとんでるみたいー!」
「ゆぅ! あまあまさんまってね! ゆっくりこっちにもどってきてね!」
「たきゃーい!」
特に抵抗などもないので、スムーズに全員引っ越し完了。
なんとかきっちり治まった。少々狭いだろうが仕方ないね。
代わりに砂糖は上から降りかけてあげるから。
「ゆぅーん? あまあまさんがそらからふってきたよ?」
「ゆぅ! ありすのおかおがあまいよ! ぺーろぺーろ!」
「なめるんだねーわかるよー」
お互いの顔をペロペロと舐めはじめた。
- ここでそのまま共食いし始めると思った貴方。鋭いですがそれは別の機会か他の作者とか
他の絵とかになります。
終わったと思うと同時にどっと疲れが湧いてきた。。いやこの作業ではなく、ここに来るまでの山道
で疲れたのだが。
とにかく風呂に入りたい。
まるでうさぎ小屋のような廊下を歩いた先に、風呂場があった。
予想以上である。表現しきれないレベルである。汚さが。
もういいや。ある程度掃除したらシャワーにしよう。
「さっぱりー♪」
軽く汗を流してリビングルームに戻ると、外が微妙に暗くなっていることに気づいた。
窓から見てみればいつの間にか曇空になっていた。寒いぞ。
暖房を探してみると、電気ストーブが一つ。この手のコテージって暖炉のイメージがあったのだが。
いや今回が初めてなんだけどね。とりあえずポチっと。
「ゆ! なんだかぽかぽかするよ!」
「ゆっくりできるね!」
「あったかいんだねー。」
ああ、そうか。こいつらこの家の物は殆ど使ったことないんだ。
そりゃ高い位置にあるし手もないからな。
さて、なんだかんだで狭い箱の中でもこいつらはやっていけてる。
しかし問題はここからだ。
「立てこもりってなにすればいいんだろ?」
そう。次に何をすればいいのかがわからない。一応、人質のゆっくりと、立てこもる場所は確保した。
となると次はなんだろうか。要求を突きつければいいのだろうか?
と、外から相変わらず呑気な声が聞こえてきた。
「ゆ~いっぱいとれたね!」
「はちみつさんもとれたね!」
「きょうはいっぱいゆっくりできるわ!」
都合よく親たちも帰ってきたようだ。
立てこもり犯らしく振舞おうか。
「ゆ! いりぐちがないよ!」
「どうしてなの?」
「おねがいだからゆっくりひらいてねどあさん! れいむおこるよ! ぷんぷん!」
勢いよく窓を開けると大声で叫んだ。
「我々はこだわりのある革命家の集いだ! たった今この家と中の子供達を人質に取った!
帰してほしければ次回作に魅魔様を出すんだ!」
先ほどの子たちと同じように一斉にこっちを振り向くゆっくり達。
お前らほんと変わらねーな。
「「ゆっくりしていってね!!!」」
「おにーさんはゆっくりできるひと?」
「じゃお!」
「ちーんぽ!」
本当に変わらないね。これはこれで困る。
「いやね。今おにーさんは君達の子供を人質に取ってるんだよ?」
とりあえず大事なことなので二回行ってみる。
「ゆぅん? よくわからないけどゆっくりしていってね!!!」
「そうだわ! このどあをあけてちょうだい!」
「いっしょにゆっくりするんだねー。わかるよー。」
駄目だこいつら・・・早くなんとかしないと。
結局説明に30分ほどかけてようやく今の状況を把握したようだ。
「やめてね! ゆっくりできないことはしないでね!!!」
「ゆっくりしてよぉぉぉ!!!」
「あかちゃんたちをゆっくりさせてちょうだい!」
「みんなでゆっくりしたいんだよー。わかってねー。」
締め切った窓の外から聞こえるのは必死の説得。大分それっぽくなってきたな。
後は持久戦だ。
とりあえず事前に買っておいたレトルトカレーを温める。
ご飯がないので、代わりにパンに浸しつつ食べる。
腹が膨れたことなので、ちょっと眠ろう。流石に疲れた。
目を覚ました。うん。大丈夫。生きてる。
布団から出て電気をつける。すっかり暗い所を見ると、今は夜なのだろう。
電気をつけると同時に声が聞こえた。
「ゆゆーん! まぶしいよー!」
「やめてね! ゆっくりすやすやできないよ!」
あ、起こしちまったか。
「ゆーん? おかーさんどこー?」
「おきゃーしゃんは?」
「どこにいるのー?」
「いくらなんでもゆっくりしすぎだよ!」
どうやらようやっと親が居ない事に気づいたようだ。
ていうか狭いケースの中に居る事に関しては疑問は抱いてないようだ。
「えー君達は人質です。逆らうとゆっくりできないです。」
そう告げると、とりあえず適当なまりさを摘みあげる。
「ゆ? おしょらをと」
最後まで言わせると思ったの?馬鹿なの?
「ゆぎゅううううううう」
指で万力のように徐々に潰していく。ゆっくり潰すと段々と縦に伸びてくる。
「ゆべちぇえ・・・
なんか顔が面白いことになってきた。なんだっけ、ムンクのあれ。あんな感じ。
「やめてあげてね! いたがってるよ!」
「ゆっくりにげてねまりさ!」
「わからないよおおおおお!!!」
このまま待つこと15分。
解放されたまりさは唐辛子みたく細長くなっていた。
「まりさ! しっかりしてね!」
「ほっそりしてねいでゆっくりしてね!」
「ゆ、ゆっぐじぃ・・・」
周りからの懸命の応援もむなしく、まりさはほっそりとしたままであった。
結構死にそうだね。歩けないだろうし意外と辛いんだよねこれ。
「あーわかりましたか?下手に逆らうとこうなる訳でして。」
「ゆっぐじできないよぉおお!!!」
「れいむおうぢがえるぅうう!!」
「らんしゃまああああああああ!!!」
お前らの家はここだろう。
そういや外の様子はどうなんだろうか。
チラッと窓から覗いてみた。暗くて見えない。当たり前だね。
だが声はしっかりと聞こえた。
「ゆっぐじぃ!!!」
「がんばってねまりさ! このどあさんにどいてもらうよ!」
「いしさんでゆっくりしてね!!!」
どうやらドア破壊による突入を考えているようだ。
素直に要求に従えば・・・ああ、無理か。んじゃ現実的な内容に変えよう。
「あーみなさん。」
窓から声をかけてみる。見えないけど会話ぐらいは余裕だろ。
「ゆぐ! おにーさん! ゆっくりしないでおちびちゃんたちをかえしてね!」
「れいむたちとゆっくりしようね! おねがいだからゆっくりしてね!」
なんか怒ってる様子です。いや当たり前だけどさ。
「えー要求を変えます。今から言う事をすればすぐに出ていきます。」
「ゆ? ほんとう?」
「もち。んで要求て言うのがですね。」
「ゆっくりしないでね!!!」
「ゆっくりの死体を100個ほど持ってきてね。」
「ゆ?」
全員目が点になってる。
「いやだから同族を100人切りしてきてね。んじゃ。」
そういって窓を閉める。
どうやら言葉の意味を理解するのに時間がかかるようで、大絶叫が聞こえたのはそれから10分後のことだった。
いくら現実的と言っても実際やるとも思えん。
恐らく強硬手段に打って出るだろう。
それまではせいぜい引きこもってDSと虐待してるさ。
朝が来た。今日の朝食はチョコパイ
一方ゆっくり達にはそんなものはない。
「おにゃきゃしゅいちゃよー」
「ゆえーん!」
「おなかぺこぺこだよ・・・」
俺だってぺこぺこです。
どうでもいいが、唐辛子まりさは未だにほそ長かった。
しかしやることねーなホント。
いや虐待すればいいんだけどね。
こう『立てこもり』ってなってる以上、人質に傷つけたら駄目だと思うんだ。
んじゃ何するかって? 知らないよそんなの。 本でも読めばいいじゃん。
待てよ?俺の知ってる立てこもり事件を思い出せ。
確か外から突入しようとした警官隊に発砲とかしてたはずだ。
つまり俺も外のゆっくりを撃退しなければならないのだ。
窓をこっそりと開ける。すると多数のゆっくり達が何やら集まって話あってるようだ。
声が大きいので全く意味がないのだが。
「きょうこそはおうちにもどっておちびちゃんたちをたすけるよ!」
「こっそりちかづいてどあさんをどかそうね!」
「むきゅん! みんなでいしでけずればだいじょうぶよ!」
ふむ。これは少々不味いかもしれない。今のうちに手を打っておくか。
「ゆ虐サークルの部員たるもの、古今東西の暗殺術に精通してないといけない。」
と、五九八先輩に教えてもらったこのナイフ術を使う時がきたようだ。
バッグから取り出したるはバターナイフ。静かに狙いを定める。
目標は石を加えたまりさだ。
勢いよく投げたナイフは空を切り、そのまま眉間に刺さった。
半分ほど刺さったナイフ。そこからは中身があふれ出していた。
刺された標的はビクビクとしているだけだ。痛みで喋れもしないのだろう。
とりあえず、俺のこの鍛えた腕が証明された訳だ。
「ぱづりぃいいいい!!!」
「じっがりじでねえ!!! ゆっぐじじじゃだめだよ!」
「だれなの! やめてね! ゆっぐじでぎないよ!」
「ゆっくりできないよぉー。にげるよぉー。」
ぱちゅりーを引きづりつつ、ゆっくり達は一時撤退を始めた。
ふむ。まだまだ伝承者にはなれないようだ。
さて、暇だし現在までの経緯をノートに纏めることにする。
途中で人質の方の様子を見てみると、みなガクブルと震えながらこちらを見ていた。
「ひどいことしないでね。ゆっくりできないよ。」
「ありちゅはゆっきゅちちちゃいだけよ・・・」
「むきゅん! ここからだしてね!」
「おきゃーしゃんにあいちゃいよー!」
「れいむもあいたいよ!」
「ゆっくりでぎないよぉおおおお!!!わがらないよぉおお!!」
誰かが一度泣きだすと連鎖的に鳴きだすゆっくり。
まあ止めるのも無粋だし、そのままでいいか。
結局この日は何も起きず、一日を終えた。
二日目。朝から雨だった。それほど強くはないが、これだと窓を開けるのも億劫になる。
人質の様子を見てみれば、全員が「ゆぐぅ・・・・・・」と言って殆ど動かない。
流石にヤバくなってきたようだ。
辛うじて使えるポットでお湯を沸かし、今日はお茶とフランスパンにすることにした。
実に味気ない食事である。
せめてジャムでも持ってこればよかったのだが、今更嘆いてもしょうがない。
昼頃になって、外から何かが聞こえることに気づいた。
いやいや窓を開けてみると、ドアの前で一匹のまりさが必死に石でドアを叩いていた。
「ゆぐ! ゆぐ! ゆっくりどいてね!!!」
必死の形相でドアを叩いている。しかしその程度でドアが敗れる訳もない。
しかも雨に濡れたその体はしだいにボロボロになり始めていた。
「まりさ! ゆっくりできなくなるよ!」
「いちどもどろうね! あめさんがやむまでまとうね!」
どこからかれいむが二匹現れた。どうやら説得に来たようだ。
だが、まりさの意思は固かった。
「まりさはおちびちゃんとゆっくりー♪するよ! はやくゆっくりするよ!」
しかしどうみても無駄死にである。その辺りは二匹ともわかっているらしく
「ゆぐぅ。まりさごめんね!」
「ちょっとだけゆっくりしてね!!!」
二人がかりでまりさの帽子を無理やり引っ張り始めた。
「ゆぎ! やめてね! おぼうしさんがいなくなったらゆっくりできないよ!!!」
結局そのままズルズルとまりさは動き、三匹はどこかへと帰って行った。
三日目。今日は何故か親たちがやってこない。
代わりに昨日大量に食事を与えた人質の間でひと悶着があった。
「ゆっぐじでぎないぃいいい!!えろえろえろ」
極度のストレスからか吐き出すゆっくりが続出した。それだけならよかったが。
「ゆ! あまあまさんだよ! ぺーろぺーろ!」
「れーみゅにもちょーだいね!」
「やめて! ありすのかすたーどをなめないで!」
「もっとあまあまちょうだい! ぱちゅりーおねーちゃん!」
「あみゃあみゃちょーだい!」
「むぎゅぅううう!!!おさないでぇええええ!!!」
吐きだした中身が原因で箱の中はちょっとしたパニックに陥った。
楽しいので見てたら夜には半数が死んでた。
「むーしゃ!むーしゃ!」
「ゆぅ?ぱちゅりーおねーちゃんどこいったのー?」
「きゃくれてないでね! まりちゃおきょるよ!」
うん。平和だ
そして四日目に突入。
何故だろう?何故ここまでスムーズなのか。
よくよく考えれば、相手はゆっくり。戦力は圧倒的にこちらが上。
本来立てこもりと言うのは、こちらがピンチだったりする時に行うものではないのか?
そう考えると、最初から優位に立ってる俺が立てこもっても何の意味もないのではないか?
もしかして最初から間違ってね俺?
そんなことを思い、ちょっと今までの時間が無駄ではないかと嫌な考えが頭を支配していたその時
外から何かが聞こえてきた。
「おにーさん! ゆっくりでてきてね! でないとたいへんだよ!」
「そーいわれて出て行く奴が居るかこのトンチキが!」
思わず挑発してしまう。更に体が勝手に近くの死に体の赤ありすを摘みあげると
そのまま勢いよく窓から声のする方へ投げつけてしまった。
「ゆぐは! ゆてててて・・・あ、ありずぅううう!!!」
「ありずのあがじゃんがぁあああ!!!」
「どうじでつぶれでるのぉおおお!!!」
ヒットしたようだ。やはり心の目に頼るべきなようだ。
「もうゆるさないよ! とつにゅうするからゆっくりはんせいしてね!」
HAHAHA!
何をおっしゃりますかと窓から声の主を見てみる。
どんな馬鹿かと思いきや
3m近い巨体。でっぷりとした体。立派な帽子。そして威厳のない顔。
ドスだった。
あいつら何時の間にドスなんて呼びやがった。
ああそうか。昨日何もしてないと思いきやこいつを呼んでいたのか。
ていうかこの辺に居たのか。聞いてないよ。
「どすすぱーくでゆっくりしてね!!!」
この状況でふと思いだしたことがあった。
あれは幼い時にTVで見た、外国の立てこもり事件の生中継だった。
あれも三日ほどこう着状態が続いたが
最後は確かどこからか壁を壊して突入したのだ。
そう、こんな感じで
「ゆっくりしね!!!」
半ば無意識のうちに横に飛んでいた。
足をかすったのは眩しい閃光。
それは窓を壊し、人質全てを包みこんで直線状のあらゆる物を破壊しつくした。
「ああ、綺麗だ。」
思わずポツリと呟く。
そして目の前に迫る何かの破片。それが最後に見た景色だった。
「それで結局、心配した持ち主が見つけて病院に搬送・・・前から思ってたけどさー。バスケたんって結構バカだよねー。」
「言い訳すら思いつかないっすね。」
目の前に座っているごつい男は通称玉男。このサークルでも古参の分類に入る先輩である。
人気者であねきぃとは蓮子とメリーの関係である。
それにしてもなんでたん付けなんだろうか。
「だからあれほど瀟洒なナイフを持って行った方が良いって。」
「捕まりますよ五九八先輩。」
「俺捕まったことないよ?」
何者だよあんた。
その横で座ってシール付きお菓子をやたら開けまくってる人はオマケさん。
シールとかキーホルダーとかのオマケを集めるのが好きなのでそう呼ばれている。
でも一番好きなのはゆっくりの飾りだとか。
「ほいっ。これ入らないからあげる。」
そう言って投げてきた物を受け取ると、それは赤まりさだった。
しかし普通のまりさにしては動きがトロい。
「貴重なまりさつむりだよ。最近やっとこさ見つけたんだ。」
実に羨ましい。そしてその貴重なまりさつむりの殻だけ取って満足とは
恐らく前世は貴族階級だっただろう。
「ゆぅー! まりちゃのおびょうちがー!」
なんか騒いでるので足を指でコチョコチョしてみる。
「ゆびひゃ! ゆひぃいい!! や、やべゆひゃひゃはやはひゃ!!!」
あーやっぱくすぐったいんだ。せっかくなので限界までチャレンジしてみるか。
「まあでも、あんまり大きな怪我をしなくてよかったじゃないですか。こんなことで怪我でもしたら笑えませんし。」
と、綺麗な声と共に目の前に紅茶が置かれた。
「ああ、ありがとございます。」
紅茶を入れてくれたのはサクヤさん。
街を歩けば全員が振り向くほどの幼さの残る綺麗な顔したメイド服の人である。
何故『人』で括ってるのかと言えば、この人の性別は未だに不明だからである。
メイド服だから女に見えるが、女装した美少年にも見える。
正直見た目からでは性別が読めない。ていうか反則である。
今もってサークル内の誰も性別を知らないと言うのは色々と問題な気もする。
「ん、やっぱ何時飲んでも美味しいよねこれ。」
「ありがとうございます。玉男先輩。」
必殺スマイル。相手は死ぬ。
いや冗談抜きでアレはヤバい。萌え死ぬ。
気がついたらまりさが泡吹いて気絶していた。それをパクリと人かじりして、テーブルに置く。
「んーそれじゃあ俺、今日は早めに抜けますね。まだ体が痛むんで。」
「おだいじにー。」
「またね。」
「気をつけて帰って下さいね。」
そうして、ドアを開けて帰ろうとした瞬間。目の前のドアがバネ仕掛けのように勢いよく開いた。
「だれか麻雀やるー?あと一人メンツ足りないけど?」
「・・・・・・やりますぜあねきぃ。」
1時間後。そこには新たなお題に頭を抱える一人のアワレな貧弱一般人が!
最終更新:2022年04月17日 01:23