いじめじゃないかも
俺設定
微妙なパロネタあり
俺の畑の前に
ゆっくりの一団がたむろしていやがった。
こいつらは野菜を狙っているんだと一発で分かる。
畑にやってくるゆっくりの目的なんてそれぐらいしかないからね。
しかしこのゆっくりという輩は言葉が通じるせいで、余計な手間がかかってしょうがない。
野菜は育てるものだと言っても、こいつらは『おやさいはかってにはえてくるんだよ~』なんて言い返し、人を小ばかにしたような面をする。
オーケー、畑の周りでぶらぶらしているゆっくりは、それがだれでも、蹴り飛ばす。以上終わり!そういうことだ。
この不届き者が俺の野菜を傷つける前に翼君のお友達にしてやるべく駆け寄っていくのだが、どうも様子がおかしい。
野菜の前に一列に並んでゆ~ゆ~歌ってるみたいだ。
畑で野菜を食うゆっくりはいても、歌うゆっくりなど見たことも聞いたことも無い。
とりあえず野菜が無事ならしばらく様子を見てもいいかと思った俺は、ゆっくりの一団に挨拶することにした。
「ゆっくりしていってね」
俺の声に気付いた集団は、一様にこちらに顔を向け「ゆっくりしていってね!」と声を合わせる。
「ところでここの野菜は俺が育てたものなんだが?」
「ゆゆっ!おにいさんはうそつきだね!」
ああ、聞きましたかこの台詞?
例の如く勝手に生え
「おやさいさんが、がんばってはえてきたんだよ!」
がんばって?
勝手に生えてくるって言い張るよりも、幾分かはましなのかねぇ…
しかしこいつは少し面白いかもしれない。
潰す前に先ほどの奇行含めて説明してもらおうとするか。
「おやさいさんは、れいむたちにたべてもらおうとがんばっているんだよ!」
「がんばっているおやさいさんに、おうたをきかせてゆっくりしてもらうんだよ!」
植物に音楽を聞かせると成長が促進されると聴いたことはあるが、効果があるかどうかは眉唾ものだな。
とくにゆっくりの歌なんかじゃな。
それでも人の育てた野菜を『勝手に生えてきた』とほざいて横から掠め取るよりかは建設的かもしれないな。
しかし『れいむ達に食べてもらう』ってのは流石ゆっくりと言うべきか。
『さあおたべなさい!』はゆっくりだけしかやらないっつーの。
「そんじゃあ適当に頑張ってくれよ」
とりあえず潰すのは後回しでもいいかもしれないな。
放っておいても他のゆっくり達から勝手に野菜を守るだろうし。
食べごろになったらゆっくりより先に収穫すればいいからね。
それよりもゆっくりを先に収穫するか?
人間が去った後、再び野菜に向き直って歌の続きを笑顔で始めるゆっくり達。
その笑顔は収穫後の野菜パーティーを夢想してのものなのだろうか。
そんなゆっくり歌唱隊から一匹のゆっくりが歌以外の声を発した。
「れいむ!おうたでゆっくりさせてあげるだけじゃなくて、おやさいさんをたすけてあげようよ!」
「ゆ?それはどうやるの?」
「おやさいさんがおっきくなるように、こうするんだよ!」
「そうだね!そっちのほうがもっとおやさいさんがおっきくなるよね!」
「みんなもいっしょにやろうね!おちびちゃんたちはおうたでおやさいさんをゆっくりさせてね!」
「「「ゆっ・ゆっ・ゆっくちぃ~♪」」」
「な…なんじゃこりゃあ!?」
翌日、俺の畑は見るも無残な有様になっていた。
野菜と言う野菜が枯れる一歩手前の状態になっていたのだ。
根元を見ると人の手が加えられているのが分かる。
訂正、ゆっくりの口だな。
まもなく下手人一行がやってきたので殺さない程度の蹴りをもれなくプレゼントしてから尋問に入る。
「おまえら、頑張っている野菜さんにずいぶん酷い事してくれたんじゃねえの!?」
リーダー格っぽい一匹のまりさの頭を踏んづけて、逃げられないようにしてから問いただす。
ちなみに他のゆっくりには
「一匹でも逃げたらこいつを殺してお前ら全員殺す」
と脅しておいたので、親ゆっくりはそれぞれの子を逃げないように押さえつけながら俺の話を聞いている。
「ひどいことしてないもん!おやさいさんのおてつだいしただけだもん!」
この期に及んで悪いことしてません、ってか。
「お手伝いって、なにしたのよ?」
踏みつける足に一段強く力を込めると「ゆびっ!」と言って、ぷるぷる震えだした。
まともに喋れなくなったこいつの変わりに、子連れれいむが代弁した。
「おやさいさんが、いっぱいのびるように、ひっぱってあげたんだよ!」
…古の中国人ですかあんたらは。
「何はともあれ見ての通り、お野菜さんはゆっくり出来なくなっちまってるんですが?」
「「「「どぼちでえええええぇ!?」」」」
良かれと思ってした事が、裏目に出るってきついものだよな…
畑荒らしたことには変わりないんだが、しばき倒すのも気が引けるな。
「そういえば君らの『さあおたべなさい!』は、とてもゆっくりさせて貰った時にするんだろ?」
「「「「ゆ?そうだよ!」」」」
「でさ、ゆっくり出来なくなったお野菜さんの気持ちを考えることは出来るかな?」
「「「「ゆゆっ?」」」」
「このお野菜さんは君たちにゆっくりさせてもらえたかな?」
「「「「ゆっくりできなくさせちゃったよ…」」」」
「お野菜さんがこれから元気になったとしても、君たちに『さあおたべなさい!』を出来ると思う?」
「「「「ゆわああああ!ごめんなさぁい!」」」」
いつの間にか説教モードになったがまあいいか。
「いい機会だから言うけども、畑のお野菜さんは人間がゆっくりさせてあげているんだ。
喋れないお野菜さんの気持ちを汲み取って、のどが渇いたかな?と思ったら水をあげて、
おなかがすいたかな?と思ったらご飯をあげて、虫さんが苛めていたら、追い払ってあげたりさ。
そうやってたっぷりゆっくり出来たお野菜さんだから、『さあおたべなさい!』をしてくれるし、僕等はそれに応えて食べているんだ」
ゆっくり用の単語を使っているおかげか、俺の話をしっかりと聞いているみたいだ。
一同少しうつむきながら黙っている。
「君たちも畑のお野菜を食べたいとは思うだろうけどさ、『さあおたべなさい!』をした後に、他の人に食べられるのはゆっくり出来ないだろ?」
「ゆっくりりかいしたよ…」
我ながらよくもまあ奇麗事だけぺらぺらと口を突いて出たものである。
そんな言葉でもゆっくりの説得には功を奏したらしく、踏んづけられて半ば潰れたまりさも含め、一同はとぼとぼと森のほうへと帰っていっちまった。
いままで畑荒し即蹴だったのになんで説得したんだろうな…
お野菜さんは頑張っているって言われて拍子抜けしちゃったからか?
ま、あのゆっくり達が特別だっただけかもしれないし、明日からも気を引き締めて畑を守りますか!
オワリ
最終更新:2009年04月17日 03:02