舞台設定真面目に考えていない
自滅系
夏の盛りも過ぎようかと言う頃、森に住む
ゆっくり達に珍しい来訪者が姿を見せた。
「「ゆっくりしていってね!」」
ゆっくり達に秋の訪れを知らせる二匹連れのゆっくり姉妹、しずはとみのりこである。
このふらりとやってきた縁もゆかりも無いゆっくり姉妹に対し、群れのゆっくりは好意を持って迎え入れた。
「むきゅ!ひさしぶりね」
「「おひさしぶり!」」
「もうそろそろ夜になるから、わたしたちのむれでゆっくりしていってね!」
「「ゆっくりしていくね!」」
姉妹の来訪を聞きつけた群れのゆっくりが寝所へと案内していくと、初めて姉妹を見る成体に生り立てのゆっくりれいむが、ぱちゅりーへ質問をした。
「ぱちゅーりーはあのこたちをしってるの?」
いきなりの来訪者へ手厚くもてなす事に少し不信がっているれいむへ、ぱちゅりーは小さな声でそっと教えた。
「あのこたちがくると、おいしいごはんがとれるようになるのよ」
「ほんとに!?ゆわーい!」
秋の訪れを知らせるとは言っても、別にそれを使命として行動している訳ではない。
この姉妹は越冬地を求めて北の方から徐々に南下し、真冬でもゆっくりと過ごせる所まで旅をし、途中途中で様々なゆっくりの群れへ立ち寄る習性が有る。
それがたまたま季節の変わり目だっただけの事なのだが、結果として実りの秋をゆっくりにもたらす者として扱われているのである。
翌日、しずはみのりこのゆっくり姉妹を見送った群れのゆっくり達は、早速餌探しに精を出していた。
「ごはんをいっぱいあつめて、いっぱいゆっくりしようね!」
「おいしごはんはゆっくりできるけど、そのあとのふゆはゆっくりできないんだぜ…」
「むきゅ、そうね。たべてばかりいないで、ためられるものはいまのうちからためましょうね」
その年の秋は例年に無いくらい豊かな秋であったが、それに比例するかのように冬の厳しさも増していた。
結果、巣の中でいくら餌を食べても寒さから来るゆっくり出来なさに負けるゆっくりが後を絶たず、例年以上に永遠にゆっくりした者が増えたのであった。
春になるとゆっくり達は、
冬篭り用の強固なバリケードを弱った体で懸命に打ち壊し、互いの無事を確かめ合うために広場へと集まっていた。
厳しい冬を乗り越えたゆっくり達は、生き延びた喜びと亡くなった者への哀悼を交わす。
そんな時、あるゆっくりが妙なことを口にしていた。
「ふゆはさむくてゆっくりできないね…」
「ふゆがこなければいいのにね…」
「そうだよね、ふゆがこなければゆっくりできるのに…」
「…ふゆがくるまえに、やってくるのってなんだろう?」
「「「…あのこたちだ!」」」
ゆっくり達が異口同音にしたあの子達とは、しずはとみのりこのゆっくり姉妹のことだった。
ゆっくり達の餡子脳は、秋が来なければ冬がやってこないと思い込んでしまった。
そして秋をもたらすものは何者かと問うた時、皆の頭に浮かんだ者は、偶々通りすがったゆっくり姉妹。
ぱちゅりーが聞いたならば、そんな馬鹿なことなどある筈が無いと一蹴するのだが、不幸にも冬の間に帰らぬゆっくりになってしまっていたのだ。
夏の盛りを迎えた頃、ゆっくり達は、しずはとみのりこがやってくる谷へ向かって歩んでいった。
何日かの間、なれぬ土地で過ごしていくのはゆっくり出来ない事なのだが、冬のゆっくり出来なさに比べると屁でもなかったのだろう。
そしてついに姉妹がゆっくり達の前に姿を現してしまった。
姉妹達は行く先々で女神のように扱われている為か、普段と違うゆっくり達に不信感を抱く事無くゆっくりと挨拶をする。
「「ゆっくりし
「「「「「ゆっくりしねえええええ!!!」」」」」
姉妹の挨拶も聞かないうちに、呪いの言葉を発しながら群れのゆっくりは姉妹へ体当りを敢行した。
「ゆぎゃああ!?なんでこんなことするの!?」
「ゆぼぉっ!?わたしたちなにもわるいことしていないじゃないいい!?」
「みんながゆっくりするためにゆっくりしんでね!」
「あきがくると、そのあとすぐにゆっくりできないふゆがくるんだぜ!だからあきがくるまえにやっつけるんだぜ!」
理不尽極まりないゆっくり達の暴虐。
「そんなわけないじゃない!」と、反論をする機会を与えられないまま姉妹は土に還ってしまった。
「ゆふー、これでふゆがこなくなって、ずっとゆっくりできるね」
「だけどあきがこないとおいしいごはんでゆっくりできないのが、なんかものたりないのぜ」
「あきがこなくてもじゅうぶんゆっくりできるよ!」
たった二匹のゆっくりを亡き者にしただけの事なのに、太平の世が訪れたかのような喜びを見せるゆっくり達。
冬が来ないと信じきってしまったゆっくり達は、冬篭りの為に動く事など全くせずに、その日その日をゆっくりと過ごしていった。
しかし自然のルールは何者にも変える事など出来はしない。
忍び寄る冬の足音がゆっくりの耳に届いた時には群れの存続は絶望的な状況だった。
「ゆ~ん…さいきんごはんがすくなくなっちゃったね…」
「みんなあきがきたときとおなじぐらいたべるのがいけなかったんだよ」
「ゆっくりはんせい…ゆゆっ?このしろいのは…」
「ゆきさんだよ…ゆきさんがくるのは…ふゆだよ…」
「どぼちてふゆがきちゃったのおおおお!?」
「ごはん、ごはんをあつめるんだぜえええ!?」
「ちゃむいよおぉ…ゆっくちできにゃいよ…」
「どぼちて…どぼちて…」
おわり
最終更新:2011年07月31日 16:18