※虐待描写が皆無です
ダイヤ*
ある山の麓に、とても度胸のあるまりさがいました。
まりさはちょっとの事ではまったく動じる様子を見せません。
れみりゃやふらんにも果敢に立ち向かい、鬼意山相手でも絶対にひるみません。
それはただ単に度胸が座っているだけでなく、まりさがとても賢かったからというのもあるでしょう。
何も考えずに急降下してくるれみりゃには逆に頭突きを食らわせれば逃げてゆく。
ぎゃーぎゃー喚き立てなければ鬼意山も面白くない、と去ってゆく。
まりさは自分のことも周りの事も実によく知っていました。
まわりの
ゆっくり達から慕われ、とてもゆっくりした毎日を過ごしていました。
*
あるとき、まりさは一匹のれいむから相談を受けました。
「ゆえーん!まりさ、向こうの森のさなえによわっちいってばかにされたよ!
みかえしてやりたいけどれいむケンカはきらいだよ!」
れいむは気が小さく、言い争いとなるとすぐに尻尾を巻いて逃げてしまっていました。
おなじ「めでたいまんじゅう」としてなさけないよ!とさなえに馬鹿にされてしまったのです。
「ゆーん、それはこまったねぇ」
どうしたものかとまりさはかんがえました。
そもそもこのれいむはあまり運動そのものが得意ではありませんでした。
実際のところ、れいむは「強く」はないのです。
運動やケンカ以外でそのさなえをあっと言わせなくてはいけません。
でも、ここで「むりだよ!」とれいむを突き放すことはできませんでした。
れいむは大切な仲間です。何とかしてれいむの名誉を挽回させてあげたいと思いました。
その時、どこからか列車の警笛が聞こえてきました。
山の裾野には田園地帯が広がっており、農村同士を結んでいる小さな鉄道も走っています。
まりさはとてもいいアイディアを思いつきました。
「れいむ!とってもいいほうほうをおもいついたよ!」
そういうとまりさはその場を離れ、近くの集落へ向けてぴょんぴょんと移動をし始めました。
「ゆゆ!まりさどこにいくの?」
訳がわからないままれいむはその後を追ってゆきます。
「いいからゆっくりついてきてね!」
まりさは自信満々に森を抜けて行きました。
*
森を抜け、人間の集落の端のほうについたれいむとまりさ。
すぐ目の前に先ほどの鉄道が走っていました。
「ゆ!まりさ!ここはとってもおおきいスィーがはしってるからゆっくりできないよ!」
れいむはそわそわと周りを気にしながらまりさに話しかけます。
「だいじょうぶだよれいむ!ゆっくりそこでみててね!」
そう言うと、まりさは踏み切りの上に立ちました。
森に住むゆっくり達は、この線路の上を走る列車をとてもおそれていました。
線路を渡ろうとして粉々にされてしまった仲間がたくさんいました。
そしてそれに講義しようと線路の上に立っていたドスまりさでさえ、そのスィーにやっつけられてしまったのですから。
れいむの呼びかけを物ともせず、まりさはその踏切の上で列車を待ち続けていました。
やがて警報機が鳴り出し、遮断機が降りました。
駅のホームから「まもなく上り列車が入ります……」という声が聞こえてきました。
線路の上を走るディーゼルカーがだんだんと大きくなります。
踏み切りの中にはまりさが一匹。
まりさの左右に敷かれたレールから車輪の近づく「シュー」という音が聞こえてきます。
既に列車はまりさの目の前に迫っていました。
もうだめだ!
思わず目を背けたれいむ。
……れいむは恐る恐る目を開けました。
すると、そこには無残に砕け散ったまりさ……ではなく。
まりさの目と鼻の先に止まったディーゼルカーが見えました。
「まっ、まりさ!」
れいむが自分の姿を見たのを確認すると、まりさは踏み切りの外に出ました。
まりさの体には傷一つついていません。
「ねっ、だいじょうぶだったでしょ!」
れいむの驚き顔を前にまりさはえへん、と胸を張りました。
「ゆゆ!すごいねまりさ!でもどうやってスィーをとめたの?」
れいむはさも不思議そうに顔を傾げました。
「それはね、あすこが”えき”っていうばしょだからだよ!」
「ゆー?えきってなぁに?」
「えきっていうのはね、にんげんさんがあのスィーにのるためのばしょなんだよ!
だからあすこにはぜったいにスィーがとまるってわかってたんだよ!」
パァァ!とれいむの眼が輝きます。
「さすがまりさだね!とってもゆっくりしてるね!」
「だからこんどはれいむがこうやって、さなえをびっくりさせるばんだよ!」
「うん!ゆっくりがんばるよ!」
そう言って嬉しそうに飛び跳ねるれいむをみて、まりさは満足げに笑いました。
*
次の日、向こうの森のさなえと一緒にこの間の踏み切りにやってきたれいむとまりさ。
また、各々の友達が友人の勇姿を見ようと山を降りてきました。
「ゆ!これかられいむがここのスィーをとめてみせるよ!」
それを聞いたさなえがふふん、と笑います。
「そんなゆうきが、しんこーもあつめられないれいむにあるの?」
「それはゆっくりみてからいってね!」
れいむはむねをはって踏み切りの上に立ちます。
その様子をまりさは落ち着いて見ていました。
すべてのスィーがここに止まって人間を下ろしていくのを知っていたからです。
不意に警報音とともに遮断機が降り始めました。
さあ、いよいよれいむのチャレンジがスタートします。
そしてホームからこの間と同じように放送が聞こえてきました。
「間もなく下り列車が入ります」
あとがき*
この後の展開は御想像にお任せします。
最終更新:2011年07月29日 03:10