「てぃひひっ、あ~失敗したな~。ラスボスでも無いような奴相手にパワーを使いすぎちゃった……。」
「まどか……。」
「どうしよう。今の私じゃ悟空を倒せるかどうかわかんないよぉ……。」

現れた時の圧倒的な神々しさがどこかへ行ってしまったかのように落ち込むまどかを、ほむらは心配そうに見守っている。
女神の様に美しいドレスがイデオンソードが直撃した影響で所々破れて柔らかそうな素肌がかなり露出しており、
非常時にもかかわらずほむらは胸の昂りを隠せずにいた。まどかがどんな怪物に成り下がっても愛し抜く覚悟が自分にはあるが、
やはり神様とはいえ、大好きな人が人間と変わらない姿で霰もない恰好を晒してくれるとすごく嬉しいしとても興奮する。
というかものすごく触りたい。超、触りたい。

「―――まどかっ!!」
「うむぅっ!?」

我慢できずにほむらはまどかを強く抱きしめてそのファーストキスを奪い取った。
まどかは始めは面食らっていたがしばらくするとほむらを受け入れるように目を閉じた。
唇を離すと混ざり合った唾液が糸を引くように伸びて地面にぽたりと落ちる。
そして、ほむらは強い眼差しでまどかを見つめながら口を開く。

「インキュベーターどもは死滅して、まどかが魔女になったと思ったら女神様になって私の元へ帰ってきた。
 この時間軸は最高よ。……なにがドラゴンボールよ!誰が……誰が!無かったことになんてしてやるものですか!!」
「ほむらちゃん……。」
「本当はまどかを連れて遠く遠く、宇宙の果てへでも逃げ延びて、何もかも忘れて一緒に幸せに暮らしたいわ。
 でも多分、もう何処へ逃げても無駄なんでしょうね。なら、一緒に戦わせて、まどか。
 滅びが運命なら、どこまでも抗い続けて見せるわ。たとえどんな犠牲を払ってでも。」

魔法少女になったばかりの頃の気弱な少女と同一人物とは思えないような固い決意をみせるほむらを
顔を高騰させたまどかは胸を激しく高鳴らせて見つめ、何か諦めたように優しく笑った。

「……私は、神様失格だなぁ。魔法少女の女神様はみんなを平等に扱わなきゃいけないのに、
 今はほむらちゃん一人の事を一番に考えてる。もう神様なんかじゃないよ。
 普通の女の子に、戻っちゃった。……責任、取ってくれるかな?ほむらちゃん。」
「ええ!もちろんよ!」

そうしてまどかは目を閉じ、ほむらを背中の翼で包み込むように抱擁した。

(大丈夫だよきっと。二人一緒なら―――。)

まどかの姿が虚空に消え、その場にはいつの間にかツーテールに髪型が変化したほむらが残された。
その髪はまどかの様に二つの赤いリボンで纏められている。

「じゃ、行こっか。」
(―――うん!)

ほむらが軽く地面を蹴って宙に浮くと、その背中から魔女結界のような漆黒の翼が形成され、
そのまま空高く飛び発ち、「二人は」その場から姿を消した。


◆ ◆ ◆


「スーパーサイヤ人キング?王子様から王様になったってかベジータ?」

神と王。二人の究極のサイヤ人が最後の決着を着ける為全身をスパークさせ空中で対峙している。
悟空は遠くの方で途方もなく巨大な気が崩れ落ちて消えていくのを感じ取った。
イデオンが破壊されれたのだろうか?垣根帝督が先ほど放った灼熱のエネルギー弾が
直撃しても全くの無傷だった怪物を倒してしまうとは。

「まどかがやったのかぁ?やっぱすげぇなあの娘は。
 ……んん?いや、ちょっと違うな。止めを刺したのは別のヤツだ。」

悟空はその伝説巨人を仕留めた者の気の持ち主を知っている。
ベジータ、ブロリー、鹿目まどか。自分と互角に戦える力を持った好敵手の一人。
あの男の顔を思い出し、悟空はニヤリと笑った。

「範馬勇次郎。そういやぁアイツとも決着をつけねぇとな。」
「カカロットォ!!他の奴の事を考える余裕など貴様にはないぞ!!」
「おっといけねぇや!」

白銀の髪をなびかせたベジータは天使の翼をはためかせて悟空の元へと急接近する。
対する悟空も紅い闘気を纏いながら高速でベジータへ飛び掛かった。

互いの拳と拳がぶつかり合い、空中戦でありながら大地を揺るがすほどの
衝撃波が発生―――しようとした、その時だった。

「―――んんっ!?」
「―――なんだぁ!?」

二人の頭上から、血でできたメスのようなものが雨のように降り注いだ。
二人は慌てて動きを止め、超高速で逆方向に軌道を変えることでその攻撃を回避する。



「クスクス。おや、珍しく避けられましたねぇ。」

地面に着地した二人のサイヤ人の間に割って入るように、
黒衣を纏った細身の男がスタスタと歩いてきた。

「なんだおめぇ、結構強そうだなぁ。」
「おい!俺達の戦いの邪魔をするとはいい度胸だな貴様!」
「ああ、すみません。始めまして孫悟空様。私は赤屍蔵人と申します。
 運び屋という仕事をしておりまして。そこにいらっしゃるハリィ・ガーバー氏と
 ジョー・フレッチャー氏をここまで運ぶのが私の今回の依頼内容でした。」

笑顔で語りだす赤屍の背後から二人のアメリカ人が現れる。

「あ、どうもこんにちわ。」
「おお!彼が日本のスーパーマンか!始めてみたよ。」

二人ともただの低姿勢なサラリーマンのおっさんにしか見えないが、
ベジータは何故か言いようのない焦燥感を感じていた。

(こいつら、ハリィ・ガーバーと赤屍蔵人と言う男―――今の悟空同様、気を感じない。
 つまり神クラス。少なく見積もっても破壊神ビルス辺りと同等レベルの強者ということか?
 残る一人は本当にただのサラリーマンのようだが。)

「ところでひとつ確認しますが、あなたはまだ戦わないのですね、ガーバー。」

赤屍は振り向いて小柄な男に声を掛けるとハリィ・ガーバーは素っ頓狂な声を上げた。

「戦う!?何を物騒なことを言ってるんだ君は?私はスーパーマンのサインを貰いに来ただけだぞ。」
「そうですか。それは安心しましたよ。では、二人とも私がいただきましょうか。」

赤屍の周囲に赤黒い瘴気のようなものが発生する。

「運び屋という仕事の価値は過程を楽しむためのものでして。
 依頼主を狙ってくる強い横取り屋や奪い屋などと戦うことこそが目的なのですよ。
 私にとって仕事とは、その過程が面白ければいいんです。
 それに、あなたならひょっとすると私の限界を見せてくれるかもしれませんね孫悟空。」
「お、やんのか?いいぜ、いっちょやってみっか!赤屍蔵人!」
「……おいっ。」

先ほどから苛立ちを隠せないベジータは悟空と赤屍の間に割って入る。

「さっきから何を無視している。俺の邪魔をするなら貴様から消えてもらうぞ。」
「クス。そういえばあなたも全開に到達したのでしたね。まあ、どちらが相手でも。
 なんなら二人同時でも構わないですよ?」

先ほどからこの男の余裕綽々な態度があまりにも気に入らない
ベジータが赤屍に襲い掛かろうとする直前、勢いよく砂埃が舞い、
一種束髪の三人の空間に新たな乱入者が出現する。

「き、貴様は!?」


「―――よぉ、久しぶりだな悟空。俺も混ぜろよ。」

イデオンを倒した男、地上最強の生物範馬勇次郎である。

「勇次郎!随分見違えたな。おめぇも全開に到達したのか?」
「おやおや、オーガではありませんか。まさかこんな所で出会えるなんて。」

勇次郎は両腕を高く上げ、赤屍蔵人に対峙しニヤリと笑った。

「こちらも向こうも三人づつ。ちょうどキリも良くなったじゃねぇか。」

「え?僕も戦うの?」
「ほらこれを使えフレッチャー。」

そういってハリィは何処からともなく取り出した昔のSF映画に
出て来そうなカラフルな銃をジョー・フレッチャーに手渡した。

「物質崩壊銃だ。最大出力で人間20人位を同時に塵にできる凄い武器だぞ。 」
「ハリィ、こんなものじゃどうにもならないよ。君の力で一気に片づけてくれ。」
「そんなの面白くもなんともないだろう。出来るだけ楽しまないとな。超能力とかできるだけ無しにしたいんだ。」

何やら揉めている二人を無視して、勇次郎は赤屍に襲い掛かる。

「クス。―――では始めましょうか。」

そう言い終わった次の瞬間。
光速を遥かに凌駕する速度で移動した赤屍は一瞬で勇次郎の体を十字に切り裂いた。



「赤い十字架(ブラッディ・クロス)。入門編のような技ですが、もうお終いですか――――おや?」

動く間もなく切り裂いた筈の勇次郎が影の様に歪んで虚空へと掻き消えた。

「―――残像?」
「―――邪ッッッ!!!」

ドゴォォォォッッッッ!!!!

いつの間にか赤屍の背後に回っていた勇次郎の振り下ろした拳が激しい衝撃音と共に赤屍に突き刺さる。

「クス。今日は不調ですね。私としたことが二度も攻撃を外すなんて。」
「ぬ!?」
「そうそう、その調子。その調子でこの私を楽しませてください。」

顔をしかめた勇次郎が超高速でバック転し、赤屍から距離を空けると、
勇次郎が先ほどまで居た場所に無数のメスが降り注ぎ地面に突き刺さった。

「クス。三度目!これは素晴らしいですね。」
「貴様が思考を終える前にこちらが動きを予測して動けば、
 どのような速度で攻撃してこようが関係はない。
 しかしどういうことだ?全力で殴った筈だが。」

まったくダメージを受けていない赤屍に勇次郎は興味ありげに問いかける。

「範馬勇次郎。あなたの拳は、重さ、スピード、タイミング。全てにおいて完壁なものでした。
 ですが――想像できないんですよ。さっきの攻撃で私の死ぬ姿が。」
「ほう。」
「森羅万象はそこに存在を認識されて初めて生まれ出るもの。
 想像できないものは存在することもない。量子力学の不確定性原理ですよ。」

語り終えた赤屍は両手から数十本のメスを体内から取り出し、それを自らの両胸に突き刺した。

「ですが、今のままだとお互いに攻撃を当てることができないので勝負が尽きませんね。
 こちらもやや本気でお相手致しましょう。」

赤屍の胸からしたたり落ちた血液が地面にしたたり落ちると同時に怪しく蠢き出し、
形を形成し瞬く間に赤屍蔵人の姿になった。

「赤い分身(ブラッディ・アバター) 。残像ではありませんよ。全てが100%の力を持っている私自身です。」

そうして造り出された二人の赤屍蔵人が勇次郎の左右背後に回り込む。

「ところで、予測できても何処にも逃げ場がない場合は、どうなさいますか勇次郎?」
「ふん。」
「赤い暴風(ブラッディ・ハリケーン)。」

三人の赤屍蔵人の血飛沫から生まれた大量のメスが取り囲んだ勇次郎目掛けて撃ち出され、
まるで奔流のような血の竜巻が発生する。
その怒涛の攻撃が終わると、その場には血まみれになって仰向けに倒れた勇次郎の姿があった。

「ば、馬鹿な!?あの男がこうもあっさり……!?」

その様子を見ていたベジータは驚愕する。

「結局あなたでは限界を知ることは出来ませんでしたか。まあ、なかなか面白かったですよ。」

そう言って倒れてピクリとも動かない勇次郎の元へ赤屍蔵人の分身の一人が歩いていく。

「さあ、とどめを刺してあげましょう――――なっ!?」

赤屍が勇次郎の目前まで来た時、その異変は起こった。
微動たりともしなかった筈の勇次郎の腕が突然動き出し、赤屍の足首を掴んだのだ。



「つ・か・ま・え・たぁ~♪」

超高速で地面に伏せることで赤い暴風を回避していた勇次郎は血でできたメスが溶けて降り注いだことで
赤屍の血で血まみれになった顔面を晒してニヤリと笑い、素早く立ち上がって足首を掴んだ赤屍を
逆さまに持ち、彼を片手で激しく振り回し始めた。

ムンムンムンムンムンムンムンムンムン
ムンムンムンムンムンムンムンムンムン
ムンムンムンムンムンムンムンムンムン
ムンムンムンムンムンムンムンムンムン

蛇のように大きくうねる赤屍蔵人の肉体。
振り回されている赤屍の目・鼻・耳・口。頭部の穴という穴から血が吹き出し始めた。

「ぬ……双節棍(ヌンチャク)!? 」
「破ァァァッッッ!!!!」

予想外の事態に面食らう赤屍のもう一人の分身目掛けて勇次郎は大きく振りかぶった赤屍蔵人を叩きつけた。
死にはしなかったものの頭部に加えられた想像を絶する衝撃に耐え切れず赤屍の分身は気絶し地面に伏っする。
その様子を見ていた赤屍蔵人は何かに気づいたようにクスリと笑った。

「なるほど、ダイヤモンドを加工するにはダイヤモンドの粉を使えばいいように、
 赤屍蔵人を倒す為の最大の武器は赤屍蔵人自身だった、という訳ですか。
 流石にその発想はありませんでしたよ。」
「だったらどうしようっていうんだい?」

ニヤリと笑う勇次郎は気絶したもう一人の赤屍蔵人の足首を掴み、彼も振り回してダブルドレスを始める。
二人の赤屍の穴という穴から吹き出す血液が勇次郎を囲むように奔流し彼の姿を完全に覆い隠した。

「全身を覆い隠す赤屍蔵人を纏う鎧―――赤い装飾(ブラッディ・ドレス)といったところですか。
 やれやれ、これでは手出しが出来ませんね。」

呆れながらじよじょにこちらに近づいてくる勇次郎に向けて赤屍は構えを取る。

「赤い槍(ブラッディ・ランス)。」

赤屍は血液から長い槍を作り出し、振り回されている自分自身目掛けて照準を定めた。

「べルトラインの怪物、蝉丸。不死身と呼ばれる怪物を無限城で何人も葬りましたが、
 ……流石に赤屍蔵人を殺したことは無かったですね。
 やれやれ、美堂蛮との戦いで私は自分の限界を悟ったつもりでしたが。
 クス、まさかこんな所で自分の限界を超える機会を得られるなんて。」

赤屍が今浮かべているその表情はいつもの余裕に溢れたそれではなく、
新たな目標を見つけた挑戦者の様に新鮮な喜びに満ちていた。

「超えてみましょうか、自分自身を。一ナノメートル程先へ。」

赤屍蔵人を殺す。美堂蛮との死闘で己の限界を知った今ならそれも可能なはず。
イメージをするのだ。自分自身の死を。

ズバァァァァァァ!!!!

赤屍が解き放った赤い槍が二人の赤屍蔵人を同時に串刺しにし、遂にその存在を死に至らしめた。



「クス。礼を言いますよオーガ。ついに私は、限界の更に上へ到達することが出来た――――!?」

串刺しになった赤屍の死体を払いのけ、勇次郎が拳を振り上げて赤屍に襲い掛かり、


ボゴオォォォォッッッ!!!


重さ、スピード、タイミング。
そのすべてが常軌を逸した一撃が赤屍蔵人に叩き込まれ、彼の胴体を容赦なくブチ抜いた。

(―――馬鹿な―――何故!?)

何が起こったか分からない赤屍は勇次郎の足元に転がっているそれをまじまじと凝視する。

(―――あれは―――死体―――?)

(―――私が殺した、私の、死―――?)

己の死を目の当たりにしたことでイメージの出来上がった赤屍は勇次郎の一撃をダイレクトに喰らい、
口から大量の血を吐き出してその場に蹲った。

「他者の命を奪うということは、同時に自分も殺される覚悟をするということだ。
 たとえ相手が子犬であろうとそれは変わらん。己の死を想像できぬ者が、最強であろう筈がない。」

己を見下ろす勇次郎に自嘲気味に嗤いながら赤屍は答える。

「……非常に理解しがたいですが……確かに一理あるような気がしますね……。
 クス。残念です。ひょっとしたらもう少し、更に上が見れたのかもしれませんが。」

目から光が消えた史上最低最悪の運び屋の二つ名をもつ超越者はそのまま死を受け入れ倒れ込んだ。



その様子を見ていたハリィ・ガーバーはいつの間にか手に持ったビールの飲み干した後、
ジョー・フレッチャーに渡した物質崩壊銃を取り上げて足で踏みつけて破壊した。

「ナルホド、確かにもうこんな玩具じゃどうにもならなそうだな。」
「だから言っただろハリィ!本気でやってくれ、頼む!」
「あぁ、もう、分かったよフレッチ。」
「よぉ!オラの相手はおめぇか?すっげぇ強そうだなぁ。
 へへっ!オラわくわくし

いつもの台詞を言い終わる前に、なんの前ぶれもなく孫悟空は突然その場から跡形もなく消滅した。

「………え?」

何が起こったか分からないベジータは唖然と見つめる。

「ほら見ろフレッチャー!もう終わっちゃったじゃないか!
 ああ!偉大なヒーローだったろうに!なんて勿体ない!」



ブランザー。

発明家ハリィ・ガーバーが処刑器具を流用して作りだした、被験者の脳にグルーオンを注入し、
プランク数を1mに拡大させることで考えただけで何でも実現するようになる時空支配装置である。
装置の起動中は二時間という時間制限こそあれありとあらゆること――物質創造・変換、
生物創造・操作、蘇生、機械創造、瞬間移動、遠隔視、サイズ変更、思考操作 、時間捻じ曲げ、
時間移動、無時間行動、存在抹消、宇宙遍在、創世――などが、ただ望んだだけで可能になる。

いわば時間制限はあるが回数制限のないドラゴンボールであり、
全ての次元の無限階層上位のω×ω次元より更に上のヒルベルト空間から波動関数を書き換えて
世界に干渉するこの装置には「神の力を超えているから不可能」などといった制限すら存在しない。
完全な全知全能。ちなみに時空支配装置ブランザーは一つしかないので、
後で使わせてもらう予定のフレッチャーは現在ただのハリィの付き人のサラリーマンである。

「悟空のサインもらえなくて残念だったねハリィ。」
「まぁ、命には変えられないからね。仕方がないさ。」
「ところでどういう理屈で彼を消したんだいハリィ?」
「ああ、悟空が居た空間を切り取ったのさ。空間が無くなったらそこに残るのは
 『あらゆる物体は存在することをやめる』無の領域。そこへ相手を押し込めば
 存在は抹消されるというわけだ。」


「そっかそりゃすげぇなぁ!でもオラ難しくてさっぱりわっかんねーわwwwww」


「「……え?」」

ガーバーとフレッチャーが振り向くと、そこには存在を消去した筈の孫悟空が両手を構えて立っていた。
この世に存在する者はどんな強者であろうが全知全能に抗うことはできない。
だがしかし、実は悟空が瞬間移動を使うとき、ほんの0.0000…01秒の間だけ
「この世から消えて別の次元へ移動している」。長年の勘で何かを察知した悟空は、
ハリィ・ガーバーが世界に干渉する直前に瞬間移動を使い、二人の背後へ移動したのだ。つまり。

「……まさか。」
「願いの奇跡を……『避けた』!?」

さて、時空支配装置ブランザーは全能であり、どんな空間支配能力を持っていてもどうしようもないだろう。
だがしかし、存在抹消も物質創造も瞬間移動もサイズ変更も時間移動も無限時間停止も宇宙創造も、
とりあえず本人が一度やってみようと思わないと出来ないわけで。

「 龍 拳 ! !」

悟空が繰り出した光の龍――東映映画祭りで魔人ヒルデガーンを倒した時に使ったレアな必殺技が
理解不能な事態が起こって思考停止している二人に襲い掛かり。

ハリィ・ガーバーとジョー・フレッチャーは塵ひとつ残さずこの世から同時に消滅した。





すべてが真っ黒になったと言っていいし、すべてが真っ白になったといっていい。
ガーバーとフレッチャーは気が付いたら他所にいた。

「……おい、フレッチャー。」
「ハリィか。ここはどこだ?」
「超空間だよもちろん。思考界さ、フレッチ、大宇宙だ。
 抽象的可能態、無限次元、前幾何学的基層、ヒルベルト空間――。」
「おちつけハリィ。そうか君は僕を連れて無意識の内にここまで逃げてきたんだな。」
「やれやれ、いや待て、悟空の位置が分かればこの空間から反撃できるかもしれないぞ。」
「もうやめようよハリィ。やっぱただのサラリーマンがスーパーマンに喧嘩を売っちゃいけなかったんだよ。」

二人の目の前の空間がピシピシと音を立てて罅割れていく。

「……どうやら君の言う通りらしいな。」
「ハ、ハリィ!?」

ハリィ・ガーバーは親友にウィンクをして叫んだ。

「さよならだフレッチャー!楽しい人生だったよ!」

次元の壁を突き抜けて二人を追って来た龍拳がハリィ・ガーバーを飲み込み、
世界最強の男はあらゆる次元から完全に消え去った。





「ああハリィ。かわいそうに。」

気が付いたらジョー・フレッチャーはフロリダの自宅の前に居た。
ハリィが最後の力で帰してくれたのだろう。恐らく二度と自分の前に現れないだろう
友人の顔を思い出してフレッチャーは涙ぐんだ。

「ダーダッ、おかえりっ。」
「セリーヌ!元気にしてたかい?実は500万ドル手に入ったんだ。
 今度みんなで旅行へ行こう。ああ、それよりキャンディがほしいか……。」

ジョー・フレッチャーは愛娘を連れて、我が家へと帰宅した。



◆ ◆ ◆


「………ふんっ………。」

突然の乱入者との戦いの中、唯ひとり見ているだけだったベジータは不満そうに鼻息を吹く

「両者向かい合い、フルパワーを出せる状態で戦闘準備を整えた状態からよーいドン。
 ………そのような状態で始まる実戦など、あろうはずがない。
 どれ程強力な武器や能力を持とうが、使いこなせねば豚に真珠。宝の持ち腐れよ。」

範馬勇次郎の言っていることは正しい。カカロットはあのタイミング以外でハリィ・ガーバーを
倒すことは出来なかっただろうがあの男は悟空を殺そうと思えば無限通りのやり方があった筈だ。
力の差はあまりに歴然。だが、実際はハリィ・ガーバーは何をやってもカカロットには勝てないだろう。
奴はただの電気修理屋であって戦士ではないからだ。実戦とはそういうものなのだ。

「……くそっ!」

ベジータの苛立ちの理由はは戦えなかったことだけではない。
カカロットがあんな奴にやられなくて良かったと思ってしまっている自分自身に対してである。

「にしても……ははっ、やるじゃねぇか!やっぱおめぇはモノが違うな勇次郎。」

赤屍蔵人を倒した勇次郎に悟空は称賛を送る。勇次郎は対峙して微笑んだ。

「邪魔者は消えたな。じゃあ、始めようか孫悟空、宇宙最強の親父喧嘩の続きを。」

両手を上げて構えを取る勇次郎を見て、ベジータは抗議する。

「おい!何を出しゃばってやがる!カカロットを倒すのはこの俺だ!!」
「そんなこと言っても俺は一人しかいねぇからなぁ。ちょっと待っててくれねぇかベジータ?」
「ふざけるなぁぁぁぁ!!!!!」

ベジータを凝視し、何かを思いついたような顔をした勇次郎はニヤリと嗤った。
勇次郎の望みは孫悟空との完全決着である。もはや他の参加者には興味はない。
ならばそう、全てが終わった後、悟空と決着をつければいい。

「ほう、その肌の色、天使のような両翼。貴様合体しているなベジータ。
 なるほど、丁度二対二のタッグマッチといった所か。」
「あ!そっかぁ。勇次郎!おめぇ頭いいな。」

ゾクりと、ベジータの背中が凍りつく。

何か、とてつもなく不味いことが起きようとしている。

「―――うおおおおおおおお!!!!!!」

間髪入れずに、ベジータは二人に向けて連続エネルギー弾を放った。
未現物質で強化され一発一発がとてつもない威力になっている。

「はぁ……はぁ……やったか?」

モクモクと煙が晴れて行き、

「……あ……あぁ……!」

それを見て、ベジータの表情が絶望に包まれた。

―――なんということだ。

―――俺はまた、ヤツに追いつけないのか?



「孫悟空と範馬勇次郎のフュージュン―――スーパーサイヤ人Ω(オーガ)ってとこか。」


赤髪をたなびかせた「最強」が、今ここに君臨する。



【赤屍蔵人@GetBackers-奪還屋-  死亡】
【ハリィ・ガーバー@トランスリアル 死亡】


【D-6/1日目・夕方】

【孫悟空@ドラゴンボール】
【状態】 疲労(大)ダメージ(中)スーパーサイヤ人Ω(オーガ)、合体(範馬勇次郎)
【装備】 上半身裸
【持ち物】ランダム支給品0~1、基本支給品一式
【思考】
基本: 優勝してドラゴンボールでみんなを生き返らせる
1:ベジィィィィタァァァァァァアア!!!!
【備考】
※連載末期の魔人ブウと戦ってた頃からの参戦です。
※ベジータの言葉の影響はありません。
※範馬勇次郎と合体しました。


【ベジータ@ドラゴンボール】
【状態】ダメージ(大)、疲労(大)、焦燥、固い決意、魔法少女の夢と希望、未現物質、スーパーサイヤ人キング
【装備】 上半身裸
【持ち物】 ランダム支給品1~3、基本支給品一式
【思考】 全てを背負いし覚悟を決めた戦士
【備考】
※全開の領域に辿り着きました


【E―4/1日目・夕方】

【暁美ほむら@魔法少女まどかマギカ】
【状態】 疲労、ダメージ(小)ソウルジェムに穢れ(小) 、パーフェクトほむら、
     合体(アルティメットまどか)
【装備】 アルティメットマジカルアーチェリー、魔法少女服 、侵食する黒き翼
【持ち物】 ランダム支給品1~3、基本支給品一式 ×3、トカレフ(3/8)、予備弾薬32/40
【思考】
基本: まどかと幸せになる為に悟空を倒す
1:ドラゴンボールの使用とロワの再開を阻止する
【備考】
※アルティメットまどかと合体しました
※アルティメットマジカルアーチェリーに螺旋力とゲッター線の力が宿っています
※原作最終話のCパートに近い状態です。




宇宙最強の絶望クラッシャー 時系列順 全開ロワ終幕「全開」(前編)
宇宙最強の絶望クラッシャー 投下順 全開ロワ終幕「全開」(前編)
明日を託した想いの翼 孫悟空
宇宙最強の絶望クラッシャー ベジータ
範馬勇次郎
暁美ほむら
鹿目まどか
GAME START 赤屍蔵人 GAME OVER
GAME START ハリィ・ガーバー GAME OVER

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最終更新:2015年01月01日 01:35