「どこもかしこも派手に暴れているね」
垣根とともに主催の場から動き始めたキュゥべぇが語り掛ける。
魔法少女の決戦。
惹かれ合うグルメ細胞。
神と神の激突。
乱入者と乱入者の今期決戦。
そしてサイヤ人の争い。
会場に集められた人数も最初と比べると大分減り終盤の空気が漂い始めるバトルロワイアル。
大地は削れ、水が渇き、月が破壊された――何も傷を受けているのは人類だけではないらしい。
『神』が複数降臨している今、この世界に不可能など存在しない。
限界の果てに何があるか、それは神にも理解できないだろう。
「伝説の巨人まで持ち出すとはな……どうなっても知らねえからなアレイスター」
限界を超えた一人の人間名を垣根帝督、未現物質を操る学園都市の№2であり暗部組織のリーダー。
その力は会場内でも屈指の実力だが限界が存在しない今徐々に霞み始めており、全体の標準の高さが伺える。
現在彼らが目指しているのはサイヤ人の争い場所である。
「それにしてもニトロと妹達を置いてきてよかったのかい?」
「そうでもしねえと大量の巨人は誰が駆逐するんだ?
ハルトは鎧と超大型の相手で忙しいし、フリーの奴がいるか?」
参加者は誰も知らないが現在会場には大量の巨人が押し寄せている。
イデオン発進時に囲っていた壁が崩れてしまったため巨人が大量に溢れ出したのだ。
そこでこれ以上対主催を減らさないためにも垣根は貴重な戦力を全て注ぎ込んだ。
全開となった己の能力を行使したのだからたかが巨人に負けることはないだろう。
しかし物量戦になれば勝利と言う結果は遠のくかもしれないが。
巨人の中でも特別な力を持った個体が流れ込んでいる。
その二体の巨人は更にプリキュアへと変身し更なる高みへと進化している。
彼らに一体何が、どんな使命を背負っているのか、運命は誰にも分らない。
この殺し合いにいる理由だってカカロットにしか分からないだろう。
巨人の相手をしているのはヴァルヴレイヴを操る少年ハルト。
彼もまた運命に巻き込まれた一人の戦士。
素性は不明だが巨人との争いは参加者にとってはうれしい誤算である。
「そうだね垣根。でもゴットの相手はどうするんだい?」
「俺に常識は通用しねえ。知ってんだろ契約魔」
「そうか……君は行くんだね」
主催。
それはこの殺し合い、バトルロワイアルの始まりを創造した倒すべき諸悪の根源。
垣根はスタージュンの裏に黒幕が潜んでいると睨んでいた。
たった一人の男にこの状況は作り出せない。
その結果絡んでいた学園都市、インキュベーターと言った協力者たち。
だがそれも違った――真の主催はもっと身近に存在していた。
サイヤの血を引く男――カカロット。
「まさか俺がアイツの手の上で踊っていたとはよ……まったくリズムが狂って上手く舞えねえ」
「僕という個体はその情報を持ってなかった……本星には
アクセスが禁止されているデータベースが存在していてね。
今ならそれが分かるよ」
「あいつが言ってた過去のバトルロワイアル……か」
カカロットが正体を表した時に言った『前にもあった』。
つまり彼が関わったバトルロワイアルが少なくとも一つあるということだ。
この殺し合いは強い奴と戦いたい、こんな理由で繰り返すなど常人には理解が苦しいだろう。
だが更木剣八や範馬勇次郎を始めとした一部の参加者は賛同している。
巻き込まれたものが多数だが。
「そのデータベースは見たのか?」
「一度ね。当時はブラックボックスも多かったし知識もなかった」
「今はどうなんだ」
「正直、悪魔超人だとかスタンド使いとか今も分からない単語もあった」
「でもね。アルター使いは乱入してきたカズマ達の事だし、もちろん君のことや勇次郎の事も書いてあったね」
「参考までに聞くが俺はどうなっていたんだ?」
「多数の人物の結末はブラックボックスでね……
帝督は正義の人間だったんじゃないかな。劉鳳とフュージョンしてたしね」
「そうか……正義の」
こんなの柄ではない。
信条には無関係な一般人は極力巻き込まないと言うのが存在する。
それは善人な発想ではなく彼の悪党としてのプライドが故の存在。
そんな彼が正義の味方を騙った世界が存在していた事実。
「まあ関係無えけどなぁ!!」
大きく広がった翼は垣根と同じ天使のような白き翼。
羽ばたかれた翼からヒラヒラと落ちていく羽。
「そんな君の体も急激な進化に……」
落ちた羽は形もなく消滅する。
垣根が能力を解除したわけではない――形を保てないのだ。
本来存在するべき過程を通り越した進化の代償は軽くはない。
運命に干渉された因果律の歪みは罪のない持ち主に罰を与える。
「るせえ……なんならお前だって感情が植え付けられて狂ってんじゃねえか」
インキュベーターに感情は存在しないし必要ない。
だがここに来て覚えてしまった、感じてしまったのだ。
数多の参加者が繰り広げるドラマは中身はどうであれ感情の存在しないインキュベーターに干渉していた。
「そうだね……まったく君たち人間は本当に理解苦しむよ」
■
「ファイナル!!!!」
「無駄無駄なんだよなぁー」
「フラァアアアアアアアッシュュュ!!!!!!!」
「何でわっかんねえかな」
超サイヤ人3のベジータが放つ渾身の一撃はエリアを抉り取りカカロットに迫る。
「ハッ!」
超サイヤ人ゴットとなったカカロット。
ゴットがどれだけの力を持つかは分からない。
だが複数のサイヤパワーを、主催であるカカロットには想像も出来ないパワーを秘めているだけ。
腕から出された気弾はファイナルフラッシュを吸収し爆発した。
「おいおいさっきよりえれえ力が落ちてんぞ?
そろそろ限界が近いだろベジータ……楽になれって!」
爆風が晴れて姿を現すベジータは満身創痍。
服は所々破け鮮血が辺りを飛び交い生々しい傷が目立つ。
クリームヒルト・勇次郎・ブロリー・カカロット
ベジータが戦った人数は少ないがどれもが世界を代表できる全開の持ち主であり彼の体力は削れていった。
超サイヤ人3という新しい境地に辿り着くがそれでもカカロットには届かない。
どれだけ手を伸ばしても、どんなに努力をしても夢は掴めない――?
「俺にはっ帰る場所が……!
ブルマの、と、、トランクスの、あいつ…らぁの地球を復活させて守……r!!
だから、こんな所で果てる訳にはいかないんだァアアアアアア!!!!!」
立ち上がれ運命を背負い皆の希望となる誇り高き戦士よ――
「うりゃりゃりゃりゃ!!」
ベジータの息の根を止めるべく瞬間移動で目の前に飛び出たカカロットの拳の乱舞。
気合で体を動かし対抗するベジータ。
完全に裁けなくてもその体力から想像できないほど拳を相殺する。
気を引き締め足を蹴りあげ顎を狙うが重心を後ろに下げ回避するカカロットはそのまま縦に回転し逆にベジータを蹴り上げる。
そのまま上に移動し腕をハンマーのように叩き降るがそれおを受け止め気弾を弾けさせるベジータ。
カカロットの顔が歪み爆発が右肩を襲う。
穴は開かないものの傷は確かに負わせることが出来た。
「往生際が悪いぞベジィィィィイイタアアアァァァァァ!!!!」
ゼロ距離から放たれるかめはめ波はどこにも逃げ場が存在しない絶望の閃光。
だが黙ってるわけにも行かない。
迷うな、戦え、攻めろ、お前がやらねば誰がやる!
「ぬん!!」
大きく気を放つ遠距離技ではかめはめ波を相殺することは不可能だ。
寧ろそこまで気を練るなど時間的にも体力的にも無理だろう。
なら瞬間的に足を気で纏い腕を狙えばいい。
蹴りはカカロットの腕を上空に向け遥か天高く、大気圏を突き破り放たれるかめはめ波。
空を切り裂く大きな一撃の反動を狙い攻撃を、野蛮な体当たりで下に向かうベジータ。
力が出ないなら自分の重さで戦えば、己の体はインパクトの瞬間に脱出させカカロットだけが大地に落ちる。
クレーターが出来るがカカロットの姿は存在しない。
気づいた時にはクレーターの中心にいたのは己だった――
「悪かった、オラが悪かったんだなベジータ。
戦いを続けたいから手を抜いて戦う。
それで相手は、おめぇは思ったよな?『これならいける』って。
ちょっと隙を見せたら実力を勘違いして我果敢に襲いかかる……
淡い希望を抱かせて悪かったな……もうお前死ねや」
何度目か分からない閃光がまたひとつ会場に響き渡る――――――――――
「淡い希望を抱かせてんなら夢のままで終わらせろよ……チンピラ」
大いなる翼を抱き一人の戦士が戦場に舞い降りる――――――
■
誰だって一度は夢を抱く
憧れ、希望、探究心
あの時代を恥じることなんて必要ない
それが生きた証だ
それが今の自分の礎となっている
悪が正義の道を歩く?
別に構わないしナイスな展開じゃないか
本当に悪が改心したのか
更正した後の行いですべてを精算できるのか
それは己が決めることではない
歴史が決めるのだ
■
「お前は垣根帝督か……そっかオメェも全開に辿り着いたか!
そうだよな前回も終盤まで生き残ったんだからそれぐれぇやってくんねぇとな!!」
「うるせぇよ屑チンピラ野郎。
俺には時間ってのが残ってないんだからテメェに構ってる時間なんて無いんだわ」
「ハハハハハハッハアハ!!面白えなぁ!オラに構ってる時間が無い?
オラがラスボスだってのにな!」
「だったらとっとと死んでエンディング見せろやああああああああ!!」
翼に高エネルギー反応あり!それは太陽と肩を並べる程の灼熱!
内なる器に秘められた大いなる力はサイヤを焼き尽くすために形を得て一直線に放たれる。
二ィィと口角を釣り上げ片腕から気を放出するカカロット。
ちょうど二人を点として半分の所で激突する貳のエネルギーはどちらも引くことを知らない。
大地からはパラパラと石が土が砂がエネルギーに驅られ上昇を始める。
岩が隆起を起こし全ての終わりを――長いこの殺し合いが確実に終焉に向かうことを示している。
「フン!」
「甘ぇよ三下ァァアアアアアア!」
痺れを切らしたカカロットが瞬間移動で垣根の背後にワープする。
行き場を失ったエネルギーはそのまま遥か彼方へ――イデオンの方角へ飛んでいった。
垣根は未現物質で一つ細工を、一つかどうかは分からないが策を用意している。
彼の周りで展開している未現物質に常識は通用しない。
カカロットの気を感知して自動で弾丸を具現化し襲いかかる。
「うりゃりゃりゃりゃりゃ!!!!」
拳で全ての弾丸を薙ぎ払う――否、全ての弾丸を垣根に反射する。
「反射であいつに勝てる奴は存在しねえ!!だから俺には効かねんだよサイヤ人!!」
弾丸は垣根に届くことなく消失する。
設定だ。
未現物質が垣根に反逆を示した場合自動で消失すると言うプログラムを組み込んだのだ。
無論今の垣根だがら可能なことであり、故に垣根と言う個体の崩壊の鐘が鳴り響いてる事実でもある。
垣根の状態は垣根ではなく未現物質そのものに近い。
肌も臓器も全てが能力で覆われている今人間と呼べるだろうか。
そして早すぎた進化に体が着いて行かず崩壊を起こし始めている――リミットは近い。
「どうしたぁボロボロだぞおめぇ」
「舐めんなよ……無限力にも対抗出来るほど俺はァ!!」
天高く降り注ぐ鋭利な塊の量は日本全土を二つ掛けて更に三つ掛けた程の莫大さを誇る。
「オラに元気を分ける必要はねぇ――勝手に使うからよ」
カカロットは会場に残っていた死体から全てのエネルギーを集め元気玉を天に飛ばす――
■
――俺の名前はトリコ!!
君にも感じるよ黄金の精神を――
――これほど血肉が踊るのは久しぶりだ……
――そんなテリーさんの靴紐が全部千切れた!?
こいつは嵐が来るな――
「こ、これは……?」
「過去に行われた悲劇の群奏劇――名を付けるなら『全開バトルロワイアル』」
「お前はキュゥべぇか……!」
「そうだよベジータ。これは過去の記憶さ」
グレートキン肉マン!?――
――いや私だ
あの動きはトキ!?――
「ああ、分かる。知らない奴らだが懐かしさを感じる」
これがカカロットの言っていた過去の殺し合い。
見たことがない奴もいれば知ってる顔も存在する。
――鹿目さんは私が魔女になって結界に閉じ込める……後は
ダブルフェイスフラッシュで浄化してやる!!――
――さやか……もう一度笑ってくれよ!!
――チィ!フュージョンが解けたか!?
――おい、いくら常識が通用しなくても無理は通るぞ
――せめて闇の書さえ破壊出来れば……さやかを元に戻せるかもしれないのに……
――私に任せてもらおうか
――あの動きはトキ!?
願いの力で復活した私に加減など期待するなよさやか――
――速さが足りないッ!!
――いやお前には全てが足りないぞォ!!
そんな事は分かってんだよ破壊野郎!だから俺は速さを求める!
それが死んでいった奴らの手向けになる!!――
――コレを君に託そう鹿目まどか
――か、カーズさん……
――泣くな俺は人間ではないし君の敵だ
――でも……
このジュエルシードがあれば君が魔女になっても助けてくれるさ――
――そんなシーザーが命と引き換えに殺したアーカードが!?
――やれやれだぜ……コイツはピンチのレベルを超えてるぜ
アーカードの腹を食い破って信長が……!?――
――このディオよりも時を止めるか明美ほむらああああああああ!!
――そうね、それがあなたの限界よディオ・ブランド―
ならば赤石を使うまでよおおおおおおおお!!!!――
――ありがとうマミさんもう大丈夫
そう、行くのね鹿目さん――
――だったらその手で全てを!くだらねえ悪夢を終わらせろよ!!
うるせぇ!!誰もがお前みたいに反逆出来るか!?俺はお前みたいに強くねえよ!!
聞いて呆れるぜェ、ヒーローさんよォ――
『この俺がカカロットを止める!だからブロリーはお前達に任せる!!』
■
「これで君が何をすべきか理解したかい?」
「ああ――行くぞ決戦だ、全てを終わらせる――!!
■
「糞な夢見せんなよ」
最初に出ったのは能力なしに空を飛ぶ男と緑のアルター使い。
後から出会う黄金の精神を持つ男や運命に抗う黄色の魔法少女に武道家の禿頭。
そこで戦う伝説の超サイヤ人や魔王に吸血鬼との激戦の数々。
見たことのある黒き怪物を未現物質とトキと最強の正義超人親子と共に浄化し運命を切り開いた。
ここで夢は途切れ現実に視界が戻る――
「あんないい夢見させんな……もう立ち上がれねえかもしれねえだろ……」
悪に堕ちた一方通行――いや、昔に戻ってしまった一方通行との再戦。
瘴気に当てられ上条当麻が死に吸血鬼の血を体内に宿した一方通行は虐殺を繰り返した。
一緒に行動していたヴィータを殺しても。
「せっかく止めてやったんだから……今回は生きてろよ」
学園都市の仲で殺してやった。
とは言っても完全な勝利じゃない、一方通行の中に残っていた最後の心が彼の命を自ら止めたのだ。
「眩しい……」
クレーターに大の字で空を見上げる未現物質の瞳はそれでも生きている。
負ける気など無い、想像しろ勝利する姿を――アルティメットルーティン。
無論、グルメ細胞無き垣根には不可能だがそれでも夢を捨てるのは死ぬと同義。
「行くぞ、ベジータ」
「もういいのか?」
「こっちのセリフだ、あんな光景見せられたら腐ってても動くわ」
殺し合いに巻き込まれた者達は絶望に満ちる。
仲間という微かな希望は簡単に消失してしまい反動で絶望が勝る。
それでも反逆した全開の名を持つ勇者の姿を魅せつけられて黙っていられるだろうか。
「ふん……独歩や魔法少女達はまだ生きている」
「ああ。
トリコが人を喰らったり独歩と第三位が出会ったり……デジャブだな。
そんでまたお前と、劉鳳はいねえがまた出会うとは思っていなかったと思うぜ?」
「それが嫌なら終わらせるぞ――全てを!!」
「当たり前だ誰に言ってやがる?学園都市最強の第二位様だぜ?」
輝きを失わない限り男は何度でも立ち上がる――
「夢を抱かせて悪かったしまさか記憶が戻るとは……
心配すんな今度は確実に息の根を止めてドラゴンボールで後遺症なく生き返してやるだから――
かーめーはめえええええええええええええええええええええ!!!!!」
「「ファイナル!!!!」」
「波アアアアアアアアアアアア!!!!!!」
「「フラァアアアアアアアアシュッ!!!!!」
何度激突したか分からない意地と意地。
ブロリーとシグナム、ルフィとカカロット、ゾロとグリンバーチ、東方不敗とプリキュア。
ヴァルヴレイヴと謎の巨人型プリキュア、人喰いとアルター使い、神と神――
数々のドラマが生まれ消えていく繰り返される営みの中の果てに何が生まれるのか。
所詮そんなものと思った時に夢は力を無くす――ならば信じろ。
負ける姿など想像しても何も楽しくないしそれは弱者の考えである。
その弱い意志に反逆しろ。
軟弱な幻想をぶち壊せ。
自由な者が相応の力を得る。
飽きない探究心を満たし続けろ。
強者との戦いが生き抜く要素となる――
「チィ!やるなおめぇら!!」
輝きを失わない閃光は遂に主催を飲み込む反逆の狼煙となった。
いや、傷は何度も負わせている。
勇次郎が、ブロリーが、ミケロが激戦の果てに何度も傷を負わせている。
だが、誰も決定打を与えて、誰もカカロットに負けのイメージを植えつけたものはいない。
無論カカロットは光の中でも輝いている。
だがベジータも垣根もその夢を、勝利することを諦めていない。
カカロットの後ろには天使の翼を広げ急降下する垣根。
前方には未だ気を放ち続けるベジータ。
世界を代表する永遠のNo.2が己の全てを賭けて戦っているのだ。
どちらもその強さ、気高きプライドは群を抜いている。
だがどうだろうか――今の彼らの姿は。
何度血を吐こうと、何度倒れようと、何度挫けても立ち上がり続ける。
全てを終わらせるために。
「100000倍界王拳だ、どこまで通用するか試してみっか?
あぁわりぃそんな価値も無えかぁ?」
「無量大数だろうが八百万だろうが持って来いやああああああああああ!!」
紅蓮の闘気を更に纏った拳と拳のラッシュは一つ一つが世界を壊す程の威力を秘めている。
対抗する垣根は意地と能力で張り合う。
これ以上の行使は垣根の主導権が全て未現物質に乗っ取られるだろう。
それ程までに今の垣根は人間から掛け離れており、全開に近いとも言える――その前に彼の命が持つかどうか不安だが。
カカロットの格闘技術に天元突破した垣根でも敵う事はない。
反撃を掻い潜り一発また一発と垣根の体に破裂を与える無慈悲な拳。
その度に何度も何度も再生される未現物質。
(……再生の精度が下がって来てやがる……)
肌に罅が入り始め再生の速度が低下して来ており衝撃も段々と直に響くようになる。
垣根帝督の『補正』が薄れきた証拠である。
本来強者に牙を向く『制限』だがカカロットは考えたのだ。もっと強い奴と戦いなら強くすればいい。
その結果が今の状況を作り上げた。
ソウルジェムを破壊されても死なない勇次郎。
一方通行に勝利した御坂美琴。
分裂する巴マミ――全てはカカロットの思惑を具現化した茶番である。
全ては最強の奴と戦いたい願いが動かす悲劇の嵐。
「もう十分だベジータ!僕の全てを君に預けるッ!!」
キュゥべぇは覚悟を決めて己のエネルギーを全てベジータに授ける決意を固める。
本星無き今彼の個体のバックアップは存在しないため事実上の死を迎えることになる
感情が付加された今一層死の重みは以前と比べ増しているのにも構わず決意する。
「感情が付いて解ったよ……本当に要らないモノだね」
自分の使命に枷を付ける感情など無い方が光栄だ。
余計な思いは迷いを与え、迷いは全てに不安要素を残し、不安要素は破滅を招く。
効率を重視したインキュベーターには決して必要のない産物である。
「そのせいで僕は今恐怖している……死と言う終わりの終わりに!感じたこともない!!
死んだらどうなるか!?そんなの新しい個体に受け継がれるだけさ!墓に入る何て発想もない!!
それでも今の僕には分かる!まだ生きていたいんだ!!」
「お前……グォ!?」
キュゥべぇの叫びに驚きを隠せない垣根。
主催の場で出会ったキュゥべぇは感情の存在しない契約機械だった。
それが今生に執着したい絶望と勝利の礎になりたい希望の狭間で歪んでいる。
そんな垣根の思考停止にカカロットは構いなしに回し蹴りを叩きこみキュゥべぇの近くに垣根は落下する。
「また感情が付いたのかぁ?前は電撃女の願いで感情が付いたんだけどよぉ……天丼は好きじゃねぇぞ」
「君には分からないかもね孫悟空!僕は今悔いているんだ――全ての魔法少女に」
淡い希望をチラつかせ使命のために深い絶望に叩きこむ準備。
そして時が来たら希望の代償を押し付け己の使命に利用するだけ――幾多の少女がその生を散らした。
「これで全てが許されるかどうかなんて分からないし僕自身許されるつもりはない!
でも責任はせめて君を倒すことに貢献する形で取るつもりだ!
後は生き残っている僕の――
最高の5人の魔法少女が全てを導く!!!」
キュゥべぇを中心に渦巻くエネルギーはエリア一帯を飲み込むほどの規模。
光り輝く彼から開放されるのは多くの夢の欠片。
本星に供給していないエネルギーを全て開放しているのだ。
「な!?おめぇはあの個体じゃねぇのにどうしてそんな力が!?」
「ただドラゴンボールに始まりを告げた君は知らないさ。
僕はこの会場で鹿目まどかと契約を結んだ――つまりクリームヒルトのエネルギーを持っている」
「そっか……やっぱあの子はオラの前に何度も邪魔するのか」
「そうさ彼女は最高の魔法少女になる素質を秘めているからね。
その内イデも倒して皆を救済する奇跡の魔法少女になるさ」
「イデを殺す何て物騒だなー怖いのは嫌れぇだぞ」
「だ、黙れ……!」
一筋の流星がカカロットを貫くビジョン――アルティメットルーティン。
微かな力を振り絞ったベジータの一撃はカカロット――孫悟空に届くが不発。
本能で振り払う悟空の右手に浮かぶが星々の煌めき――鮮やかな格闘技術は芸術の域に辿り着く。
「さぁ受け取るんだ!ベジータァァア!!僕の意思を!魔法少女の夢と希望を!!!」
白銀の煌めきはベジータに降り注ぎ――
「そんな事さっせかよ――波アアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
――その時不思議な事が起こった――
「な、何だ!?」
カカロットがキュゥべぇを止めるためにかめはめ波を放つ前に起きた出来事。
空高くから降り注ぐエネルギーに襲われ攻撃を中断する。
放ったのは誰なのか。
瀕死のベジータや垣根には無理だろう。
一護もゼブラも駆けつけてはいない。
「これは――オラのかめはめ波!?」
降り注ぐエネルギーの正体はカカロット自身の奥義かめはめ波であった。
でも何故だろうか?たしかに一度かめはめ波は空に消えていった。
しかしそれが降り注ぐ理由には為らない。
「何かに反射でも――――――――――まさか!?」
「その隙を逃す程俺は諦めてなんかいねえぞ一方通行アアアアアアアアアアア!!!!!」
戸惑いにより硬直したカカロットに攻撃すべく己の翼を引きちぎり投げつける垣根。
対の鋭利に硬直した翼はサイヤ人を斬り裂くために襲い掛かる。
「甘ぇ!!」
「それだけならな!!」
カカロットは簡単に翼を叩き落とし垣根の攻撃は結果的に意味を持たない。
だが見現物資には反射がプログラミングされており着弾したかめはめ波がカカロットに衝撃を与える。
「第三位がぶっ飛ばして第一位が反射した力をテメェに叩きつける――これが学園都市の意地と力だ糞野郎!!」
宇宙に飛ばされた一方通行は死んでなどいない。
だが帰還する方法もないため考えることを辞めていた。
しかし地球から届く光が洗脳されていた本能を呼び覚まし、彼も過去の記憶に目覚める。
全てを反射した一方通行は更に奥に飛ばされ確実に帰る事は無いだろう。
それでも彼は選んだのだ――皆の勝利を。
「おいベジータ……俺もお前と勝利の礎になってやる」
■
「ま、眩しい……!!」
エリアを、いや会場全体を包み込む白銀の閃光。
その付近にいるカカロットは瞳を一度暗闇に逸らす。
姿は確認出来ないが気では感じ取れる――一つになった三つの気が。
光が薄れるに連れて視界も徐々に晴れて来てやがて瞳は再び前を向く。
光の中心にいるのは――
思い返せばこの戦いはそれなりに楽しめた。
覇気を扱う未来の海賊王との初戦。
地上最強の生物との激戦。
意地を見せたガンダムファイター……。
それでも彼を満たすことはなかった。
その理由も今なら分かる――。
「やっぱ最後はおめぇしかいねぇ……ベジータ」
白銀の髪に蒼炎の闘気を纏うベジータ。
そして背中には立派な大天使の翼を携え満を持して降臨した。
夢を乗せた翼に思いを込めてベジータはキュゥべぇと垣根を背負い未来へと羽ばたく。
「超サイヤ人キングとでも名乗らせて貰おうか……魔法少女とキュゥべぇそして垣根の想い……貴様に刻み込む!!」
今此処に告げる――この戦いは全開だ――――――――――
【きゅぅべぇ@魔法少女まどか☆マギカ 消滅】
【垣根帝督@とある魔術の禁書目録 消滅】
【D-6/1日目・午後】
【孫悟空@ドラゴンボール】
【状態】 疲労(大)ダメージ(中)スーパーサイヤ人ゴッド
【装備】 上半身裸
【持ち物】ランダム
支給品0~1、基本支給品一式
【思考】
基本: 優勝してドラゴンボールでみんなを生き返らせる
1:ベジィィィィタァァァァァァアア!!!!
【備考】
※連載末期の魔人ブウと戦ってた頃からの参戦です。
※ベジータの言葉の影響はありません。
【ベジータ@ドラゴンボール】
【状態】ダメージ(大)、疲労(大)、固い決意、魔法少女の夢と希望、未現物質、超サイヤ人キング
【装備】 上半身裸
【持ち物】 ランダム支給品1~3、基本支給品一式
【思考】 全てを背負いし覚悟を決めた戦士
【備考】
※全開の領域に辿り着きました
「ったく俺も焼きが回ったか」
『そうだね君も消滅する必要は無かったね』
「それでも俺の体は長く持たないし仕方ねえさ」
全てを託した彼らに足掻く権利など存在しない。
あるのは歴史を見届ける使命が残るだけ。
舞台から堕ちた役者は物語を最後まで目を逸らさず向きあえばいい。
「まったく感情なんて……こんなにも素晴らしいんだね」
「ああ、全くだ……人生ってのは案外悪いモンじゃない……」
最終更新:2015年01月01日 01:05