「其後華頂峰ニシテ、後夜ニ座禅シ給フニ、天魔ハ種々(さまざま)悩セド、
降伏シ給ヒ終リニキ。 明星漸ク出ル程、胡僧形ヲ現ジテゾ、
自行化他ニ今ヨリハ 影向セントハ近ヒテシ」
とあり、これをうけて『梁塵秘抄』に
「柴の庵に聖おはす 天魔はさまざまに悩ませど
明星ようやく出づるほど 終には従ひ奉る」
がある。
「天魔が八幡に申すこと 頭の髪こそ前世の報にて生ひざらめ
そは生ひずとも 絹蓋長幣(きぬがさながぬさ)なども奉らん
呪師のまつりぬとただ秘せよ しないたまへ」
がある。
(第六天魔王が
八幡神の僧形を揶揄している?
そして天蓋と幣(神への捧げもの)を献上し、民間祈祷者から献上されたことにして
その坊主頭を隠せ、と言っている模様。むむむ?)
- 『太平記』巻十六「日本朝敵ノ事」によれば、日本の主として伊勢国裳濯川の辺に
鎮座した
天照大神に対し、第六天魔王が仏法の広まるのを邪魔しようとしたという。
この時、天照大神は「ここには仏法僧の三宝を近づけない」ことを誓う。
すると魔王は怒りを鎮め、五体から血を流して「未来永劫まで天照大神の末裔をこの国の主とすべし」
と誓約し、証にその血で印を作って、天照に奉った。
これが神璽、すなわち
八坂瓊勾玉だという。
(つまり、天皇の王権を第六天魔王が保証している形の説話になっている)
- 上記は当時の宣教師の間でもかなり知られた説であったらしく、『日葡辞書』にも
「神璽は第六天の印の判。日本国王の持っている三つの古い工芸品のひとつといわれる印判」とあるという。
参考文献
『新編日本古典文学全集 神楽歌・
催馬楽・梁塵秘抄・閑吟集』
『魔界と妖界の日本史』上島敏昭
最終更新:2015年06月20日 00:37