ふたば系ゆっくりいじめ 759 Eyes

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虐待-普通 悲劇 理不尽 越冬 自然界 注意!何もしていない善良なゆっくりが酷い目にあいます

森に入って少し進んだ所――小川のほとりに、小山と言うにも慎ましすぎる土の盛り上がりがある。
そこに掘られた小さな横穴は、ゆっくりたちの巣になっていた。
「ゆっくりさむいね……」
「しゃむい……」
「おちびちゃんたち……」
子まりさに、子れいむ、そして親れいむの家族のようだ。親れいむのツガイはまりさと思われるが、巣の中にその姿は見えなかった。
巣の外は雪、雪、雪――。さほど高く積もっているわけではないとは言え、辺りは白一色に染まっている。
今日も雪こそふっていないが、気温は低く、とても寒い。見上げれば灰色の空。いつまた雪が降ってくるかわかったものではない。
「寒い……」
「おかあしゃん、しゅーりしゅーり……」
「ゆっ。おかあさんとすーりすーりしようね。ぽーかぽーか、あったまるよ」
三匹は身を寄せ、強く体をこすりあわせはじめた。
「すーりすーり……」
その後に「しあわせー!」の言葉は続かない。
「ゆうん。まだしゃむいよお……」
子れいむが不満を漏らした。それはそうだろう。体をこすりあわせたところでどうにかなる寒さではない。巣の外では、身を切るような風が吹いている。寒いと言うより、もはや痛いと言った方がいいかも知れない。
「ゆう……れいむ、ゆっくりしていってね……」
子れいむを励ます子まりさの声にも、覇気がなかった。子まりさも我慢しているのだろう。
「……ごめんね、おちびちゃんたち。ごめんね……」
なぜか親れいむが謝った。
巣の入口には親れいむの手によるものであろう、木の枝や雑草を使った『結界』が張られていた。
寒さを塞ごうという意思は見て取れる。しかしこの『結界』、ところどころ隙間だらけ――いや、ほとんどがら空きだ。あまり役には立っていないのではないか。巣の中には風こそ入っていないようだが、外の冷気は防ぎようもない。これでは暖まれるわけがない。
「ゆう……れいみゅ、おなかしゅいたよお……」
「そうだね、おなかすいたね……」
二匹の子ゆっくりが空腹を訴えた。
暖かい食べ物――たとえば具沢山のシチューでもあれば寒さも空腹も一度に解消できるが、そんなもの、この森の中で手に入るはずもない。これまでのゆん生、シチューなど見たことも聞いたこともないはずだ。
冬――虫や野草といったエサが満足に採れなくなるこの季節は、前もって確保しておいたエサだけで凌ぎ、暖かい春が来るまで巣の中で大人しく待つのが、野生のゆっくりのとるべき道だ。
となれば、それなりの量のエサが蓄えられていなければならないはずだが、巣の中を見渡しても、小さな石や萎れた花、布団代わりであろう枯れ草が少量あるだけだ。エサのようなものは何も見えなかった。
「ごめんね、おちびちゃんたち……」
また、親れいむが謝った。
「おかあさんはかりがへただから、まんぞくなごはんをとってくることができないよ。ごめんね、おとうさんがいれば、もっとおいしいごはんをたべられたのにね……」
「ゆう……。おとうしゃんは、いちゅかえってくるにょ……?」
「いつになったら、かりからかえってくるの……?」
「…………」
子ゆっくりたちからの質問に、親れいむは黙ってしまった。
一家の「お父さん」は、エサを探しに行ったきり戻らないようだ。そのうち帰ってくるらしい。
子ゆっくりたちにはそう教えてあるのだろう。しかし、おそらく――。
ややあって、親れいむが口を開いた。
「――おちびちゃんたち。おかあさん、いまからだいじなことをいうよ。ゆっくりよくきいてね」
「ゆっ?」
「いままでだまっていたことだよ。おとうさんはね、もうここにはかえってこないんだよ」
「ゆっ? ゆっ?」
「おとうさんはかりにでかけて、そこで――」
永遠にゆっくりしてしまった。――そう告げた親れいむの目から、涙が流れた。
足元でぱきり、と木の枝が折れた音がしたが、誰も気にしなかった。それどころではない。この一家にとっては衝撃であろう事実が語られたのだ。
「おとうさんはしんじゃったのおおおおおお!?」
「ゆ? どういうこちょなにょ? ゆっくちせちゅめいちてね!」
「ゆっぐ、ゆっぐ……。おかあさんがかりをしているときに、おとうさんのすてきなおぼうしさんをみつけたんだよ……。おぼうしさんは、とてもゆっくりできないにおいがしていたよ……」
俗に死んだゆっくりが身に付けていたお飾りからは死臭がすると言う。親れいむは、それを言っているのだろう。
「おかあさんはそのとき、おとうさん――まりさがえいえんにゆっくりしたんだとわかったよ。……だまっていてごめんね、おちびちゃんたち。ごめんね……。ゆうっ! ゆゆゆうっ……!」
巣の中に親れいむの嗚咽が響く。
子ゆっくりたちを悲しませたくなかったのだろう。ゆっくりとは言え、親心というものは存在するらしい。
「ゆっくりりかいしたよ……。おかあさんは、まりさたちをおもってくれたんだよね。ゆっくり、りかい……ゆえええ……」
「ゆううう!? おとうしゃんはちんだのおおおお!? いつちんだのおおおおお!?」
子まりさは母れいむの気持ちを汲んだようだ。子れいむは――ひょっとしたらよくわかっていないのかも知れない。
「ごべんね……! ごべんねえ、おちびちゃんたちいいい……! ゆっぐ、ゆっぐ!」
「ま、まりさたちはだいじょうぶだから……! だからおかあさん、なかないでねえ……! ながないでねえええええ! ゆえええええええん!」
「ゆゆ? おきゃあしゃん! おねえちゃん! なかないでにぇ! れいみゅもかなちくなっちゃうよ!」
「ごべんでえっ! ごべんでえっ! うぞづぎでなざげないおがあざんをゆるじでねえええ!」
辺りに響く、空気を裂く風の音と、静かに流れる水の音。
そこに一家の号泣する声が加わった。

…………。
………。
……。

隙間が広がった結界の内側。巣の中が静かになった。
森はますます冷え込んできた。吐く息も、より白く見える。
「おとうさんはいなくなっちゃったけど、おかあさん、れいむ、これからもみんなでゆっくりしていこうね」
「ゆっくち! ゆっくち!」
「…………」
「はるさんがくるまでたいへんだけど、ゆっくりがんばろうね」
「れいみゅ、ゆっくちがんばりゅよ!」
「…………」
「はるさんがきたら、みんなでぴくにっくにいこうね」
「ぴくにっきゅはゆっくちできるにぇ!」
「…………」
子まりさは努めて明るく振る舞っているようだ。子れいむは――これは天然だろう。
そして親れいむは目を伏せている。とてもゆっくりとは思えない悲壮感が漂っていた。
「ゆっ? おかあさん、どうしたの?」
『結界』の木の枝が乾いた音を出すと、それが合図になったかのように親れいむが顔を上げる。笑ってこそいるが、悲壮感は隠しきれていない。
「さいごにひみつをはなせて、すっきりーしたよ。――おちびちゃんたち、ゆっくりよくきいてね」
「ゆっ?」
「おうちにあるごはんでは、とてもとても、ふゆさんをこすことができないよ。ふゆさんはきびしいけど、だけどおかあさんは、おちびちゃんたちだけでもはるさんをむかえてほしいよ。だから――」
巣の天井を見上げる親れいむの、その言葉、その表情が意味するものは――。
子まりさも理解したようだ。
「ゆゆゆうっ! おかあさん、やめてね! やめてね! それはゆっくりできないよ!」
「ゆっ? どうしちゃの、おねえちゃん?」
親れいむは子まりさの方を見て、そして言った。
「おちびちゃんはあたまのいいこだね。そしてやさしいよ。おとうさんのことをだまっていたおかあさんをゆるしてくれたよね。ゆっくりありがとうね。――これからはおかあさんのかわりに、かわいいいもうとちゃんをゆっくりよろしくね。なさけないおかあさんの、さいごのおねがいだよ」
「やめでねっ! おがあざんっ! どぼじでそんなごどいうのおおおおおお!!」
「おかあさんはね――おかあさんは、おちびちゃんたちだけでもはるさんをむかえてほしいんだよ。だから――」
「やべでよおおおおおおおお!! おがあざああああああん!!」
「おかあさんを、ゆっくりたべてね」
そう言って微笑む親れいむの目から、涙が一筋こぼれた。
「いやぢゃあああああ!! いやぢゃああああああああ!!」
「ゆっ!? おかあしゃん、ましゃか――」
「さあ、おたべなさい!」
その瞬間、親れいむの体が真ん中から縦に裂けた。
めったに見られるものではない。
世話になった飼い主へ恩返しの意味を込めて――。
あるいはこの一家のように、食糧難を乗り切るために――。
どうしても自分自身の体を食べてもらいたい。主にそんな時に使われる事が多い、ゆっくり究極の自己犠牲。それが『お食べなさい』だ。
「おがあぢゃあああああん! どぼじでごんなごどずるのおおおおお!? ばりざ、ぜんぜんうれじぐないよおおおおおおお!!」
「おきゃあしゃんが『おたべなしゃい』しちゃったあああああああ!! ゆわあああああああん!!」
残された二匹は泣き叫んでいた。『結界』を形作る草の一部がぽろりと落ちてしまったが、それにさえ気づかない。
本能に刻まれた行動とは言え、大好きだったであろう母親が目の前で真っ二つになって死んだのだ。ショックを受けない方がどうかしているのかも知れない。
半分になった親れいむの表情は、とても自信に満ちている。りりしく持ち上がった眉毛に、不敵な笑みをたたえる口元。しかしそれが逆にもの悲しくも見えた。
二匹はいつまでも泣くばかりで、決して親れいむの死体を食べようとはしない。このままでは親れいむの犠牲が無駄になってしまう。
「おがあざんなんがだべだぐないよおおおおお!! だべられないよおおおおおおおお!!」
「れいみゅもいやぢゃよおおおおおお!! だがらゆっぐりもどにもどっでねえええええええ!!」
「食べないの? なら人間さんに、そのあまあまちょうだいね!」
私は巣の中に手を伸ばし、親れいむの右半分をつかんだ。



「ゆっ!?」
「ゆゆっ!?」
二匹は泣くのも忘れてぽかんとしている。いきなり人間が現れたことに驚いているのだろう。
親れいむの右半分を口元にやる。野生の汚いゆっくりをがぶりとやるには気がひけたので、中の餡子だけちびりと食べた。
ごく少量でもそれはとても甘く、美味だったのだが、
「まずっ!? コレめっちゃまずっ! こんなもの、ゆっくりできないよ!」
二匹の子ゆっくりへの嫌がらせとして、私は聞こえようがしにそう言った。
「こんなものはポイっ! だよ!」
言いながら、親れいむの右半分を小川に投げ込む。右半分は転がり流され――やがて見えなくなった。
それを見届け、再び巣の方を見ると、巣の入口には子まりさと子れいむの姿があった。二匹はすっかり崩れきった『結界』の残骸の上に立っている。
「どうしてにんげんさんが、こんなところにいるのおおおおおおお!?」
「おかあしゃんのけっきゃいっ! がなんでやぶれたのおおおおおおお!?」
一つのことに気を取られると、自分の周りはおろか、事象の前後にまで気が回らなくなるのは、ゆっくりの強みであり弱みだ。
一家は自分たちのことに夢中になるあまり――ゆん生に関わることなので仕方ないとも言えるが――私が巣の中を覗いていた事に気づかなかった。
子れいむの言う「おかあしゃんのけっきゃいっ!」は、こっそり、ゆっくり、ほとんど取り除いた。一家はそれにすら気づかなかった。何度も音を立てたにも関わらず、だ。
もっとも、元々隙間だらけの『結界』だったので、私がそうするまでもなく巣の中は丸見えだったのだが。
ぎゃあぎゃあうるさい二匹を無視して巣の中に腕を突っ込み、私は親れいむの左半分を引きずり出す。
「もう半分も人間さんにちょうだいね! あまあまを独り占めするゲスは嫌いだよ!」
「ゆわああっ! にんげんさん! おかあさんをつれていかないでええええ!! ゆっくりやめてええええええ!!」
「おきゃあしゃああああん!!」
ふと手の中の親れいむに目をやる。すると、その頬を涙のようなものが伝ったのが見えた。
まさかこの状態でもまだ意識があるのだろうか。そして悲しんでいるのだろうか。
愛しい子どもたちに捧げたはずのその身を蹂躙されているこの状況を、無念に思ってでもいるのだろうか。
それは私にはわかりようもないことだった。しかし、もし本当にそうなのだとしたら――こんなに心踊ることはない。
先ほどと同じように餡子をちびりとやり、
「まずっ! やっぱりめっちゃまずっ! こんなものはポイっ! だよ!」
やはり先ほどと同じように、小川に投げ込んだ。
「ゆわあああああああ!! おがあざあああああああああん!!」
子まりさが叫んだ。子れいむは、
「おきゃあしゃん、おしょらをとばないでにぇええええええ!! れいみゅたちのところにかえってきちぇにぇええええ!!」
そう喚き散らしながら、巣を出て外に飛び出してきた。まさか親れいむを追って川に飛び込むつもりなのだろうか。そんなことをしたら、間違いなく永遠にゆっくりしてしまうだろう。
しかし、それ以前の話だった。白く冷たい雪の上に降り立ったとたん、
「ちゅめたいいいいいいい!! しゃむいいいいいいいいい!! ゆっくちできにゃいいいいいいい!!」
飛び跳ねて、転がって、大騒ぎだ。
巣の中にいては感じることのできなかった雪の、あるいは風の冷たさをその身に受け、子れいむは悶え苦しんでいる。
「やめちぇにぇえええ! やめちぇにぇえええ! ゆきしゃんもかぜしゃんも、いじわりゅしにゃいでれいみゅをゆっくちさせちぇええええ!!」
「れいむうううううう!! おそとはゆっくりできないよ! ゆっくりしないで、おうちのなかにもどってね!」
「あんよがあああああ! おかおがいぢゃいいいいいいいいい!!」
雪の上でのたうち回る子れいむには、姉の声は届かないようだ。巣に戻ろうとはしない。いや、戻れない。
子れいむはなおも飛び跳ねて、転がって――やがて小川に落ちた。
「まりさのかわいいいもうとが、かわさんにおちちゃったああああああ!?」」
「ゆびゃああああああああ! ゆっぷゆっぷ! たちゅけちぇええええ!! おみじゅしゃんはゆっくちできにゃいいいいいいいい!! ゆぶぶぶぶううう!!」
「ゆわあああああああ!! れいむううううううう!!」
「おねえぢゃあああああああん!! たちゅけちぇえええええ!! たちゅけちぇえええええ!! れいみゅ、ながしゃれりゅよおおおお!! ながしゃれてりゅうううううう!!」
人間で言えば、せいぜい踝に届くかどうかの浅さの小川だが、それでも子れいむにとっては大河に等しい。
結果的に親れいむの後を追うことになった子れいむ。その小さく丸い体は緩い流れに翻弄され、浮いては沈み、浮いては沈みを繰り返した末、視界から消えた。まだその辺りに沈んでいるのかもしれないし、今ごろはもっと下流を流れているのかも知れない。
「れいむっ!! れいむうううううううう!!」
子まりさは血相を変えて、今まさに子れいむの元へ飛び出そうとしている。
私は屈んで、子まりさの顔をのぞき込んだ。
「まりさ、ゆっくりしていってね!」
「ゆっ! ゆっくりしていってね!――にんげんさん、まりさのかわいいいもうとをたすけてあげてね! まりさじゃたすけてあげられないよ! ゆっくりおねがいだよ! ゆっくりおねがいだよ!」
自分が行くより、体の大きい『人間さん』に助けてもらった方が確実だと思ったらしい。しかし、この事態を引き起こした張本人に頼むことではないだろう。
親れいむが言っていた通り、この子まりさは優しく頭がいいのかもしれない。しかし、しょせんはゆっくりということだ。
「ゆっ? まりさの素敵なお帽子さんはとてもゆっくりしているね! 人間さんがもらってあげるよ!」
そう言って、子まりさの帽子を奪い取った。
「ゆわっ!? まりさのすてきなおぼうしさん! ゆっくりかえしてね! ゆっくりかえしてね!」
子まりさはぴょんぴょん飛び跳ねて帽子を取り返そうとする。そのジャンプが届くか届かないかの位置で、私は帽子を上げ下げした。
取れそうで取れない――子まりさは焦れた。
「ゆんやあああああああ! にんげんさん、いじわるしないでかえしてね! かえしてね!」
「ゆ? よく見たら趣味のお悪い帽子さんだったよ! こんなものはビリッ! だよ!」
私は子まりさの帽子を引き裂いた。先ほどの『お食べなさい』のように、縦に真っ二つだ。
そのまま宙に放る。二つの小さな黒い布は、風に流されてどこかへ行ってしまった。
「ゆわああああああ!? ばりざのずでぎなおぼうじざんがあああああああっ!?」
「趣味の悪いお帽子さんは、人間さんが制っ裁っ! してあげたよ! ゆっくり感謝してね!」
「どぼでごんなごどずるのおおおおおおお!?」
「ゆゆ~ん、そんなに感謝しないでよ~」
「がんじゃなんがじでないいいいいい!! ばりざのおぼうじざあああああん!! ゆんやあああああああ!!」
「ゆゆ~ん」
左手で子まりさを押さえつけ、右手で雪をすくう。
「そんなに感謝してくれて、人間さん嬉しいよ! お礼にゆっくりした結っ界っ! を作ってあげるよ!」
右手の雪を巣の前に積む。そしてまた雪をすくって、積む。
「はなじでねっ! はなじでねっ! まりざのおぼうじざんをえいえんにゆっぐりさせたにんげんざんはきらいだよっ!!」
「ゆゆっ! そんなに急かさないでね! ゆっくり待っててね! ゆっくりしていってね!」
「ゆっぐりじでいっでね!――ゆっぐりでぎないがら、まりざをはなじでえええええっ!! おぼうじざんがえじでええええええっ!!」
小さな巣穴を塞ぐ雪の壁など、片手でもすぐに作れる。
「ゆっ! もうすぐ完っ成っ! だよ!」
「やぢゃあああああああっ! だじでねっ! ばりざをおうぢがらだじでねっ!!」
壁の隙間から子まりさが叫んだ。
このままでは巣の中に閉じこめられると理解したらしい。もしそうなったら、自力での脱出が不可能だということも。
この辺りの気候的にも、横穴の位置的にも、一見してこの巣穴が雪で埋もれることはないと思われた。
つまり、子まりさはおよそありえなかった最期を遂げることになるのかも知れないのだ――子まりさ自身はそこまで理解しているのかどうか。
「冬さんの間はおうちからでたらいけないよ! お母さんもそう言っていたはずだよ!」
「おがあざんっ! おがあざんっ!  おがあざんっ! まりざをだずげでええええええっ!」
「お母さんはもう『お食べなさい』しちゃったでしょ? 理解できる?」
「ゆ、ゆあっ……!」
「お母さんはまりさたちに食べて欲しかったんだよ! それなのに食べてあげなかったなんて、まりさたちはゆっくりしていないね!」
「ゆああっ……ゆああああああああっ! おぎゃあぢゃんごべんだざいいいいいいい!! ごべんだざいいいいいいい!! ばりざはわるいごでじだああああああ!!」
「悪いまりさにはおしおきだよ!」
私は子まりさの両目を指で突いた。ぷちゅっ、という感触とともに、それはあっけなく潰れる。
「ゆびゃああああああっ!! ばりざのきらきらおべべがああああああああっ!! いぢゃいよおおおおおおおっ!!」
「それじゃあ、お別れだよ! まりさ、春さんになったらまた会おうね! ゆっくりしていってね!」
「ゆっぐりじでいっでねえええええ!?」
子まりさが挨拶を返すのを聞いてから、巣の入口である横穴を、雪で完全に塞いだ。さらにその上から、今度は両手を使って雪を盛り、ぱんぱんと叩いて均す。
小さな小山の横に、さらに小さな小山が生まれた。
この小山――巣穴を塞ぐ雪の壁が溶けるのは、春になってからだろう。
食べる物がほとんどない上、両目と、ついでに帽子を失った子まりさ。元々非力なことに加えて、消耗する一方のそんな体では、内側から壁を崩すのはますます不可能だ。

――おかあさんは、おちびちゃんたちだけでもはるさんをむかえてほしいんだよ――

そんな優しい母親の願いも虚しく、かわいい子どもたちが春を迎えることなど決して無い。
水死と、餓死あるいは衰弱死、そして何の意味も成さなかった『お食べなさい』――どの死に方が最も苦しいのだろうか。何とはなしにそんなことを考えた。




日も落ちかけ、森の中はますます寒くなる。
「寒い……」
半ば無意識にそう呟く――これで何度目だろう。呟いたところで暖かくなるわけでもないのに。
この寒さは嫌いだが、冬は大好きだ。
冬――元来脆弱なゆっくりが、より脆弱になる季節。
特に私のように田舎住まいの虐待派にとっては待ち遠しい季節だ。寒さを我慢して森の中を少し歩けば、楽しいことがいくらでも見られる。
例えば、冬支度を済ませて巣の中で安心しきっているゆっくりを、寒い寒い巣の外に引っぱり出してやる。そして永遠にゆっくりさせる。
例えば、冬支度が終わらず殺気立っているゆっくりをからかって、さらに殺気立たせてやる。そして永遠にゆっくりさせる。
例えば、冬支度もしないゆっくりに悪戯し、自分たちの馬鹿さ加減を後悔させてやる。そして永遠にゆっくりさせる。
そして例えば、今日のような――。
今日は本当にいいものが見られた。野生ゆっくりの『お食べなさい』など、金を払っても見られるものではない。
それにしても、
「寒い……」
今度は意識して口に出してみた。だからといって、この身を切るような冷たい風がやむわけではない。意識しようとしまいと、当たり前だがそれは変わらない。
今日の夕飯は暖かい食べ物――具沢山のシチューにしよう。

(了)



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感想

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  • めっちゃワロタww
    ゲス制裁より善良理不尽虐待の方がゆっくり出来るね!
    鬼意山が姿が気付かれてからは虐待のテンポがとてもよく笑いっぱなしでしたw
    特に流れるように子まりさの両目を突いた時には大笑いしちゃいましたよww -- 2011-07-20 17:10:22
  • ふむ…ゲスだねーわからないよー。おやれいむはむのうだね。わかるよー -- 2010-11-28 23:07:39
  • ゆっくりできたよ!! -- 2010-11-07 15:49:25
  • 糞饅頭共を可哀想だなどとコメントしてる注意書きを理解できないような餡子能な人はゆっくりできない人生を苦しめ。つーかそもそもここに来てんじゃねーよ。ばかなの?しぬの? -- 2010-11-02 01:56:56
  • 冬までの食料なし、暖房もろくに作れず、越冬なんてできない状況で、
    自分だけお食べなさいで満足して死ぬれいむには良い虐待だったなw

    >>おかあさんはかりがへただから、まんぞくなごはんをとってくることができないよ
    とってこれなかったよ、なら許せる。だが下手だからできないって諦めて何もしない奴は嫌いだ -- 2010-11-01 00:19:00
  • ゆっくり親子の三文芝居にはヘドが出そうだった。まぁ、母の後を追えて良かったんじゃないか。 -- 2010-09-07 01:17:57
  • 冒頭の注意書きを読めない奴はコメントするなと言いたい -- 2010-08-31 02:01:43
  • 子ゆっくりの悲劇はとてもゆっくりできるよ。もっとやってね! -- 2010-07-25 11:10:33
  • 加工所では生ゴミ生産して、人々はお金払って生ゴミ買って、生ゴミ食べてるんだね。 ゲロゲロ。 -- 2010-07-25 07:40:18
  • 寒い中、人の迷惑にしかならないゴミを掃除するなんてすばらしいよね、、、
    ゆっくりって動いてて害虫、動かないなら生ゴミいいこと無しだからね。 -- 2010-07-25 07:32:26
  • 可哀想なゆっくり達…親子みんな良い子だったのに…
    ゲス人間は、週6日でゲスゆ一家に自宅を荒らされ続けてゆっくりできない人生を苦しめ。 -- 2010-07-13 10:13:59
  • こういうプレイもありだよ!ゆっくりできるよ! -- 2010-06-29 09:42:42
  • 人間はゲスじゃないよ。山のゴミを掃除しただけだよ! -- 2010-06-28 23:53:30
  • ゲス鬼意山じゃないよ。どうせ死ぬ運命のおちびちゃんたちが、おかあさんとゆん国に行けてよかったね。おとうさんまりさと家族ともゆっくりしていってね!! -- 2010-06-21 07:57:01
  • よかった。 -- 2010-06-12 15:17:53
  • とてもおもしろかったよ!!
    -- 2010-05-24 19:24:22
  • わ゙がら゙な゙い゙よ゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙!!!!
    ゲスにんげんさんがでてくるのはゆっくりできないよー!!! -- 2010-05-20 07:07:53
  • そういうのが好きな鬼異惨もいるってことだよ!りかいしてね! -- 2010-05-17 14:56:30
  • どう読んだって、嫌がらせのためにゆっくりの口調を真似てるだけだろ。 -- 2010-04-01 18:06:19
  • ゲスゆっくりと同程度のこと言ってくる人間はゆっくりできないよ!理解してね! -- 2010-03-26 18:23:21
最終更新:2010年01月27日 17:24
ツールボックス

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