ゆっくりとは謎の多い食べ物だ、跳ねて這い食べて飲んで繁殖してそして死ぬ。
食べ物がそれだけ多くの事をする不思議は、研究者の地道で熱心な研究や、偶然の発見によって少しずつ解明されていった。
しかし分からない事がある、何故ゆっくりはあれだけ脆弱なのにどの時代にも大量にいて、そして一種たりとも絶滅しないかだ。
ゆっくりの種類は多い、それだけ多いのにゆっくりの種類は増える事はあっても減ることは一切ないのだ。
そしてにんっしんっ!による繁殖以外ではゆっくりは何処からともなく現れる事が多い。
街にも山にも森にもゆっくりは存在し、どんな小さな島にも一匹や二匹はゆっくりが暮らしている。
巷ではゆっくりとは何処にでもいる、"そういう食べ物"だとされているが、この問題には一つの答えがある。

ゆっくりが何処にでも大量にいてそして一種たりとも絶えない理由、それは無限に続く並行世界をゆっくりが無意識に旅をしているからなんだよ!!
えっ、頭おかしいんじゃないだって?このSSの中じゃそうなんだよ!ゆっくりわかってね!



ゆっくりは容易に次元の壁を超越できるんだよ!



とりあえず一つの例を見てみよう、ここは1169番目の並行世界だ。
一匹のゆっくりぱちゅりーがいる、生後378日体重は800グラムの絵に描いたような一般的なぱちゅりーだ。

「むきゅ~、ここらへんはゆっくりがいないのね」

予断だがぱちゅりーは一日前、69番目の並行世界から1169番目の並行世界にやって来たばかりだ。
そもそも69番目の並行世界で成体となったぱちゅりーは自分の群れから出て、新しい群れを探しに森を彷徨っていた。
ゆっくりのそれも病弱なぱちゅりー種だ、家族と涙の別れを済ました後、100メートル程進んで休むの2回だけ繰り返し。
群れから少し離れた場所にちょうどいい木の洞を見つけて眠ったのだった。
その時ぱちゅりーは新しい群れをゆっくり探すよ!と思いながら眠りについたため。
ぱちゅりーの寝た木の洞に酷似した木の洞がある1169番目の並行世界に、寝ている間にワープしたのだ。
そもそもこうしたゆっくりが意識していない、異世界へのワープ能力がなければこれほどゆっくりは増えなかっただろう。
ゆっくりは繁殖能力だけでなく、こうして異世界に渡る能力で生息範囲を広げているのだ。
もしもゲスの多い地域で純粋無垢なゆっくりや、単純な言葉しか喋らない超初期型ゆっくりを見つけたならば、それは別の世界からやって来たゆっくりかもしれない。
とは言っても、森から街のゆっくりプレイスに降りるまでは、それなりの運があればぱちゅりー種でも十分に可能だ。
勿論ゆっくりの中には野を超え山を越え時には海も越え、長い距離を旅する猛者もいる。
しかし大抵のどうやってここまで来たのかあやふやな記憶しかないゆっくりは、異世界へのワープで全く別の世界からやって来るのだ。

「むきゅきゅ!みたことないおはなさん!きゅ~♪ゆっくりおいしいわ!」
「むきゅ~……でもひとりはさびしいわ」

花を食べてご満悦なぱちゅりーだが、ゆっくりは寂しがり屋だ。
一匹で落ち込むぱちゅりー……。

「ゆゆっ!ゆっくりしていってね!」
「むきゅ!ゆっくりしていってね」

しかし、しょんぼりしたぱちゅりーに声をかけるゆっくりがいたまりさだ!
下膨れた顔のどこにでもいるまりさだが、ゆっくりの感性から言えばなかなかゆっくりしているイケメンなのだ。

「むきゅ~……ぱちゅりーよ、ゆっくりしていってね」
「ゆっくりしていってね!ゆゆ~すてきなゆっくりプレイスだね!」
「きのうからすみはじめたの……まりさもゆっくりしていってね」
「ゆっ!まりさもここでゆっくりすることにきめたよ!よろしくね!ぱちゅりー!」
「むきゅ~、ぱちゅでいいわ///」

都合良すぎである、寂しいぱちゅりーがイケメンまりさと知り合い、一緒に住むことになった。
これにもゆっくり特有の並行世界を移動する能力が深くかかわって来る。
ぱちゅりーは花を食べている時に寂しいと思い、他のゆっくりを求めた。
そのゆっくりを求める感情は393番目の並行世界に届いた。
そして新しいゆっくりプレイスを目指し、住み慣れた森から出て行こうとするまりさがその感情を受信したのだ。
新しいゆっくりプレイスを求めるまりさ、友達を求めるぱりゅりーの思いが重なって、まりさはぱちゅりーのいる世界に呼びこまれたのだ。
ぱちゅりーとまりさが暮らす森には、事あるごとにゆっくりが増えていった。
何処からかやって来たれいむ、らんしゃまを探すちぇん、子供を連れてやって来たありす。
多くのゆっくりが森にやって来て、森が気に入り住み着く者も、しばらく足を休めてゆっくりしてから旅立つ者もいた。
そうしたゆっくり達の半分は異世界からやって来たゆっくりだった。

さて一月が過ぎ、まりさとぱちゅりーしかいなかった森は随分にぎやかになった。
成体のゆっくりが17匹、子ゆと赤ゆが6匹が一つの森で暮らしている、新しいゆっくりの群れが出来たのだ。
そしてこの23匹のゆっくりが住む群れに、新しいゆっくりが加わろうとしていた。

「ゆ~ふ……ゆ~ふ……ゆ~ん」
「がんばるのぜ!がんばるのぜ!れいむ!」
「あかちゃんゆっくりうまれてきてね!」

群れのれいむの一匹がにんっしんっ!をしたのだ。
一生懸命なれいむを夫のまりさと子れいむが励ます。
まりさの帽子は既にいつ赤ゆが生まれてもいいように、れいむのすぐ前に置かれている。
そしてここ数分間力んでいたれいむの顔が緩む、いよいよ出産の時間だ。

「ゆゆっ、ゆっ……!」

ぽん!と軽い音を立ててれいむのお腹から赤れいむが飛び出した。

「ゆっくりしていっちぇね!」
「ゆっ、ゆー!すてきなあかちゃんゆっくりしていくのぜ!!」
「れいむのいもうとゆっくりしていってね!」
「あかちゃんゆっくりしていってね!」
「みんなゆっくりしていっちぇね!」

巣の外で心配そうにしていた群れのゆっくり達が、中から聞こえるゆっくりした声に歓声を上げる。

「ゆゆ~!ゆっくりうまれたね!」
「ゆっくりよかったね!」
「きょうはおいわいだよ~わかるよ~」

騒ぐゆっくり達の前に、生まれたばかりの赤ゆが親まりさの帽子に乗って出てくる。
その後ろには赤ゆを生んだばかりの親れいむと子れいむがついてくる。

「ゆっくりうまれてよかったね!」
「とってもゆっくりしたこだよ!」
「れいむ!いもうとができてゆっくりだね!」

新しい赤ゆが生まれて群れ全体が喜びに包まれる。
どのゆっくりも幸せそうなゆっくりした表情をしている。
特に喜んでいるのは69番目の並行世界からやって来たぱちゅりーだ。

「ゆっくりしたこがうまれてとってもよかったわ!」
「おさ、ありがとう!れいむはゆっくりしあわせ~だよ!」

ぱちゅりーは他のゆっくりよりいくらか知恵があり、一番最初に森に住み始めたゆっくりだったので自然と群れの長となっていた。
そしてその傍らにはぱちゅりーが最初にあったイケメンまりさがいる、二匹は同じ巣で暮らしていた。

「むきゅきゅ♪かわいいあかちゃんゆっくりしていってね」
「ゆゆ~ん、ゆっくりしゅるよ!」
「とってもゆっくりしてるねぱちゅりー」
「きっとおさとまりさのあかちゃんもゆっくりしてるのぜ!」
「むきゅきゅ!そ、そんな、むきゅ~///」
「ゆっくりてれるよ///」

親まりさに赤ちゃんの事を言われてボンッ!と顔を真っ赤にするぱちゅりーとまりさ。
二匹は一緒に住み始めて一週間が過ぎていたが、いまだに寝る前のほっぺにチューとすりすりしかしていない。
ぱちゅりーもまりさも奥手で、二匹をこの手の話題でからかうのは親まりさの何よりの娯楽だった。

「ゆゆー!またおさをからかってゆっくりしてないよ!ぷく~!」
「してにゃいよ!ぷくく~!」
「ゆがーん!れいむもあかちゃんもひどいのぜ~!」

また群れのみんなが笑う、外敵もおらずゆっくりとしたこの森では、強い敵対の意思を表すぷく~でさえ、冗談の一つになっていた。
毎日ゆっくりして森の草や木の実花に虫を食べ、みんなで集まって仲良く遊ぶ、理想的なゆっくりプレイスがそこにはあった。
この森に来て、住み着かずに出て行ったゆっくり達も、元からこの世界にいたゆっくりも別の並行世界からやって来たゆっくりも、
とても素敵なゆっくりプレイスだと感心していた。

ぱちゅりーのゆっくりプレイスには元からこの並行世界にいたゆっくりも、別の世界から来たゆっくりもいたがみんなが仲良くゆっくりできていた。
この幸せなゆっくりプレイスにはこれからたくさんのゆっくりがやって来るのかもしれない。
可愛いちぇんを探すらんや、新しい巣を探すまりさとありすのカップル、もしかしたら優しくて賢いドスまりさだって来たかもしれない。
並行世界からやって来るものが常に恵みをもたらすとは限らないのだ……。



89398番目の並行世界のある森にゆっくりの一家がいた。
親ゆが一匹、その子ゆが二匹、つい先日生まれた赤ゆが三匹、そして従者のようにつき従うゆっくりが一匹。

「うー……おなかへったどぉ~」
「まんまぁ、あまあまたべたいどぉ~」
「ゆっくりできてないどぉ~」
「おじょうさま、やはりふきんのゆっくりはあらかたかりつくしてもういませんわ」
「う~、ざんねんだどぉ~、このこーまかんともそろそろおわかれだどぉ~」

ゆっくりを食べるゆっくりとして有名なれみりゃ種と、れみりゃ種に仕える事を至上の喜びとする希少種ゆっくりさくやだ。
れみりゃの一家がこうまかんと呼んでいる大きな巣穴。
ここは元々はこの森に大小12あった群れの長が集まり、餌の事や群れの事を相談する会議場だった場所だ。

ほんの一月前にはこの巣穴にはいろいろなゆっくりがいた。
勇気のあるまりさ、都会から持ち帰ったまどうしょ(スーパーの半額チラシ)を持っているぱちゅりー。
一番大きな群れの長だったれいむと、彼女の後継になるはずだった小さなまりさ、他にもいろいろな種類のゆっくりの群れ長達。
勇気のあるまりさは大きな巣穴に柔らかい綿入れを持ちこみ、ゆっくり達の椅子にした。
いつも薬草を集めているぱちゅりーからは薬草の香りが漂い、自然と巣穴にそれが残っていた。
そしてこの大きな巣穴を提供したのはれいむで、彼女の子ゆ達は常に巣穴を奇麗にしていた。
そんな大きな巣穴は主を変えて様変わりしていた。
群れ長達に大切に使われていた綿入れは遊び道具と化し、所々に噛み傷が出来て綿が飛び出ていた。
かつて巣穴を満たしていた薬草の香りとゆっくりのゆっくりした声は、餡子の甘い匂いとどこからか聞こえる少数の生き残りが発するうめき声となっていた。
そして何より、巣穴の中には切り裂かれ噛みちぎられたゆっくりの皮やおかざり、飛び散った餡子がそのままにされていた。

森にあるゆっくりの巣は半分くらいが、この大きな巣穴と同じような惨状を呈していた。
なぜなら大小合わせて12の群れ、452匹のゆっくりが暮らしていたこの森は一月前に5組のれみりゃの家族に襲われていたからだ。
元からこの世界にいたれみりゃの家族が2組、あとは自分の暮らす森のゆっくりが減り、新天地を求めていた3組が並行世界を移動して森にやって来た。
森のゆっくりは食われて食われて食われた、れいむもまりさも関係ない、れみりゃに捕まり裂かれ噛まれ真っ暗な口の中に押し込まれて死んでいった。
そして逃げのびたゆっくりの中には並行世界への移動で命を長らえたゆっくりは皆無だった。
ゆっくりは容易に並行世界へ移動することは出来るが、その事に気づいていない、そして気づけたとしても並行世界への移動はコントロールできない。
何よりれみりゃの"餌を求める"感情がれみりゃをこの並行世界に引きずり込んだのだ、れみりゃの近くにいる以上ゆっくりはその影響を受けてしまう。
万が一れみりゃに捕まり噛みつかれそうになったれいむが並行世界に移動したとしても、そこはれみりゃの巣であったり、あるいはふらんの巣であったりするだろう。
五組のれみりゃとその忠実にして優秀な従者であるさくやに、12の群れがどう立ち向かい敗れ、そして殺されていったかは悲惨の一語であったとだけ言っておこう。

さてそうして五組のれみりゃは森の中でゆっくりを見つけて食べ遊び、ゆっくりした時間を楽しんだが、何事にも終わりはある。
一組のれみりゃ家族がもっと素敵なこうまかんを探しに行くと去っていき、食糧となるゆっくりが少なくなった森から3組のれみりゃ家族が出て行った。
大きな巣穴で暮らしているれみりゃはこの森に最後に残ったれみりゃの家族だった。

「うっう~♪れみぃのおちびちゃんたちあたらしいこうまかんをさがしにいくどぉ~♪」
「う~まぁま!ひろいこうまかんでゆっくりしたいどぉ~!」
「うっう~!」
「う~……さくやぁたすけてどぉ~♪」
「かしこまりましたおじょうさま」

れみりゃは美味しいプディンが詰まった、しんのれでぃに仕えるに相応しい教養と知性を持つ小さな従者に全幅の信頼を置いていた。
さくやはどうやってこしらえたのか、大きな巣穴に秘密の食糧庫を掘っていた。
中には底部を切り裂かれた数匹の子ゆっくりがぷるぷると震えている、さっきから聞こえていたうめき声はこの子ゆ達が発するものだった。
さくやがれみりゃ達の面倒を見る合間を縫ってゆっくりを狩り、親れみりゃと子れみりゃが狩りに言っている間に連れ込んでいたのだ。
なお赤れみりゃには自身のぷでぃんに睡眠薬を混ぜたものを少量呑ませ、眠らせていた。

「ちっちゃいおじょうさまがた、おいしいあまあまがございますわ、これをたべてげんきをつけてからたびにでましょう」
「やめてね!こないでね!ゆっくりやめてよ!」
「う~♪さくやがいうならしかたないどぉ~♪」
「たしゅけてぇ!れいむをたしゅけてー!!」
「ゆふふ……おそらをとんでるみた~い」
「おねえちゃんしっかりしてね!おねえちゃん!おねえちゃん!」
「しかたないどぉ~♪」
「まぁま♪あまあまいっしょにたべるどぉ~☆」
「たべるどぉ~♪さくやありがとぉ~だどぉ~♪さすがれみりゃのさくやだどぉ~♪」
「ありがとうございます」
「やべでぇえええ!!たべないでぇええ!!!」

主であるれみりゃの賛辞に、言葉少なく応じるさくやの表情は恍惚として緩みきっている。
れみりゃの10の喜びはさくやにとって1000の喜び、れみりゃの10悲しみはさくやにとって1000の悲しみなのだ。
れみりゃが幸せであれば、子ゆの悲鳴はオーケストラの奏でる旋律に、顔にかかる餡子は神聖な何かに思えるのだった。
子ゆと赤ゆがお腹いっぱいになり、親れみりゃはさくやを抱きしめて大きな巣穴から這い出て空を飛んだ。
ふわふわとゆっくり漂うような飛び方で、お月さまの出ている方に向かって飛んでいく。

「うっう~♪まんまるおつきさまきれいだどぉ~☆」
「きれいなおつきさまゆっくりだどぉ~♪」
「うっう~♪ゆっくりだどぉ~♪」

れみりゃ達は賑やかに空を飛んでいく、さくやはれみりゃの手の中で真っ白に燃え尽きていた、れみりゃの抱擁はさくやにはあまりに刺激が強すぎた。
そしてれみりゃ達はその日のうちに森を抜け川を越え、お日様がそろそろ登って来る時間になったため地面を降りた。
そしてしばらく当たりを探索し長い事使われていない様子のゆっくりの巣穴を見つけ、そこで夕方までゆっくり眠る事にした。
そして眠るっているれみりゃ一家の、たくさんのゆっくりを食べられる森に行きたいという願望は並行世界の壁を突き破った。
そして89398番目の並行世界から、どの世界に行けばれみりゃの願いが叶うかが選ばれる。
普通な世界、まだ恐竜のいる世界、れいむが多い世界、まりさが多い世界いろいろな世界があった。
その無限大の並行世界の中から一つの世界が選ばれた、1169番目の並行世界だ。
れみりゃの願いは次元の壁を超えてそこに根付き、れみりゃ達家族をその世界に引きずり込んだ、勿論さくやも一緒に。

「ううう~♪……おっきいこーまかんだどぉ~☆~……むにゃむにゃ……」
「うっ~、さくやぷでぃん……おっきいぷでぃん~、う~……」
「ゆゆ……おじょうさま……それはぐんぐにるではなくきのぼうですわ……ぅ……」

れみりゃとさくやは次元の壁を越えた事には気付かず、2時間ほどゆっくりと眠りを貪った。
そして最初に目覚めた親れみりゃはゆっくりと伸びをし、人間ならば鼻のあるあたりをぴくぴく動かし、ゆっくりの臭いを探った。
近くに少なく見積もっても20はあまあまがいる、でぃなーの時間だ。

「うっう~☆れみぃのちびちゃんおきるど、あまあまでぃなーがちかくにあるどぉ~♪」
「うっ!あまあまがあるどぉ?たべにいくどぉ♪」
「いくどぉ~♪」

れみりゃは高い再生力を維持するため、必要とする栄養の量も他のゆっくりよりも多いのだ。
特に赤れみりゃや子れみりゃは常に腹ペコで小さな体に似合わず、際限なく食べる事ができる。
子れみりゃや赤れみりゃも、20匹も食べればしばらくはゆっくりできるだろう。
親れみりゃはさくやを抱え子供たちを連れて、ゆっくりの臭いをたどりながらのんびりとでぃなーの場に向かうのであった。

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最終更新:2022年05月03日 21:28