トイレの傍の民家で、ハチに襲われた状況を整理していたホル・ホース、宮本明、鹿目まどかの三人。
そんな彼らのもとにも容赦なく放送の声は響き渡った。
「うそ...マミさん...仁美ちゃん...」
巴マミと志筑仁美。
放送で呼ばれたその名前は、まどかの心をひどく動揺させていた。
巴マミ。
まどかが魔法少女を知るキッカケとなった先輩。
彼女の背中は大きく、誰かの為に戦い続ける彼女の存在は、まどかにとっては心底敬愛すべきものに映っていた。
それと同時に、彼女が教えてくれた本当の気持ち。寂しさと戦い続けてきた彼女の本音を聞いたとき、隣で支えてあげたい。共に手をとりあっていきたいと思わずにはいられなかった。
魔女との戦いで命を落としてしまった後も、彼女の存在はずっと色濃く残り続けていた。
志筑仁美。
さやかと同じく、小さい頃からの大切な友達で、いつも三人一緒だった。
登下校も、クラスでも、遊ぶ日も。いつも一緒だった。
上条恭介とのことで彼女とさやかと壁が出来てしまったときは、気まずさから疎遠になりつつあったけれど。
それでも、またいつかもとに戻れると信じていた。
けれど。
二人は放送で呼ばれてしまった。死んだのだと。
嘘だと思いたい。でも、ここで嘘をつく意味なんてないから。
悲しめばいいのか。怒ればいいのか。憎めばいいのか。
もう頭の中がぐちゃぐちゃでどうすることもできなかった。
そんな彼女の意識外で、明はスッ、スッ、と指でジェスチャーをし、それを確認したホル・ホースはコクリと頷き共に部屋をあとにした。
ひとりきりになった部屋で、まどかの目からはようやく水分が滲み出し、頬を伝ってようやく嗚咽が漏れ出した。
そして。
ただ、ただ、泣いた。
なんで死んでしまったのかだとか、誰が殺したのかだとか。怒りとか憎しみとか。
そういったものは全て後回しになって。
大好きな人たちが死んでしまったことが、彼女たちにもう二度と会えないことが。言葉にできないぐしゃぐしゃな感情が。
ただ、ただ、涙となって溢れ出し、止めることすらできやしない。
気がつけば、まどかは子供のように声を挙げて泣き出していた。
☆
まどかの泣き声が響き渡る。
明は、その声を背に受けながら、入り口に陣取り、ドラゴンころしを携え周囲を警戒していた。
一方、ホル・ホースは物陰に身を潜め、明とは逆の方角の警戒に努めている。
「よかったのかい、旦那。こういう時は慰めの言葉のひとつもかけてやるべきじゃねえのか?」
「...いまはそっとしておいてやれ。感情を誤魔化さない時間も必要だ」
大切な者を失った悲しみ。明はそれを痛いほどわかっている。
だからこそ、死地にあっては彼らの死を乗り越えなければならない。
かといって、下手な慰めの言葉は葛藤を生みかえってまどかの負担になってしまう。
ならば、こうして彼女を一人にして思うがままに感情を発散させてやるべきだ。
その間は、自分たちが護ってやればいい。
「...ま、旦那がそう言うならそれでいいけどよ」
一方のホル・ホースは明の判断に半ば納得はしていなかった。
確かに明の考えも間違いではない。だが、それはあくまで戦士の持論である。
まどかは周囲の環境こそは異常だが、それを除けばただの一般人。
ああいった少女は感情の捌け口を求めるのが常であり、優しい言葉を求めている。
いまの彼女にこそ、このホル・ホースの話術が効果覿面なのだ。
...まあ、そんな己の考えを押し付けてせっかく手に入れられた頼りになる『相棒』と仲違いすることもないので、今回は明に従っているが。
(それよりも問題は俺のほうだぜ...これから先は出会ってきた奴等への対応は慎重にやらねえとなぁ)
シェンホアとの情報交換で、ホル・ホースは他の参加者の名簿に自分は載ってないという希望を見出していた。
もしもその通りであれば、承太郎やDIOは自分についての情報を他の参加者に伝えていないことになる。
つまり、奴等に実際に遭遇する前に、赤首輪の参加者を倒すなりなんなりで脱出してしまえばそれで万歳な結果になるということだ。
しかし、こうして放送で存在を広められてしまえばその手段に縋る難易度は格段に跳ね上がる。
DIOは気が向けばこちらも有利になるよう他の参加者にも好印象な情報を共有してくれる可能性はある。
だが、承太郎はヤバイ。あいつは必ず警戒するよう呼びかける。もしそうなれば、ここにいる明とまどかとの協力体制も危うくなるかもしれない。
そのため、他の参加者に会ったらこれまで以上に懇切丁寧に対応するべきだろう。
数分ほど経過しただろうか。
まどかの泣き声は聞こえなくなり、二人がそっと室内を覗き込めば、スゥスゥと可愛らしい寝息を立てるまどかが横たわっていた。
「だいぶ疲れちまったようだな。...まあ、吸血鬼に襲われたぶんもあるんだ。仕方ねえェか」
「そういうアンタも奴等に噛まれていただろう」
「俺は男一匹の風来坊なんでね。精神的には嬢ちゃんよりはマシなのさ」
承太郎とDIOについては言及しない。
どういう関係性なのかを問われれば返答に困ること間違いなしだし、DIOに至っては吸血鬼に憎しみを抱いている明に話すのは憚れるからだ。
余計なことは漏らさない、これがホル・ホース流の処世術のひとつだ。
「旦那よ、当然ここから移動するんだろうが、嬢ちゃんは俺が背負ってくぜ」
「いいよ。あんたも疲れてるだろ」
「いや、明の旦那にはいざって時にその剣を振り回してもらわなきゃならねえ。その点、俺は嬢ちゃんを背負ってても『皇帝』ならさっきみてえに旦那をサポートするぶんには大した問題はねえ」
「...わかった。まどかはあんたに任せるよ」
こうして相棒の好感度をさりげなくあげていくのも彼なりの処世術のポイントである。
「それで、旦那よ。これからどこへ向かう?」
「ひとまずは病院に向かおう」
「病院...そいつはまたなんでだ?」
「あそこならそこまで遠くないし、ハチにやられたあんたの腕に効く薬もおいてあるかもしれない」
「確かに、このままじゃチト痒いからな。しかし先に中央付近の町に出なくてよかったのかい?」
「あんたの出会った蜂が邪鬼かもしれないからだ」
邪鬼(オニ)。その効きなれぬ単語にホル・ホースは思わず疑問符をうかべる。
「邪鬼は、人間の血を吸わなかった吸血鬼の慣れの果てだ。異形に姿を変えるだけじゃなく、身体能力が向上したり妙な体質になったりするんだ。
俺の知ってる限りだと、硫酸の母乳を噴出す奴や、腹から自分の顔のついたゴキブリを産み出すやつなんかがいた」
「げ、ゲェ~ッ。想像しただけで気色悪ィな」
「だから、あんたが受けた毒液も早めに治療してもらった方がいい。もしかしたらマーキングみたいなものかもしれないしな」
「マジかよ...」
ただでさえトレードマークのテンガロンハットを捨ててきてしまったというのに、邪鬼の話を聞き更に萎えてしまったホル・ホース。
まあ、彼としてはまだどこへ向かうべきかが目星がついていないため、病院へ行くのに反対するつもりもなかった。
あのぶっきらぼうな承太郎が怪我人をわざわざ運びそのまま付き添うとは思えず、更に言えば、こんな早い段階であの最強格のスタンド『スタープラチナ』を有してなお病院が必要な事態に陥るとは思えない。
精精、寄ったとしても怪我人を病院へ連れて自分は別行動をとるだろう。
ならばここで明に従い病院へと向かうのは『吉』だ。
ホル・ホースはまどかを背負い、明と共に歩き出す。
だが、彼は知らない。
DIO以外にも空条承太郎を脅かせる者がまだいること。
その怪物に承太郎は重傷を負わされたこと。
そして、ホル・ホースがぶっきらぼうと証した空条承太郎は、弱者の保護と共に未だ病院で療養していたことを。
【G-2/一日目/朝】
【宮本明@彼岸島】
[状態]:雅への殺意、右頬に傷。
[装備]:ドラゴンころし@ベルセルク
[道具]: 不明支給品0~1
[思考・行動]
基本方針: 雅を殺す。
0:ホル・ホースとまどかを病院に連れて行く。
1:吸血鬼を根絶やしにする。
2:ホル・ホース及びまどかとしばらく同行する(雅との戦いに巻き込むつもりはない)
3:邪魔をする者には容赦はしない。
4:隊長...まさかな
※参戦時期は47日間13巻付近です。
※シェンホアと情報交換をしました。
【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:疲労(大)、精神的疲労(大)、失禁、疲労による睡眠
[装備]: 女吸血鬼の服@現地調達品、破れかけた見滝原中学の制服
[道具]: 不明支給品0~1、小黒妙子の写真@ミスミソウ
[思考・行動]
基本方針: みんなと会いたい。
0:ほむらとの合流。さやか、杏子が生きているのを確かめたい。
1:明とホル・ホースと同行する。
2:あの子(ロシーヌ)の雰囲気、どこかで...?
3:マミさん...仁美ちゃん..そんな...!
※参戦時期はTVアニメ本編11話でほむらから時間遡航のことを聞いた後です。
※吸血鬼感染はしませんでした。
※シェンホアと情報交換をしました。
【ホル・ホース@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:疲労 (大)、精神的疲労(大)、失禁、額に軽傷、スズメバチの毒液による腫れ
[装備]:吸血鬼の服@現地調達品、いつもの服、ポッチャマ...のヌイグルミ@真夏の夜の淫夢派生シリーズ、
[道具]:不明支給品0~1、大きめの葉っぱ×5
[思考・行動]
基本方針: 脱出でも優勝でもいいのでどうにかして生き残る
0:できれば女は殺したくない。
1:しばらく明を『相棒』とする。
2:DIOには絶対に会いたくない。
3:まどかを保護することによっていまの自分が無害であることをアピールする(承太郎対策)。
4:そういやこいつら、スタンドが見えているのか
5:とりあえず病院に向かう。...まあ、流石に承太郎がいることはねえだろう。
※参戦時期はDIOの暗殺失敗後です。
※赤い首輪以外にも危険な奴はいると認識を改めました。
※吸血鬼感染はしませんでした。
※シェンホアと情報交換をしました。
最終更新:2019年04月16日 18:34