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甲賀弦之介は空を見上げていた。
時刻はまだ夜。
辺りに照明などはなく、月明かりだけが己を照らす導となる。

(...美しいな)

夜空に浮かぶ満月に、そんな感想をポツリと浮かべる。
その言葉に偽りなどない。
だが、美しく思う一方で空しさを覚えているのも確かだ。

その空しさは、きっと彼女によるものだろう。
ほんの数日前までは、彼女と色々な景観を楽しみ、共に笑みを、心の温もりを交し合っていた。
身体で繋がることはなかったが、互いの手で触れ合い、寄り添いながらあんな月を眺めたこともある。
だが、もうその温もりは訪れない。
彼女、朧の真意がどうであれ、自分との逢瀬は二度と叶わないだろう。

(...わしは、未だに朧への未練を断ち切れぬか)

いまは殺し合いの最中だというのに、なんとも気の抜けた様であろう。
それほどまでにあの至福の時に恋焦がれている。
こんな有様、他の甲賀の衆には見せられないなと思いつつ、脳裏から彼女の姿をひとまず消し去る。

ただ、その意思に反してか、やはりその眼は夜空の月を見上げてしまう。

そんな視界の端をよぎるは黒い影。

影は、弦之介の眼前にまで迫り、停止。
彼はそこまできてようやく眼前に浮かぶのが昆虫のような身体の少女であることを認識することができた。

くすくすと笑うその少女の異様さに、弦之介は思わず言葉を失う。
自里にも風待将監や地虫十兵衛のような己の忍法を活かす為に特異な身体を有しているが、少女のそれは彼らとはまた似ても似つかぬ様相である。
まるで、人間と異性物を混ぜ合わせたようだ。そんな印象を抱かせた。

「こんばんわ、おにーちゃん」

にこりと微笑む少女に、弦之介は毒気を抜かれつられて挨拶を返す。

「うむ、こんばんわ」
「私はロシーヌ。エルフだよ」
「えるふ...?」
「エルフを知らないの?遅れてるなぁ」
「む...すまぬ」

申し訳なさげに頭をさげる弦之介に、ロシーヌは思わず吹き出してしまう。

「謝らなくていいのに、変なおにいちゃん」

その無邪気さながらな少女の様に、弦之介の顔は思わず綻んだ。

この殺し合いに巻き込まれて出会ったのはロシーヌを含めて二人。
どちらも赤い首輪であり、ロシーヌに至っては見るからに人外である。
だが、そのどちらも敵対はせず、至って平和的に話が進んでいる。
伊賀甲賀の争いがいよいよ始まってしまった元の場に比べれば、この殺し合いの方が遥にマシだと思えるほどにだ。

この調子ならば、殺し合いもさして労せず終結させ、あわよくば元の場に戻ったとき、このいざこざに便乗し争忍の乱を締結させることができるかもしれない。

「ねえおにーちゃん、せっかく会えたんだから遊ぼーよ」
「遊ぶ?」
「もちろん、戦争ごっこだよ!」

彼のそんな甘い期待を、ロシーヌは変わらぬ無邪気な笑顔で打ち破る。


"戦争ごっこ"。

その単語の意味を知らぬ弦之介だが、ロシーヌの殺気と悪意が膨れ上がるのを肌で感じ、木刀を構え警戒体勢をとる。

自分がなにか刺激してしまったのか。思い当たる節は見当たらず、他の可能性―――この殺し合いという環境に怯えている仮説のもと、ひとまずは対話を試みる。

「待て、わしはそなたを殺すつもりはない。いや、そなただけではなく他の赤い首輪の参加者もじゃ」
「関係ないよ。これはいつもの遊びと何にも変わらないから、さ!」

ロシーヌは急加速し弦之介の懐にもぐりこむ。
その触覚は、躊躇うことなく弦之介の心の臓に向けて突き出されていた。

「ッ!」

弦之介は反応が遅れたものの、構えていた木刀で辛うじて触覚を防ぐ。
触覚は木刀の腹を滑り、弦之介の肩を貫く。
弦之介は走る痛みにも動じず、触覚を逸らした勢いで己の身体に回転を加え木刀を振り下ろす。
高速で移動する中、ロシーヌは迫る木刀をものともせずにかわし、上空へと舞い上がる。

「へえ、少しはできるみたいだけど、あの大きな刀のお兄ちゃんほどじゃないね」

血の滴る右肩を押さえつつ空を見上げる弦之介と無邪気に笑いながら見下ろすロシーヌ。
弦之介は決して己の術に縋りきっているわけではない。彼の剣術の腕前は、盲目でありながらも伊賀の薬師寺天膳と互角以上に張り合えるほどである。
しかし、その剣術を持ってしても、眼前の怪物には及ばない。
いまの彼らの立ち位置が、そのまま力量の差を表している。

「...童(わっぱ)よ。最後の通達じゃ」

だが、それでもなお彼は屈しない。どころか、嘘偽りない警告すらしてみせる。

「わしは赤い首輪の参加者であれど殺すつもりはない。それでもわしを殺すというのであれば、そなたも死を覚悟せよ」

いかにも自分の方が上であるかのような発言に、ロシーヌはかすかな苛立ちを覚えた。

「へーえ。お兄ちゃんエルフに勝てると思ってるんだ。それじゃあ見せてもらおうかな」

ロシーヌは再び高速で弦之介へと迫る。
単純且つ戦略もなにもない攻撃だが、人間では追いつき難いが故にそれだけでもかなりの脅威となる。
彼の実力を踏まえれば、それこそが最善手であるのは間違いではない。

「致し方ない」

甲賀弦之介が剣士であるならば、だが。

弦之介の瞼が閉じ、見開かれる。

その両目を、傷跡のような文様が刻まれたものに変貌した瞬間、ロシーヌの世界は彼女のものではなくなる。
まるでその目に魅入られるかの如く、逸らすことすらできず。彼女の身体は指先1つすら己の意思で動かすことができず。
本当にこれが自分の身体なのかと疑問すら浮かべることなく、弦之介へと向かっていた身体は直角に軌道を変え、地面へと墜落した。

「警告はした...許せ、童(わっぱ)よ」

これこそが甲賀弦之介最大の術、『瞳術』。害意・殺意に反応し、敵を自滅へと誘う秘術である。


「くっ...」

弦之介は目を押さえつつ、二・三歩ばかり後方へと退く。
眩暈だ。唐突な眩暈が弦之介を襲ったのだ。

(妙じゃ...何故、たった一度の術でこうも疲労が...)

幾度も、そして連続して術を使えば疲労が表れることもあろう。
だが、いまのこの疲労は明らかに異常だ。
なにより。

「イッタいなぁ。さっきの目のせいなのかな」

ロシーヌに致命傷を与えられなかったこと事態がありえないのだ。

(わしの術が弱っておるというのか...?)
「...おにいちゃんの目、気持ち悪いなぁ。だから、もういらない」

ロシーヌは立ち上がるなり、弦之介へと突撃しようとする。
使徒は好戦的であれど、その大半は一方的な虐殺を望む。
明やガッツのように、手に負える範囲で遊べる達人ならばまだしも、弦之介の瞳術のように使徒ですら脅かしうるモノを野放しにする謂れはない。

「くっ」

弦之介は焦燥する。
あの高速での墜落も大した傷にならぬというのならば、現状、持久戦に持ち込めば先に果てるのは弦之介だ。
しかし、ただ逃げようにもあの速さではすぐに追いつかれてしまう。
如何に防ぐべきかと考えていたそのときだ。

「フンッ」

バシィ、と小気味いい音と共に、弦之介へと迫っていたロシーヌの身体が地面を跳ねる。
突然の頬を走る衝撃に、ロシーヌは空中で停止し目を凝らす。
弦之介の背後より浮かび上がるのは、金色の豪腕。
あの腕がロシーヌを殴りつけたのだ。

「赤首輪に人間の参加者...ちょうどいい」

弦之介の背後より現れた黄色の服に身を包んだ男は、金色の巨人を傍らに侍らせながら不敵な笑みを浮かべた。

「そなたたちは...?」

振り返り、男の姿を認識した弦之介はまず第一に素性を問うた。
自身を助けてくれた男は、甲賀の者でなければ、まして伊賀のものでもない。
はたまた、あの黒衣の少女の語ったすのぅほわいととは似ても似つかない。
なにより目に付くのが、男の傍に立つ黄金の巨人。首輪が見当たらないことから参加者ではないのだろうが、何者だろうか。
男は弦之介とロシーヌへと交互に視線をやり、納得したかのようにひとりごちる。

「...ふむ、どうやらスタンドが見えているようだ。あの御坂とかいう小娘のことも考えれば、オレの方が手をつけられていると考えるべきか」

そう己ひとりで結論付けると、男は改めてロシーヌを見上げ声をかける。

「そこのきみ。ここの彼も交えて少し話がしたい...降りてきてもらえると嬉しいのだが」

態度は紳士的であり、その柔らかな物腰からしても嫌悪は抱かない。
弦之介などはその言葉から彼も殺し合いに反対するものだろうかと安堵しつつあるほどだ。

だが、ロシーヌは違う。
彼女はこれまで多くの大人を見てきた。
人間の頃も、使徒と化してからも。
どんな人間の大人も信じられなくなった彼女だからわかる。
男の放つ邪悪な気配に。自分とは異なる異質な存在であることに。
なにより、決してこの男は『信用できない』ことに。

ロシーヌは後方へと退き、彼らを射抜くための助走距離をとる。
それを見た弦之介は木刀を握り締め男を守ろうと進み出ようとするが、男はそれを手で制する。
ここは私に任せていろと、言外に伝えていた。


ロシーヌは構わず彼らへと高速で接近する。
赤い首輪であるあの男が何者かはわからないが関係ない。
気に入らないものがいれば排除する。今までも、そしてこれからも。

隙だらけの脳幹を串刺しにしてやればよほどのことがない限り死ぬだろう。

触手をしならせ、男の頭部目掛けてその先端を突きつけ

「『世界』」

る。

「...?」

ロシーヌは急停止し、己の行動を振り返る。
いま、自分はなにをしようとしていたのか。
何故自分は彼を信用できない、殺そうなどと思ってしまったのか。
困惑する彼女の頭に手を置きつつ、男は微笑み優しい声音で告げる。

「落ち着いたようだな。では、互いの情報を共有するとしよう」

突如、借りてきた子犬のように大人しくなってしまったロシーヌに違和感を抱きつつも、戦乱の火種を撒くつもりがないならと提案に乗る弦之介。
ロシーヌもまた、さきほどまでの自身の感情と今の感情の差異に困惑しつつ、男たちの後へと続く。
そんな彼女の額に蠢く肉片が植えつけられていることは、男以外は知る由もなかった。



(ふふ...これは思わぬ拾い物をした)

群がるありを払い終えたDIOは、他の実験体となる参加者に会うためにその歩を進めていた。
歩くこと数時間、彼がついに見つけたのは空を飛ぶ昆虫と人間の合成獣(キメラ)のような生命体、即ちロシーヌであった。

ちなみにこのロシーヌ、D-2からそのまま北上してDIOのいたエリアを通り過ぎている。
つまり、地図上の端は対極側の端と繋がっているのだ。
そんな地理上のアドバンテージを得ていたのだが、特に当てもなく気ままに飛んでいた彼女にそれを知る由もなかった。

彼女はDIOに気がつかなかったのか、そのまま飛び去ってしまったため、彼もまたその後を追い、やがて発見したのが弦之介との交戦の現場であった。

あの少女は赤首輪で間違いないだろう。そして、男の方もただやられるだけの偽善者ではない。
そう判断したDIOは、すぐに止めに入り赤首輪の実験を始めようとしたが、弦之介の纏う空気の変貌に足を止めた。
奇妙なことに、遠目から眺めていたにも関わらず、彼の姿から目を離すことができなかったのだ。
ほどなくして、突如落下するロシーヌ。その現象にDIOは興味を抱いた。
勿論ロシーヌの存在自体も興味はあるが、それ以上に弦之介が施したなにかに強く惹かれていた。

思えば、先刻交戦した御坂美琴やありたちもスタンド使いという括りでは成しえない業を見せ付けてくれた。
ならば、彼もまたそのような業を有しているのではないだろうか。

(スタンドではないようだが...面白い)

DIOは思った。
首輪の実験をするにはまだ早いと。

この殺し合いには空条承太郎が連れて来られている。
部下からの報告が正しければ、ジョースター一行で残るのは『花京院典明』『J・P・ポルナレフ』『ジョセフ・ジョースター』のみ。
強力なスタンド使いであるモハメド・アヴドゥルとイギーを欠いて、その上チームの主戦力である空条承太郎まで失った日にはその絶望は生半可なものではないだろう。
だが、やつらの結果的に誰も欠けることなく館まで辿りついた勢いが侮れないのも事実。
だからこそ、ここで徹底的に芽を摘む。
自分が先に脱出することで、奴に強力な装備や弦之介のような特異な者を探し味方につける余地を与えてしまわないように。
奴を確実に葬り、その上で元の世界に帰還し、戦意喪失した残るジョースター一行をも始末することで完全なる勝利を遂げる。

それ故に、DIOは弦之介にロシーヌを斬らせることよりもまずは情報の収集を優先することにした。
そのため、わざわざ弦之介を助け、ロシーヌには肉の芽を植えつけたのだ。

(ジョースターの血統の者は手加減せずに一気に殺すと決めていた...万が一にも、貴様に逆転の目は与えんぞ)

帝王はほくそ笑む。その邪悪な眼が映し出すは、全てを奪い勝利する覇道のみ。


【G-6/早朝/一日目】

【ロシーヌ@ベルセルク】
[状態]:疲労(小)、額に肉の芽
[装備]:
[道具]: 不明支給品1~2
[思考・行動]
基本方針: 好きにやる。
0:この黄色いおじさんは信用してもいいかもしれない

※参戦時期は少なくともガッツと面識がある時点です。
※肉の芽が植えつけられていますが、肉の芽自体の効力が制限で弱まっています。
現在は『DIOを傷つけない』程度の忠誠心しかありません。


【DIO@ジョジョの奇妙な冒険】 
[状態]:疲労(中)、身体のところどころに電撃による痺れ(我慢してる)、出血(右腕、小~中、再生中)、両脚にありたちによる攻撃痕(小~中、再生中)
[装備]:
[道具]:基本支給品。DIOのワイン@ジョジョの奇妙な冒険、不明支給品0~1
[思考・行動]
基本方針:生き残る。そのためには手段は択ばない。 
0:弦之介とロシーヌと情報交換をする。
1:主催者は必ず殺す。
2:赤首輪の参加者を殺させ脱出させる実験を可能な限り行いたい。
3:空条承太郎には一応警戒しておく。
4:不要・邪魔な参加者は効率よく殺す。
5:あのデブは放っておく。生理的に相手にしたくない。
6:弦之介の謎の技に興味。


※参戦時期は原作27巻でヌケサクを殺した直後。
※DIOの持っているワインは原作26巻でヴァニラが首を刎ねた時にDIOが持っていたワインです。
※宮本明・空条承太郎の情報を共有しました。
※肉の芽を使用できますが、制限により効果にはかなり差異が生じます。
特に赤首輪の参加者、精神が強い者、肉体的に強い者などには効き目が薄いです。


【甲賀弦之介@バジリスク】
[状態]:疲労(小)、右肩に刺し傷。
[装備]:
[道具]:基本支給品、不明支給品0~1
[思考・行動]
基本方針:ゲームから脱出する(ただし赤首輪の殺害を除く)。
0:DIOとロシーヌと情報交換する。
1:陽炎と合流する。朧を保護し彼女の真意を確かめる。
2:薬師寺天膳には要警戒。
3:極力、犠牲者は出したくない。
4:脱出の協力者を探す。
5:“すのぅほわいと”を守る?


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023:妖精 ロシーヌ 目が逢う瞬間(とき)
036:勝利へのV DIO
045:黎明邂逅 甲賀弦之介
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