あにまん民のオリキャラ同士をAIの力を借りて戦わせるスレ @ ウィキ
《冒(ぼう) VS スィエル・ヴォワヤジュール》
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aioricharabattle
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《冒(ぼう) VS スィエル・ヴォワヤジュール》
巨大怪獣の巣。溶岩と腐臭が入り混じる地獄のような大地に、昼夜の区別すら意味をなさない異様な光が差し込んでいた。だがそれは、決して太陽の恵みではなかった。
天を焼くように浮かぶのは、太陽そのものが妖怪として具現化した存在、“冒”。その分身体――黒い太陽『日目』が現界し、放った光だった。
辺りを照らすその輝きは命を育むものではなく、精神を焼き、感情を狂わせ、理性を引き裂く。
まさしく、狂気と混沌の輝き。
辺りを照らすその輝きは命を育むものではなく、精神を焼き、感情を狂わせ、理性を引き裂く。
まさしく、狂気と混沌の輝き。
グググッ……と、大地が震えた。
それは咆哮でもなく、戦いの予兆でもなかった。
この地に住まう怪獣たちが、眼前の存在にただ恐怖したのだ。
この地に住まう怪獣たちが、眼前の存在にただ恐怖したのだ。
その姿を直視していないにもかかわらず、見てしまったかのような錯覚。
その錯覚こそが恐怖を現実に変え、巣の主すら逃げ去っていた。
その錯覚こそが恐怖を現実に変え、巣の主すら逃げ去っていた。
「……来るんだね、君が。」
姿を現したのは、純白の細身。流麗な青緑の光を纏い、まるで風そのもののような存在。スィエル・ヴォワヤジュール。その手には、銀に煌めく神槍・ヌンキがあった。
スィエルの片目が細められる。光の瞳が優しく、春の陽光のように煌めき、そこには確かな慈愛が宿っていた。
対する闇の瞳は、深い夜の静謐をそのまま映し取ったかのように、沈着で揺らがず、ただ一点を射抜くように“冒”を見据えていた。
――静寂。
一切の風が止まり、空気が固まる。地熱と光に満ちた空間の中、まるで時が止まったかのような瞬間。だが、次の瞬間には。
バチン。
空が裂けた。
鋭い破裂音と共に、空中の一角が炸裂し、そこから降りてくるものがあった。
日目。
黒い太陽の一片が、灼熱の雷鳴のようなエネルギーを纏いながら、一直線にスィエルへ向かって降下してくる。
音も熱も置き去りにし、ただ“光”そのものが、落ちてくる――そんな光景。
光ではあるが、決して癒やしではない。見た者の魂を抉り、心を焼く熱光。その直進性は、まるで意志を持った槍のごとく、冷徹に、無慈悲にスィエルを貫こうとしていた。
一切の言葉も無く、ただ“存在”そのものとして、敵意を向けてくる“冒”。
それに対し、スィエルは小さく息を吐くと、指先をわずかに掲げた。
「空間《エスパス》――グリーンフラッシュ。」
瞬間、スィエルの指先が空を裂く。
ギィンッ!
開かれた空間から超高速の緑の光が放たれ、日目の光線と衝突。
地鳴りと閃光が融合し、怪獣たちの巣が一気に吹き飛ぶ。
瓦礫、熱風、焼けた岩石が乱舞する中で、スィエルは風を纏い、舞うように浮かぶ。
その動きは重力を拒絶した舞姫のようであった。
その動きは重力を拒絶した舞姫のようであった。
「サングレーザー。」
今度は、空間が紅蓮に染まり、裂け目の奥から怒れる世界の心臓が姿を現したかのようだった。
スィエルが掌を翳すと、そこから放たれる力が、空に朱を塗り広げてゆく。空間の裂け目の奥からは、無数の炎の流れが渦巻き、やがてその中心より、一つの巨大な隕石が飛び出した。
その隕石はただの岩塊ではない。表面には太陽のような模様が蠢き、そこから吹き出す業火は、まるで宇宙の誕生を彷彿とさせるエネルギーそのものだった。
紅蓮のオーラに包まれながら、地上を焼き尽くすかのように、隕石は一直線に日目を目指して急降下する。
「…散れ。」
スィエルの呟きが、風に溶けて消えた。
だが、日目は微動だにしない。その一つ目が僅かに明滅し、次の瞬間――
ジュワリ。
音すら与えぬ沈黙の閃光が、大気を飲み込んだ。空が、熱を帯びて揺れる。
それは「燃焼」ではなかった。衝突の瞬間に生じたのは、物理的な破壊ではなく、理そのものの剥奪だった。
日目の放った暗黒太陽の光が、落下してきた炎の隕石に触れた、その刹那。すべてが崩れた。
火も、質量も、空間すらも意味を失い、隕石は光を浴びると同時に、まるで時間が反転したかのように静かに、ゆっくりと、砂と化して崩れてゆく。
音もなく、熱もなく、ただそこには砂だけが残った。
赤く染まった空に、ぽっかりと開いた虚無の穴がひとつ、今、静かに呼吸を止めていた。
スィエルの目が僅かに見開かれる。あれほどの質量が、存在そのものが、一瞬にして消えたのだ。
スィエルの目が僅かに見開かれる。あれほどの質量が、存在そのものが、一瞬にして消えたのだ。
それは、ただの防御ではない。否、拒絶だった。
世界が日目を攻撃することを「許さなかった」のだ。
世界が日目を攻撃することを「許さなかった」のだ。
「……ッ!」
スィエルがわずかに表情を曇らせた。
『冒』は、その存在自体が異質だった。意志ではなく、条件反射。思想ではなく、定義。世界が「敵意」を持って接近すれば、その瞬間に放たれる光。
それは警告ではなく、ただ無慈悲な応答――絶対的な拒絶の閃光。まるでこの宇宙に「関与」を許さない、異物排除の法則の具現。
しかしその閃光は、同時に異様なほどの美しさを秘めていた。光の柱は天を裂き、地を焼き、あらゆる力を等しく打ち消す。その放たれる瞬間に宿るのは、怒りでも、悲しみでもない。あるのはただ、確固たる「無関心」。
スィエルは、それを受け止めていた。無言で、まっすぐに。だからこそ、気づいていた。
「君は……攻撃されない限り、自分からは手を出せないんだね。」
その一言は、言葉ではなく、祈りのようでもあった。世界に対する問いかけ。暴力の正体を暴くための、静かな探針。
それに応じるように、日目の巨大な瞳が、わずかに揺れた。瞬きのように、かすかに、ひとつの感情が差し込んだ。それは、否定でも肯定でもなかった。だが、たしかにそこには――「意思」があった。
それを見て、スィエルは静かに、そして迷いなくヌンキを収めた。重力すら忘れたように優雅に、紅蓮の槍が彼の背へと納められる。まるで儀式のように、丁寧に。
「なら、攻撃しなければいい。」
その言葉に、熱気が僅かに揺らいだ。炎も光も、殺意すらも、一拍だけ沈黙する。空気が、その一言に耳を傾けたかのようだった。
「私は……誰かを守るために戦う。だけど、無益な戦いは望まない。君がその意思を示した時だけ、私はその攻撃を受け止める。」
風が、静かに吹き抜けた。焦土の上に、柔らかな律が宿る。熱が、引いた。狂気の光が、ほんの僅かに退いた。
スィエルの言葉は、呪文でも命令でもない。ただ、旅の果てに至った者が口にする、結論。それは誰かのために立ち、誰かのために傷つくことを選んだ者だけが持てる、穏やかなる強さだった。
その瞬間、日目が――止まった。その巨大な身が、まるで呼吸を忘れたかのように。目の奥で、なにかがゆっくりと形を成し始める。それは思考。それは観察。あるいは……対話の始まり。
それは、光よりも確かな「変化」だった。
だが、次の瞬間――
ゴオオオオッ!!
宇宙を引き裂くかのような轟音とともに、日目の双眸から放たれた極光の光線が空間を灼いた。
一瞬にして、世界の色彩が塗り替えられる。それはもはや“視認できる光”ではなかった。空気を焼き尽くし、粒子を消滅させる純粋な否定の奔流。
スィエルが動きを止めたその沈黙すら、冒の法則は“敵意”とみなしたのだろうか。あるいは、その沈黙に潜む「可能性」そのものを拒絶したのか。
「……それでも!」
爆音に飲まれながら、スィエルの叫びが風に乗った。
ローゼンブリッジ――彼の周囲に複雑な紋様が浮かび上がり、幾何学的に展開される空間式。その中心に渦が巻き、重力すら湾曲していく。一瞬後、スィエルの姿は掻き消え、次に姿を現したのは――
日目の背後であった。
「ジオストーム!」
紅蓮の槍・ヌンキを地へと突き立てると同時に、大地が震えた。その一撃を起点に、周囲の空間が嵐へと変貌する。砕けた怪獣の死骸が巻き上げられ、焦土の空気が炎を孕み、烈風が螺旋を描いて襲いかかる。それはまさに、世界を敵に回すかのような魔法的暴風。
だが――
パァア……。
日目の身体を中心に、淡く光が放たれた。それは決して大きな光ではなかった。むしろ、静かで、淡く、残酷な美しさを持った“拒絶”。嵐は止んだ。死骸も、炎も、風も――すべてが、一瞬で砂となって崩れ落ちた。
この空間における絶対的な支配。それは、単に力の優劣ではなかった。「存在を拒絶する」という、この世界の理そのもの。
「……やはり、正面からでは勝てない。」
スィエルが静かに呟いた。彼の瞳には焦りも怒りもない。ただ、理解。そして、戦略家としての冷静な再構築。
ならば、とスィエルの周囲に空間が歪む。点のような光が無数に瞬き始める。
「カイパーベルト。」
空間に浮かぶ多数の孔から、光の粒、重力操作された極小隕石、風の刃が乱射される。物理法則を歪めた弾幕が、あらゆる角度から日目に降り注いだ。それは、もはや回避不能の幾何学。だが――
日目は動かなかった。
なぜなら――その攻撃のすべてを、“殺意を持つ攻撃”と世界が判断しなかったから。
砲撃が命中する。爆発が広がる。だが、砂にはならない。消滅はしない。
「……なるほど。力の“線引き”は、君自身ではなく、この世界が判断している……!」
スィエルの脳裏に閃光が走った。この戦いの構造。冒という存在の“非能動性”を読み解いた瞬間だった。
だが、それは同時に――次なる一手の猶予でもあった。
彼の背後に、巨大な空間が開く。内部では黒い光が渦巻き、理性が警鐘を鳴らす。宇宙すら飲み込むかのような、恐るべき圧力。
「フェルミパラドックス。」
開かれた孔より射出されたのは――5km級の巨大隕石。その質量は、大気を振動させる。怪獣の死骸を超え、戦場を超え、山脈すら崩壊させる規模の破壊を孕んでいた。空が裂け、影が地表を覆う。
だが。
日目の眼が光った。発光は、一拍遅れで発せられた。直撃の、その直前。
ザ……。
隕石は、音を立てることもなく砂となって崩れた。その砂粒が地に舞い落ちるとき、まるで“最初から何もなかった”かのような空白が残る。威圧すら残さない静謐な破壊。
――沈黙。
音も、風も、殺意すらも止まった。
スィエルは、槍を構えた。その構えには、怒りも焦燥もない。ただ、凪のような静けさ。武道家の如き、ひとつの型。
己の身に宿る風すら沈め、ただ相手の動きを待つ。その姿は、武器を構えていながらも、すでに“対話”の姿勢だった。
風が通り抜けた。あまりに静かで、清らかだった。
そのとき、日目の光が、一瞬止まる。巨大な瞳が、まっすぐにスィエルを見ていた。光の中にあったのは、太陽らしからぬ――感情。
それは、理解。それは、敬意。そして――
光が、わずかに揺らいだ。スィエルはその瞬間、風を纏い、一気に踏み込む。光の鎧が剥がれかけた今こそ、唯一の好機。
「……終わりにしよう。」
ヌンキが唸りを上げて振るわれる。真っ直ぐ、日目の中心核を貫くように。
日目は、避けなかった。あるいは、避けられなかった。
スィエルの槍が、光の結晶を貫いた瞬間――
ズバアアアアッ!!
純白の光と黒い断末魔が入り混じる。爆発はなかった。ただ、静かに、冒の姿が崩れていった。砕けた光の欠片が、静かに宙を漂い、風に溶けていく。
世界を拒絶するためだけに存在した『冒』が。最後に、意志を持って“終わり”を選んだのだった。
その瞬間、空が柔らかくなった。熱が遠のき、砂嵐が止み、音が戻る。世界が、初めて呼吸を取り戻すように。
スィエルはそっと槍を引き、残光に一礼した。
「勝者――スィエル・ヴォワヤジュール。」