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白色の爆弾 ◆w9XRhrM3HU


「良かったですね。そのDIOさんという優しいおじさんに出会えて」
「はい、DIOさんが居なかったらどうなっていたか」

イリヤは内心安堵しながら、黒と戸塚と名乗る二人組みの男女と話していた。
音ノ木坂学院に向かう際にイリヤはこの二人と出会う。
最初は警戒していたイリヤだが、戸塚の容姿が雪乃から聞いたものと一致。
そこで雪乃の名前を出すと、案の定この少女は戸塚で、雪乃の知り合いであることが分かった。
幸いイリヤと同じく殺し合いには乗っいないことも確認出来、すぐに警戒は解け、情報交換をするに至る。

「それで、雪ノ下さんは何処に居るの?」
「図書館に行くって言ってました」
「ありがとう、イリヤちゃん。他の人には会わなかったかな、八幡や由比ヶ浜さんには」
「八幡、由比ヶ浜……? あっ」
「心当たりがあるの!?」
「雪乃さんと会った時に、その……」

雪乃が見つめていた不自然な土の山。
あれは簡素な墓だった。雪乃本人が、友達を一人埋葬したと言っていた。
つまり、戸塚の知り合いは一人は既に死んでいるということだろう。

「嘘……」
「その、誰かまでは聞いてないんですけど、自分から盾になって死んだって」

雪乃から聞いた知り合いの名は、戸塚と結衣だけだ。
話すのに、抵抗はあったが黙っているわけにはいかない。
イリヤは雪乃から聞いた限りの情報を戸塚に伝える。
エルフ耳の男の襲撃、それから身を挺して守った雪乃の友達の死。更に、その後に起きた御坂と白の青年の襲撃。
聞けば聞くだけ、その人物像が戸塚の中で鮮明になる。

「間違いない、八幡だ……」
「戸塚さん……」

どう声を掛ければいいのか、イリヤには分からなかった。
まだ八幡と決まった訳じゃないというべきか、だがそれは逆に結衣が死んだことになる。
あるいは、戸塚の知らない雪乃の知り合いという可能性もあるが、人が死んだ事実に変わりはない。

「イリヤさん、エルフ耳の男って言いましたね?」
「は、はい……それがどうか?」
「……エルフ耳の男の名前は魏志軍という筈です。奴に出会ったらすぐに逃げてください」

黒が一瞬見せた眼光に、イリヤは御坂を葬ると言ったアカメから似たようなものを感じた。
言っている台詞も敬語であるが、先ほどの黒からは考えられない。

「ちょ、ちょっと待ってください。それって、知り合いなんですか?」
「敵だった。俺の前で死んだと思っていたが」

魏と黒の関係。戸塚と黒の会話を聞く限りでは、これも血塗られた殺し殺され合う関係なのだろう。
黒に信頼を寄せていた戸塚でさえも、動揺していた。
話を淡々とこなし、短く済ませる黒。アカメとは違いすぐに元の温厚な雰囲気に戻ったが、イリヤにはあの殺気が忘れられない。
まるで、仮面を被り別けているような人だとイリヤには感じられた。

「それと御坂って人は分かりませんけど、その白い青年って言うのは槙島という人だと思いますよ」
「槙島?」
「僕も狡噛さんという人に聞いただけですけど、非常に危険らしいです。
 何でも、生きているだけで周りの人間に殺人衝動を誘発するとか」
『物騒ですね……カリスマBは硬いですよ』
「人事じゃないよ、ルビー」

自分の周りでこれほどまでに人が争い、血を流していることにイリヤは改めて悪寒を感じる。
本当に運と巡り合わせが良かっただけなのだろう。
自分の仲間達もそうであって欲しいと願うばかりだ。


『おはようしょくん』

何処からか、広川の声が響き渡る。
辺りに放送機器は見当たらなかったが、果たして何処から声を流しているのか。
そんな些細な疑問を解消する間もなく、広川は淡々と放送を読み上げる。
黒が筆記用具を取り出すのを見て、イリヤも慌てて筆記用具を用意する。

「これって……」
「どうやら、死者の名をこうして報せるようですね」

黒が禁止エリアの位置をメモし終わった頃、続いて死亡者の名を報されてゆく。

『美遊・エーデルフェルト―――』

「え?」

共に何度も死線を潜り抜き、信頼しあえる親友となった美遊。
その名が何の感情もない。機械染みた声に呼ばれた。
イリヤのメモを取る手が止まり、放送のその先を何を言っていたか何も耳に入らない。

比企谷八幡―――』

「八、幡……」

そして戸塚の予想通りにその名を呼ばれた。

「……」

ただ一人、黒の見知った名前は一つもない。
強いて言えば、蘇芳・パブリチェンコという名が妙に印象に残り、デジャブを感じたぐらいだ。

「美遊……そんなことないよね?」

『イリヤさん……』

「だって美遊は私より……」

強い。そう言いかけたところで思い出す。
イリヤはルビーを支給されなかった。幸いDIOが譲ってくれたお陰で自衛の手段は得れたが、もし会えなければどうなっていたか?
考えるだけでもゾッとしてくる。殺し合いの場で、ステッキも無くうろつくなど自殺に等しい。
それは美遊にも言えることだ。もしも美遊もステッキを支給されず、殺し合いに乗った参加者に出会えば―――。
嘘だと思いたかった放送に真実味がでてくる。考えれば考えるだけ、美遊の死は有り得る事だと実感してしまう。

「嫌だよ……美遊……。せっかく仲良くなれたんだよ? これから一緒に沢山、楽しいことが……。
 海に行く約束もしたのに、どうして……」

イリヤの頬を伝い、涙がポロポロと落ちていく。

「八幡……。もっと僕、八幡と……」

いつも一人で居た八幡が戸塚は好きだった。
もっと話して、仲良くなりたかった。
八幡と一緒に奉仕部の雪乃と結衣、たまに現れる材木座、平塚先生。
皆と行事を行ったり、活動したりするのは楽しかった。
良い事ばかりじゃない。辛いことや、嫌な事もあったが、それでもあの時間は掛け替えのないものだった。
でも、もうその時間は永遠に帰ってこない。
八幡の代わりになる存在は何処にもない。あの思い出を一緒に笑って語る事も出来ない。

(魏志軍……)

八幡を殺害したのは容姿、能力から考えても魏しか考えられない。
既に死んだ筈の契約者が存在するはずがなく、同姓同名かと考えていたが認識を改める必要があるらしい。
生き返ったのか、あるいは自らの能力で自決する際、偽装し生き延びたか。
恐らくはイギリスの伊達男、ノーベンバー11も同名のコードネームなどではなく、黒の知る死んだあの男であるかもしれない。
何にせよ次に魏を殺す時はは自害などさせず、確実に仕留める。
正義漢ぶるつもりもなく、言いがかりにも近いが、八幡の死は魏に止めを刺し損ねた黒にも責任はあると感じさせていた。


「黒さん……」
「何だ」
「多分、八幡は最期まで雪ノ下さんと由比ヶ浜さんの事を守りたかったんだと思うんです
「……」
「だから、せめてその思いだけは……、ぅっ八幡の、変わり、に……」

その言葉は最後、しゃっくりと泣き声が混じっていた。
守るという強い決意に比べれば、あまりにも弱弱しい。
その姿を見ているだけで、イリヤにも焦りが増してきた。
今こうしている間にも、クロエが何処かで殺されかけている。命の危機に晒されている。
そう考えるだけで、身が張り裂けそうだ。

「私も、学校に行ってきます。田村さんと合流して、早くクロに会わないと」
「そうですか」
「二人とも、気をつけて下さい。もし銀さんや由比ヶ浜さんに会ったら、二人のことを伝えておきますから、ルビー転身して、急ごう」

黒と戸塚に別れを告げ、イリヤは涙を拭うとルビーに転身を促す。

『イリヤさん、ついさっき倒れるかもしれないって言ったばかりですよ!』

だが、ルビーは首を縦には振らず(そもそも首はなく、うねうねしてるだけだが)断固として拒否した。
それに対し、イリヤは笑顔を浮かべながら気丈に振舞う。

「うん、疲れてるけど大丈夫だよルビー」
『いくらなんでも、流石に今回ばかりは譲れません。ここで倒れて誰が介抱すると思ってるんですか!』
「クロも私を探してるもん。私も急がなくちゃね」
『???』
「イリヤさん、ルビーさんの話をちゃんと聞いていますか?」

先程までの会話に対する違和感が膨れ上がり、堪らず黒はイリヤへと問いかけた。

「え?」
「話が噛みあって……」
「何で、そんなこと言うんですか?」

友好的な態度だったイリヤの眼差しに明らかな敵対の色が現れる。
気付けば、ルビーの制止も無視して転身し、臨戦態勢に入っていた。

「おかしい……。だって、そんなのおかしい」
「……?」
『イリヤさん!? どうしたんですか!』
「何か、黒さんが変な事を言ったの? でも僕には、そんな風には見えなかったけど」

黒はおろか戸塚もルビーも、黒が一体イリヤの何に触れてしまったのか分からない。
明らかに尋常でない猜疑心を剥き出しにしている。
乙女心を理解できない男が、女に嫌われるというのは良くあるが、これはそんなレベルに収まらない。
そもそも、イリヤ自身が何故猜疑心がここまで強くなったか理解していないのだから。

「行こう。ルビー、早く!」
「待て、イリヤ。お前――」
「来ないで!」

敬語を忘れ、咄嗟に手を出す黒に向かってイリヤは攻撃した。
軽い魔力の弾丸だが、当たり所によっては怪我ぐらいではすまない。
幸い黒は、軽い身のこなしで避けたことにより大事には至らなかったが。

『イリヤさん、今のは流石に不味いですよ……! あれは当たったら』
「飛ばすよ、ルビー。追いかけられたら嫌だから」

イリヤは気付かない。
その猜疑心こそが、DIOと食蜂の仕掛けた導火線の一つだということに。
『心理掌握』による洗脳は未だ解けそうにない。

【F-5/1日目/朝】

イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:疲労(大 倒れる寸前)  『心裡掌握』下 、美遊が死んだ悲しみ、黒に猜疑心
[装備]:カレイドステッキ・マジカルルビー@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
     DIOのエキスが染みこんだイリヤのハンカチ DIOのサークレット
[道具]:ディパック×1 基本支給品×1 クラスカード『ランサー』@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ 
不明支給品0~1 美少女聖騎士プリティ・サリアンセット@クロスアンジュ 天使と竜の輪舞
[思考]
基本:クロと合流しゲームを脱出する。
1:クロとの合流。
2:音ノ木坂学園に向かう。
3:田村、真姫を探し同行させてもらう。
4:花京院、、新一、サリアを探して協力する。
5:南下して美遊とクロに会えなければ図書館に向かう。
6:黒に猜疑心。もう会いたくない。
7:美遊……。

【心裡掌握による洗脳】
※トリガー型 5/8時間経過
『アヴドゥル・ジョセフ・承太郎を名乗る者に遭遇した瞬間、DIOの記憶を喪失する』 
『イリヤ自身が「放置すれば死に至る」と認識する傷を負った者を見つけた場合、最善の殺傷手段で攻撃する』


※常時発動型 3/6時間経過
『ルビーの制止・忠告を当たり障りのない言葉に誤認し、それを他者に指摘された時相手に対し強い猜疑心を持つ』


[備考]
※参戦時期は2wei!の調理実習終了後。
※『カレイドルビー』の制限は、自立行動禁止、引き出せる魔力の絶対量低下。
※『カレイドルビー』には、誰でも使える改造が施されており、さらに吸血鬼の血を吸った事で何がしかの不具合が起きているようです。
※アカメ達と参加者の情報を交換しました。
※黒達と情報交換しました。


【黒@DARKER THAN BLACK 黒の契約者】
[状態]:疲労(中)、右腕に刺し傷
[装備]:黒のワイヤー@DARKER THAN BLACK 黒の契約者、包丁@現地調達×3
[道具]:基本支給品、不明支給品0~1
[思考]
基本:殺し合いから脱出する。
1:銀や戸塚の知り合いを探しながら地獄門へ向かう。銀優先。
2:後藤、槙島を警戒。
3:魏志軍を殺す。
4:イリヤの変化に疑問。
[備考]
※『超電磁砲』『鋼の錬金術師』『サイコパス』『クロスアンジュ』『アカメが斬る!』の各世界の一般常識レベルの知識を得ました。
※戸塚の知り合いの名前と容姿を聞きました。
※イリヤと情報交換しました。

戸塚彩加@やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。】
[状態]:疲労(中)、黒への信頼 、八幡を失った悲しみ
[装備]:浪漫砲台 / パンプキン@アカメが斬る!
[道具]:基本支給品、各世界の書籍×5、不明支給品0~1
[思考]
基本:殺し合いはしたくない。
1:八幡達を探しながら地獄門へ向かう。
2:雪乃達と会いたい。
3:八幡の変わりに雪乃と結衣を死なせない。
4:イリヤちゃん一体どうして……


[備考]
※『超電磁砲』『鋼の錬金術師』『サイコパス』『DTB黒の契約者』『クロスアンジュ』『アカメが斬る!』の各世界の一般常識レベルの知識を得ました。
※黒の知り合いの名前と容姿を聞きました。
※イリヤと情報交換しました。


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071:いずれ、しづ心なく。 イリヤスフィール・フォン・アインツベルン 094:黒色の悲喜劇
063:サイコパス見し、酔いもせず…
戸塚彩加
最終更新:2015年08月08日 00:28