183

息もできないほど責めたてる現実に ◆dKv6nbYMB.


―――嘘だろおい!?

燃えさかるコンサートホールの中、残された"彼"は非常に焦っていた。
同行者と結託し、ほむらという少女の懐に入り込み、血の雨を降らせてやろうと画策したところまではよかった。
ところが、だ。
精神に干渉する間もなく少女に投げ捨てられ、結託した同行者は頭を破壊されて死んでしまう。
頼りなさげな風貌の足立という男が新たに現れ、一人の少女を毒殺したかと思えば、今度はそれを契機に追い詰められて。
更には妙な力に覚醒した男が空条承太郎の隙を突いて腹を切裂いた。
"彼"の干渉する間もなく事態は転々としていくが...

―――あの野郎、なんで火なんか!

足立が放った爆弾がコンサートホールを燃やし、瞬く間に火が会場中を覆っていく。
このままでは非常にマズイ。
ただ一人残された、傷ついた承太郎に助けを求めるが...


―――お、おい、承太郎!俺も連れて行ってくれ!今回は見逃してやるから!な!?


声すら発せない"彼"に承太郎が気付くはずも無く。
やがては彼もコンサートホールから脱出してしまった。


―――そんな!火自体は俺の能力で覚えられるからいいとして...


"彼"の能力に、戦えば戦うほど強くなるという、シンプルにして強力なものがある。
その能力を生かし、触れた炎の温度を学習すれば焼け死ぬことは無くなる。
だが、ここまで火が廻れば、誰かがコンサートホールに立ち入ることは難しくなるし、誰も訪れなければ"彼"は存在すら認知してもらえなくなる。
つまり、ゲームが終了しても、永久にここに放置されることになるのだ。



―――誰か助けてくれぇー!ヒィィィィ、孤独だよぉー!



燃えさかるコンサートホールの中、誰にも聞こえない"彼"の叫びが響き渡った。




狡噛慎也の最期を見届けたアカメたちは、泣き疲れて眠りについたタスクと、狡噛の遺体をコンサートホール内へと運んだ。

結局、アカメたちの進路は当初と変わらず。
コンサートホールから、順に北西部にあるはずのロックを探することにした。
コンサートホールの一室に狡噛の遺体を安置すると、タスクに比べて比較的余裕のあるアカメが、単身で見回りを兼ねた探索を請け負った。



「......」

コツリ、コツリと靴が床を叩く音がする。
慣れない。
人の死は数多く経験してきた。
今までも、そしてこれからも経験していくことだろう。
しかし、仲間を失うこの苦しみに慣れることは―――決して無い。
こうしている今でさえ、タツミやウェイブ達の安否が気がかりでしょうがない。

冷静に振る舞うのは、次の戦いに影響を及ぼさないよう切り替えるためだ。
そういう方法しか、アカメは知らない。
こうして、別のことで気を紛らわすことしか...できない。

やがて、歩き続けること十分程度だろうか。

なにかに躓き、アカメの上体が崩れる。

「......?」

乱雑に置かれた瓦礫は避けて歩いていたはずなのだが、妙なでっぱりに躓いてしまった。

集中できていないのか。
そんなことを思いつつ、パンパンと両手で頬を叩き、気を引き締め直し、探索に戻る。
本来ならこれだけのことなのだが...

「......」

気になる。
先程のでっぱりが妙に気になる。
アカメは、踵を返してでっぱりのもとへと戻る。
「これは...柄?」

小さな瓦礫に挟まれて刀身は見えないが、この形状からしてまず間違いなく刀の柄だろう。
瓦礫をどけ、その正体を確認してみる。
やはり刀だ。その刃渡りは村雨に勝るとも劣らずの美しさだ。

――――た、助かったァァァァァァ!!

突如、頭の中に響いてきた歓喜の叫び。
アカメはすぐに刀を構え、周囲に殺気を放つ。

しかし、気配はない。


――――ヤッタアアァァァァ!天は俺を見捨てていなかったんだァ!

またも響く叫び声。
再び身構えるが、やはり気配はない。


(...まさか)


刀を床に置いてみる。
すると、たちまち声は消え去った。

間をおいて、拾い上げてみる。


――――み、見捨てないでくれ!もうこんなところで独りは嫌なんだァァァァ!


「...刀が喋っているのか」

刀が意思を持ち、言語を用いるという奇妙な現象。
既に、ルビーという喋るステッキと遭遇していたためにできた発想だった。


類は友を呼ぶ。スタンド使いは引かれあう。
言い方は様々だ。
ナイトレイドの切り札、アカメ。
呪われた刀に認められた彼女が、妖刀アヌビスを見つけられたのもまた、ひとつの運命だったのかもしれない。




目を覚ましたタスクが行ったのは、状況の再確認。
なぜ自分は眠っていたのか、なぜ...
傍らに横たわる狡噛の遺体を見て、全てを思い出す。

「狡噛、さん...」

タスクから滴る水滴が、狡噛の顔に落ちる。

死んだ。
アンジュを喪い、タスクの最後の支えになっていた男が死んだ。
命を奪ったのは―――俺だ。

「俺が...俺の所為で...!」

もしかしたら。
もしかしたら、狡噛はあの状況でも逆転の一手を撃てたかもしれない。
もしかしたら、自分が介入しなければ、彼は槙島との決着を着けられたかもしれない。
だが、彼は死んだ。
過程や思惑はどうであれ、タスクの放ったナイフが、彼の命を奪った事実に変わりはない。

いまのタスクにできることは、ただただ悲しみに身を任せ、己の無力さに打ちひしがれることだけだった。

雪乃も新一も、タスクと同じだ。

何もできなかった。
図書館であれだけ身体を張って戦った男に対して、なにもしてやれなかった。
ただ、その死を看取ることしかできなかった。必死に名前を呼ぶことしかできなかった。

彼らにできることは―――狡噛慎也という一人の男の死を悼むことだけだ。

「...雪ノ下。ここを任せてもいいか?」

やがて、新一は雪乃の肩に手を置き、雪乃もまた返事の代わりに頷きで返す。
タスク達のいる一室から退出した新一は、ふぅ、とひとつ溜め息をつく。


『...槙島のことか?』
「わかるのか」
『なんとなく、な』

新一が考えていたのは、槙島聖護のことだ。
彼が奈落へと身を投げた時、新一の心にひとつの穴が空いたような苦しさに襲われた。
狡噛慎也を殺し、サリアの暴走の引き金となった男だというのに。
確かに憎しみや敵意といった感情はある。しかし、おそらく、四人の中で新一だけは彼の死も悼んでいた。

「おかしいよな。仲間を殺した奴だっていうのに、そいつが死んだことを素直に喜べないなんて...」
『...別におかしくはないだろう』

ポツリとミギーが呟く。

『きみもサリアを説得する時に言っていただろう。理由はどうであれ、槙島は人の心の隙間を埋めてくれる男だと』
「...ああ」
『私は人間の細かい感情はわからないが、そんな男が死んで悲しいと思うことは不自然ではないと思うがな』
「......」
『なんだその目は?』
「いや...なんでもない」

あの合理性を徹底しているミギーが、槙島の死を惜しんでいる。
放送直後に言った通りだ。
ミギーは、槙島聖護に興味を持っていると断言した。
槙島が身を投げる時、ミギーは合理性を排してでも触手を伸ばし、彼を助けようとした。
新一もミギーも、槙島を刺したアカメを責めるつもりはないし、正しい判断だったと思っている。
この件でアカメへの信頼が揺らぐことすらないだろう。
だが、それで槙島への想いが消えるかと問われれば、話は別だ。
新一の心に空いた穴は当分は塞がらないだろうし、ミギーの彼への評価も覆らないだろう。
そんな複雑な感情を抱きつつ、新一は再び溜め息をついた。


「みんなと一緒にいなくていいのか、新一」

探索を終えたアカメが、新一と合流をする。

「...いまは、ちょっとな」
「...無理はしてないか?」
「大丈夫。考え事をしてただけだから」

心配そうに顔を覗き込もうとするアカメだが、新一は立ち上がりそれを拒否。
そうだ。槙島のことは、自分とミギーだけの問題だ。
わざわざ皆に話すことじゃない。
顔を上げ、探索の労いの言葉をかけようとした新一だが。


「アカメ、それなんだ?」

彼女の手にある抜き身の刀の存在に気が付く。
探索の前までは確かに持っていなかった筈だが...

「さきほど拾ったんだ。...これについても話がしたい」




(...なんて声をかければいいのかしらね)

未だに狡噛に縋り付くタスクを見ながら思う。
雪乃は決してタスクを軽蔑している訳ではない。
純粋に、ここまで悲しんでいる人間に対してどう接すればいいのかがわからないだけだ。
彼を慰めるとき。
もしも八幡なら、自分を八つ当たり用の悪役にでも仕立てて彼の悲しみを発散させたかもしれない。
もしも結衣なら、無理にでも励まそうと奮闘するだろう。
しかし、それらは彼らの場合だ。
雪乃はあくまでも雪乃。
彼らの行動は予想できても、彼らそのものには成り得ない。
どうすればいいのか、雪乃はどうしようもなく途方に暮れていた。

「......」

やがて、タスクは立ち上がり、ごしごしと目元を拭う。

「...もういいの?」
「...ああ。いつまでも悲しんではいられない」

タスクは顔だけ振り向かせて、疲れ切った微笑みで雪乃に言った。

「それに、ずっと立ち止まってたらアンジュや狡噛さんに蹴り飛ばされちゃうよ。はやくあの広川ってバカをブッ飛ばせ、...ってね」

彼のその姿を見て、雪乃は察した。
この人は、強くて、同じくらい弱い人なんだと。

彼が無理して強がっていることは一目瞭然だ。
少し小突けばたちまちに崩れてしまうほどに不安定だ。

それでも。

そんな彼でも、雪乃の手助けなど必要なしに立ち上がってみせた。

(...結局、私は無力なのね)

この場を新一に頼まれたはいいものの、雪乃はなにもできなかった。

放送の前に新一と共にアカメたちの力になると決意したのに、何にもできやしない。
誰もかれも、雪乃の手助けを必要としない。
ここにいるのは、ただ護られるだけの非力な少女でしかない。

それでも

―――新一、雪乃。これから先も、お前達の力を借りるときがくるかもしれない

―――今すぐは難しいけれど...きっといつかはあなたを頼るわ

アカメの言葉と、かつて結衣に言った自分の言葉が重なる。

(もしも、私が必要とされる時が来たら、その時は―――)



ガチャリと扉を開け、アカメたちが部屋に戻ってくる。

「もう大丈夫なのか?」
「...心配かけてごめん」
「いいんだ。仲間の死を悲しむのは、悪いことじゃない」

アカメが椅子に腰かけ、探索の成果を報告する―――のだが。

「アカメさん、それは?」

真っ先に目についたのは、一振りの抜き身の刀。刃渡りに関しては異常に美しいと言い表せるほどであった。
それは、常にナイフや銃火器を扱うタスクは勿論、刃物に関して専門的な知識を持たない雪乃も抱いた感想だ。

「この刀は、コンサートホール唯一の生存者だ」

アカメは語る。
妖刀から聞いた、コンサートホールで起きた惨劇を。




「嘘だろ...」

新一は思わず呟いた。
アカメの持つスタンドの宿る刀、アヌビス神の証言では、肉の芽を埋めつけられた花京院がほむらを操りコンサートホールを襲撃。
しかし、彼は以前に襲った鹿目まどかに殺害され、更には足立透がまどかを毒殺したのだという。

ジョセフからは、花京院がDIOに肉の芽を埋めつけられている時間軸から連れてこられた可能性があると聞いていた。
その予想は的中し、最悪の事態を引き起こしていたのだ。

「...なんだか、やるせないわね」

肉の芽に操られていたとはいえ、花京院が鹿目まどかを襲っていたのは事実。
そして、まどかが花京院を殺したのもまた事実。
しかし、コンサートホールの関係者は足立以外は皆既にこの世を去っている。
誰を責めることもできず、なにが正しかったのかもわからない。
あるのは、不幸な因果が絡み合った結果だけだ。

「...その肉の芽を埋め込んだっていうDIOは、ジョースターさんもかなり危険な奴だって言っていた」
「DIO、か...」

コンサートホールで起きた悲劇を聞いたアカメは、アヌビス神を強く握る。
もしもその場にアカメが居合わせていたらどんな判断を下したかわからないが、これだけはいえる。
DIOという男は、葬らなければならない"悪"だと。

尤も、肝心のDIOは既に死んでいるのだが、それをアカメたちが知る由はない。

「しかし、足立が毒殺をしたとなると...」
『たしかペットボトルの水がどうとか言ってたような』
「ペットボトル...と、なると、これか」

アカメは足立から強奪したデイバックからペットボトルを取り出し、確認する。

『そう!たぶんそれだ!流石姐さん、手際がいい!』
「...アヌビス。お前の声は大きくて五月蠅い。もう少し静かにしてくれ」

ちなみにこのアヌビス神、触れている者にしか声が聞こえないため、皆に伝えるときは彼の言葉を意訳してアカメが喋っていることになる。

『アヌビス神といったか』

『うわっ、なんだこいつはァ!?右手が喋った!?』

『きみはジョセフ・ジョースターと同じくスタンド使いらしいが、なにか能力があるのか?』

興味深々、といった風にミギーはここぞとばかりに詰め寄る。

『そ、そうか。俺の能力を聞きたいか。なら教えてやる!俺の能力は、物質を透過することと、【覚える】こと!覚えるものは相手の攻撃!敵の斬撃・打撃、如何なる攻撃のパターンにおいても全てを覚え、この俺のパワーとスピードを増すことができるのだ!』
「...敵の攻撃を受ける度に、この刀のパワーとスピードを増すことができるらしい」

戦えば戦う程強くなる刀。
それだけ聞けば、かなり強力な力に聞こえる。

そして、そんな刀とアカメの達人の剣技が合わされば...!
新一はそんな期待を込めた眼差しでアカメを見るが。

「......」

当のアカメは、アヌビスを様々な角度から眺めているだけだ。
むしろ、新一の目が確かなら不安げな表情でもある。

「...アヌビス」
『はいよ!』
「少し確かめさせてほしいことがある。...新一、ミギー、手伝ってくれ」

アカメが席を立つと、それにつられて、首を傾げつつ新一も立ち上がる。

「ミギー、剣術の立ち合いはしたことがあるか?」
『実際におこなったことはないが...アヌビスの性能をテストするつもりか?』
「そうだ。実際に確かめてみないとイマイチ実感できない」
『了解だ。攻撃の速さは?』
「一刀ごとに速くしてくれ。それと、私が合図をしたら一旦止めてくれ」

ミギーが両手を剣に変え、それに対してアカメもまた普段の戦闘態勢をとる。

『フッフッフッ...この圧倒的なパワーを実感して腰を抜かすなよ』

「始めてくれ」
『わかった。シンイチ、きみはあまり動くなよ』

新一が頷くと、ミギーはゆっくりとアカメに斬りかかる。
アカメがそれをアヌビスで受けると、次いで逆側の刃で斬りかかる。
アカメが再びそれを受け、再びミギーが逆の刃で斬りかかり、アカメはそれを受ける。
それらを交互に繰り返しつつ、徐々にミギーの速さが増していく。
動じることなく、アカメはそれをアヌビスで捌き続ける。

『どうした、そんなもんかァ!?』

得意げにミギーの攻撃を捌くアヌビス神(アカメ以外に彼の声は聞こえないが)。
ブラッドレイほどでは無いとはいえ、雪乃のような一般人では反応できない速度での攻撃を捌けるのは、流石に実力を自負するだけはある。
と、思いきや。

「...?」

アカメの様子がおかしい。ブラッドレイとあれほどの猛攻を繰り広げた彼女の顔が、明らかに焦燥を帯びている。
疲労が溜まっているのもあるのだろうが、それにしてもここまで必死になるだろうか。

「―――そこまでっ!」

アカメが叫ぶと同時に、ギィン、と甲高い音が鳴り、ミギーの刃の動きも止まる。

「アカメ...?」

息を切らしながら、アカメは片膝を地に着ける。

『どうだこのアヌビス神の力は!?この俺さえいれば、どんな敵にもゼ~~~~~ッタイに、負けなァい!』
「...すごく使いづらい」
『そうだろうそうだろう、やはり使いづらい...え?』

アヌビスは己の耳を疑った。
いま、アカメはなんと言った。
このアヌビス神を、使いづらいと?

「...お前の重さや硬さが一刀毎に変わるのが非常に厄介だ」
『え?』

アヌビス神の学習能力。
それは、如何なる攻撃においても、そのパワーやスピード、攻撃パターンを憶えることである。
しかし、覚えられるのはアヌビス神だけであり、使用者に伝染はしない。
ミギーの攻撃を捌いていたのは、全てアカメの実力であり、アヌビス神の力ではない。

アカメは歴戦の殺し屋である。
帝具村雨以外にも様々な刀は使ってきたが、しかし一太刀受ける毎に重量や硬度が変化する刀など使ったことがない。
慣れない刀を扱うには、剣の重さや切れ味に慣れるといったそれなりの経験値が必要なのだが、アヌビス神の能力はそれを許さない。
慣れようとする傍から、重量から硬度、切れ味に至るまでが変化してしまうのだ。
そんな刀を振るえば、その度に誤差が生まれ、速い攻撃に耐えることができなくなってしまう。
これを完璧に扱うなど、アヌビス神本人以外には不可能だろう。

つまり。

「お前がいくら強くなろうとも、私がついていけなければ無意味だ」

アカメとアヌビス神の相性は最悪だった。

「お前のその覚える能力、発動しないようにすることは出来ないか」
『そ、そりゃあ、出来なくはないけどよ...』
「たぶんそっちの方が使いやすい。変えてくれるか?」
『わかったよ...』

絶対の自信があった己の能力が、使いづらいとあっさりと切り捨てられてしまった。
これでは透過能力を使えることを除けばただの喋る剣だ。
アカメの同意さえあれば身体を操れるようだが、信頼関係もなにもない現状では難しいだろう。
自らのアイデンティティーを減らされたアヌビス神は、しぶしぶと溜め息をつくが、それを知るのはアカメのみだ。
アヌビス神の能力の確認を終えたアカメは、椅子に座りこれからの進路を話し合う。

『これからの行動だが、私は当初の予定通りにいくべきだと思う』
「ここから北をしらみつぶしに探しに行くルートだな?」
『ああ。現状、ロックの場所がわからない以上、それが確実だ』
「ロック...?」
「タスクは知らなかったか。俺たちはヒースクリフって人から聞いたんだけど、なんでも南東、南西、北西エリアのどこかに地獄門のロックを外す鍵があるらしいんだ」
「地獄門って...この一番右端の?」
「ああ。ここを解除することが、このゲームから脱出する鍵になる...かもしれないってさ」

『一応、きみたちの意見も聞きたいが...どうだ?』
「私は構わないが」

アカメに続き、新一、雪乃、タスクの順番に、肯定の意を示す。

『...わかった。では、ここをもう少し探索したら次の施設へと向かおう。...だが、その前に』

皆が席を立とうとする中、ミギーがタスクの名を呼び止める。

『狡噛慎也のことだ』
「......」
『首輪の解除は、我々の生存の上で必須条件といえる。そのため、ひとつでも多くのサンプルが必要だ』
「...首輪の回収、だな」

俯いたまま答えるタスクに、ミギーが沈黙で肯定する。

「俺もいつまでも子供じゃない。いまはそれが必要なことくらいはわかっているつもりだ」
『ならば話は早い』
「けど、それは俺にやらせてくれ」

強い口調で。先程まで泣き腫らしていた男とは思えないほど、真っ直ぐな目でミギーを見据えて言う。

「俺は、狡噛さんを護れなかった。だから、そのことを絶対に忘れないために...俺が、やらなくちゃいけないんだ」
『...そうか。ならば後はきみに任せる』

ミギーは、賛同も反対もせず、ただそれだけを告げた。
ミギーは人間の感情を全て理解しているわけじゃない。
ただ、ここまでタスクが強く主張するなら、彼に任せた方がいいだろうということだけはわかっていた。

「...使え、タスク」

アカメが、アヌビス神をタスクへと手渡す。
ナイフを使って切断するよりは簡単に切れるだろう。
アヌビスを受けとったタスクは、横たわる狡噛のもとへと歩み寄る。


「...雪ノ下」
「いいえ。私も見届けるわ」

首を切断する一部始終を見せまいと、新一が雪乃を部屋から連れ出そうとするが、雪乃はそれを拒否。

「どんな犠牲の上で私が生きているのか、なにも知らないままは嫌だもの」

その強い意思の宿る瞳を見れば、新一はそれ以上引き留めようとはしなかった。

三人が見守る中、タスクは狡噛の傍らに立つ。

「...狡噛さん」

しゃがみこみ、アヌビス神をそっと喉元に当てる。

『そのまま押し込めばあっさり切れるからな。あまり力は入れなくていいぞ』
「...気遣ってくれるのか?」
『早くここから出たいだけだっての...ああイヤだ。恐ろしい』

それが建前か本音かはわからないが、その言葉だけは受け取っておく。

「......」

かけたい言葉も、言わなくちゃいけない言葉もたくさんある筈なのに、なにも思いつかない。
だから、タスクは一言だけ。

「―――ごめんなさい」


首を切裂き首輪を回収すること。
護れなかったこと。
狡噛と槙島、二人の問題に割って入ってしまったこと。

それら全ての謝罪の言葉と共に、タスクは狡噛の首を斬りおとした。


タスクは狡噛の首輪を回収し、アヌビス神をアカメへと返す。

(俺は、必ずこの腐ったゲームを壊します...だから...!)

首輪を握りしめ、タスクは心中に誓う。
アンジュを、モモカを、サリアを、狡噛を死へと追いやったこの殺し合いを完膚なきまでに破壊すると。

――――だったら、食らいつけ。


狡噛の声が聞こえた気がした。

違う。
これは、きっと自分に都合のいいただの幻聴だ。
それでも。


――――お前の執念で、奴らの喉笛を引き裂いてやれ。


背中を押すその声は、とても頼もしく思えてしまった。


【D-2/コンサートホール/一日目/真夜中に近い夜中】


【アカメ@アカメが斬る!】
[状態]:疲労(絶大)、ダメージ(大)、頭部出血(中、止血済)、頬に掠り傷、全身にかすり傷、奥歯一本紛失、顔面に打撲痕
[装備]:アヌビス神@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース
[道具]:基本支給品一式、水鉄砲(水道水入り)@現実、鉄の棒@寄生獣、ビタミン剤or青酸カリのカプセル×7、毒入りペットボトル(少量)
[思考]
基本:悪を斬る。
1:北西の方に向かいロックを探索する。
2:タツミとの合流を目指す。
3:悪を斬り弱者を助け仲間を集める。
4:村雨を取り戻したい。
5:血を飛ばす男(魏志軍)と御坂と足立は次こそ必ず葬る。
6:エスデスを警戒。
[備考]
※参戦時期は不明。
※御坂美琴が学園都市に属する能力者と知りました。
※ディバックが燃失しました
※イリヤと参加者の情報を交換しました。
※新一、タスク、プロデューサー達と情報交換しました。
※コンサートホールの一件、足立の持っていたペットボトルが毒入りであることを知りました。


【アヌビス神@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】
0:とにかく生き延びたい
1:とりあえずいまは助けてくれたアカメに従う。
2:DIO様に会ったら...どうしよう。


※500年前この剣を作った刀鍛冶のスタンドが剣に憑りついたもの。
主な能力は以下の三つになります。
  • 物質を透過して、斬りたいと思った対象だけを斬ることができる
  • 一度受けた攻撃を憶え、その度に力と速さが強化されていく
  • 精神を乗っ取る

※アヌビス神の制約は以下の通りです
  • アヌビスが精神を乗っ取れるのは、対象の合意があるか、気絶している時だけ。
  • アヌビスの精神が表面化している時の記憶は対象者の精神が戻ったときも引き継がれる。
  • 精神を乗っ取れる時間は10分。また、連続して乗っ取ることはできない。その10分間は身体の所有者はアヌビス神の精神を押しのけることはできない。
  • 通り抜ける力は使用可。


※参戦時期はチャカが手にする前です


以下の制限が新たに発覚しました。

  • 最初の学習から一定時間(約5分)を過ぎると、それまで覚えたものを全て忘れ、最初の強さに戻ってしまう。
  • 首輪が鍔の部分についており、無理に外そうとすると爆発する。首輪ランクは3。
  • 覚える能力のON/OFFは可能。OFFにした場合、最初の強さに戻ってしまう。



【泉新一@寄生獣 セイの格率】
[状態]:疲労(大)、出血(止血済み)、横腹に刺し傷、ミギーにダメージ(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式×2、ランダム品0~1 消火器@現実、分厚い辞書@現地調達品、
[思考・行動]
基本方針:殺し合いには乗らない。
1:北西部のロックを探索する。
2:後藤、血を飛ばす男(魏志軍)、槙島、電撃を操る少女(御坂美琴らしい?)エスデスを警戒。
3:ホムンクルスを警戒。
4:サリア……。
5:イリヤって確か、雪ノ下達が会った……。
6:余裕ができたら指輪やロボットも探してみる。
7:黒って人とも合流した方が良いのか……。
[備考]
※参戦時期はアニメ第21話の直後。
※新一、タスク、プロデューサー達と情報交換しました。
※ミギーの目が覚めました。
※コンサートホールの一件、足立の持っていたペットボトルが毒入りであることを知りました。

【雪ノ下雪乃@やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。】
[状態]:疲労(大)、精神的疲労(極大)、友人たちを失ったショック(極大) 、腹部に切り傷(中、処置済み)
[装備]:MPS AA‐12(残弾4/8、予備弾倉 5/5)@寄生獣 セイの格率
[道具]:基本支給品、医療品(包帯、痛み止め)、ランダム品0~1
[思考]
基本方針:殺し合いからの脱出。
1:北西部へと向かいロックの探索をする。
2:比企谷君……由比ヶ浜さん……戸塚くん……
3:イリヤが心配。
[備考]
※イリヤと参加者の情報を交換しました。
※新一、タスク、プロデューサー達と情報交換しました。
※槙島と情報交換しました。
※コンサートホールの一件、足立の持っていたペットボトルが毒入りであることを知りました。


【タスク@クロスアンジュ 天使と竜の輪舞】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(大) 、アンジュと狡噛の死のショック(超絶大)、狡噛の死に対する自責の念(超絶大)、後悔(超絶大)
[装備]:刃の予備@マスタング製
[道具]:基本支給品、前川みくの首輪 、狡噛慎也の首輪、サリアのナイフ
[思考・行動]
基本方針:アンジュの騎士としてエンブリヲを討ち、殺し合いを破壊する。
0:北西部へと向かいロックの探索をする。
1:アンジュを探し、弔いたい。
2:エンブリヲを殺し、悠を助ける。
3:生首を置いた犯人及びイェーガーズ関係者を警戒。あまり刺激しないようにする。
4:ブラッドレイと遭遇した時は穏便に済ませられないか交渉してみる。
5:御坂美琴、DIOを警戒。
6:エドワードから預かった首輪を解析したい。
[備考]
※未央、ブラッドレイと情報を交換しました。
※ただしブラッドレイからの情報は意図的に伏せられたことが数多くあります。
※狡噛と情報交換しました。
※アカメ、新一、プロデューサー達と情報交換しました。
※マスタングと情報交換しました。
※不調で股間ダイブをアンジュ以外にするかもしれません。
※エドワード、杏子、ジョセフ、猫(マオ)、サファイアと軽く情報交換しました。
※コンサートホールの一件、足立の持っていたペットボトルが毒入りであることを知りました。




180:望まれないもの(前編) アカメ 191:寄り添い生きる(前編)
泉新一
雪ノ下雪乃
タスク

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2016年06月10日 09:40