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白交じりて、禍津は目覚める ◆ENH3iGRX0Y
結局、黒は学園に引き返す道を選んだ。
理由としては先ず、黒子が一般人の穂乃果を連れ無闇に移動はしないということ。
居座り続ける可能性も低いが、友人との合流を考えてる以上、まだあの場所に留まる可能性も高い。
そして何より――。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ。黒くん!」
黒が助けた足立からの情報が最大の決め手であった。
足立の情報で数時間前、穂乃果の友人の花陽がまだ学園に辿りついていないことに加え、
ヒルダという女性がジュネス付近で銀と別れた事実は、黒の決断をより迅速に確信めいたものへと変えた。
その銀のもう一人の連れであった
里中千枝は亡くなってしまったが、銀が生き残っている以上、誰かしら心強い仲間がまだ居るのだろう。
運がよければ学院に向かう可能性があるし、そうでなくても学院で穂乃果達が有力な情報を得ているかもしれない。
どちらにしろ、黒がもう一度南下しない理由はない。
「すみません、軽く走ったつもりだったんですけど」
「君、僕はね……一応怪我人だよ!」
足立が目を覚まし、自力でティバックから脱出したのが数分前。
最初に足立が考えたのは、やはり保身であった。
二度目の気絶でクールダウンした足立は物事を冷静に分析する術を取り戻し、何故自分が生きているのかを再考察する。
恐らく、この目の前のまっくろくろすけは足立が殺し合いに乗った事実を知らない。情報においては、かなり不利な側の参加者なのだろう。
しかし戦闘面では、最低でもペルソナを使わなければ勝てない程の実力はあるのも、間違いない。ここまでの単独行動に加え、幾分傷を負っいながら未だ健在なのがその証拠だ。
以前、槙島に遅れを取った屈辱が足立を学習させ、彼に利口な行動を取らせた。
「大丈夫ですか、その傷」
「ああ、もう本当
エスデスの奴ときたらさ……」
今の足立は表向き、エスデスと言う凶悪な参加者に襲われた哀れな一般人という体を取った。
無論、黒もある程度は疑うが、そもそも内容自体に偽りは然程ないのだ。事実だけを掻い摘めば、エスデスが足立に勝手に目を着けて狙ってくる異常者。これだけで矛盾はない。
足立が殺し合いに乗ったという事実を伏せても、エスデスの異常さは大いに説明が付いてしまう。
しかも、黒の求める情報を与えられたのも足立にとってプラスに働いた。
見事に警戒を解かせ、黒に名を言わせる程度には友好関係を築け、交戦は回避できた。
(まあ、ともかくしばらくはコイツが何とかしてくれるだろ。
あとはどうするかだな)
足立が交戦を避けたのは、身体の疲労度合いから勝ち目が少ないのもそうだが、何より一時的にとはいえ交戦を一手に引き受けてくれる味方が欲しかったのもある。
皆殺しの意思を変える気は無いが、はっきり言ってこのまま戦い続ければ足立は必ず死ぬ。力は可能な限り温存し続けたい。
とはいえ、黒が他参加者から足立の情報を得るのもそう遠くは無い。大きく見積もって学院までは猫を被り続けられるだろうが、そこまで着けば何かしら足立の不利になる情報が待っているはずだ。
(エスデスの奴はここまで姿を見ないってなると、こちらの側には来てないんだろうな。
後藤もだ。黒もそれっぽい姿は見てないって言うし)
北の方角はエスデスを避け、
アカメ達が向かった可能性が高い。
しかし、南の方角は以外にもエスデスと後藤を見かけなかった黒の情報を信じれば、彼らは別の方角へと向かったのだろう。
そう考えれば、この辺に強敵は殆ど居ないと見て間違いはない。
いっそ黒を殺して近辺に姿を晦ませるか、このまま同行して他の参加者もろとも一網打尽にするのも悪くないかもしれない。
グゥ~~~
(そういや、腹減ったな)
腹の虫がなった事で足立はここまでまともな食事を摂れていない事を思い出した。
一応パンや水などで飢えは凌いでいたが、それが腹に溜まる訳もない。
「……良かったら、僕の持ってる食料でも食べますか?」
「え? いや、それは嬉しいけど。良いのかい」
「ええ、沢山ありますから。歩きながら食べましょう」
そう言うと黒のティバックから大量の食料品が出てくる。
考えればアヴドゥルの支給品も魚だったが、鮮度は無駄に落ちていなかった。この奇妙なティバックのお陰なのだろう。
それらから片手で摘めるようなものをチョイスしながら、足立は口へと頬張っていく。
質素なパンや無味無臭の水とは違う、ジューシーでそれでいて香ばしい香りは足立の食欲を更に掻きたてた。
「これ、何処で手に入れたの? もしかして支給品かい?」
「いやイェーガーズ本部ってところから、まあちょっと……」
「いっ!?」
一瞬セリューやエスデスのクソの顔が浮かんだが、逆にあいつらの悔しがるような顔を思うと実に心地いい気分になる。
人の不幸で食事が美味くなるのを感じながら足立は腹を膨らませていく。
見れば、黒は足立の倍以上の食事を摂りながらまだ足りなさそうな顔をしていたが、気にしないことにした。
「美味いなぁ……。ここまで美味い飯食ったの久しぶりかも」
空腹は最高の調味料とはよく言ったものだ。それに疲労も逆にここでは好作用しているのかもしれない。
「なんかさ、生きてるって感じだね」
不意に口を滑らせた一言に足立は驚き、気恥ずかしさを感じてしまった。
しかし、一度開いた口は止まらず言葉を紡ぎ続ける。
「ここに来るまで嫌なことばっかで、上手くいかないことばっかりだったんだよ。本当、どうでもよくなって……。
でも、やっぱり……」
ここに来る前、『アイツ』に敗北したあの瞬間、自殺まで考えた。それほどにまで人生に絶望した。
現実はクソだ。全てがシャドウになればどれほどいいか、それが邪魔されるくらいなら死んだ方がマシだ。
それが気付けば、こんな飯一つで――
「あーあ、ごめん。今の忘れてよ、ナシナシ。なんか辛気臭くしちゃったね」
「……忘れませんよ。ずっと覚えておきます。
多分、足立さんも忘れない方がいいと思います。きっと、それは大切なことですから」
言っていて気恥ずかしさを感じる。
ここまでの連戦の疲労もあり、つい口が軽くなったのだろう。
「忘れない方が良い、か……。まあそうだねえ、生きるなんて真面目に考えたことあまりないし」
「そうですね。僕も少し前までは、あまり考えたことはなかったかもしれません」
「今はあるの?」
「今は一人じゃありませんから」
「……。それさ、もしかしたら惚気話になったりする?」
「あっ、すいません。そういうつもりじゃなかったんです」
食料も全部食べつくし、――というよりは黒が一人で全て平らげたのだが――二人の歩幅はその遅れを取り戻すように速まっていく。
恐らく30超えたら絶対太ると思いながら、足立も黒の後を追いかけた。
「ッ! 足立さん下がって!!」
上空から何かが降り注いでくる。
夜中の為、見通しは悪いが月明かりが辛うじて足立にそれを認識させた。
新手の襲撃を予見し、足立は数歩下がりながら黒の背中を見守り、最悪のケースを考え逃走経路とペルソナを出せるよう身構える。
しかし、それが人の形を成していると分かってきた時、足立は構えを緩めた。そう、これは襲撃の類ではない。
これは落下しているのだ。ファンシーで異様に露出した衣装に身を包んだ白銀の少女が上空から降ってきている。
「イリヤ?」
落下した少女は地面に小さなクレーターを刻み、佇む。
数秒後には血と肉片の海を思い浮かべていた足立は唖然としながら、黒に一度視線を移す。
その表情には驚愕と、不安のようなものが混じっているのが見て取れた
『黒さん? 黒さんですか!?』
「黒さん……」
イリヤはルビーを強く握り締め、黒を見つめる。その目は今までに黒が何度も体験してきたもの。
殺意を込めた眼はこれから何が起こるのか、黒に嫌でも先の光景を予想させる。
「止めるんだイリヤ」
武器は握らない。黒が真っ先に行ったのは説得だ。
だがイリヤは無防備の黒に向かい、杖を振るう。桃色の光が眩く輝き、炸裂した。
爆風の余波で足立が悲鳴を上げ吹っ飛んでいく。砂煙のなか、影は疾走し眼前へと迫る。
「止まれない……もう止まれないの!!」
死神の魔手がその身に触れる寸前、イリヤは飛翔し遥か上空へと飛び立つ。
そこから地上の黒へと狙いを付け、魔力の弾丸を弾き出す。
地上が覆われるほどの弾丸の雨。普通の人間ならば、ミンチになっていようそれを黒は生身一つで突破した。
着弾の僅かなタイムラグを見図り、まるで針の穴を通すような繊細な動きで黒は弾丸を避け、ワイヤーを木に巻きつけ一気に上昇。
そのまま呆気に取られたイリヤにワイヤーを放ち、電撃を流す。
「ッ!」
腕に巻きついたワイヤーを切断するも、僅かながらに流れた電撃のダメージでイリヤは飛行を中断してしまう。
堕ちていくイリヤに向かい黒も飛び、その手に持った友切包丁をイリヤの首元へ突き指す。
「もう、殺すな」
黒は友切包丁を手放す。
「なん、で……」
「お前は十分苦しんだ」
「私は二人を助けないと……」
「なら、お前自身は誰が救う?
もう止めろイリヤ。本当は殺しなんてしたくないはずだ。
これ以上、自分を責めるな」
まるで心を見透かされているように。いや、自分の事のように黒の顔はイリヤの目に虚ろに写った。
「駄目だよ……そんなの……。
私が諦めたら――」
死んだ二人を守れるのは自分しか居ない。
イリヤだけが最期の頼みであり、何よりここで折れれば今までに死なせた者達の命も全てが無駄になる。
「戻れないの……私はもう戻れない!!」
「戻れる。イリヤ、お前には帰る場所がある。
待っていてくれている家族が友達が居るんじゃないのか? そいつらの事はどうするつもりだ。
人を殺し続けてそこへ帰れるのか、イリヤ!
……お前は俺みたいになるな」
「何で、貴方には関係ない!!」
「お前に優しさは捨てられない。
契約者でもないのに冷酷ぶっているが、お前は――」
「――ようは君さ、友達に依存してるんだよね」
二人の会話を裂くように、道化の声が響き渡る。
足立は狂喜に歪んだ笑みを見せながら、イリヤへと蔑むような目線を下す。
「さっきから聞いてればさ。全部理由は他人に押し付けて、自分は悲劇のヒロイン面してるじゃない。
聞いてて薄っぺらいんだよ。君は自分が寂しいから、慰めて欲しいから死んだお友達が欲しいんだよ。
全部自分の為だろ。正当化して美化するなよ、気持ち悪い」
「……私は」
「足立……?」
「君も君さ。
一々女々しいんだよ。
言ってやればいいじゃない。この娘は自分の境遇に酔ってるだけの、ただの殺人鬼だってさ!」
「違う、私は……!」
「足立!」
黒が踏み出した瞬間、黒の真横へと光弾が放たれる。
余波で黒の体制が崩れ、足立はその隙に一気に距離を取った。
「ぐっ……!」
足立に気を取られた間にイリヤもまた杖を握りなおし、黒へと殺意を向けている。
再度、桃色の光が黒を照らしだし、足立は歪んだ笑みのままタロットカードを握りつぶす。
現れたマガツイザナギと魔力の砲弾に挟まれた黒は身を屈め、マガツイザナギの剣撃を避けた。
そのままワイヤーを投擲し、一気に砲弾の射線から外れる。だが一瞬にして先回りしたイリヤの斬撃が黒の胸元へ薙ぎ払われた。
「イリ、ヤ……!」
予め巻きつけておいた友切包丁のワイヤーを手繰り寄せ、黒はその斬撃を友切包丁の刀身で捌く。
しかし、咄嗟の防御に手首の動きが完全に着いて来れず不完全な握りのまま、友切包丁は斬撃に飲まれ黒の手元から払われた。
素手となった黒に対し、イリヤは魔力を杖に集中させ光弾を編み出す。
だが接近戦において、歴戦の暗殺者と一般人の魔法少女とでは反応に大きな差が出てしまうのも事実。
一転して黒の魔手がイリヤの首元を掴む。イリヤが距離を取ろうとした瞬間には既に黒の身体は青く光り、その目は赤色に染まる。
その電撃は加減など無い。全力で放つ致死量。
もう、イリヤは殺すしかない。そう判断した黒の電撃。
――へい、さん、おねが、い――
――みんなを、いりやちゃん、を――
「やっぱり」
少女はニコリと笑う。
「黒さんは優しいね」
まるでその姿は天使のように。
電撃は流れず、桃色の光は黒の胸を穿った。
□
苛立ちが増す。
まただ。また足立の中で苛立ちが増していった。
理由は分からない。だが、この苛立ちは『アイツ』に対して抱いたものと似ている気がする。
だからこそ、腹正しい。
あのイリヤってガキも、黒も人殺しの屑だ。それが、どうして『アイツ』みたいな何かを感じてしまう。
自分と同じようなとこまで落ちても、それでも尚、人との繋がりを肯定している。それがやけに気持ち悪く、嫌悪感を醸しだす。
「気色悪いんだよ」
だから、保身を捨ててまでガキに言ってやった。あのガキの抱える本性をぶちまけてやった。
そして何時までも吹っ切れないあの黒も殺される。自分が救おうとしたガキに。
良い様だ。このまま次はあのガキを。
「あ?」
黒の胸元から、煙を上げ二つの銀色の物体が零れ落ちる。
首輪だ。
首輪がイリヤの魔力弾を弾き、その特性である異能の無力化を発揮し黒を救った。
「何で、何でなの……」
イリヤの目の前に並ぶ二つの首輪。月明かりに照らされた二つは血に塗れながらも、内側にその名を刻み込んでいた。
美遊・エーデルフェルトと
戸塚彩加の名が。
特に前者は救わなければならない者の名だった。
それがイリヤの目に飛び込む。
死しても尚、美遊の意志はイリヤを止めたいと願っているのだろうか。
「そうか、そういうことだよね」
美遊もクロもこんな事をしても喜ばない。
そんなことはとっきに分かりきっていたのに。
やはり、何処かで引っかかっていたのかもしれない。
「死から目を背けるな、前を見ろ……」
キンブリーの言ったいたことを改めて理解した。
これが屍を死者を超えて行くことなのだと。例えそれが死者の意志を冒涜するとしても、己が道を進むのなら彼らの顔を忘れてはならない。
黒の言った通り、本当は殺しなんかしたくない。そうだ、今だって本当は逃げたい。
「だけど、決めた事だから」
イリヤに殺されたキンブリーの姿が浮かぶ。
もう引き返すわけにはいかない。
今まで殺した者達の顔を思い浮かべ、全ての優しさを捨てる。
例えそれが美遊とクロに対しての裏切りでも構わない。全て自分の為に、生きていて欲しいから殺す。
「私の意志で……」
例え、自分を救おうとしてくれるものであろうと。立ちふさがるのなら全部が敵だ。
「――黒さん、私は銀って人を殺すからね」
だからこそ宣言する。
自分を繋ぎとめようとする最後の枷に。
「何だと」
「貴方の大切な人を奪う。
だから、黒さんも殺す気で来ないと失くしちゃうよ」
「待て、イリヤ――」
面白くも無いのに顔は笑顔だった。
無邪気でいて、冷酷な笑顔。
本当の自分の顔を隠し、イリヤは飛び立っていく。
「そうだよね……あのおじさんの言ってた通りだよ。私はただの殺人鬼なんだ。
もっと、早くに受け入れてれば良かった。だから、こんなに弱かったんだ」
足立の言っていた言葉で目が覚めた気がする。
そうだ、まだ何処かでイリヤは自分の救いを求めていたのかもしれない。
以前の
DIOの洗脳も本当はそれがあまりにも居心地がいいから、甘んじていた。
駄目だ。救いなんていらない、全部イリヤだけの為に、イリヤの我侭で二人を生き返えらさなきゃいけない。
(だから、最後の枷だけは早く壊さなきゃ)
未だイリヤを救う意志を見せていた黒こそが、最後の枷になる。
その最後の枷を壊すには、単に殺すだけでは駄目かもしれない。
少なくとも今、そうしようとして失敗したのだ。
だから、その枷を自分と同じ境遇にまで突き落とす。自らと同じ大切なものを亡くした時、黒はイリヤを確実に殺しに来る。
その時こそ、きっとイリヤも黒を殺すことが出来るはずだ。
でなければ、この先きっとブラッドレイにも勝てない。
強くならなきゃいけない。力もその精神も。
だから、その為に邪魔になる枷ならば、如何な手段を用いても壊すしかない。
『イリヤさん……』
「……全部遅いから、こうなるんだよ」
『え?』
誰にでも聞かれるでもなく、イリヤは声を漏らす。
その声の矛先は。
□
「マガツイザナギ!」
黒の頭上に剣が振るわれ、黒は一気に後方に飛び退く。
足立は笑いながら、地面に転がった首輪を拾い上げた。
「足立、貴様……!」
「ふーん。良いの? イリヤちゃん、君のガールフレンドを殺すつもりだと思うけど。
早く追ったほうが良いんじゃない?」
足立は手にした見せ付けるように首輪を弄ぶ。
黒も咄嗟にもう一つの首輪は回収したが、貴重な解析サンプルを一つ減らしたのも事実だ。
思わず歯噛みするが、足立の言うとおり首輪よりも銀を優先しなくてはならない。
恐らく、イリヤは銀の場所を足立や黒以上に知っている。
目的は分からないが、ある意味決別のようなものなのだろう。黒と完全に敵対し、その未練を断つための。
「本当は首輪換金なんて興味なかったんだけどさぁ。まあ、その近場で首輪があるなら使いたいじゃない?
これは遠慮なく貰うよ。
……食料まで貰えて、それに君達のゲームもちょっと面白く見させてもらったしね。君には本当に感謝してるよ黒くん」
「チッ」
黒は足立を警戒しながらも背を向け、そのまま駆け出していく。
それを見ながら、足立はほくそ笑んだ。
ここまで全部好都合の方へ進んでいる。
武器を貰い、体制を立て直してから鳴上の居るであろう南へ向かうのも良いし、逆に安全を優先し潜伏するのも良い。
どちらにしろ選択に余裕が出来たのは良い事だ。
しかし、内心でやはり足立の苛立ちは収まっていないのも事実だ。
自分と同じ人殺しの癖して、誰かを欲し求めるイリヤの姿は。
絆を振りかざす、『アイツ』に被るものがあったのだ。
いや、恐らくは同じだったのかもしれない。ただ、『アイツ』は揺るがなかったがイリヤは捩れてしまった。
それが――
「……うざいなぁ。何時までも俺の脳裏にへばりつきやがって」
殺意を昂ぶらせながら、足立は歩みだした。
□
(俺は、あの姉妹に白(パイ)を重ねてしまったのかもしれない)
黒子に対し、黒は場合によってはイリヤを殺すと暗に言った事がある。
彼女がその正義を為すのなら、逆に汚れ仕事は全て自分が引き受ければ良いと。
だが、あの瞬間。黒はイリヤを殺し損ねた。
恐らく黒は気付かぬうちに、イリヤとクロに妹を重ねてしまっていたのかもしれない。
かつて、黒の死神と怖れられた黒は妹を守る為だけに戦い、多くの命を奪った。
妹もまた人を殺し、黒も人を殺す。そんな自分達に苦悩し続けた末、黒は妹を失った。
より正確には一つになったというべきか、どちらにしろ黒はもう白(パイ)には会えない。他の誰でもない、黒の選択した結果だ。
(そうだ、俺にはアイツの気持ちが分かっていた。もっと早くにイリヤを見つけていれば)
本当は誰も殺したくなかった。
イリヤも同じだったはずだ。恐らく今もだ。
けれど、あの目は覚悟をしてしまった。最愛の姉妹と友の為ならば、全て亡くしても構わないほどの。
もう黒の言葉は届かないかもしれない。
『死から目を背けるな、前を見ろ』
これはイリヤの言葉ではない。黒ともう一度出会う前に、誰かがイリヤにその言葉を埋め込んだのだ。
もしも、黒がその誰かよりもイリヤと出会い説得していれば。イリヤは戻れたかもしれない。
「……」
黒はディバックより、傷だらけの白の仮面を一つ取り出した。
婚后光子の残した最後の支給品。黒自身この傷に覚えは無いが、それでも間違いない自分の愛用していた仮面。
エージェントとしての素性を、殺しを行う時の顔を隠すための仮面だ。
「イリヤ」
黒は妹の為に多数を犠牲にする道を選ばなかった。
だが、イリヤは姉妹と友の為に全てを敵に回す道を選んだ。
同じ道を歩みかけたからこそ分かる。もう一度、イリヤの行く道と黒の行く道は交差しないのだと。
恐らくアレは、黒が白だけを選んだ先にあった筈の未来なのかもしれない。
故に宣言する。
「お前に銀は奪わせない」
イリヤを敵として見定めることを。イリヤより、銀を守り助けることを。
――わかった。お前の仲間も、イリヤも『助ける』
とある少年と交わした約束から目を背くように仮面を握り締め、黒は駆ける。
【F-4/上空/一日目/夜中】
【
イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:魔力消費(残り1割5分)、疲労(絶大)
[装備]:カレイドステッキ・マジカルルビー@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ、クラスカード・アーチャー@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[道具]:デイパック×3、基本支給品×3、DIOのエキスが染みこんだイリヤのハンカチ、DIOのサークレット、キンブリーの錬成した爆弾(電気スタンド型)、死者行軍八房@アカメが斬る!、美少女聖騎士プリティ・サリアンセット@クロスアンジュ 天使と竜の輪舞、クロエの首輪、
イギーの首輪、クロメの首輪、
空条承太郎の首輪、花京院の首輪、キンブリーの首輪、セリューの首輪、不明支給品0~1
[思考]
基本:美遊とクロの味方として殺し合いに乗って二人を蘇らせる。
0:銀を殺し、黒も殺す。
1:強くなりたい。
2:少し休憩もしたい。
3:ブラッドレイを殺す。
[備考]
※参戦時期は2wei!の調理実習終了後。
※『カレイドルビー』の制限は、自立行動禁止、引き出せる魔力の絶対量低下。
※『カレイドルビー』には、誰でも使える改造が施されており、さらに吸血鬼の血を吸った事で何がしかの不具合が起きているようです。
※アカメ達と参加者の情報を交換しました。
※黒達と情報交換しました。
※「心裡掌握」による洗脳は効果時間が終了したため解除されました。
※クロエに分かれた魔力を回収したため、イリヤ本来の魔力が復活しました。
【F-4/一日目/夜中】
【黒@DARKER THAN BLACK 黒の契約者】
[状態]:疲労(中)、右腕に刺し傷、腹部打撲(共に処置済み)、迷い?
[装備]:友切包丁(メイトチョッパー)@ソードアート・オンライン、黒のワイヤー@DARKER THAN BLACK 黒の契約者、包丁@現地調達×2、首輪×1(
美遊・エーデルフェルト)、傷の付いた仮面@ DARKER THAN BLACK 流星の双子
[道具]:基本支給品、ディパック×1、完二のシャドウが出したローション@PERSONA4 the Animation
[思考]
基本:殺し合いから脱出する。
0:銀を守る。イリヤは……。
1:銀や戸塚の知り合いを探す。銀優先。
2:後藤、槙島、
エンブリヲ、足立を警戒。
3:
魏志軍を殺す。
4:二年後の銀に対する不安
5:
雪ノ下雪乃とも合流しておく。
[備考]
※『超電磁砲』『鋼の錬金術師』『サイコパス』『クロスアンジュ』『アカメが斬る!』の各世界の一般常識レベルの知識を得ました。
※戸塚の知り合いの名前と容姿を聞きました。
※イリヤと情報交換しました。
※クロエとキリト、黒子、穂乃果とは情報交換済みです。
※二年後の知識を得ました。
※参加者の呼ばれた時間が違っていることを認識しました。
※黒がジュネスへ訪れたのは、
エンヴィーが去ってから魏志軍が戻ってくるまでの間です。
※足立の捏造も入っていますが、情報交換はしています。
【
足立透@PERSONA4】
[状態]:
鳴上悠ら自称特別捜査隊への屈辱・殺意 広川への不満感(極大)、全身にダメージ(絶大)、右頬骨折、精神的疲労(大)、疲労(大)、爆風に煽られたダメージ、マガツイザナギを介して受けた電車の破片によるダメージ、右腕うっ血、若干の落ち着き、満腹
[装備]:なし
[道具]ロワ参加以前に人間の殺害歴がある人物の顔写真付き名簿 (足立のページ除去済み) 警察手帳@元からの所持品、戸塚彩加の首輪
[思考]
基本:優勝する。(自分の存在価値を認めない全人類をシャドウにする)
0:皆殺し。
1:特に鳴上は必ず殺す。優先順位は鳴上>エスデス>後藤>その他。
2:ついでなので、ちょっと首輪換金も試してみたい。
3:落ち着いたので少し冷静に動く。
[備考]
※参戦時期はTVアニメ1期25話終盤の鳴上悠に敗れて拳銃自殺を図った直後。
※支給品の鉄の棒は寄生獣23話で新一が後藤を刺した物です。
※DIOがスタンド使い及び吸血鬼であると知りました。
※ペルソナが発動可能となりました。
※黒と情報交換しました。
最終更新:2016年04月30日 23:12